清潔と恋慕
異性を想うことは
遺伝子に刻まれた本能
私たちは毛繕いをする。
恐らく、鳥の類は皆同じようにするのだろう。
嘴で全身にアブラを塗り、毛艶を良く保つ。
どこにアブラなんてものがあるのか、私たちは何故か生まれながらに知っていた。
毛繕いする際、まずは落ち着ける場所を探して座ると、頭をグイーッと後ろにのばす。
尻の上の方に、アブラの出る部分があるのだ。
そこを嘴でチョチョイと触り、アブラの付いた嘴で羽を繕えば、何度でも艶が戻ってくる。
艶があると、ホコリや水が付きにくい。
見た目も清潔感があって、雌から好感を持たれるだろう。
(触れあいはできないが、遠くからでも見てもらいたい。あわよくば好かれたい)
鳥といえども、身だしなみは大切だ。
何より清潔は健康の秘訣である。
そんな私の自慢の羽毛だが、実は最近はかなり量が減っているのだ。
生まれた当初、ふわふわの黄色の羽毛を持っていた我々だが、成長と共にだんだんとそれが抜け落ちて、今では白くて強健な羽が代わりに生えてきている。
しかし、まだ十分に生え揃ってはおらず、若干ハゲ散らかしたような状態で恥ずかしい。
周りの兄弟たちも大体似たようなものだが、一部の発育の良い輩は翼の下を除き、ほぼ生え揃っている。
何より滑稽なのは、私たちの頭の部分はまだ赤ちゃんの羽毛のままであることだ。
身体は着実に大人びて来ているのに、肝心の頭は幼子のまま。
ふわふわの黄色い羽毛が、まだまだ現役で頑張っている。
なんだか、早く大人になろうと背伸びした中学生のようだ。
そう思いつつ、「はて、中学生とは何だっただろうか」と頭を捻った。
少し前世の記憶が、心の深いところに残っているようだ。
何はともあれ、清潔は肝要だ。
世の中学生や、ハゲ散らかした人間も、私を見習った方が良いだろう。
私は今日も毛繕いに余念がない。
いつか、雌と一緒に居られる日が来ることを夢見て…。
生まれてから20日目