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自称マトモな魔法使い

 ユリウス様とルーカスとの気まずい雰囲気の中での食事を終えてルーカスと私の部屋でふたりで話をした


「それで、さっきはどうしてたあんな嘘をついたんだ」


「お兄様ごめんなさい どうしても確かめたい事があって夜に街に行きたかったの」


「それは夜に出かけないといけないことだったのか?」


「だってその人と会えるのは夜だけなんだもの」


「ちょっ! まて セシルお前婚約者がいながら何をしてるんだ一体!」


「ちがう!ルーカスお兄様そういうのではないのよ 」


「どうちがうんだ?」


「笑わないって約束してくれる?」


「ああ」呆れながらルーカスが返事をしてお茶を口にした


「誰にも言わないって約束してくれる?」


「ああ」


「絶対に?」


「ああ、もうしつこいな 早く言えよ」


「あのねユリウス様は知ってるよね」


「さっき一緒に食事したな」


「最近王都で評判の吟遊詩人のシャドって知っている?」


「ああ、魔塔でも評判になってる」


「私、同一人物じゃないかなって思っていて……」


「はあ? っって ・・・セシルお前どういう思考回路からそこが結びつくんだ?」


「いや、声がね 似ていて 背格好やちょっとした所作も似ている」


「そんなの似ているだけでどうして辺境伯と吟遊詩人が同じ人間だと思うんだ」


「そうなのよ〜 自分でも不思議なんだけど

  シャドはいつ会っても ニコニコ笑ってるイメージだけどユリウス様は笑ってるの見た事ないし・・・

 でもどうしてもふたりが重なってみえちゃうの」


「そんな……」とルーカスは言葉を続けようとしたが飲み込んだ

 セシルの観察眼が、子供の頃から人並み外れている事を一番近くで見ていたからだ


「こほん、仮にだ!仮に! ふたりが同一人物だとしてお前はどうしたいんだ?

 辺境伯が吟遊詩人をしていても別に誰も迷惑かかっていないんだろ」


「最初は気になる程度だったんだけど……

  今日歌を聴いた時に恋の歌だったんだけど何だか切なくてね

 恋してるみたいなの ・・・・ユリウス様

 ユリウス様他に好きな人いるのかなって思って……」


「だから、もし好きな人がいてもどうしようもないだろう お前と婚約してるんだから」


「そうなの!そこなの!なんだか悲しくてね ・・・ 胸が苦しくなってよく分からないけど」


 それはセシルお前がユリウス様を好きになってるからだろうが・・・

 こいつ無自覚なのか・・ 本人に言ってもいいが・・妹と恋愛の話をするのはどうも気まずいな

 ルーカスは大きなため息を一つした


「ふー! おいセシルとりあえずこんな不確かな事でチョロチョロ動くな

 大体いつもお前はなんでも斜め上に行き過ぎ!」


「う〜ん…… だって……」


「だってじゃない 「でも」と「だって」は言うなって母さんに言われただろ

 ただでさえ、この前のお茶会の件で今お前は注目の的なんだ これ以上辺境伯家に迷惑かけるな」


「え?そうなの」


「そうなんだ! だから大人しくしろって今日は、釘を刺しにきたのに…… お前って奴は」

 はーっとルーカスは大きなため息をついて頭をかかえた


「ごめんなさい……」


「お前がさっき言ってた話 俺が調べてみてやるよ

  だからお前は剣術大会のためにハンカチに刺繍でもしておけ! 得意だろ!」


「あ!」


「まさか、忘れてたのか」


「やだ! まさか忘れるわけないじゃない」


「はい、忘れてました」

 と ルーカスはコツンとセシルの頭を小突いだ


「いたい……」

「また、連絡するから」


「ありがとう…… ちゃんと扉から帰るのね」


「勿論だ、俺はマトモな魔法使いだからちゃんと挨拶して帰る」

 と手をヒラヒラしながらルーカスはパタンと扉をしめた


「マトモじゃない魔法使いってどんなのなのよ」とセシルはつぶやいた

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