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アルブス  作者: シバザキアツシ
旅立ち

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2/21

アル

列島レヴィドアに頻繁に地震が起きるようになる。

ラド=ボルオンは、八咫烏の製作した、新型飛行潜水艇スペスで、仲間と共に地下世界へと旅立つ。

突如、地下世界へ現れた(ゲート)

上空から(ホール)を探し、そこへ侵入し中の(ゲート)解放(リリース)する作業を繰り返すラド。

一際大きな(ホール)へと侵入し、そこに存在する巨大ダンジョンの最奥に、謎のクリスタルが佇んでいるの発見したラド達。

蘇るラパ=ランス、復活した(ゲート)、謎のクリスタル。

その全ての謎が解かれた時、世界は三度変動する。


これはラド=ボルオンが、白の君主(アルバモナールカ)と呼ばれるようになるまでの物語である。



これは僕が大好きな物語、《白の君主物語》の冒頭部分だ。

フィクションとされているが、他の本の解説によると、この物語は真実も含まれているという話だ。

とは言え、この主人公【白の君主】ラド=ボルオンに憧れても、150年前の話では会えるはずもなく。


この島、ターマス島に来てから僕はずっと蔑まれてきた。

その為、物語に没頭する事が好きだった。

本を好きになった。


それは何故なのか、一人でいくら考えても答えは出ない。


ずっと【イジメ】られていた事を、じいちゃんに言えずにいたが、ある夕食時、ふとこぼしてしまった。


「つらい」と。


実際、今となっては、どんなイジメを受けていたかハッキリとは思い出せない、それは心の防御反応なのだろう。

心が壊れないようにする為の処置であるとしておこう。


スプーンを置くじいちゃん。

すると、じいちゃんは真っ直ぐに目を見て僕に聞いてきた。

「何故、自分がイジメられているか、分かるか?」


怒るでも失望された訳でもなく、ただ質問された。


島、唯一の学校は、闘技場のある町の北西部にある。

元々は【傭兵団刃月】の支部だった所に建てられたらしい。

基本の知識や教養、魔獣への対処法、法律、スキルの使用方法、レベルの上げ方などを教えている。

その学校内でアルは、レベルが低く、スキルと呼ばれるものが発現しなかった為、イジメの対象となってしまった。

人は自分と違うものを嫌うものだ。


「固有スキルの意味が分からないから?」


僕には自分が無い。


固有スキル∶無限


「違う」

「パッシブスキルの意味が分からないから?」


自ら進んで何かをやろうと思った事が無い。


パッシブスキル∶全圧縮(フルプレッシャー)、物理半減


「違う」

「アクティブスキルがないから?」

「違う」

「レベルが低いから?」

「違う」

「じゃあ、なんで…?」


「それは、お前が戦おうとしないから、又は逃げようとしないからじゃ」


闘うか、逃げるか、どちらを選んでも構わないと。


「逃げてもいいの?」

「当たり前じゃろう、明日からはもう学校には行かなくて良い、連絡はわしがしておく」


いつ食べ終わったのだろうか、記憶が曖昧だ。

じいちゃんが食器を乗せたお盆を、キッチンへと運んでいく。

「ぼ…ぼく…」

涙が溢れて、言葉を上手く発せなくなった。

「心配しなくて大丈夫だ、明日からは、わしが全てを教えてやる」

背中越しにやさしい声が聞こえた。


僕は泣き疲れて、そのまま眠ってしまった。


この日始めて僕は。


自分の意思で。


逃げた。


学校を辞めて、1年目の春。

ターマス島、北部の丘。

「では、修行を始めよう」

「修行?」

「まずは、受けから」

僕の問いに、じいちゃんは答えない。

「え?」

「ほい!」

単純な物理攻撃、普通の【ジャブ】だった。

しかしそれは、とても素早く目で追えなかった。

「ぶはっ!」

顔面に命中、鼻が歪む、地面に赤い点々の染みが出来る。

世界が歪み回る、吐き気が込み上げる。

意味が分からず、僕は両膝をつくが世界は回り続ける。

「立て」

そう言われ、僕はゆっくり立ち上がった。

足元はふらついている、いつ倒れてもおかしくない。

「次は斬撃、ほい!」

じいちゃんは、瞬時に僕の後ろへ回り込み、手刀を背中に放った。

ビュンと風を切る音がした。

「うわぁ!!」

背中が熱い、どうなったんだろう、考えるのが恐ろしい。

「痛い…」

痺れと痛みが同時に襲う、またしても世界が回る。

前のめりに倒れ込む。


「そうだろう」

痛みで涙が止まらない、いや顔中の穴から液体がこぼれ出す。

「痛い、助けて…」

そう言うのがやっとだった。


「これが痛いということだ、他の人に自分が力を行使する時に、まずこれを思い出せ」

「分かった…分かったよ…じいちゃん…」

この日、僕は始めて、本当の痛いを知った。

「よろしい【神働術(テウルギア)】∶アルヤマン、回復(ヒール)

じいちゃんが腕を振るうと、緑色の光が現れた。

僕の身体はその光に包まれて、痛みはすぐに消え去った。


1年目の冬。

ターマス島、北東部の森。

「防御の方は、だいぶ良くなってきたな」

この程度の訓練など、誰でもやっているそうだ。

僕ももっと頑張らなくては、もう誰にもイジメられないように。

「うん、もうクマに噛じられても、痛くなくなったよ」

棒読みでじいちゃんに言い放つ。

もっと強くならないと、またイジメられる、それだけは嫌だ。


絶対に嫌だ。


「次は攻撃じゃ」

「分かった」

じいちゃんは大木の前に立つと、長く息を吐いて集中した。

木と拳が当たると、弾ける鋭い音が鳴った。

じいちゃんは、森の木の一本をグーパンで殴ると、拳大の穴を空けた。

物凄い衝撃と風圧で、僕の髪と周りの雑草が後ろへ流される。

森に住む鳥たちが一斉に飛び立った。

「すごい…」

僕は素直に感嘆した。

「拳に力を集中して、解き放つ、先ずは基本から、木に当たる瞬間に握り込むんだ」

「やってみる!」

近くのじいちゃんが穴を開けた木より、小さい木を選んだ。

真似をして拳を振るう、硬く軽い音が鳴る。

「痛っ!!」

防御を鍛えても、自分の力を受け止められなかった場合はダメージを負うらしい。

「1個ずつ確認しながら進めよう」


2年目の春前。

ターマス島、中央部の湖。

「わしの教えられる事は、ほぼ伝え切った」

物理攻撃と物理防御の事だ。

しかし、これだけ修行しても一向にスキルは取得出来なかった。

「じゃあ、これからは?」

「この島には、【王獣】と呼ばれる魔獣の頂点が、八体存在する」

「うん…え?」

昔から聞かされていたし、本でも読んだ事がある。

まさか、この島に棲んでいるとは思わなかったけど。

「それら1体ずつに教えを乞う」

「分かった?、分かった…」

僕は何故か素直に受け入れられた。

「では先ず、【ウィルオーウィスプ】から」

湖の底から光の球が、三つ浮かび上がって来た。

「これが?」

三つの光体が、僕の周りを浮遊している。

属性は光。

ウィルオーウィスプとは、精霊ではないのか、何故王獣、魔獣とされているのか、この時の僕は分からなかった。


「そうだ、後は任せたぞ」

ウィルオーウィスプは、頷いたように見えた。

「わしは先に帰ってる、心配しなくても殺されはしない」

「う、うん、分かった」

殺されは、とは。


2年目の夏。

「よし!やっと勝てるようになった!」

最初大きかったウィルオーウィスプは、今や手のひらサイズになっている。

打ち勝った証拠だった。

戦う毎に、光属性の耐性が付いていった。

後半、僕にウィルオーウィスプの攻撃は効かなくなっていた。

「レベルは…と…ん?」

ステータス画面を開いて確認する。

レベル∶001

「嘘…戻ってる?」


「なんだ無能のアルじゃないか」

「無能だったらナイでいいじゃん」

などと馬鹿なことを言いながら、僕に近付いてきたのは、以前、僕をイジメていた学校の奴らだった。

レベル至上主義、スキル至上主義の権化のような奴らだ。

「用がないなら、話し掛けないで貰えると有り難いんだけどなぁ」

僕が下を向いてボソッと言うと。

「アルの癖に生意気だな!」

癖にとは。

ひょろっとした【イジメっ子】Aは、額に青筋を立てる。

「また、イジメてやる!」

小太りのイジメっ子Bは、拳の鳴らしながら近付いてくる。

「やめたほうがいいよ、怪我するから」

僕は一目で力の差を感じ取った、この二人は弱い。

「怪我するのはお前だ!!」

「スキル∶強化(小)!」

イジメっ子Aが、身体強化をして拳を振るう。

僕の腹部に無事命中した。

硬い金属を殴ったような音が鳴った。

「へへ!痛いだろ!え?ゴン?」

人の腹は殴った時、普通ゴンと言う音は鳴らない。

「君の方が痛そうだけど?」

アルの腹筋は鉄より硬い。

「お前…何を」

イジメっ子Aは、ゆっくり自分の右手を見る為に視線を下げると、指が変な方向に曲がっていた。

防御力が攻撃力を上回った結果だ。

「うわぁ!痛い…痛えよお!!!」

イジメっ子Aは、地面を転がり泣き叫ぶ。

「やりやがったなこの野郎!!」

僕は何もやっていない。

「もう容赦しねぇぞ!」

今までだって、容赦された覚えはない。

「スキル∶巨大化ぁ!」

片腕を巨大化させて、僕に迫るイジメっ子B。

右腕の大きさは元の3倍に膨れ上がっていた。

先程の結果を理解していないらしい。

拳を握り上から振り下ろす。

「喰らえ!!」

僕は一歩も動かず、それを頭で受ける。

「砕けちれ!」

何か固いものが、砕ける音が鳴った。

イジメっ子Bの拳が勝手に、そして派手に砕け散った。

「うわぁ!痛え、痛えよお!!!」

イジメっ子ABは、仲良く地面を転がっている。

そのまま放って置いても良かったのだが。

「ウィルオーウィスプ、治してあげて」

僕のお願いに一瞬、嫌な表情を見せたように見えたが、気の所為だろう、何せウィルオーウィスプに顔はないのだから。

ウィルオーウィスプから光の球が湧き出て、イジメっ子ABの身体に吸い込まれる。

「もう帰ったら?」

ため息混じりに僕は言う。

この二人は訓練を怠っているらしく、ものすごく弱かった。

「え?」

「痛く…ない」

イジメっ子ABは「覚えてろよ!」と叫んで走り去った。

「…何だったんだろう、でも、もうイジメられない」

僕は自分の握った両拳を見た。

何だか、イジメられていた時の事が、とても昔の話のように感じる、克服したのだと、僕はその時確かに感じた。

「後七体だね、次は誰だろうか?」

ウィルオーウィスプは、役目が終わったとばかりに、静かに湖の底へ帰っていった。


僕は前を向いた。


3年目の冬。

ターマス島、北東部の森。

ゴーレムの頂点、【アダマンゴーレム】との修行。

属性は土。

「コイツには、物理攻撃が効きづらい、色々考えて戦うんじゃ」

「分かった、やってみる!」


そうして僕は、王獣達と次々修行をしていった。

そして、一体ずつの修行が終わった時。

「あれ?」

レベル∶001

「嘘だぁ…また戻ってる」

だけど首を落とす程じゃない、確かに強くなっているのを感じられる。


強さは数字ではない事が分かった。


「次は2対1での修行だな!」

僕は拳を握り、希望に顔を上げた。

その後、15歳になるまで延々と修行を繰り返した。

そして、リイアと出会い、僕の物語が動き出す事になる。


空っぽだった僕に、ちょっとずつ何かが注がれ出した。

【白の君主】

ラド=F=ボルオンの事。

何故そう呼ばれる事になったのかは、白の君主物語を参照。


【イジメ】

ダメ絶対!


【傭兵団刃月】

大崩壊以前に存在した、最強、最凶の傭兵団。


【神働術】

テウルギア、じいちゃんだけが使える固有スキル。

神の力の一部を借りて行使する事が出来る。

消費MPが半端ない。


【ジャブ】

格闘技最速の攻撃、攻撃力は低い。


【王獣】

魔獣の頂点の存在、八体確認されている。


【ウィルオーウィスプ】

三つの光の球体、精霊の一種。

通常のウィルオーウィスプとは違い、元は人の魂、しかも英雄と呼ばれるような人物であった。


【イジメっ子】

二人は暑いので湖に泳ぎに来たようだった。


【アダマンゴーレム】

アダマンタイト(不壊の金属)で創られたゴーレム。

ゴーレムの頂点の一種。

他に、ミスリル、オリハルコン、ダマスカス、タングステン、クロム、チタン、オスミウム、ダイヤモンド等がある。

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