第2章:初めての事件
晴明がオカルト研究会に参加し始めてから数週間が経った。大学生活にも慣れ、新しい仲間たちとの交流も深まっていた。研究会のメンバーは個性的で、皆それぞれ霊的な事象に興味を持っていた。会長の八尋 翔太は特に熱心で、ありとあらゆるオカルト情報を収集していた。
ある日、研究会の集まりで翔太が興奮気味に話し始めた。「みんな、最近大学内で奇妙な現象が起きているのを知ってるか?図書館の地下室で、夜になると不気味な音が聞こえるらしいんだ。警備員が見に行ったけど、誰もいなかったそうだ。」
メンバーたちは興味津々で翔太の話を聞いていた。晴明もその話に耳を傾けながら、何か霊的なものが関与している可能性を感じ取っていた。美咲も心配そうにしていた。「一成さん、これって本当に霊的なものかもしれないよね。どうしよう…」
晴明は静かに頷いた。「そうかもしれないね。もし本当に霊が関与しているなら、放っておくわけにはいかない。今夜、図書館の地下室を調べに行こう。」
その夜、晴明、美咲、翔太の三人は大学の図書館に集まった。図書館は夜になるとひっそりと静まり返り、不気味な雰囲気が漂っていた。地下室への扉を開けると、冷たい空気が彼らを迎えた。晴明は呪符を手に持ち、慎重に地下室へと足を進めた。
地下室は広く、書物や古い資料が積み上げられていた。暗闇の中、彼らは懐中電灯を頼りに進んでいった。その時、美咲が何かを感じ取ったように立ち止まった。「一成さん、何かが近くにいる…」
晴明はその言葉に耳を傾け、周囲を警戒した。突然、冷たい風が吹き抜け、不気味な音が地下室に響いた。それはまるで誰かが囁くような声だった。晴明は呪符を掲げ、霊力を集中させた。「ここにいる者よ、姿を現せ。」
その瞬間、暗闇の中から霊の姿が浮かび上がった。それはかつてここで働いていた図書館の職員の霊だった。彼は悲しげな表情を浮かべ、何かを訴えるようにしていた。晴明はその霊に静かに話しかけた。「あなたの苦しみは分かります。しかし、ここに留まることはできません。どうか安らかに眠りについてください。」
霊は一瞬ためらったが、晴明の言葉に応じるようにその姿を薄れさせていった。晴明は呪文を唱え、霊を成仏させるための儀式を行った。地下室の空気が次第に穏やかになり、不気味な音も消え去った。美咲と翔太は安堵の表情を浮かべた。
「すごい、一成さん。本当に霊を鎮めたんだ。」翔太は興奮気味に言った。美咲も感動していた。「一成さん、ありがとう。これで安心して勉強できるわ。」
晴明は微笑みながら頷いた。「これからも何かあったら、遠慮なく言ってください。私が助けますから。」
その後、彼らは地下室を出て、夜の静けさの中で大学のキャンパスを歩いた。美咲は晴明に対してさらに信頼を深めていた。「一成さん、本当にすごいわ。どうしてこんなに霊に詳しいの?」
晴明は少し考えた後、静かに話し始めた。「実は、私は昔、平安時代に生きていた陰陽師でした。ある出来事をきっかけに現代に転生し、ここで新たな人生を歩んでいます。だから、霊や妖怪に関する知識は豊富なんです。」
美咲は驚きながらも、その話を信じることにした。「そんなことが…でも、だからこそ一成さんはこんなに頼りになるのね。」
晴明は微笑み、「ありがとう、美咲さん。これからもあなたや他の人々を守るために力を尽くします。」と答えた。
その夜、美咲は自分の霊感について晴明に打ち明けることを決意した。「実は、一成さん、私にはもう一つ話しておかなければならないことがあります。」
晴明は興味深げに美咲を見つめた。「何ですか?話してくれれば、力になれるかもしれません。」
美咲は少し躊躇しながらも続けた。「私の霊感が強いのは、実は家系に秘密があるんです。私の家系は代々、強い霊感を持つ巫女の家系で、私もその力を受け継いでいるんです。でも、その力のせいで霊に狙われやすくて、ずっと悩んでいました。」
晴明はその言葉に深く頷き、「それは大変だったでしょう。でも、その力はきっと人々を助けるために役立つはずです。私も協力しますから、一緒にその力を活かしていきましょう。」と励ました。
こうして、美咲は晴明との信頼関係をさらに深め、霊的な問題に立ち向かう決意を新たにした。彼らの絆は強まり、これからも数々の試練を乗り越えていくことになる。