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穢れと共に

過酷に身を置かれた。

只、生きるしかない。

フカフカの木屑の上の生活は、思ったほど悪くない。


ほどよい室温。空調管理がしっかりされていて、時々巨大な換気扇が稼動し、新鮮な空気が取り込まれる。


ただ、ここには何もない。


あるのは、水と食事だけ。

何もしないで飯が食えるんだから幸せだと思うだろうか?


今はあっても、いつ途切れるか分からない。

自分たちの意思ではどうにもできない。

焦りを感じていた。 私たちの未来はどうなっているのか。

このまま、寿命を全うするまで平和に過ごせるなんて、そんな都合の良いことは考えられない。



衛生面も心配だ。

昨日はしばらく断水した後に青い水がでてきた。

錆ではなさそうだが、明らかにおかしい。


水は、シルバーのポッチを押すと出てくる仕組みになっている。

私たちがそれを押すとなると、使えるのは嘴くらいのものだ。


断水した為に喉が乾いた兄弟たちは、給水器に殺到した。

少し出遅れて後ろで見ていたのだが、いつもと水の色が違って見えたのだ。


満足したのか、前にいた兄弟たちが退いた。

私も喉がカラカラだったので、恐る恐る嘴をポッチに当てた。

やはり、いつもと少しだけ違う味がする。


兄弟たちは気にせずガブ飲みしていたが、私は躊躇い、それ以上口にしなかった。

しばらくすると水はいつもの色に戻ったが、あれは一体何だったのだろうか。




水だけではない。

餌も不衛生な管理しかされていない。


餌は赤くて丸い餌箱に、自動的に配給される仕組みだ。

内容物が減ってきた頃に、ガランガランと大きな機械音がして餌箱の中央に設置された装置から餌がこぼれ出てくる。


新鮮な餌食が都度運ばれるので、一見良さそうだが、問題は配給後のこと。

なんと、頭の悪い兄弟たちが土足(もちろん私たちは裸足なのだが)で餌箱のなかに入るのだ。



ちなみに兄弟たちの足には、糞便が付着している。

何故そんなものが付いているのか、事情を説明しよう。


ここには排せつをする専用の場所がない。

兄弟はところ構わず排便する。


鳥類など、そんなものかもしれないが…。

こんな限られた生活空間の中で排便してしまっては、衛生面にかなり問題があるのではないだろうか。


地べたに放置された便は、行き来する兄弟たちに踏みつけられる。

幾度となく踏まれるうちに、フカフカの木屑に混じって見えなくなるけれど、確実にそこに存在するのだ。

我々は便の上で生きている。


そんなわけで、私を含む兄弟すべての足の裏は糞便で重度に汚染されている。

腹を下にして座るので、腹も相当な汚れ具合だろう。

砂浴びをする輩など、考えたくもない。


もちろん毛繕いはするし、清潔を心がけるが、糞便の上で生活していては、限界がある。



―――話を戻そう。


そんな糞便まみれの身体で、餌箱に入る兄弟がいるのだ。

凡そ「衛生的」とは対比の状況であろう。

そんなものを口にして良いのか…。


しかし、腹は減る。

食べ物はそれしかない。


何より生まれてから今まで、変わらずこの状況なのだ。

こんなことを気にしているのは、この数万羽の兄弟姉妹の中で私だけだろう。


我々の健康が害されないことを祈る。


生まれてから8日目

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