第七話 決着
森の中で魔族たちの襲撃を受け、逃げようと走るセイエン一行の前に立ちはだかった魔族スレイヴァ。そんな中でカイリはスレイヴァとの一対一に挑む。この一騎討ち、どちらが制するのか──
こいつら、やっぱり厄介だ……!暴獣で力が普通の個体の比にならないほど強くなってる。
「いくぞ」
しかし獣を見るカイリの目は揺らがない。直後1体に斬りかかるも躱わされ、逆にカウンターを受けてしまう。
「ぐっ……」
腹を爪で斬られた!深傷でもないが浅くもない。そんなものもろともせず、カイリの剣が翻り肉を裂いた。しかし──
ジジジッッ……
その傷は瞬く間に再生していく。
「その程度の浅い傷なら魔族はすぐに自己修復できる」
そういったスレイヴァの顔にはうずら笑みが貼りついている。魔族は自己修復の力を元々もっているのか?魔獣にはそんな能力はない。ということはおそらくビーストの力は、単に魔獣を強くするというものではなく魔族の力を分け与えるというもの。それはカイリも多分気づいてる。自己修復不能の深傷をあたえるか、一撃で葬るかしかないのか。
ギンッッ!
爪と剣、互いの武器を交える音が何度も響き渡る。ただ、傷を負っているのはカイリの方だ。1体を相手取れば、背後からもう1体が攻撃してくる。カイリの体さばきで深傷にはなってないけど明らかに時間の問題だ……。その時、カイリの天力がさらに大きくなった。
「オオオーッッッ!!」
咆哮とともに先程の何倍もはやくその剣は獣を斬り裂き、両断した。まだカイリには余力があるのか……!だがその身体はボロボロで、生命の危険が迫っているのは明白だった。
「ほう?面白い。そいつらを倒したのだ、他のやつはお前の相手にはなるまい。いいだろう、俺が直々に相手をしてやる」
魔獣の群れを掻き分け、スレイヴァが前に躍り出た。
「暴魔人!」
ビーストの能力を自分に使ったのか……?さっきよりも身体、天力が大きくなった。
「まずはカイリ、お前から八つ裂きにしてやる」
飛びかかってきたスレイヴァの鋭利な爪を剣で受け止めた。しかし、完全には止められず斬り裂かれてしまった。
「くっ……」この不利な状況に顔をしかめる。
カイリは一旦距離をとって、体勢を立て直した。
(ハァハァ……。ダメだ真正面からではとてもじゃないが剣は通らない。どうする、セイエンの焼却で隙をつくってそこを討つか?いや──)
「俺はこんなところで死ねない。大事な人との約束があるんだ……!お前を倒して、俺は王都へ行く!」
真正面からスレイヴァに斬りかかり、そのまま打ち合いに傾れ込んだ。どちらも押し合ってるけどこれは、互角だ……!
ザンッッ!
セイエンの考えとは裏腹に、その爪は無慈悲にもカイリを深く斬り裂いた。
「さらばだ脆弱な人間よ!」
スレイヴァが後ろへ倒れこむカイリへ爪を振り下ろした。
「カイリーっ!!」
エリスの叫び声に呼応するように、カイリはその一撃を剣で受け止めた。
「なんだと!?」
瀕死のその男にとどめを刺すはずの爪がギリギリと音を立てて止まっている。
「オオォォォッッッ!!」
カイリのボルテージが上がり、天力の出力が最大に達した。
地が揺れるような咆哮とともにカイリの剣がスレイヴァの肩まで爪を退けた。
「馬鹿な!死にかけで何故こんな力が……!」
今まで余裕だったやつの顔にはじめて汗がみえた。抑えていたその剣にさらに力がこもる。
「くっ……!抑えきれん──」
「砕光刃!」
カイリの刃が爪もろともスレイヴァを深く袈裟に斬った。
(馬鹿……な……)
スレイヴァは力もなく地面に倒れ、消滅し始めた。
「カイリ!」
ふたりは前に倒れ込んだカイリに駆け寄った。カイリはひとりで魔族に勝ったんだ。
「勝っ……たぞ、セイエン……!」
息も絶え絶えにエリスの治療を受けるカイリの顔はどこか前とは違って見えた。カイリはこの戦いで強くなった、そう実感させるものがあった。
スレイヴァが完全に消滅したことで周りにいた魔獣たちも逃げていった。けど残りの魔族の姿がみえない。一体どこに……。
「随分と嬉しそうだな人間たちよ」
なっ──
ドゴォォォン!
くっ……、吹き飛ばされたのか……?気がついたら僕の隣に……。まさか、こいつがスレイヴァの言っていた……
「やはり脅威の存在となる者たちだ。スレイヴァまでも倒すとは」
トレスか……!カイリ、エリスは今動けない。僕がやらなきゃ!
「気をつけて!さっきの人よりも強いよ!」
嫌でもわかるよ。こいつ……、スレイヴァよりも圧倒的に強い……!セイエンは立ち上がってすぐに剣を構えた。
「スレイヴァをやったのはあの男か?相当腕が立つようだな。私が来ることに備えて貴様は戦わなかったか」
全部読まれてる……。カイリがひとりで戦ったのはこの瞬間のため。生命を賭けてでも僕がこいつを倒す……!




