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アルブス  作者: シバザキアツシ
旅立ち

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5/21

カオスドラゴン

頭が痛い、目の奥が熱い。

理由のわからない、破壊衝動を止められない。

誰か…。

「ガァアァア!!!!」

【カオスドラゴン】の咆哮が、山に響き渡った。


アルは修行の途中、よく北部の、森の西にある山に立ち寄る。

修行を始めて八年が経っていた。

一斉に山の生物が下山している、何かから逃げるように。

否、逃げているのだ、確実に何かしらの脅威から。

「山が…ざわめいている?」

アルは頂上へと急いだ。


山の頂上、目の前に現れたのは、漆黒の表皮のドラゴンだった。

体長20m程の【古代(エンシェント)ドラゴン】。

この山へ棲まう、カオスドラゴンだが様子がおかしい。

カオスドラゴンの目は、真っ赤に染まっていた。

今までは、こんな事は一度もなかった事だ。

「赤いって事は、つまりは【暴走状態】、話の通じる状況じゃない!」

舌打ちをするもすぐに意識を切り替える、いつもの友としてのドラゴンではない、今現在は敵。

いや、自分が敵と見做されているのだ。

カオスドラゴンは標的を見つけ、襲いかかってきた。

いつも一緒に筋トレしている相手なのに、何があったというのだろうか。

「くっ!」

アルは足に力を込めて、地面を蹴って一度上空へ逃れる。

ただの垂直跳びで10m程飛ぶ。

直ぐに様翼を鳴らし、アルへと追いすがるカオスドラゴン。

「【指弾】!」

空中で拳を握り、親指をその中に突っ込み、それを放つ反動で空気の弾を弾き出す。

硬い表皮を弾く音が山に響く。

「ぐぉおぉ!!」

アルの岩をも砕く破壊力の指弾が、カオスドラゴンの右肩に当たり、体勢が崩れる。

着地したアルは、瞬時にカオスドラゴンの懐へ入り込むと、その腹へ拳を一撃見舞う。

生物として有り得ないような、金属の塊をハンマーで叩いたような鈍い音が鳴る。

「ぐぁあ!!」

カオスドラゴンはその痛みに咆哮する。

更に追撃しようとしたアルは、己の愚策に舌打ちをする。

巨大な両腕に拘束されたのだ。

アルの肩を両手で挟み、顎を開くカオスドラゴン。

爪が肩に喰い込んで離せない。

「やば!」

噛みつかれると思ったが、もっと酷い攻撃を喰らう事になってしまった。

【ダークブレス】、カオスドラゴンの必殺技の一つ。

地を、山全体を揺るがす轟音が突き抜け、黒い極光に目を貫かれる。

世界の色が反転したような錯覚。

避けられないブレスに、アルの上半身が焼かれる。

「くそっ」

ダメージ自体は大したことが無いのだが、衣服と腕に着けていた装備が焼け落ちた。

酷い攻撃の意味は、呪いの付与。

その呪いの種類は、ランダムで分からない。

今回のは、即効性がなさそうな分、まだマシだと言えた。

因みに先程のブレスは、アルにとってはサウナで、ロウリュの熱波を喰らうくらいの威力でしかない。

「しまった…【グレイプニル】が!」



修行を始めて、5年経った頃の事を思い出す。

「アル、このグレイプニルだけは絶対に外してはならない、力の封印に必要なんじゃ、くれぐれも気を付けろ」

アルのレベルがかなり上がった頃、じいちゃんから渡された装備。

無理矢理に装着された装備。

何でも、オーディンを食い殺せる程の、【巨狼(フェンリル)】をも捕らえることが出来る代物らしい。

「わ、わかったじいちゃん」

僕はその両腕に装着された、グレイプニルを眺める。

身体がちょっと重くなったが、日常生活には問題なさそうだった。



その枷が今、焼け落ちた。

音も無く地面に落ちた。


カオスドラゴンは不気味な気配を敏感に感じ取り、アルを突き離して後ろへと距離を取る。

「………が」

今度はアルが咆哮した。

「が…ぁぁぁあ!!!」

アルの身体が膨れ上がる、骨と肉が軋む気味の悪い音が鳴る。

みるみる内に巨大化し、身長は10m程になっていた。

髪は逆立ち、ぬらりとした赤黒いオーラが全身に纏わりついている。

「はぁあぁああ」

アルの口の端から蒸気が漏れる。

いつも隠している右目が露わになり、その銀色の瞳がカオスドラゴンを睨みつける。


更にタイミングが悪い事に、呪いが発動する。

効果は、暴走。


暴走✕暴走。


空がアルの力を恐れるように鳴き出す。

地を叩く粒は、振動となり山を揺らす。

それは、カオスドラゴン自身がアルの事を恐れ震えるかの様に。


アルは瞬時にカオスドラゴンに迫り、左腕を掴み、そのまま引きちぎる。

「ぐあぁあ!!!」


血を頭から被るその姿は正に修羅。

通常の雨に血の雨が混ざり、地獄のような光景となっている。


更に右ストレートを放ちカオスドラゴンの左牙を砕く。

堪らず上空へ逃げるカオスドラゴン。

アルはバックステップで、山から飛び出ると左腕を、【逆水平チョップ】の要領で振り抜く。

物凄い爆音が轟き、山のてっぺんが真っ直ぐ斬られて、その三角は地面へと落下した。


巨大な振動が再び島ごと揺らす。


更に攻撃に転じようとした時、小さな影がアルの背後に現れた。

「この…バカモンが!」

アルの祖父が、異変を感じ取り駆けつけたのだ。

祖父の声は最早、今のアルには届かない。

「少し、痛いぞ」


神働術(テウルギア)∶フェリドゥーン鎖縛(シールド)!」

赤光の無数の鎖がアルを拘束し、そのまま平原へと叩き落とす。

暴れるアルだが鎖は解けるどころか、更に締まる。

「があぁあ!!」

「ちと、おとなしくしとれ」

神働術(テウルギア)フェリドゥーン封印(シール)

光の布がアルを包み込み、浮き上がらせると巻き込んで球体となり、地面へと落ちた。

カランと、場にそぐわない可愛らしい音が鳴った。

雨は更に強まっていった。

その球体は、10cm程に縮まり、光が吸収され黒色となる。

「ふぅ、やれやれ…さて」

カオスドラゴンも地に伏しており、瀕死の状態に見えた。

球体を懐へ仕舞うアルの祖父。

「お前も災難じゃったな」

「ぐおお…」

弱々しく哭くドラゴンの目は、既に赤色は消えており、暴走は解除されていた。

大量の血を流した結果であった。

アルの祖父は、カオスドラゴンに手をかざす。

神働術(テウルギア)アルヤマン回復(ヒール)

カオスドラゴンの身体を緑色の光が包み込み、傷を瞬時に癒す。

「くぉん」

「ちと見せてみ」

カオスドラゴンのちぎれた左腕は再生された。

「ちょっと、短いの」

再生された腕は、元の長さの半分程で、細くなってしまっていた。

「口を開けてみい」

大人しく従うカオスドラゴン。

口の中を見た所、牙も再生されていた。

「まぁ、短くても無いよりマシじゃろ?」

折れた牙は、アルの祖父が回収する。

「くおぉ…」

「暫くその山で…丘になってしまったな、まぁ、その丘でゆっくりするがいい」

アルが山頂を切り取ったせいで、丘のようにてっぺんが平らになってしまっている。

スキルで傷は治せるが、失った体力までは取り戻せない。

「くおぉん」

礼を言うように、小さく哭くカオスドラゴン。

「迷惑を掛けたな、ではまたな」

アルの祖父は、豪雨の中、懐の球体を大事に守るように立ち去った。

カオスドラゴンの体色は、黒から紺色になってしまっていた。


カオスドラゴンが何故、暴走状態になったのか。

いくつか理由は考えられるが、恐らく自然のそれでは無いと思われた。

とは言え、外部の何者かがカオスドラゴンを暴走状態にしたとして、何の意味があるというのか、それが分からない。

分からない以上、探る術は失われたも同然だった。

この事件は闇に葬られた。


雨雲の隙間から、人工的な光が一瞬瞬いた。

【カオスドラゴン】

混沌の魔竜。

竜種の中で最上位の一つ。


【エンシェントドラゴン】

100年以上生きた個体の事。


【暴走状態】

目の前の敵を攻撃続ける状態。

対象がいない場合ただ暴れ続ける。

目は赤くなる。


【指弾】

空気の弾を飛ばす技。

人により威力は様々。


【グレイプニル】

神をも喰い殺す、フェンリルを拘束する魔法の枷。


【フェンリル】

神々に災いをもたらす巨大な狼の魔獣。


【逆水平チョップ】

手刀打ちの一種。

手の平を下向きにし、水平の軌道で腕を横に振るい、叩き付けるチョップ。

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