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6. 突然の来訪者

「明日は大忙しだな」

「諜報なら私も手伝いますわよ?」


 婚約は無事に解消された。

 けれども、噂好きの貴族のことだから色々な噂が流れてしまうのは避けられない。


 だから、お父様は騎士団を利用して私達に都合がいい噂を流そうとしている。

 騎士団を利用するとという荒技は兵部卿でないと難しい。けれども、お父様は兵部卿と仲が良く、不可能ではないらしい。


「関係が悪化したから、でいいと思うか?」

「それならどちらの肩を持つわけでもないし、いいと思いますわ。詰めが甘いかもしれないけれど、今は行動を急ぐべきですもの」

「ならこれで行こう」


 職権濫用な気がするけれど、私達に不利な噂は流れないのなら嬉しい限りね

 だからと言って、私のしてしまったことの重大さは変わらない。


 政略結婚とはいえ、ケヴィン様の御心を掴むという使命は果たせなかったのだから。


「お父様、私のせいでこんなことになってしまって、申し訳ありません……」

「浮気されたことを申し訳なく思ってるのか? あれは気にするな。浮気する男がすべて悪い」


 私が頭を下げると、そんな言葉が返ってきた。

 少し怒っているらしく、パールレス邸の方を睨みつけている。


 睨まれているのが私じゃないって分かっていても、少し恐怖を感じてしまう。

 お父様がこうも分かりやすく怒りを浮かべることなんて、今までに無かったから。


「そうよ。ソフィアはよくやってくれていたもの。責める事なんて絶対にしないわ」


 お母様は穏やかな表情を浮かべているけれど、やはり怒りは感じているらしい。


「お父様……お母様……」


 ありがとうございます、とは言えなかった。

 流し切ったはずの涙が溢れてしまって、顔を見せたくなかったから。


「そういうわけだから、何も気にするな。今までの努力だって絶対に無駄にはならないからな」

「ええそうね。あの令息には天罰が下るわ」


 お父様もお母様も私の味方でいてくれている。

 でも、今までの努力が認められなかったことには変わりないから。


 やっぱり、すごく悔しかった。こんなに良い両親を悲しませている事実に変わりはないから。


「ありがとう……ございます……」

「お礼なんていらないわ」

「とりあえず、今日はゆっくり休みなさい」


 そう言われて、無言で頷く私。

 それから間もなく、馬車が玄関の前に止まった。


 


 お父様に続いて馬車を降りると、よく知った人物が待ち構えているのが目に入った。


「暇だから来ちゃった」

「暇だからって……。なんでいるのよ?」


 目の前の人物……アリス・コンスタンスは私の言葉を聞くと視線を逸らした。

 彼女は10歳のころからの友達なのだけれど、本来なら易々と話しかけられる相手ではない。


 筆頭公爵家であるコンスタンス家のお方だから。

 ちなみに、アリスのお父様は兵部卿を務めている。


 コンスタンス公爵様がお父様の親友でなかったら、彼女は遠い存在だったのよね……。


「ソフィア……なんで泣いてるの?」

「ちょっと色々あったけど、泣いてなんかいないわ」


 今は何があったかなんて話せる状況じゃないから、そう言って誤魔化そうとした。

 けれど、アリスはそれで見逃してはくれなかった。


「そう……。辛いことがあったのは分かるけど、落ち着いたらでいいから……教えてくれると嬉しいわ」

「うん……」

「私に出来ることがあったら何でもするから、頼ってよね!」

「ありがとう……」


 相談なんて出来る気分では無かったけれど、アリスの言葉に救われた気がした。


 あの人に裏切られても、私には家族以外にも頼れる人がいる。

 それを思い直すことができたら。

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