女四宮の裳着
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ある日、私の裳着について、父から伝えられた。
「姫宮の裳着は15の年にしようと思う。それまでに降嫁先を見つけようぞ。」
「はい。おもうさまのお心のままに」
というが、お心のままにはさせない。きちんと希望は通させてもらう。
「もし、許されるならば、忠実人がようございます。」
嫉妬で、どうにかっていやだもの。なんせ私は更衣腹、父と兄以外の後見はいないし、兄はまだまだだ。
「そうか、考えておく。」
「はい。」
「そうそう、裳着の腰結はわたしがするからね。」
「はい。嬉しゅうございます。」
よし。箔がついた。助かる。これで父が生きている間は安泰だ。父が死んだあとに影響の少ない家を選べたら、いいのだけれど、情勢的には、どうなるか・・・
14歳になった。今日は、飛香舎におよばれだ。内輪で管弦のお遊びをしましょうとのことだ。御簾の中で、藤壺の宮と合奏していると父がやってきた。いつでも来るな。今日はいつもよりお供の数が多い。知らない人もいる。もちろん兄の光源氏もいる。熱心に藤壺の宮の気配を探っているのだろう。
しかし、私は知っている。兄には恋人がいることを。六条御息所だ。叔父の元妻なのに・・・。
「姫宮や、父のために一曲弾いてくれないか。」
「はい。」
この御簾の前にいる知らない若者たちは、お見合い相手ですね!と気合を入れて弾く。兄と比べられても何も言われないように練習に励んだこの腕前を見よ!っと琴を弾く。
御簾の向こうではため息が聞こえる。父を見ると泣いていた。すぐ泣くんだから・・・
演奏が終わると、御簾の向こうの若者たちも演奏を始める。
藤壺の宮がつつっと寄ってきて、
「あの琵琶のものをご覧くださいませ。私の兄の太郎君(長男)ですの。」
と言った。ふむふむ。彼がお見合い相手か。少し地味だが、整った顔立ちだ。優雅だが、他の者より体格がいい。
ここで素敵です!などと言おうものならはしたない。扇で顔を隠し、恥ずかしがっている風に見せた。
「うふふ。」
藤壺宮が父をチラっと見た。父もうなずく。
何度かの演奏ののち、彼らは退出していき、お開きとなった。
後日、琵琶の若者から文が届いた。誠実そうだ。女房たちにさりげなく聞いたところ浮いた噂はないそうだ。恋人もいない。父はちゃんと忠実人を選んでくれたようだ。
返歌を返す。その後、彼とのやりとりは続く。何かと贈り物が届くことになった。
琵琶の君は館を準備しているらしい。どこになるのか不安だったが、兄の館の近くになりそうだ。よかった。
そして、15歳裳着を迎えた。父は腰結をしながら泣いていた。本当によく泣くなあ。
かくして、私桐壺帝女四宮は、結婚したのである。
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