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アルブス  作者: シバザキアツシ
旅立ち

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10/21

リイア

リイアは昔の事を夢で見た。

「無意味な事はやめなさい」

誰かの冷たい言葉が、少女の胸に突き刺さった。


当時の私には友がいない、仲間がいない、家族であっても敵であった。

「ふん、勝手に何処へでも行くがいい、俺様には関係ない、お前に何が出来る?」

長女は長い銀髪を無造作に流し、マロ眉の下にある大きな瞳で、リイアを睨む。


「お前が王になることなど有り得ないのだから、オレぃに迷惑を掛けなければ好きにすれば良い」

鋭い眼光の、漆黒のフルプレート姿の長男は、興味なさげに鼻を鳴らす。


「ボクは味方だよ、可愛いだけのリイアでいてね」

おかっぱ頭の、無邪気な次女のトアだけは、リイアに優しかった。


この兄妹達を王にしてはならない。


数週間前、現国王が病に倒れ、【次期国王争い】が起こる。

しかし、ほぼ長男のカラム=レイ=ラプキンスで決まりであろうとの空気が、国中に流れていた。


ローレア王国、王都キンガス、大王道脇、町医者の地下室。

ここで密会が行われている。

「それでも…兄様が王になってしまうと…」

「まぁ、早晩戦争になるだろうな」

末っ子の王女、リイア=レイ=ラプキンスと、情報屋の男が、壁の厚い湿っぽい、薄暗い室内で話しをしていた。

「それは…避けられませんか?」

「無理だな、あの武闘派の【バトルジャンキー】は、戦えれば何でも構わないと言いそうだ」

「そうすると、この国は?」

「滅びるだろうな、【フルグア機国】とローレア王国の小競り合いに、適当な理由を付けて戦争に持ち込む気まんまんだな」


今現在、ローレア王国とフルグア機国は、ある海上事故の責任を押し付け合っている。

両国の主張は完全に正反対で、緊張は高まっている。


「フルグア機国には勝てませんか?」

「フルグア機国だけになら勝てるだろうよ、けどな」

話を一度切る男は、声を押さえて喋る。

「小競り合いの場所が悪い、ローレア王国のレンクとフルグア機国のウルツークの調度真ん中の海域だ」

「はい、そのようですね」

「その場所だと、フルグア機国と友好国の【シモン共和国】が、必ず参戦してくる」

「それでは…」

息を呑むリイア。

「勝てねぇな」

男はハッキリとそう言い切った。


「シモン共和国は小国だが、【武器兵器開発】の最先端技術を有する【八咫烏】がある」

2対1では絶対に勝てないらしい。

「では何故兄様は?」


「国が滅びようが関係ないんだよ、ただ喧嘩がしてぇだけだからな」

「では、姉様達なら」

希望を込めて問う少女、しかしリイアの欲しい言葉は得られない。

「あの二人でもローレア王国は終わる」

「つまり?」

「あんたが王にならない限り、この国に未来はない」

それは、限りなく薄い可能性だった。

「そんな…」

「とは言え、まだ国民はその事に気付いてない」

国民が気付く前に、実績を引っ提げ、兄達と争う力を手に入れなければならない。

「私は…私には何が出来ると?」

「ついて来な、【預言者】に会わせてやる、それ以上は何もしてやれねぇ」

ぶっきらぼうに言う男は、勝手に歩き出した。

薄い小部屋のドアは酷く軋んでいた。

「ありがとうございます」

急いで男の後を追う少女の瞳に、小さな希望の火が灯った。


男の後を追いながら、リイアは今一度、兄妹の事を考える。


長男、カラム=レイ=ラプキンス。

武闘派、私的に兵団も持っている。

戦争に向けて力を蓄えているとの噂もある。


長女、シイム=レイ=ラプキンス。

自身の事を俺様と呼び、何よりも金が好き、条件によっては簡単に国すら売る。


次女、トア=レイ=ラプキンス。

自身の事をボクと呼ぶ、政治や王族に無関心。

何事もどうでも良く、国すら放置、放棄するだろう。


やはり、この三人が王になれば国が終わる。



よって、国を存続させる為には、リイアの即位は絶対であった。

しかし、【継承権】は一番下、このままでは確実にカラムが次期国王となってしまう。

そうなれば、この国は血で溺れることになる。

それだけは容認出来ない。

王に足る実績が必要だった。


母の事もあるのか、リイアは全ての人が平穏に暮らせる国が良いと、青臭い事を考えている。

勿論、そんな夢物語が叶わないことも知っている。

でも、だからこそ、目指す意味があるのではないかとも思う。

ならば、王になるしかない。

それが、限りなく細い綱渡りであっても、渡りきらなければならない。



地下道を進む二人。

狭いが明るい部屋に、小柄な女性が座っていた。

艶のある黒髪のショートヘアを、右側で分けてあり、柔らかい表情の女性であった。

身体はローブで隠されており、体型は確認出来ない。

預言者ゴディア=センズは、自身の目の前にあるクリスタルを眺めながら、たんたんと語りだした。


それを口元をきつく結び聞くリイア。

そして。

「え?」

彼女の言ったことを理解出来ず、思わず聞き直してしまった。

「力を集めれば…王に近付く…」

「力?」

「世界に散らばる7つの力を集めよ…」

「7つ?」

「武力、智力、護力、破力、速力、捻力、魔力」

「…ぁ」

リイアは喉を鳴らす、王に押し上げる為の7つの力に。

「この力が合わされば、必ず道は開かれる」

ゴディアの額から、大粒の汗が流れ落ちる。

「何処に行けば?」

「姫さん、ここまでにしちゃくれねぇか?」

男は預言者を支える。

「…はい」

預言者は、荒く息を吐き続けている。

まるで長距離を全力で走ったみたいに、それ程、視るという事は身を削る事らしい。

「…ごめんなさい、私、自分の事ばかりで」

「自分の事…だけ…では、ないでしょうに…はぁはぁ」

そう言う預言者は、柔らかく微笑んだ。

「準備をして…出立する時に…また来なさい、その時…一つ目の…行き先を…教えて上げるから」


冒頭の兄妹の言葉を受けた後、リイアは旅の準備をしていた。

「姫、その結び方では直ぐに解けてしまいますよ」

荷を馬に括り付けていた時、声を掛けられた。

「ヤーツ…?」

「こうやるんですよ」

器用に結び直し、馬に固定する事に成功するヤーツ。

「これは一人では行かせられませんね」 

「何よ…止めるの?」

「いえ、とんでもない、ですが」

「が?」

「いえ、だからこそ、ワタシが居ないといけません、姫についていきます」

「え?」

「ワタシは元より姫の従者です」

真っ直ぐなヤーツの目を見返すリイア。

「はぁ、分かったわ、お願いね、ヤーツ」

「御意に」

「男女二人旅だからって、変な事考えないでよね」

「ワタシは教会騎士ですよ!そんな事しません!!」

「冗談よ」

眼鏡を上げ、「全く」と呟き、気持ちを落ち着かせるヤーツ。

「最初の目的地は何処ですか?」

「先ずは預言者に会いに行きます」

「御意、姫は馬に乗って下さい」

二人の長い長い旅が始まった。

【次期国王争い】

現国王が病に倒れ、意識が戻らない為、候補者とその周りが慌ただしくなってきている。


【バトルジャンキー】

戦う事に喜びを感じ、その後相手をいたぶる事に喜びを感じるようになる異常者の事を言う。


【フルグア機国】

元はクキュイアド自由国だったものが、第三崩壊後、フルグア機国になり、トップをジョー=フルグアに任せる事になった。

機械の開発に重点を置いているが、皮肉な事にその機械開発の重鎮、マキナ特区のシン=マルクナスは、国が変わると共に、テズヴァイス公国で貴族となり、実質公国の頂点として君臨している。


【シモン共和国】

第三崩壊後、列島レヴィドアの南西に新たに島が隆起し、そこに国を構える事になった。

八咫烏の頭のシモンオルテガを、国のトップに置く。

国の立ち上げにあたり、各方面からの抗議の声は上がったが、フルグア機国が盾となり、第二崩壊、第三崩壊と数々の功績を上げた八咫烏は、世界に欠かせないと説かれては、反対意見も徐々に沈静化し、国として認められた。

シモン共和国とフルグア機国は友好関係にある。


【武器兵器開発】

魔法や呪文が失われた事により、物理的な攻撃力が必要とされた。

その為、各国共にその開発に躍起になっている。


【八咫烏】

開発集団であり、鉄砲傭兵集団である。


【預言者】

あらゆる人の未来を視る事が出来る。

但し、事細かに詳しく伝える事は出来ない。

その規約を破った場合、使用者に甚大なペナルティが与えられる。


【継承権】

一位、カラム=レイ=ラプキンス。

二位、シイム=レイ=ラプキンス。

三位、トア=レイ=ラプキンス。

四位、リイア=レイ=ラプキンス。

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