一休ロード 〜挫折〜
おれ畑野一休は本気で野球に打ち込んでいた。中学ではシニアチームに所属してピッチャーをしていた。しかし…
最後の大会で、肩を怪我して投げれなくなった…おれはバッティングには自信がないので、野球を辞める事にした。幼稚園の頃からプロ野球選手を目指していたおれにとっては、かなりショックな出来事だった。
そんな時おれを支えてくれたのは、幼なじみでずっといっしょに野球をやってきた山田竜司だ。
竜司は5才の頃に公園で
「キミも野球いっしょにやる?」
と誘ってくれた恩人だ。竜司がいなかったら、おれは野球に出会ってないかもしれない。この時のお礼をまだ言えてない。
竜司は少しヤンチャなところがあるので幼なじみじゃなかったら友達になってなかったかもしれない…
そんな竜司におれ達が出会った公園で、野球を辞めると伝えると、こう言ってくれた。
「同じ高校に行くんだろ?応援してくれよ!俺が一休を甲子園に連れて行くからよ!」
そう言われた時、おれは自分の道を決めた。
「それならおれは応援団に入るよ!本気で竜司の事を応援するよ!」
おれがそう言ったら竜司は嬉しそうな顔をした。その顔は忘れられない。
そしておれ達は高校入学した。おれは応援団に入り、竜司は野球部に入った。
一年生の頃から竜司は試合に出ていた。おれは野球部を必死で応援した。しかし一年生の時も二年生の時も甲子園に出る事は出来なかった。
おれ達は三年生になり、おれは団長に竜司はキャプテンになっていた。
そして最後の夏の大会が始まった。
「かっ飛ばせー竜司!」
おれは必死で応援した。試合はうちの高校が有利に進んでいる!しかし最後の最後、九回の表に逆転された…
だが裏の攻撃がある!しかも四番の竜司にも打順が回る!
三番の選手が二塁打を打った!点差は一点、ランナーが帰れば同点だ!そして竜司がバッターボックスに立った。
「かっせ!かっせ!竜司!」
おれは全力で応援する!しかし…
「ストライク!バッターアウト!」
竜司は空振り三振してしまった…次のバッターも凡退してうちの高校は負けてしまった…
次の日、おれはいつもの公園にいた。竜司に呼び出されたからだ。
「一休…悪かったな…甲子園に出るどころか、一回戦で負けてしまってよ…」
竜司は申し訳なさそうにそう言った。しかしおれは竜司を責める気などなかった。
「竜司!今までおまえがどれだけ頑張ってきたか、おれは知っているよ!夢を見させてくれてありがとう!」
おれがそう言うと竜司は泣き出してしまった…試合の日は泣かなかったのに。
「竜司!おれはずっと言いたい事があったんだ!5才の時野球に誘ってくれてありがとう!あの時誘ってくれなかったら、野球をやっていなかったよ!」
おれが言いたかった事を言うと、竜司は泣き止んで
「そんな昔の事覚えてねえよ…」
おれには分かる、竜司は多分覚えている。しかし照れ臭いから覚えてないと言ったんだ!
その後おれ達は思い出話に花を咲かせた。
甲子園には行けなかったが、高校生活に悔いはない!この三年間はこれからの人生の糧になるだろう。
野球選手にはもうなれないが人生それだけじゃない!