とんでもない約束
翌日の事である
ジェイムズ・リクリーン公爵とユリウス様が王宮の廊下ですれ違った時に事件は起こった
「やあ、ザンダー辺境伯 先日娘が、君の婚約者に失礼な事をしたようで申し訳なかった
すぐに、お詫びの品物と手紙を送ったのだが受け取ってもらえなかったようだ」
(こっちが下手にでて詫びてるのにも関わらず送り返しやがってふざけるな)
あのお茶会での一件でお詫びの品物を送り返されたリクリーン公爵は凄く根に持っていたのである
「ああ、あれは詫びの品でしたか
見た事もない従者に詫びられても何の事か分からないので送り返しました」
「うぐっ…… それはすまなかった ではここで私が詫びよう」
「リクリーン公爵 ここですれ違いざまについでのように詫びをいれられても……
貴方はご自分の娘がどんなに大変な失態を犯したのかもう少し理解された方がいい」
「なんだと! 人が下手にでていればいい気になりおって若造が!
では、こうしよう貴様が明日の剣術大会で我が精鋭騎士団にひとりで勝ち抜けば土下座でもなんでもしてやる」
「別にあなたの土下座には興味ないし
そんな気持ちでされても私も婚約者も嬉しくともなんともない
だがご希望とあれば受けてたとう」
「ああ、その代わりに貴様が負ければ謝罪してもらおう」
何に対して謝罪するのだ?とまわりで聞いていた者たちも不思議に思った
しかし、面白い流れになってきたと
この噂は、瞬く間に広がったのである
成り行きとはいえセシルにもらったマントとハンカチが役に立って良かった
とユリウスは思っていた
ユリウスの側近であり右腕でもあり幼なじみのリック・トーマーソンはユリウスの横でその一連の出来事をみていてとんでもない事になってしまった と一人慌てていた
勝っても負けても遺恨が残ってしまうのではないか?
しかも、ユリウスはどうも何とも思っていないようだ
「ユリウス様…… いやユリウス
大丈夫なのか あんな約束をして」
「別に 負けないから大丈夫だ」
「しかし……」
「問題ない…… リクリーン公爵家の騎士との対戦だけ俺がでればよいのであろう
我が家の騎士達には試合を奪って申し訳ないが……
何かで埋め合わせしよう」
「しかし……」
「大丈夫だ 邸に帰って明日の準備をしよう」
とサッサと歩きだし邸へと帰って行った
邸につくなり
「明日、大会にでる」
と一言だけ言って演習場へと向かおうとした
「ユリウス様 明日大会に出場される事になったのですか?」
「ああ、これで君からもらったマントとハンカチが役に立つ」
「え?もしかして気遣ってくださって出場される事にした……とかですか?」
「いや成り行きだ」
セシル様この人成り行きでとんでもない約束しちゃったんですよ
と思いながら
ユリウスは、もしかしてセシル様の作ったマントを纏って試合にでている姿をセシル様に見せたかっただけだった事に気がついた
感情が表現出来ない分婚約者に対しての思いを拗らせつつある自分の主をどういう風に見守ればよいのだろうか……
と考えてしまうリックなのであった




