お出掛け回[3-5]
——食後、買ってきた果物をみんなで食べた。真っ赤な星型の果物を口に入れた瞬間、ラディは顔をしかめイーサンは呻いた。確かに独特な甘さも苦さもあり、ツンとアルコールのような匂いもある。アイザックは、栄養があるんですよと母親のように全員に食べきらせた。恐るべし。
何も用意を手伝えなかった分、みんなのコーヒーを淹れ食器を洗った。その後お風呂に入り、自分の部屋に戻ると、コンコンとドアをノックされた。アイザックのノックではないなと思いドアを開けると、両手を後ろに隠したイーサンが立っていた。
「悪い、寝るところだったか?」
「まだ大丈夫。どうしたの?」
「いや、あー、今日は楽しかったか?」
「うん、とても楽しかった。ありがとう。それをききに?」
「や、そうじゃなくて。」
「なぁに?」
煮え切らないイーサンを不思議に思っていると、後ろからラディがぬっと顔を出して面白がるようにニヤニヤしながら口を出す。
「なに恥ずかしがってんの?渡すものあるんでしょ。」
「おい、ラディアン!お前に言ってないのになんで…」
「後ろに袋持ってもじもじしてたら嫌でも分かるって。」
なるほど。それはラディにとって絶好のいじりチャンスだろうな。センサーでもあるんだろうか。
「あー、もう。クソッ。これ、エマに。じゃあおやすみ!」
照れ隠しのようにぶっきらぼうに袋を突き付けられた。よく見るとそれはあの雑貨屋さんの袋だ。あの時秘密にしていたのはこれか。
「開けてみようよ。」
貰った私よりウズウズしているラディを見て笑いながら箱を袋から出すと、それは可愛らしい置時計だった。
「イーサン、この部屋に時計無いこと知ってたんだね。」
「そりゃ、イーサンがこの部屋の時計壊したんだもん。」
なにそれ衝撃。二人で散々笑って話したあと、ラディは部屋に戻っていった。時計を箱からそっと出してベッドサイドに置き、眺めながらいつの間にか眠りについた。
——明日も新しいことだらけの予感。