新しい場所へ
テズヴァイス公国、最南端の町、副都レイライン。
その東端の岬から、海を眺める人影がある。
「見たことのない船だな」
目を細める黒い人。
青く輝く船は、海面を滑るように進んでいた。
一人呟く影は口を歪める。
「まぁ、面白くはなりそうだな」
人影は溶けるように、瞬時に姿を消した。
「そこの船!止まれぇ!!」
沿岸警備隊に見付かってしまった、アル一行の船はミスリル製なので、美しく輝く青、燦然と悪目立ちする。
「何の理由ですか?」
拡声器で会話する沿岸警備隊とジル。
「ローレア船籍が、申請もなく勝手に入国出来る訳がないだろう!」
「あ…」
完全に失念していた、元の船に付いていたローレア王国のエンブレムを、この船に付けてしまっていた。
出来上がった船に、テンション爆上げでついやらかした事をすっかり忘れていた。
心中で、自身の迂闊さに舌打ちをするジル。
「どうする?」
「止まらんと撃つぞ!」
どうやら脅しではないらしい、数名が銃をこちらへ向けて構えている。
色々考えてる間に、いつの間にか船首に誰かが立っている事に気付くジル。
逆光で直ぐには誰だか確認出来ない。
「あっ…」
シルエットが浮かび上がり、船首の人物を認識する。
「ラインハルトさん!危ないです!下がって!」
しかし、ラインハルトはジルの言うことを聞かず、懐から何かを取り出した。
「これ、見えるか?」
バッヂのような物を、沿岸警備隊に見せるラインハルト。
「…それは」
望遠鏡で確認する沿岸警備。
「C級冒険者、及びC級傭兵のラインハルト=デルグラートだ、入港の許可を貰いたい!」
「は?」
「え?」
「ん?」
「「「ええええええ!!?」」」
「おい…デルグラートって…」
沿岸警備隊員たちが顔を見合わせる。
「まさか、ギルド長の一族か?」
「ちっ!」
ラインハルトは人知れず舌打ちした。




