初仕事
学校から帰宅し家でゆっくり過ごしていると、俺のスマホが鳴る。
『もしもし』
『あ、お疲れ様です!神野です!今お時間大丈夫でしょうか?』
『はい、大丈夫です』
『ありがとうございます!実はさっそくお仕事の依頼が入りました!』
『え?俺にですか?』
『はい!』
(はやすきだろ。デビュー決めて1日しか経ってないぞ)
『どんな仕事ですか?365日無人島生活なら考えさせてください』
『そんな仕事ありませんよ』
呆れながら言われたので、口を挟まず神野さんの言葉を待つ。
『今回の仕事は『おしゃべり7』という番組です。今注目の若手をゲストに迎えたいという要望が番組側からあり、日向さんにオファーが来ました』
『昨日の注目度なら誰にも負けてませんからね』
もちろん悪い方での注目だ。
『どうでしょうか?収録日は明日の夕方頃と急にはなりますが』
『明日の夕方ですか。なかなか急ですね。何かあったのですか?』
『はい。実は急遽出演できなくなった方がいて、1人少ない状態で収録する予定だったらしいです。ですが昨日の件で日向さんなら相応しいと番組側が判断したようでオファーが来ました』
『なるほどです。明日の夕方は空いてますので番組側が良ければ収録可能ですよ』
『ありがとうございます!先方には連絡しておきますので、明日学校が終わり次第、収録現場に向かおうと思います!私が学校まで車で迎えに行きますね!』
『よろしくお願いします』
その後、神野さんに学校が終わる時間や拾う場所を教え、電話を終了する。
「お兄ちゃん、さっそく仕事が入ったの?」
「あぁ。どうやらそうらしい」
「どんな仕事?」
「『おしゃべり7』って番組の収録で……」
「えっ!お兄ちゃん!『おしゃべり7』に出るの!?あの番組って本当に注目がある人か、今後注目されるであろう人しか出演できないんだよ!」
「まぁ今の俺は絶賛注目の的だから間違ってないんだろう」
炎上という形で目立ってしまったが。
「で、収録日はいつなの?」
「あぁ。急だが明日の夕方らしい。だから学校が終わり次第、神野さんが拾ってくれることになってる」
「おー!芸能人ぽいよ!お兄ちゃん!」
「そうだなぁ。ってそんなことより、俺はその番組で何を話せばいいんだ!?」
「それは私じゃなくて神野さんに聞いてよ」
「………」
ごもっともで。
(まぁ、明日車の中で聞けばいいか)
その後、夜遅くまで『おしゃべり7』の再放送を視聴し、事前準備に取り組んだ。
翌日、穂乃果に収録の件を話しながら登校する。
「『おしゃべり7』に出るの?しかも収録が今日?」
「あぁ。どんな収録になるかはわからないが、精一杯頑張ってくるよ」
「ん。シロならできる」
「私も応援してるからね!」
2人が俺にエールを送る。
この声を聞くだけで収録が上手くいくような気がした。
「ありがと、2人とも。『おしゃべり7』以降、仕事が来ないといった事案が発生しないよう頑張ってくるよ」
そんな話をしながら学校へ向かった。
本日も影の薄さが本領を発揮してくれたため、俺の正体がバレることなく下校時刻となる。
そのことに一安心しつつ、神野さんが待つ場所に向かう。
ちなみに俺が学校でどんな格好をしているかは神野さんに伝えていたため問題なく合流できた。
「神野さん、お待たせしました!」
「学校お疲れ様でした。少し学校から離れてましたが本当にここでよろしかったのですか?」
「はい。神野さんが校門前で待機してると合流できる自信なかったので」
「………?よくわかりませんが、ここで問題ないのであれば、これからはコチラで日向さんを待ちますね」
神野さんのような巨乳美女と仲良くしてることがバレると色々と面倒なので、少し離れた場所での合流が正解だろう。
「では収録場所に向かいます!」
「はい!よろしくお願いします!」
俺が返事をすると神野さんが車を走らせる。
「それにしても、本当に顔が見えないような格好をしてたんですね」
「お見苦しい格好ですみません。ですが、この格好が1番落ち着くので」
「ふふっ。この格好で過ごしていたら日向さんが巷で噂のシロさんだとは誰も思いませんね。私も話しかけられなかったら気付きませんでしたよ」
そんな他愛のない話をしながら移動する。
「そういえば今日の収録は何を話せばいいんですか?」
「話す内容については安心してください。日向さん自ら話すことはないように手配しておりますので」
どうやら今回の収録は竹内社長の計らいにより、自らトークする形ではなく質疑応答がメインとなっているようだ。
「それなら良かったです。初めての収録でトーク番組は難易度が高かったかなとは思ってたので」
「その辺りも番組スタッフには伝えてますので安心してください」
「ありがとうございます」
「それと別件にはなりますが日向さんへの仕事の依頼が多数来ております。もしかしたら急遽仕事が入る可能性もありますので、その点はご了承ください」
「え、そんなに仕事が来てるんですか?」
「はいっ!私たちも驚いてるくらい大量に来てますよ!」
口調から嘘を言ってるわけではないようだ。
(あれ?なんで仕事がこんなに舞い込んできてるんだ?)
そう思い理由を考えるも、納得のいく答えが導き出せなかった。




