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クラン大武道会7 外道と悪魔と運命

必然を運命と言うのら、偶然は奇跡と言うのだろうか?

―――コロシアム内通路―――


 やられた……!!


 ツカツカと通路内を世話しなく一人の人影。

その人影は酷く苛立っていた。


 何故上手くいかない……!!?


 此処最近、計算違いによる失敗が立て続けに起きており、人影は余裕を完全に失ってしまっていた。


 つい十数日前までは順調に進んでいた計画。

しかし、それがある日突然崩れてしまった。

その原因を突き止め、何とか軌道修正を謀る為に幾つかの策を用いて事に当たったのだが、その策の内メインの2つが早々に潰れてしまった。


 多分、残りも簡単に潰される……


 失敗した原因は分かっている。

単純に見積りが甘過ぎた。


 まさか、こんなに強い奴らばかりだったなんて!!!!


 今回の目的は、とある人物を孤立させる事だった。

その為には今回の大会を利用するのが手っ取り早いと思い、何人かに声を掛け、契約をして手駒に変えたのだが―――


 今残ってるのは二人だけか……


―――皆、早々に倒されてしまった。

残りも勝ち抜けるかは怪しい。


 そもそも、奴らには勝て無い可能性の方が高い……


 目的の人物が居るクランは恐らく今大会参加クランの中でもトップクラスだ。

声を掛けた三流クランでは手も脚も出ないだろう。


 ()()ワタシでは負け無くとも勝てはしないだろうし……


 正直、人影は手詰まりになったと感じていた。


 兎に角、今は―――


「―――次善策を練らないといけない―――ですか?」


バッ!!


 突然背後から声を掛けられ、人影は直ぐに声の主へと振り替える。

そこには、いつの間にか標的のクランの中心人物が立って居た。


「こんにちは。そんなに焦ってどうしたんですか?()()()()さん?」



「い、いややわぁ。何言うてはるん?キーノはん。と言うか、何時から其処に?さっきまで確かに誰も居らんかった筈やけど?」


「そんな事はどうでも良いじゃないですか。それよりももっと大事な事を話ませんか?」


「あらぁ?何ですのん?もしかしてうちのクランに入団してくれはるん?それやったらなんぼでもお話しますえ?そやなぁ…キーノはんやったら即幹部でもエエけど、それやと他の団員といらん軋轢が出来るかもしれんし……始めは軍隊で言う小隊長位からやろか?キーノはんは何か希望あらへん?余程やないなら聞いたんで?」


「………………………」


 内心の焦りを隠しながら、人影―――鏡華はおどけた様にそんな事を言う。

それを聞くキーノは目元が笑っていないニコニコ笑顔のまま、鏡華を見つめ続けていた。


「ちょ、ちょお!何か言うてえな!!このまんまやと、うち、ただの独り言を言う痛い人になってまうやんか!!」


「―――何時まで……」


「あ?なんや?もっと大きな声で言うてくれん?」


「何時まで、下手な演技を続けるんです?()()()()()()()()さん?」


「―――は?いやいや、な、何言うてんの?いややわーーうちみたいな美女捕まえて悪魔やなんて!確かにちょっと小悪魔なとこはあるかもやけど!もしかして悪魔的魅力って事なん?そもそも、うちの名前を呼んだんはキーノはんやろ?」


「それ。」


「?どれ?」


「僕を名前で呼んだでしょう?」


「?普通名前で呼ぶやろ?」


「鏡華さんは、1年前に他の世界で出会った時から、僕を名前で呼んだ事は無いんですよ。」


「――――ッ!!」


「それに―――」



―――誰も、僕の眼は誤魔化せない……



「ひっ!!?」


 鏡華を視るキーノの瞳、其処には禍々しい黒い光を放つ八芒星と六芒星が重なった様な陣が浮かんでいた。

それを見て、鏡華は短い悲鳴を上げて立ち竦んでしまう。


「成る程、狙いはファネルさんですか。彼女の呪いも貴女が掛けたモノであると。ふむふむ……代償の肩代わり……七罪、「嫉妬」………真の狙い――――」


 ブツブツと何かを呟き始めるキーノ。

それを聞き、段々と顔を俯かせ、笑いを浮かべる鏡華。

其処には、異様な光景が広がっていた。


「―――――――ふふ。ふふふふふふふふふふはははははははははははははははははははははははははははは!!!アーーーーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!!」


「―――っと。やっと観念したみたいですね?」


 突如顔を上げ、ゲタゲタと笑い始めた鏡華からキーノは素早く距離を取り臨戦態勢に移る。


「ハーーー……参ったわ。本当に参ったわ。まさかこんなに早くバレるなんてね?で、何でバレたのかしら?ワタシの擬態は完璧だった筈よ?まさかホントに呼び名が決め手なんて言わないわよね?それにその眼……以前、何処かで……」


「それに僕が答えて上げる義理はありませんね。それより何時まで鏡華さんの体を借りてるつもりですか?まさか()()と似た言葉使いで愛着が湧いてるとか言わな―――ってまんまですかっ!?もっと何か捻りは無いのかよ!!」


「ちょっ!!適当な事言わないでくれる!?それじゃあワタシがマザコンみたいじゃない!!!!」


「いやマザコンでしょう?神造ダンジョンから母親のコンプトウラさん助け出そうとしてるんだから。」


「そうそう。母様を一刻も早くクソ創成神の呪縛から解き放ってあげ―――何で知ってるの?と言うかサラッと流しちゃったけど、ワタシがこの娘の体借りてる事まで何で分かったの!!?()()()()()()()()()()()でも、普通は其処まで分からない筈なのに!!それに、貴方のユニークは読心系じゃ無いの!!?」


 キーノの言葉から、鏡華―――レビィアスはキーノのユニークスキルは相手の思考を読む読心系のスキルだと思っていた。

しかし、明らかに読心系で分かる範囲を越えた情報を読み取るキーノに驚きを隠せない。

そもそも、レビィアスはユニーク級の鑑定すら欺くアビリティを所持しているので、鑑定系スキルでも分からない筈なのだ。


「いや、待って……そう、か…その眼の紋章……それにその能力の強さ……まさか、四大スキル?」


 其処まで思い至った時、レビィアスの中で何かのピースがカチリ、と音を立てて嵌まり込む。


「あは、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!そう!そうだったの!!貴方なのね!?貴方がそうなのね!?アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!いいわ!そう言う()()だと言うなら乗って上げる。ふふふ!」


「突然、何を言って―――」


 激しい思考の切り替わりに流石のキーノも読み切れず、レビィアスが何に思い至り、何を決めたのか、それらが分からない。

しかしレビィアスが分かるまで待ってくれる筈も無く、どんどんと話を進めていく。


「今回は引いて上げる。まあ、契約の関係でこの娘の体は明日迄借りたままになるけど…悪い様にはしないわよ。だいたい、それだけで強いスキルを得るんだから安いものでしょう?とまあ、それは別に良いとして。キーノくん?」


「―――何ですか……?」


「ワタシ、貴方を標的にする事にしたから。覚悟してね?」


「……………………は?」


「ああ!勘違いしないでね?別に嫌がらせしたり殺そうとしたりするつもりは無いのよ?ただ、ワタシがファネルを使ってやろうとしていた計画は貴方達とあの娘が共に居る限り中断しないと駄目そうだしね。」


―――()()()


「貴方の力を貸して貰う事にするわ♪と言っても、貴方は素直に手伝ってはくれないでしょう?」


「当然です。」


「でしょう?だからワタシは貴方を堕す為に色々するから、覚悟してね?って事。まあ、流石に今回は引き下がるけど。ふふふ、楽しみにしててね?」


 そう言って微笑んだレビィアスは、鏡華の体のまま通路の奥へと消えて行くのだった。

キーノは、ただ其処に立ってその姿を見送った。


―――それから一分後―――


「はぁーーー……」


ペタン……


 と脱力し、床に座り込むキーノ。

どうやら、内心かなりビビっていたらしい。


「戦闘に成らなくて良かったぁ~~流石に僕一人じゃ、本気の彼女相手は危ないからね。」


 別に勝てない訳では無いが、相討ち位はあり得た。

それ位の強さが彼女にはあった。

一回戦で負けていたのは、相手がそれなりに強かったのと、レビィアスの戦闘経験が少なかった事、更に分体で弱体化した上に鏡華に憑依していた為勝手がかなり違っていた事が重なった結果である。

決してレビィアスが弱い訳では無い。


「それにしても、分体であの強さか……厄介なのに目を付けられちゃったな……ただ、四大スキルってのは気になるなぁーー…それに運命?彼女は何を知ってるんだ?もっとちゃんと思考を追えてたら…いや、今は取り敢えず皆の所に戻るか。」


 一人で呟きながらそう結論を出すと、キーノはその場から何の前触れも無く、忽然と姿を消したのだった。


〇〇〇〇


ツカツカ……


 キーノと別れた後、鏡華に憑依したレビィアスは酷く機嫌が良かった。


「ふふ、ふふふふふっ!「嫉妬」を育てる為にあの娘に掛けた呪いが上手く機能しなくなったのは残念だけど…まさか「邪神」が新たな宿主に宿っていたなんて♪あの力があれば今度こそ、母様を助けられる筈!!その為にも、彼を私達側に堕してみせるんだから♪ふふふ!」


 レビィアスの顔は歓喜に満ちていた。

最初の不機嫌が嘘のようである。

しかしそれも無理は無い。

コンプトウラ達がダンジョンコアとされてたから一万年もの間、レビィアスは自身の力を育てる為に、1つのスキルを創り出した。


 それが七罪スキルの1つ「嫉妬(コガレルモノ)」。

その効果は、スキル保持者の嫉妬心と、保持者へ向けられる嫉妬心を数値化し、その数値をステータスへと均等に分配し加算すると言うものだ。

そして加算される数値によって多くの耐性を獲得出来る上、数値が一定値を越えるとオートリジェネが際限無く発動するので、単純に滅茶苦茶打たれ強くなる上に力も速さも強く、速くなる。

実に厄介なスキルだ。

が、このスキルには欠点が有った。

それは契約スキル全てに存在するもので、所謂代償である。


 「嫉妬」の場合、それは「嫉妬」意外の全てのスキルが使用不能になると言うものだった。

「嫉妬」の効果を考えればそれは致命的と言える。

正に「嫉妬する者(コガレルモノ)」と言う訳だ。

しかしスキルを強くするなら他者からの嫉妬心を集めた方が効果的だろう。

故に、レビィアスは1つの解決策を生み出した。

それが代償の肩代わりである。


 そう、ファネルに掛かっていた呪いとは、この代償の肩代わりだったのだ。

レビィアスはずっと、一万年もの間、双子の兄弟姉妹を宿した妊婦を見付けては、一方的に産まれる前の胎児にスキルと代償を与えてきたのだった。

それが今回はファネルと、彼女の弟に施されたと言う訳だ。

因みに弟はファネルの故郷の皇太子であり、既にレビィアスの傀儡に成りつつある。


 実はスキル所持者と呪い所持者はレビィアスとパスが繋がっており、レビィアスはそのパスを通じて、所持者の精神へと幾等か干渉出来るのだ。

そして、レビィアスがわざわざ双子に拘ったのもこのパスにある。

簡単な話、双子でなければパスが上手く作れなかったからだ。

その上で子供を安全に育たせるには階級が上の存在が望ましかったのである。

故に、レビィアスのスキルはだいたい王公貴族に授けられて来た。

で、だ。

その繋がりが突然弱くなった事を感じ、その調査をした結果―――


「―――今に至るって訳だけど……邪神のスキルが復活してるなら良しとするわ。何せ、()()はこの世界最強のスキルなんだから。そして、きっと今回の出会いは偶然じゃない。きっと、彼に課せられた試練の筈!なら、ワタシはそれを利用してやるだけ。ふふふ♪一万と二千年前のかつて、突然現れ、世界を破滅させ掛けた邪神、そのスキル……必ずモノにしてやるんだから!」


 こうして、キーノ達の知らない所で、背負わされた歯車は噛み合い、少しずつ回り始める。

その先に何が有るのか、誰にも分からぬままに……

キーノが初めて四大スキルの存在を認識したようです

此処からどうなって行くのか……

いやぁ、楽しみですね♪


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