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少女は目覚める
「ねえ、どうするコレ。」
「死んでは…なさそうだな。」
長身の青年二人は草花の中で倒れているボロボロの少女を見下ろしていた。
「とりあえず連れて帰ったほうがよさそう。」
と瞳の色以外ほとんど変わらぬ容姿の二人のうち前髪で片目を隠した弱気そうな彼は呟いた。
「ラディが言うなら。ほいラディ、これ持て。」
彼は先の青年はもう一人—ラディと呼ばれた—に持っていた荷物を預け、少女を負ぶった。
林の中を進んでいくと大きな屋敷が見えてくる。彼らは門の前で止まり少女を負ぶった彼が一度門に向かって呼びかけた。
「アイザック」
待ち構えていたかのように門が開きドアがゆっくりと開いた。
「おかえりなさい。」
ドアの陰からきっちり燕尾服をまとった男が出迎えた。
「ベッドにこれを寝かせる。手伝え。」
「は?これ―?あらあら、後で説明をお願いしますよ。では一番小さい寝室に。」
ボロボロの少女を見て驚いた表情はしたものの、すぐに屋敷の中へ消えた。二人の青年も彼に続き中へ入っていった。
少女の二度目の人生の歯車はゆっくりと動きだす――。