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突然の旅立ち

 翌朝、いつもと同じ時間に同じようにユリウスと朝食をとっていた

 慌てた様子でユリウスの側近であるリックが食堂に入ってきた


「お食事中失礼します」そういってリックがユリウスに耳打ちをした


「ああ、わかった・・・・セシルすまないが急用ができた 

 先に失礼する君はゆっくり食事をするように」

 ユリウスはいつも通り落ち着いた声で席をはずし食堂を後にした


 朝食を終えセシルはトーマスやサマンサと共に冬支度の支度の為に城内を確認しながら

 準備を進めていた


 しばらくするとリックがやってきてセシルはユリウスの執務室へと呼ばれたのである

「実は今からアレキサンドライト帝国に行くことになった」


「今からですか? 」

 他国に行くのに何も準備もなくあまりにも急すぎる知らせにセシルの心がざわめいた

「ああ、少し急だが・・・どうも私が行かなければならないようだ

 王子と使者が謝罪にアレキサンドライト帝国に行ったのだが問題が起きたらしい

 アレキサンドライト帝国が私を使者として指名してきた」


「そうなんですね・・・」


「心配しなくてもこの城の防御は完璧だ 私と共に行くのは数名だしな 」


「そんな数少ない同行者と共にいくなんて・・・心配です」


「一応、私はソードマスターなんだがな 」


「だとしても・・・です」


「ああ、すぐに帰るから大丈夫だ 

 少し王室のごたごたの詫びをしに行くだけだ 」


「わかりました お留守は皆と共にお守りします 」


 それからバタバタと準備をしてユリウスはリックと護衛騎士を3名合計5名で

 アレキサンドライト帝国へと向かうことになった


 セシルは編みあがったばかりのマフラーをユリウスに手渡した


「ユリウス様、アレキサンドライト帝国に到着いたしましたらお邪魔になるかもしれませんが途中まではお寒いかと思いますので・・・」


「ありがとう・・・・」受け取ったマフラーを巻くユリウスの手がとまった


「あの・・・お気に召されませんでしたか? 」


「いや、違うんだ・・私は・・・すごく嬉しいんだが・・その気持ちを表に表すことができなくてな・・・

 今までは他人になんと思われるかなんて考えたことがなくて・・・

 ただ、今はこの気持ちを伝えたいのだが・・・その・・・

 笑ったりすることができなくて・・・すまない 」


「ユリウス様・・・・ 大丈夫です すごく私に伝わっています

 いつも、お顔にでなくてもユリウス様が優しく思ってくださっていることは伝わっていますから安心してください」


「そうか・・・ありがとう 」

 そういって部屋の扉を開け正門へと向かっていく


「ではみんなセシルと共に留守を頼む」

 そういってユリウスは馬に乗り出発した


 ユリウスの背中見送りながらセシルはこれまでに感じたことのないざわめきが大きくなるのを感じた

 なぜかこのままユリウスに会えなくなるのではないだろうかそんな不安がよぎってしまった

 もう一度ユリウスがこちらを振り返ったら自分は駆け寄って彼を引き留めてしまうのではないだろうか

 振りかえってほしい気持ちとそうでない気持ちが交錯していた


 初冬の始まりを告げる冷たい風が吹きセシルの頬をなでた

 その瞬間、ユリウスが馬上からセシルを振り返った

 セシルは何も考えられないままユリウスの元へと駆け寄ってしまった

 ユリウスも馬から降り駆け寄るセシルを抱きしめた


「申し訳ございません、ユリウス様 」


「謝ることはない・・・すぐに帰るからまっててくれ」


 ユリウスはセシルの涙で潤んだ瞳を見つめ微笑みながらそう伝えた


「ユリウス様、微笑んでいらっしゃいますよ・・・

 ここで笑ってくださるなんてずるいです

 待っていますから すぐに帰ってきてくださいね 」


「ああ、約束だ 」

 抱きしめた手を緩めセシルの手を握り彼女の指先を名残惜しそう放しユリウスは馬へと乗り

「では、出発する 」と声をかけアレキサンドライト帝国へと旅立った


 セシルはユリウスの背中が見えなくなるまでその場から離れることができず立ちすくんでいた


「さあ、セシル様 お風邪をめしますよ 中に入りましょう」

 そうサマンサに声を掛けられて初めて我に返った


「そうね、私達は私達でできることをしてユリウス様をお待ちしましょう」

 そう言いながらもセシルの感じた不安はどうしてもぬぐう事が出来なかった











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