表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/57

02 ガチャをひいたら

「お、ゲームの世界か」


 目の前に白かった世界から色が戻る。部屋の中にいるが、窓から見える外の風景は中世ヨーロッパっぽい街並みである。小説の舞台そのものだ。

 景色に感動していると、声が聞こえてきた。


「ガチャを引いてみな」


「ガチャ?」


 そういえばガチャをひけるっていう話があったな。ソシャゲっぽいなと思ったが、もらえるものは貰っておかないと。

 しかし、引き方がわからない。そう思っていたら目の前にショッピングセンターで見かけるガチャの機械が出現した。

 機械中央にあるダイヤルを回すとカプセルが落ちてきた。そのカプセルを開けてみると紙が入っている。


「FAX10回って書いてある」


「それがお前の引いたギフトだね。ゲーム中に10回しか使えないから、どこで使うかはよーく考えてから使いな」


「いや、戦略シミュレーションゲームでファックスとか意味がないにも程があるだろ!」


 おもわずツッコミを入れた。遠方への情報伝達という意味では有効なのかもしれないが、こういう時は戦術MAP兵器とか、キャラクターの能力値アップアイテムとか、そういうものが出てくるもんじゃないか。

 こうなったら、転生・転移の定番である火薬を作って無双をするしかないな。

 と思ったら、思考を読まれたのか


「あ、銃や大砲の類は禁止だよ。原作小説には出てきていないだろ。システム的に作れないようになっているからね」


 と釘を刺されてしまった。

 まあしかたがないか。世界観を壊さないようにっていうのがあるのかもしれない。低い能力値を補うための手段として考えていただけに、それが封じられたのは痛い。

 その代わりに手に入ったのがファックスだとは、とほほな事態だ。


「もう一回説明しておくけど、ギフトは自由に使用できる。戦争状態じゃなくてもね。使い方はヘルプ機能があるから、使う前に確認するといいよ」


「わかったよ」


 と投げやりに返事をした。正直これからの事を考えると暗澹たる気持ちになる。とてもじゃないが、今はヘルプ機能を使う気にはなれなかった。


「そうそう、それとねえこの世界では感覚があるから、ゲームだと思って油断して攻撃を食らうと死ぬほど痛いからね」


「ゲームをクリアー出来なくて死ぬ未来の予行演習ってわけか。二度も同じ痛みを味わいたくないんだけどなあ」


 死ぬ痛みを二度も味わいたくはない。これは何としてもクリアーしなくては。


「それと、NPCもみんな感情を持っていて、普通の人間だからね。厳しく当たれば裏切られもするし、優しくすればなめられて裏切られるからね」


「どっちにしても裏切られる未来しかないように聞こえるけど」


「そこは接し方次第だよ。部下をどう扱うかだね」


「そんな経験ないから難しいな」


 仕事で部下がいたことは無い。というか、今までの人生で後輩を指導するようなことだって殆どなかった。だから、どうやったら人望を得られるかはよくわかっていない。それに加えて低いステータスだ。魅力がもう少し高ければどうにかなったのかもしれないけど、それもこの数値では無理なことだ。

 と、そこでステータス値で確認すべき事があるのに気付く。


「知力が20で適正もCだと文字も読めないし、計算も出来ないってことかな?九九は今でも言えそうなんだけど」


 知力が低いとなると、今ある知識も使えなくなるということなのだろうか。そうなると、なんのアドバンテージも無くなるが。そう心配したが、


「知識は使えるよ。ただし、計算なんかは頭にもやがかかったようになって、遅くなるけどね。体を使えば武力が上がるし、頭を使えば知力が上がる。元々のゲームでも適性だって稀に上昇することがあるだろう。ここでも同じだよ」


 ということであった。武力についても授業で習った剣道、柔道の経験は持ち越されるが、頭では理解できていてもからだが動かないということで、いわばハンデを背負った状態だと考えたらいいとも言われた。なお、適性が上昇することはゲーム内でもごくまれに発生しており、それによって使えないと思っていた武将が有能になってくれたりもした。発生条件が不明なので、再現するのは難しいともうがないわけではない。


「それで、声の主さんとはここでお別れなのかな?」


 ゲームについての質問はこれからもしていきたいが、相手の状況がわからない。仮にシステム的にまずいことを実行しようとして、ペナルティをくらうのはごめんだ。そういうわけで、今後も質問をしていきたいのだが


「ゲームを有利に進めるための助言は出来ないけど、プレイヤーキャラクターとしての行動の可否については会話できるね。ゲームマスターだと思ってくれたらいい。ただし、ルールを作っているのはわたしよりももっと上の存在だから、即答出来ない事もあるかもね」


 と返答をもらった。


「それで構いませんよ」


 まあ、悪くはない条件かな。いきなりペナルティをくらうよりは全然ましだ。


「それじゃあゲームを開始するからね」


「わかったよ」


 こうして今度こそゲームが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ