ユリウスの秘密
「あ、持って来てしまったわ 」
自分の荷物の中にユリウスのお香が混じって入っていたものをみつけた
自室に戻ってきたセシルは毎晩 時折うなされているユリウスの為に香を焚いていた
甘い木の香りのするお香
実はユリウスが使用していたものらしくサマンサからきいてゴールドウィン伯爵領にいるときもずっと使っていたものだ
「今晩ゆっくり眠られなかったら大変だわ 」
セシルは慌ててユリウスの部屋に向かい部屋をノックした
「シャロン様 ユリウス様失礼します 」
そういって部屋の扉を開けると
部屋の中からうなり声が聞こえた
「ユリウス大丈夫だ 私がついてる
ゆっくり呼吸をして 」
ユリウスがじたばたとベッドの上でもがき苦しんでいるのをシャロンが抑えつけながらユリウスに一生懸命に話しかけていた
「シャロン!ユリウス様に何かあったんですか 」
「セシル!来るな! 命令だ!
近づくな出ていけ! 」
「そんなわけにはいきません 」
そういってセシルはユリウスに駆け寄った
「セシル!みるな! 」シャロンが叫んだが遅かった
セシルが駆け寄った先に見たのは意識を失いながらも苦しんでいる銀色の狼の獣人の姿をしたユリウスだった
「え・・・・ユリウスさま・・・・? 」
呆然としたセシルをシャロンが泣きながら抱きしめた
「セシル・・・・ユリウスはこの姿を誰にも見られたくなかったんだ・・・
御願いだ・・部屋からでていってくれ」
セシルはシャロンの腕をゆっくりと外し ユリウスの傍に行き彼の手を握りしめた
「ユリウス様 大丈夫ですよ
ゆっくり息をして・・・」
セシルが片方の手をゆっくりとユリウスの背中にまわして
「ユリウス様 今晩ゆっくり休まれて明日はきっとまたおあいできますよね 」
セシルはそう言いながら優しく背中をさすり続けた
先程まで苦しんでいたのがウソのようにゆっくりとユリウスの呼吸が整ってきた
「シャロン様・・・私は今日は何も見なかったことにいたします
いずれユリウス様ご自身のお口からお聞きするまで・・・
このことはシャロン様しか知らないことなのですか? 」
「ああ、そうだ まあ私も随分と前に偶然知った
ユリウスは新月の夜だけに獣人の姿になる
どうして新月の夜だけなのかは私にもユリウス本人もわからない 」
「これ以上はお聞きいたしません
このことがあるから慌てて今日帰ってきたのですね 」
ユリウスの呼吸がようやく落ち着きを取り戻しスースーと寝息が聞こえた
セシルはユリウスの手を放し先程落としたお香を拾ってお香に火をつけた
「シャロン様、もう大丈夫です
やはり今晩も私が傍にいます
もし何かあればすぐにきてくださいますでしょ? 」
「ああ・・・でも私も一緒にいるよ
今日は・・・」
「ありがとうございます
ではお茶でもいれてまいります
誰か呼ぶわけにも行けませんから私用意してまいりますね
その間ユリウス様のことお願いいたします 」
そういってセシルは部屋をいったん出ていった
「ユリウス・・・早くおきなさい
セシルはきっと君が思っている以上に君のことを大切におもっているようだ
セシルがまっているよ・・・早くおきな 」
シャロンがユリウスの顔を見つめながら話しかけていた




