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アルブス  作者: シバザキアツシ
旅立ち

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13/21

火の塔

ジル、ヤーツ組。

「さすがは【火の塔】、既に暑い」

中に入った途端、肺を焼くような暑さが二人を襲う。

「早目に済ませないと、体力が持ちませんね」

「えぇ、手早く済ませましょう」

方針が決まれば二人の行動は早い。

伊達に、共にリイアの従者を数年している訳では無い。

二人の呼吸は完全に一致している、迷いなく進む。


一階、かなり広い円形のフロア、上に行くにつれて、徐々に狭くなる構造らしい。

【ワーウルフ】、人狼がこのフロアに指定された魔獣のようだ。

チュルパンの話では、各フロアには一種類の魔獣が設定されているとの事だった。

「ふむ、すばしっこいのが、1・2・3…10体ですね」

数を数えるジルを、遠目から観察しているワーウルフ、どうやら慎重派らしい。

「すばしっこいのが相手では、その大剣では持て余すだろう?」

話しをしている間に、ワーウルフに囲まれる。

「まぁ、やりようですけどね」

ヤーツの問いに、ジルは後半声が小さくなるのが自分でも分かった。

確かに大剣では分が悪い、限定された空間では、味方ごと叩き斬りかねない。

「このフロアは私が担当しよう」

そう言うとヤーツは、ミスリルの刃の剣を音も無く抜いた。

その動作を見るだけで、熟練者であると分かる。

「恐れ入ります、噛まれると貴方も狼人になるのでお気を付けて」

ジルは一度抜きかけた大剣を鞘に戻した、前衛に居なくとも出来ることはある。

「承知!」

狼型の魔獣は群れで行動する。

それが仇となり、ヤーツに一閃された。

「以外とすばしっこくは無かったな」

取り零しもなく、一撃で済んだ。

「そのようで」


二階。

【ミノタウロス】。

先程のワーウルフが人狼なら、このミノタウロスは人牛と言ったところか。

但し、大きさが圧倒的に違う、二足歩行の牛は迫力満点だ。

「数は三体」

「では、このフロアは私が…と言いたいところではありますが…」

身長は3mは軽くある、体重も恐ろしく重そうだ。

牛頭が鼻から蒸気を上げながら、こちらを睨んでいる。

「分かっている、左の一体は私が担当しよう」

ヤーツは自分の役目が分かっている。

如何に相手の動きが鈍かろうが、三対一はさすがに荷が重い。

「助かります」

「お互い様だな」

背中合わせの二人は、標的に向かい走り出した。

「しっ!」

ヤーツの一閃がミノタウロスの膝を薄く斬る。

『ぶも!』

痛みに怒るミノタウロスは、前足を振り下ろす。

躱すヤーツは、身体を回転させながら、ミノタウロスの後ろへ回り込む。

標的を失った前足は、轟音と共に地に薄いクレーターを作る。

「しっ!しっ!」

二閃、先ずは膝裏を切り裂き、返す刃で足首の腱を切り裂く。

『んもぁ!!』

支えを失ったミノタウロスは、前のめりに倒れ、その後頭部に剣を突き立て、戦闘は終了する。

まさに流麗。


一方ジルは、二頭同時に相手をする。

「それ!」

超巨大クレイモアを軽々振り回すジル。

横一閃で二頭のミノタウロスの腹を斬る。

『『んぼ!!』』

鈍器に殴られたが如く、前のめりになるミノタウロスの首筋に、剣閃が迫る。

断末魔を上げることなく、首が落ちる。

三頭の討伐が完了した。

「魔獣が強くなくとも、この暑さでは体力が…」

「もう少し無駄な動きをなくしたほうが良いですね…」

二人は汗を拭いながら、先へと歩を進めた。


三階。

【ファイアスケルトン】。

「スケルトンって、弱点火属性ではなかったですか?」

「その通りだ、間違ってはいない」

「ですが、あれは燃えてますね…」

「…魔獣の存在をアレコレ考えてもしかたない、とっとと倒して先へ進むぞ」

「了解です」

力のジル、速さのヤーツ。

二人の連携に穴はない。

余力を残して殲滅する事が出来た。


四階。

【ガルーダ】。

大型の鳥の魔獣、これまた火属性である。

「こういう塔は、魔獣は階を跨げないんだったな?」

「そういう事になってますね」

「では、無駄に面倒なので、走り抜けようましょうか」

「そうですね、時間が掛かってはこの先辛そうてすからね」

二人の意見は一致した。

しかし、回り込まれた。

「………」

「面倒な…」

一度羽ばたかれるだけで熱い熱い、ロウリュ全開の様相だ。

「くぅ!きっつ!」

汗が噴き出る、このままでも充分辛い。

同じタイミングで剣を抜く二人、さっさと終わらせたくてしょうがない。

「先ず、落とします!」

飛ばれていては刃は届かない。

「承知!」

ガルーダがこちらへ向かって飛び出した瞬間。

光撃(ライトショット)!」

ジルの掌から、光の球体が飛び出し、ガルーダの出鼻をくじく。

『クアアァ!』

避けようとしたガルーダだが、右の翼の根元に光撃を食らい、バランスを崩し地面へと落ちた。

落ちた衝撃から発生する熱波も半端ない。

「くう!」

熱波を堪えて、ヤーツがガルーダへ迫る。

「しっ!」

ミスリルソードを流れるように振り下ろす。

ガルーダは避ける余裕もなく、更に右の翼へダメージを負う。

『グガァアア!!』

怒りに咆哮するガルーダだが、最早手遅れ。

「スキル∶本能!」

ジルが自身へ、五感強化のバフを掛ける。

身体から蒸気が昇る。

「それ!」

単なる袈裟斬りが、致命傷となり得るジルの筋力。

風切音と共にガルーダの頭を切り裂く。

『グラァアアァ!!!』

断末魔と思われる咆哮に、更に一撃加えようと前進するジル。

「ダメだ!ジル!下がれ!!」

「え?」

アドレナリンに支配されたジルは、ガルーダの最後の足掻きを見逃していた。

「しまっ…」

ガルーダは嘴を大きく開け、豪火を放つ。

「!!」

ジルは避ける余裕はない。

「一つ貸しだぞ」

そう言うとヤーツは眼鏡を上げ、スキルを発動させた。

「固有スキル∶守護!」

(対象の防御力3倍、60秒)クールタイム180秒。

ジルの身体が緑光で包まれると、豪火が直撃したにもかかわらず、致命傷を与えられなかった。

信じられない光景に、ガルーダは目を見開く。

「助かりました」

「早く決めろ」

「はい!」

上段から振り下ろしたジルの超大剣が、ガルーダの頭を砕いた。

「はぁはぁ…」

ジルは膝に手を当て、頭を下げて肩で息をする。

「全く…」

ヤーツも少し息が早くなっていた。

無言で二人は階段を踏んだ。


五階、汗と共に体力が削られ続ける。

【ヒドラ】。

三ツ首の竜、これまた火の耐性がある魔獣だ。

「さすがは【イフリート】の居城と言った所か」

「これは避けては通れないですね」

「ここに来て竜とはね…」

高い気温で汗が流れ続けている、徐々に体力が厳しくなってきていた。

「出し惜しみしてる場合ではなさそうだな」

「一気に片づけましょう」

二人は左右に分かれ一気に加速した。

「固有スキル∶奔流!」

(HP二分の一消費、ステータス2倍、60秒)クールタイム180秒。

疾走しながら、ヒドラの首の一つを難なく断ち切るジル。

「それ!」

次いで二本目、後は最後の一本。

『ぐあぁあ!』

ヒドラは咆哮すると、斬られた二つの首が再生しだす。

「それで自分が焦るとでも?」

ヒドラを正面から見上げて、ジルは笑う。

「ワタシも構って欲しいところだな!」

死角からヤーツが降ってきて、ヒドラの三本の首の付け根を、ミスリルソードで突き刺した。

寸分違わず急所を貫いた。

一度咆哮し、振動と共に巨体を沈ませるヒドラ。

「中々良い連携でしたね、ふう」

「後一つだな」


最上階。

イフリート。

「アルのお爺さまに聞いた話では、この階は 武具無効フロアでしたね」

身体の至る所に傷が付いていたが、幸いなことに深い傷はなかった。

階段を登り切った途端に、身体が軽くなる。

あまりの重量の変わりように、ジルはたたらを踏む。

「おっとと」


「えっ?」

互いの姿を確認すると合点がいった。

「武具無効って、武器も防具も消えるんですね…」

「これ、下に戻ったら復活しますかね?」

「試す暇は無さそうだな」

ヤーツは顎をしゃくり、その先を見るようにジルに促す。

ジルがそちらを向くと、正面に空間の揺らぎが生じていた。

「全く、暑くて仕方ないな」

汗を拭いながら、吐き捨てるヤーツ。


炎の精霊、イフリートが地面から湧いて現れた。

「来るぞ!」

『火砲』

予備動作なし。

イフリートの指先から火の玉が打ち出される。

高速の火弾を躱す二人。

「あつ!」

「ギリギリで躱す癖が付いてしまって…」

騎士の癖というか、本能というか。

髪の焦げる嫌な匂いが鼻をつく。

イフリートがその場でくるくると回り出す。

「なんだ?」

『炎舞』

イフリートの身体の至る所から、火の玉が次々と打ち出される。

「躱し切れない!」

「ジル!ワタシの側へ!」

言われるがまま、直ぐにヤーツの隣に並ぶジル。

「ヤーツ殿?」

「小結界」

ヤーツが両腕を突き出すと、半球状のドームに包まれる二人。

「結界術が使えたのですか?」

「すっかり忘れていて、かなり錆びついてはいるが、なんとかこの攻撃は防げそうだな」

ひとつ息を吐くヤーツ。

「助かりました」

イフリートが回転を止めた。

「ワタシが隙を作ります、貴方がとどめを刺して下さい」

「了解…自分は何をすれば?」

「胸の真ん中にあるコアを破壊して下さい」

「そのコアを手に入れに来たのでは?」

「問題ない、炎の核はイフリートを倒した時のドロップだ、そのコアは関係ない」

「分かりました」

「いくぞ!」

ジルが「はい」と答えると同時に、ヤーツがスキルを放つ。

「結界砲!」

二人を守っていた半球のドームが、砲弾の如く飛び出しイフリートを直撃する。

思わぬ攻撃をされ後ろへよろけるイフリート。

弾丸の如く飛び出すジル。

迷いなくイフリートの胸、炎の中に腕を突っ込むジル。

「ぐぁ!あった、掴んだ!」

腕を焼かれるが躊躇はない。

「握り潰せぇ!」

「固有スキル∶奔流!」

HP二分の一消費、ステータス二倍、クールタイム180秒。

ギリギリのHPを更に削る荒技。

「うおおおぉお!!!」

『ぐぉおおぉ!!』

ガラスのグラスが割れるような音が響き、イフリートが停止する。

イフリートはただの火となり、瞬時に消えた。

消えた地面には、赤い珠が転がったていた。

「これが…炎の核」

黒く焦げた右腕を左手で抱えながら、そのコアに近付く。

「はぁ、やったぁ…」

「良くやった、今、治療をしてやろう」

教会騎士も回復スキルがある。

「助かります」

「ふん、お互い様だな」

治療が終わると、二人は大の字に転がった。

「はぁ、疲れましたね」

「全くだ…」


「あれぇ?倒しちゃったん?愚者の記録(アレフレコード)とちゃうやん」

場にそぐわない、可愛らしい声がした。

「っ!誰だ!」

想像してない登場人物に、二人は慌てて跳ね起きた。

「まあまあ、そない怖い顔で睨まんといてや」

黒いローブを纏った、小柄な少女だった。

「もう一度聞く、何者だ?何処から来た?」

低い声でヤーツが詰問する、ジルは戦闘態勢をとる。

「今日はなぁ、そう言うつもりじゃないんよ」

「次はないぞ、何者だ!」

頑ななヤーツに嘆息する少女。

「はぁ、しゃぁないなぁ、よう聞いとき、うちは【黒い7(アビスナイトメア)】のリンナと言うんよ」

半端な、地方の訛りが混ざったような、気持ち悪い話し方。

赤髪をツインテールにした、黒のローブを纏った少女はそう名乗った。

【火の塔】

全六階の塔。


【ワーウルフ】

狼人の魔獣。

すばしっこい。


【ミノタウロス】

牛人の巨人の魔獣。

食用ている地域もあるそうだ。


【ファイアスケルトン】

火の骨の魔獣、弱点は水。

脆い。


【ガルーダ】

巨鳥の魔獣。

限定された空間でなければ、更なる苦戦を強いられただろう。


【ヒドラ】

三ツ首の竜の魔獣。

通常は、五人以上のパーティを組んで挑む強敵。


【イフリート】

火の精霊の魔獣。

弱点は水だが、半端なものだと辿り着く前に蒸発してしまう。


【黒い7(アビスナイトメア)】

謎に包まれた組織。

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