真実
「なに?俺を仲間にする為だけに、この島に来たのか?」
リイアの目的を聞き、耳を疑うラインハルト。
「まぁ、そうなりますね」
ジルも当然同じ目的だ。
「馬鹿じゃないのか?」
呆れ顔のラインハルトは、リイアを見ながら人差し指で自分の頭を叩く。
「自分達には大事な、大事な一歩なんですよ」
噛み締めるように言うジル。
「一歩ねぇ…で?後何人だ?」
「さすがに察しが良いですね」
「そこまで聞きゃ誰でもわかるだろ」
照れ隠しに、そっぽを向くラインハルト。
「まず貴方の【武力】、次は【智力】ですね、後は【護力】、【破力】、【速力】、【捻力】、最後は存在するかどうか分かりませんが…」
「【魔力】ってか?」
「そうです、笑いますか?」
ジルは真摯な瞳で、ラインハルトを見る。
「ふん、世界最強になるなんて、バカな目標掲げてる奴が、馬鹿にできる【夢】じゃねぇよ」
ラインハルトの夢という言葉に、胸が熱くなるリイア。
「あ…」
「ありがとうございます」
「何故に家が半壊してるの?」
僕は帰って来た家に、大きな穴が空いてる事に驚き口を開ける。
「うむ、何処からかクマが飛んできて、家に当たったんじゃ」
「そんなバカなこ…と?」
そんなバカな事があった、色々あったせいで忘れていた、僕がクマをデコピンで吹っ飛ばしていた事を。
「ごめんじいちゃん、まさか家に当たるとは…」
僕は素直に謝る。
「まぁいい、壊れたら直せばいいからな」
「ありがとう」
素直な僕を怒れないじいちゃん。
「所で、もう一人の従者は?」
「ヤーツ殿か?彼なら北西部の居住区にいる」
「何故に?」
「話すと長くなるが…」
ヤーツが家を出る前。
家の一部を破壊して、気を失っているクマを見て一瞬固まるヤーツとアルの祖父。
「なにが…?」
「恐らくアルが吹っ飛ばしたんじゃな」
「………」
「だいぶ大きいなぁ、めんどくさいのぅ…」
「解体しますか?」
「いんや、森に帰そう」
「…?」
その時、ヤーツは立ち上がり、異変を嗅ぎ取る。
「煙?」
眼鏡を押し上げ空を凝視するヤーツ。
「チュルパン翁!あの方角には何が?」
「その名、気付いたか?いや、知っていたのか…お前もわしの力が欲しいのか?」
一瞬で雰囲気が変わり、目つきを鋭くし、ヤーツを睨む祖父。
「貴方には何も…ワタシは姫の護衛として、同行しているだけです」
「姫、姫様か…なる程な…で、お前自身の目的は?」
更に追求するアルの祖父、チュルパン。
「…はぁ、誰にも言わないで下さい、ワタシは“D”を追っています」
端的に答えるヤーツ。
「なる程、そりゃ誰にも言えんわな」
独りごちるアルの祖父。
「で、あちらには何が?」
煙の上がる方向を指差し、話しを戻すヤーツ。
「居住区じゃ」
「確認してきます!」
「難儀な性格じゃな」
「性格と言うより、騎士の性質です!」
そう言うとヤーツは、マントを翻し走り去った。
「…何でいつもは偉そうなんじゃろ?いい奴なのに勿体ない」
アルの祖父は首を傾げる。
「…と、言う事じゃ」
「ほう、そんな事が…」
家の前で、大きな音がしたので急いで見に行く、僕とじいちゃん。
リイアとジル、ラインハルトはリビングで待機。
「今度はなんじゃ…」
次々と起こるイベントに少々嫌気がさしてきたじいちゃん。
助けを求めてやってきた者が、扉に倒れ込んだ音だった。
ボロボロの住民が、玄関前で派手に転んでいた。
僕は住人に走り寄る。
「助けてくれ!」
「何がありました?」
「海岸にアイツが!」
「アイツ?」
「【クラーケン】だ!!クラーケンが居住区に!」
ボロボロの住民を落ち着かせて、じいちゃんの家の奥の部屋で一息つかせている。
「これは不味いな、ヤーツ殿一人でどうにかなる相手ではない」
先行したヤーツが危ないと、じいちゃんは言う。
「行こう、じいちゃん」
「よし、お三人は奥の人の事を頼みます」
「え、あ?はい」
「わかった…」
次々と決まる事に対応出来ないジルとリイア、ラインハルトは、そう返事する事しか出来なかった。
「分かりました、ヤーツ殿をお願い致します」と気を取り直すジル。
「えぇ、任されました」とリイア。
「なんか知らんけど分かった!」と分かってないラインハルト。
アルと祖父は、風のように走り去った。
「大丈夫…よね」
そのリイアの独白は、誰の耳にも届かなかった。
海の悪魔、クラーケンの出現。
【超害獣】の一体であり、数々の伝説が残っている。
クラーケンが通った路の後は、何も残らない。
家も木々も全て呑み込まれる。
そんな超害獣と相対するヤーツ。
ヤーツは一人でクラーケンを食い止めようとするが、標的が大き過ぎてどうしたら良いか分からない。
「クソ!ワタシは…騎士だ!!」
自身を奮い立たせるため、声を出すヤーツ。
「おい!そんな所で何やってんだ!?」
居住区を走り回って、逃げ遅れがいないか確認していた住人に声を掛けられる。
「早く逃げろ!」
ヤーツに忠告する住人。
「他の住人を連れて先に逃げてください」
「…あんたは?」
「殿で奴を止めます、その間に逃げて下さい」
倒すなどとは口が裂けても言えない。
「あんた、何でそこまで?」
「ワタシが騎士だからですよ、騎士とは護る者、助ける事に理由はいりません」
そう言うとヤーツは、怯えを胸の奥に隠し、薄く笑った。
「…分かった、助かるよ、あんたカッコいいな」
そう言うと住人は走り去って行った。
それを背中に感じながら、ヤーツは剣を抜く。
「さて、どれ程持ち堪えられるか?」
握る剣の柄は汗で湿っていた。
居住区北の海岸から、這い上がるクラーケン。
「落ち着け、足を一本ずつ対処すれば問題ない」
自身に言い聞かせるヤーツ。
ヤーツはクラーケンの間合いに入った。
有無を言わさず、触手がヤーツへと伸びる。
ミスリル製のフランベルジュを、無駄な動きなく、触手一本の先端を切り取る。
「っあ…」
一瞬気を抜いてしまった、それは致命的で。
イカの足が一本では無いなんて子供でも知ってることで。
一本切っただけで、息をつく暇などないのに。
気を抜いてしまった。
1秒にも満たない時間であったが。
次の瞬間、ヤーツは上空に投げ捨てられていた。
「ぁ…」
このまま落下すれば、大怪我は免れない、下手をすれば即死さえある。
そんな致命傷を負う高さまで、放り投げられていた。
「ほいっ!」
「え?」
「間に合ったようじゃな」
「チュルパン…翁?」
「あまりその名を言わんでくれ」
上空に投げ捨てられたヤーツを、アルの祖父が空中で掴み、衝撃なく着地する。
「ほいっ!」
アルの正拳突きで、クラーケンの足一本が弾け飛ぶ。
「アル!」
「よっと」
アルに迫る5本の足を、後ろへ超跳躍する事で避ける事に成功する。
その隙にクラーケンは海へと逃げていく。
「なんの」
追撃しようとするアル。
「アル!一先ず下がれ!」
「はいよ」
祖父の指示に、一瞬の迷いもなく従うアル。
更に超跳躍したアルは音も無く、祖父の元へと着地する。
「助かった…か」
しかし、ゆっくりしている暇はない。
頭はぐるぐる混乱している。
また、いつ襲撃して来るか分からない。
「一度本国に連絡を取った方が良さそうだな…」
そう呟くとヤーツは崩れ落ちた。
ヤーツを家へ連れ帰り、また奥のベッドへと寝かした。
その後のリビングで会話で、今までアルに隠されていた秘密が暴かれてしまった。
「え?」
リイアの言葉に耳を疑うアル。
「だから、まだ存命だって言ったのよ」
白の君主は生きていると。
「150年前の話でしょ?白の君主物語って、白の君主って、え?ヒトじゃないの?エルフとか?」
取り乱すアルの後ろで、同じく取り乱しているチュルパン。
「いえ、人間だし、大崩壊【15年前】だし」
リイアは歴史の常識をアルに教える。
僕の頭は一瞬フリーズする。
「は?」
僕はキッと、じいちゃんを睨みつけた。
じいちゃんは凄い勢いで目を逸らした。
「今の世界って、この島ともう一つの島しかないんだよね?」
「何を言っているの?確かに三度目の大崩壊で世界の形は変わってしまったけど、今現在でもしっかり列島レヴィドアは存在しているのよ」
僕はキッと、もう一度じいちゃんを睨みつけた。
じいちゃんは凄い勢いで目を逸らした。
「私達は本国…【ローレア王国】からやってきたのよ」
「何をしに?」
清々しい程の直球の質問だった。
苦笑するリイアはそれに答える。
「【予言】の7つの力を探しに」
「なるほど、その1つがライさんだと」
予言の事を、さして気にしていないアル。
普通は予言なんて信じない人の方が多いのに、疑う素振りもない。
「そういう事」
「その…旅に、僕もついて行ってもいいかな?」
「お前は何を「じいちゃんは黙ってて!」
僕は酷く久しぶりに、じいちゃんに向かって声を荒げた。
「私としては助かるけど…貴方の目的は、やっぱり白の君主に会うこと?」
「うん」
「正直、簡単な話じゃないわよ、どれだけ時間が掛かるかわからないし」
「それでも!」
いつもは無表情の、アルの真摯な目に気圧されそうになるリイア。
「お爺様は?」
アルから目線を動かし、チュルパンの方を見て質問を投げるリイア。
「じいちゃん!」
僕の願いに、じいちゃんは大きく長い溜息を吐く。
「バレてしまった以上、留めておくことはできんじゃろ…」
遠くを見るじいちゃんは目を細める。
「いつかこういう日が来る事は想像していたが、まさかこんなにも突然くるものなんじゃとは…」
その時、地響きが家を襲った。
再び、クラーケンが海岸から這い上がってきたのだ。
舞台はじいちゃん家の北の海岸。
超害獣狩りの始まりだった。
【武力】
戦う力。
【智力】
考える力。
【護力】
護る力。
【破力】
突破する力。
【速力】
進む力。
【捻力】
曲げる力。
【魔力】
魔法の力。
【夢】
皆が心に抱くもの。
【クラーケン】
超害獣の一体。
【15年前】
三度目の大崩壊を迎えたのが15年前。
【ローレア王国】
列島レヴィドアの南方に位置する大陸にある国。
【予言】
未来を見通す者が告げるもの。
事細かく話してはいけないと言うルールがあるらしい。




