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アルブス  作者: シバザキアツシ
復活編

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19/21

湖に潜むもの

テズヴァイス公国、副都レイラインの町の北西の湖。

「なんだアレ?」

「ってか、沸騰してる?」

調査に向かった傭兵団ウロは、有り得ないものを目撃する。

湖が泡立って、湯気が立っている。

「アレは?髪の毛?気持ち悪!」

湖面には、沸騰している泡と、髪の毛が浮いていた。

後に聞いた話では、その光景を見た後、全員赤い光を見て、気を失ったようだった。



副都レイライン。

「先ずは、砂漠でいいんだな?」

「それを解決しない事には、先に進めないからね」

海路で来る応援。

それは、湖の異変の調査を任せる為。

北と南の島には橋が掛けられていて、陸路で来る方が遥かに速いはずだった。

ところが、先日の大雨で橋が流されてしまったらしい。

それでの海路と言う事だった。



「砂漠に行く途中、湖の脇を通るんだろ、誰が行く?」

そう言ったのは、橙髪黒眼の少年ラインハルト。

観光目的で言ったわけではない、湖の異変を確認しに行った傭兵団ウロが、調査に行ったきり戻って来ないとの事を、沿岸警備隊の隊長に頼まれた為に出た発言であった。


「確かに、全員で行く必要はないでしょう」

即答するのは、金髪緑眼、長身の騎士ジル。

正直、砂漠はアル一人で何とかなりそうなのだが、ラインハルトと言う資格持ちが居ないと、活動出来ないので二人は砂漠確定。

全国で有効な万能資格、傭兵資格、冒険者資格がある。

その二つともラインハルトは保有している。

「自分とお嬢が行きましょう」

「そうね、見るだけなら資格も要らないしね」

同意するのは、金髪長髪、蒼眼の少女リイア。

「もし何かあっても、ウロの団員が傭兵資格を持っているので問題はないかと」

補足するジルの言葉を黙って聞いているのは、規格外の力を持つ、黒髪黒眼の少年アル。


「では、ここで一度別れましょう」

砂漠までの中間地点で、二人ずつ違う方向へ行く。

「あぁ、また後でな」



湖は異様な光景だった。

「ぶくぶくしてる…」

「沸騰してるんですかね?」

湖が沸騰しているなんて、想像するより、実際目にするとおぞましい光景だった。

沸騰する水の湿度が、周りの土の臭いを強調する。

「ところで…ウロは?」

二人は手分けして、ぬかるむ足元を気にすることなく素早く辺りを確認する。

「ジル〜!こっち来て!早く!」

「はい!」

リイアの元へ駆けつけたジルは絶句する。

辺り一面、十数人の傭兵団の団員で埋め尽くされている。

全員が地に伏せているが、息はあるようだった。

「これは…」


「新手か?」

何処からか、よく通る声が聞こえてくる。

「いえ、違うようですよ」

更に聞き覚えのない声がする。

ジルは無意識に抜剣していた。


「何を見ている?エルフがめずらしいか?」

振り返るジルとリイアが見たのは、二人の人物。

「…エルフ」

その一人は美しい朱の女、白い肌に尖った耳、全身赤色の服。

美しい顔立ちに似合わぬ軍服、全てが異様だった。


明らかに異質な雰囲気を醸し出している、警戒感をMAXまで高める。

「ここで何をしている?」

ジルは一言絞り出すだけで、全身に汗が滲む。

「答える義務はないが、特別に教えてやろう」

「何とも広い御心で」

隣に浮く人物が、主人であろう尊大な女に恭しく頭を下げる。

女性より少し低い身長の男は、文字通り、ぴんと背筋を伸ばしたまま、空中に浮かんでいた。


「うむ、仕置きである」

「は?」

その一言の意味が理解出来ないリイアとジル。


「そこのサラマンダーが妾に逆らったので、一先ず湖に沈めてやったわ」

追加で説明する朱い女。

「物騒な…」

「そしてその目付け役として、ヘカトンケイルも沈めておいた」

ヘカトンケイル、超害獣の一体である。

それは災害級の力を持つ存在、巨人族の魔獣。

「超害獣を使役しているのか!?」

災害級魔獣を使役出来るという事実に、目を剥くジル。

そんな事が可能なら、国盗りすら可能になる。

「ヘカトンケイルは目付けだったら、沈めなくても良くない?」

「ふむ、それもそうだな」

リイアの最もな意見に首肯する女。

すると、女は指を鳴らし踵を返した。

「ちょっと!貴女の名前は?…えと、私はリイアと申します」

「ふむ、自身から名乗るのは良い心掛けだな、良かろう、しかと聞け、妾の名はラウラ、黒い7(アビスナイトメア)が一人だ」

その組織名に覚えがあったジルは、咄嗟に口に出してしまう。

「その組織の名、もしやリンナの仲間か?」

去る足を止め、顔を横に向けラウラが答える。

「あの俗物と一緒にするでない、妾は目的が重なるため、暫し行動を共にしてるに過ぎない」

不快な表情をするラウラから、僅かな殺気が漏れていた。

「目的…?」

「使い一つ出来ぬ奴など、仲間などになろう筈もないだろう、失敗したなら他の土産でも持ってくれば、まだ可愛げもあったろうにな」

そう艶然とするラウラ。

「土産…?」

「例えば…」

次の言葉は二人を硬直させた。

「チュルパン=スザーラの首…とかな」

「な…に?」

「嘘…え?」

チュルパンとはアルの祖父である、ここで聞くような名前ではないはず。

「チュルパン殿を…何故?」

チュルパン=スザーラ、かつてローレア王国、国王ラプキンス16世の親衛隊、十二臣将、序列4位を務めた実力者。

そのチュルパンを狙う理由が分からない。

「ほう、その口ぶり、知人か?まぁ安心せい、リンナ程度では手も足も出ないであろう」

「では…何故?」

「後々、脅威になるやも知れん存在だからな」

「脅威…」

「安心せいと言った筈だ、一人一人ではあの御仁はどうにも出来はせん」

『後々』、『一人一人では』、と言う事は、いつかは手を組みチュルパンを殺害するつもりであるとの宣言でもある。

「貴方達は何をするつもりなの?何がしたいの?」

リイアの質問にラウラは答えない。

「後は好きにせい」

話は終わったとばかりに、再びラウラが歩き出した時、地が揺れ湖の水が溢れ出る。

突き上げるような地震せいで、ラウラの足を止める事は叶わなかった。


「お嬢!」

「え?」

「ヘカトンケイルが!」

湖から巨人が立ち上がる。

滝のように、その身体を水が流れ落ちる。

見上げる巨体は5mはありそうだった。

水が辺りに広がり、土の臭いは消えたが、より足元はぬかるんだ。

ヘカトンケイルの巨体は、全身を鎖で巻かれていた。

その鎖が淡く光り弾け飛んだ。

『ぐぉおお!!!』

拘束を放たれたヘカトンケイルは、その姿を本来のものに変化させる。

「うわぁ…」

「きもっ!」

何と腕は100本にも増え、頭は50に分裂した。

『ぐああ!』

こちらを敵と判断したらしく、ゆっくりと向かってくる。

「お嬢!離れて下さい」

「どうすんのよ…こんなの」

「一先ず、斬ってみます!」

ジルは地面を砕く力で加速する、フルプレートメイルを装備しているとは思えない動きをする。

「そい!」

ヘカトンケイルはジルの速度に反応出来ない。

『がぁあ!!』

超大の剣を二閃、ヘカトンケイルの腕が二本落ちる。

「ちぃ!」

気にした様子もなく、ジルへと飛び掛かる。

それを難なく躱すジル。

「固有スキル∶栄光」

リイアが手を合わせて目を閉じ、スキルを発動する。

ジルの身体が光りに包まれ、戦闘力が増大する。

「有難う御座います!」

力漲るジルは、再びヘカトンケイルへ向かう。

「そい!!」

三閃。

ヘカトンケイルの腕が三本落ちる。

『がぁあ!!』

痛みを感じないのか、構わず前進して来る。

「きりがないぞ!」

ヘカトンケイルは無数の腕で、近場の石を拾い、一気に投げてきた。

それはまるでマシンガン。

「くそ!」

大剣を盾にして堪えるジル、命中率は高くなものの、当たれば確実にダメージを負う。

「お嬢!下がって!」

返事はないが、振り返る余裕はない、信じて前を向くジル。

「固有スキル∶奔流!」

自身のHP二分の一を消費、ステータス二倍、60秒。

クールタイム180秒。

一か八かだが、このままではジリ貧だ。

命を掛けるにはここしか無いと、更に踏み込むジル。

「はぁ!!!」

二つのバフで、既にジルの動きに、ヘカトンケイルはついてこられない。

「そい!!」

瞬時に十閃。

ヘカトンケイルの腕が二十落ちる。

一本落ちるごとに地面が揺れる程の重さ。

再びヘカトンケイルは石を拾いにかかる。

「この!」

ジルは大剣を地面に刺し、両掌を前に突き出す。

「エッジブロウ!」

掌から放たれた鋭い風は、石を拾おうとする指を次々と切り取る。

「エッジブロウ!エッジブロウ!」

やはり痛みを感じていないらしく、動かが止まる事はない。

拾い終えた50の腕が、一斉に投石する。

「うおぉ!」

大剣を盾に、弾丸が過ぎ去るのを待つ。

かする石が少なからず、ジルの身体に傷をつける。

「この…!」

前に出ようとしたジルが、違和感に気付く。

「お嬢の…バフが消えてる…?」

消える条件として、時間経過、術者が自ら解く、若しくは術者が倒される。

そんなに時間が経過したか?このバフを解く意味はあるか?ジルの頭が一瞬停滞した。

その隙をヘカトンケイルは見逃してくれなかった。

『がぁああ!!』

一本の腕がジルに届き、掴み取られる。

「うぁあ!」

万力の圧力に骨が軋む。

無情にもその時、固有スキルの効果時間が終わりを迎えた。

ジルは元のステータスに戻った事で、身体の締め付けが加速する。

複数の腕の一本で、ジルの頭を掴むヘカトンケイル。

「うっ…ぐぅ!!」

ダメだこのままでは、やられる、ねじ切られる。

しかし、既に頭は正常に働かない。

「ごめんジル、待たせたわね!」

最悪の状況を想像して、二度と聞けないと思った声が、聞きたかった声がジルに届く。

最早、彼女さえ生き残ればそれでいいと思った。

自身の命は二の次だ。

「お…嬢…にげ…」


しかし、当の本人は一つも諦めていなかった。

「お願い、サラマンダー」

「さら…まんだ?」

その言葉の意味を、今のジルには理解出来なかった。

火の息(ファイアブレス)

サラマンダーを解放し回復させる為に、リイアは一度ジルのバフを解除したのだ。

回復したサラマンダーは、怒りに自身の炎を増大させ、その口腔から炎を吐く。

決して大きくはない火のトカゲから、炎が噴き出る。

ジルにも熱風が届き、髪が焦げる嫌な臭いがした。

すると火に焼かれ、握力を失った腕からジルが解放される。

地面に落とされ、転がりながらその場を離れる。

しかし、ヘカトンケイルは尚も執拗にジルを追いかける。

火柱(フレイムピロー)

サラマンダーのスキルで、ジルとヘカトンケイルの間に、轟々と燃える炎の柱がそびえ立つ。

怯んだヘカトンケイルは、後ろに数歩離れた。

周りに誰も居ない、絶好の位置に、サラマンダーは嗤うよに咆哮した。

地獄の炎(ヘルファイア)

超光熱の炎が、ヘカトンケイルを飲み込む。

世界は火の赤ではなく、眩い白に塗りつぶされる。

瞼と腕で、その光を遮り過ぎ去るのを待つ。

時間にして数秒、耳鳴りが酷い。

目を開けた時には、ヘカトンケイルは真っ白な灰になっていた。


「ありがとう、サラマンダー」

リイアは膝に手をつき、正面から火のトカゲを見つめ、その力に素直に感謝する。

『こちらこそ、力を使い切って疲れちゃったよ、暫く厄介になるよ』

喋れるんだ。

「へ?」

そう言うとサラマンダーは、赤い球となり、リイアの胸へと吸収されていった。

「え?うそ?これ…大丈夫かな?」

自身の身体を、上から見て慌てるリイアだが、鎧が倒れる大きな音に一先ず意識を戻される。

「あ、ジル!」


幸い、サラマンダーのおかげで、被害は最小限に留められた。

しかし、無傷ということはなく、傭兵団ウロと共に、一度町へと戻る決断を強いられた。

「まぁ、アルがいれば大丈夫よね」

砂漠組の心配は必要なしとの判断。

「そうですね、出来ればコチラの方を譲りたかったくらいですよ」

治療を終えたジルは、ゆっくり立ち上がり腰を伸ばす。

「全くね…」


とは言え、湖の異変は解決されたと見ていいだろう。

ヘカトンケイルを圧倒出来るサラマンダーの目付け役とした、その理由、ラウラの真意は分からない。

サラマンダーは何故どう言う理由で、ラウラに逆らったのか。

謎の女ラウラと、その従者らしき男の正体など、面倒事は増えたが、今はそれを考える余裕はない。

「アル達と合流してからゆっくりと考えましょう」

「えぇ、出来れば少し休ませて貰いたいですかね」

強大な敵を倒し、更に強大な敵を逃がした事は、この先、厄介な事になるであろう事も分かってはいるが、今はその時ではないと、自身に言い聞かせる二人だった。

リイア=レイ=ラプキンス


15歳、ヒト、女

金髪、青眼

一人称∶私

性格∶優しい、頑な、人の話を聞かない、直ぐに疑問を解消したい


ジョブ∶アテナ(3次)

タイプ∶術・技

ステータス∶LV∶36

      HP∶1210

      MP∶930

固有スキル∶栄光

パッシブスキル∶反射

アクティブスキル∶魅了

武具∶王家の細剣、聖塔教会のローブ

アイテム∶スフィア(赤)

     願いの目隠し

     光のペンダント

称号∶挑む者、気高き魂、聖職者、導かれし者

目的∶王になる

目標∶①味方を増やす

   ②自身が強くなる

   ③魔法を手に入れる


※危うい正義感をもつ、悪に転ぶ可能性も無くはない


特徴∶子供、細身、長髪、天然

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