クラン大武道会6
すみません、今日は短めです。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
狂気の線引きは、意外と難しい
「わふう…細切れにしてあげますね♪」
そんな物騒な台詞をにこやかに言いながら、ハルナは二振りのナイフを構える。
その姿は、戦い始めてかり僅か数ヶ月とは思えない程堂に入ったものだった。
それだけで、ハルナが相当な修練を積んだ事が分かる。
「くそっ!!低級テイマーが舐めるなよっ!!!私達はこれでも魔法も剣も使えるのだっ!!!例え弱体化していようとも、君一人程度に負けるものかっ!!!!行くぞっ!!!!」
オオオォッ!!!!!!!!
蠱毒の坩堝のメンバーは、全員全身を覆う色とりどりのローブ姿をしていたのだが、そのローブの下には剣や盾を隠していたらしく、ヴェルマの掛け声と共にそれらを構え、ハルナ目掛けて突進して来る。
しかし、それは考え無しの破れかぶれでは無く、何度も訓練された様な、いや、実際に何度も訓練したのであろう見事な練度の連携攻撃だった。
先ず、一番先頭に出た者が両手剣を上段に構え、わざと隙の大きい避けられやすい幹竹割りを繰り出す。
その際、逃げる方向を限定する様にハルナから見て右側に攻撃を寄せ、ハルナが左に避けるよう誘導する。
其処に待っているのはハルナに向かって振り下ろされる袈裟斬りだ。
その後ろから槍を持った二人が迫り、最後にはヴェルマともう一人が魔法を準備中だ。
どうやら、口先だけ、もしくは特殊スキルだけの雑魚では無かったらしい。
(わふぅ……人格が釣り合えばモテる…までは行かなくても、今より良い思いは出来たんだろうなぁ……残念な人達です。)
ハルナは目前に迫った攻撃を見ながら、蠱毒の坩堝をそう評価する。
そこには慌てた様子など微塵も無い。
そもそも慌てる必要性も無い。
今のハルナにとって、彼等の攻撃は遅過ぎる。
「わふ!取り敢えず、有限実行です♪」
ヒィィン……
不思議な音が、会場に響いた。
金属質な音だった。
何処か耳鳴りの様な酷く高い、だが耳障りでは無い。
そんな音。
「あれ?あの娘はどこにぇ……!?」
ブパっ!!!
ドサドサドサッ!!!
「はっ!?一体、なにぐぁっ……!!?」
ブブパッ!!!
ドサドサドサッ!!!!
前衛二人が、ハルナの姿を見失ったと思った瞬間。賽の目状の細切れにされ、絶命する。
そのあまりの光景に、実況のアリエスタはおろか、解説のカサルナやサバラル、観客までも言葉を失う。
それを観て、キーノはやり過ぎだと頭を抱えていたが、カナタやキリアーネ、キョムにファネルはキーノよりはマシだし良いかと言う表情だった。
普段からどれだけキーノに振り回されているかそれだけで分かろうと言うものだ。
「わふう。きったないサイコロステーキですね。食べる価値処か触る価値も無いですね。光になって消えるから、掃除が楽なのは助かりますね~~♪」
静寂に包まれた会場で突然響く場違いに明るい声。
其処に眼を向ければ、天真爛漫な顔を浮かべるハルナが二振りのナイフをクルクルと弄んでいた。
あれだけ悲惨な殺し方をしておいて、何と無邪気な顔を出来るのか……
会場に居た人々は、そんな風にハルナに対して恐れを抱き始める。
「な、何なんだい君は!!単なる低級テイマーじゃ無かったのか!?」
「わふぅ?私は一度も私がテイマーだなんて言った事は無いですよ?まあ、テイマーでもありますが、私の本職は双剣使いなので。」
ヴェルマの叫びにそう答え、ハルナは両手のナイフを見せ付ける。
彼ともう一人はそれを見て呻く様な声を出し、直ぐ様準備していた火炎槍を放つ。
幸いハルナの居る位置は中衛だった槍使い達から離れており、魔法の射線が通っている。
だが―――
「はい、また二人です♪」
(また、まただ……!!何故、何故見えないんだ!!?)
―――ハルナが一瞬の内に消えたかと思うと、次の瞬間には仲間が文字通り細切れになって死んでいるのだ。
最早これは戦い等では無い。
強者による一方的な狩りだ。
『は、な、なああああんと言う事でしょうかああああああああっ!!?ハルナ選手、たった一人で、蠱毒の坩堝を圧倒しております!!しかも、彼女の手に掛かった方達はハルナ選手の宣言通り細切れになってしまいました……!!そしてそんな倒し方をするとは思えない程無垢な笑顔を浮かべる姿は最早狂気!!彼女は「天真爛漫」と言う通り名をお持ちらしいですが、どちらかと言うと「狂気乱舞」と言う印象を受けている私です。』
『いやはや、まさか此処まで強いとは思いませんでしたね。余りの事に暫し言葉を失ってしまいました。これでは解説失格です。』
『ニャーーオイラもおんなじだから気にすんニャ。しっかし、今のは多分ユニークみたいなスキルは使ってねえニャ。』
『えっ!?あれ、素の能力なんですか!?』
復帰したアリエスタ、カサルナ、サバラル三人の会話を聞いて、観客達がざわざわとざわめき始める。
ヴェルマもそれを聞いて、驚愕に目を見開いていた。
『ありゃー多分、通常スキルと種族アビリティ、其処に素のステータスが乗ってんだろうニャ。』
『種族アビリティとは?』
『種族アビリティは、レベル70以上で目覚める種族固有の特性です。70レベルで1つ目覚め、以降50上がる毎に更に1つずつ目覚めて行きます。』
『つまりハルナ選手のあの速さはスキルとアビリティが関係していると?』
『ま、素のステータスも相当だろうけどニャ?多分持ってるアビリティは、動体視力を上げる「狼の眼」にAGIを上げる「獣の脚」迄ニャろうしニャ。』
『え!?それって基礎レベルが120越えてません!?』
先程よりも大きく驚くアリエスタ。
無理も無い。
何せこの世界の住人の多くは、冒険者であろうとも、生涯を掛けて上げられるレベルが90にも満たない者が大半だ。
何せレベルが70を越えると、オルンも異邦人も経験値の取得に制限が掛かり、同格か格上からしか経験値を得られなくなる。
だからこそ、開魂の腕輪の様なアイテムは貴重なのだ。
「わふぅ…バレちゃいました。まあ、隠して無いから良いですけど。」
「(パクパクパクパク)」
ヴェルマは驚きの余り声が出ず、ハルナを指差しながら、金魚の様に口をパクパクさせているだけで、隙だらけだ。
だが、ハルナは敢えて攻撃せず、ヴェルマへと話し掛ける。
「私、これでもパーティーでは最弱なんですよね。クランでも下から4番目位で、師匠達には一撃も入れられ無いんです。だから、私程度に勝てない貴方達じゃ勝負にもなりませんね♪」
その言葉に、ヴェルマと最後の一人の顔が、青を通り越して白くなる。
「因みに私の今のメインジョブは「闘従魔師・双剣」って言うんです。わふぅ、分かります?私、テイマーでもあるんです。」
ニコリ
とハルナが優しく微笑んだ時だった。
バキッ!!
ズブッ!!
そんな音が会場に響く。
見れば、一人が前のめりに倒れ掛け、ヴェルマは月晶兎のムクの角で、喉を貫かれていた。
それは、完全な致命傷であった。
「そん、な……」
「わふぅ…確かにムクちゃんは、これ以上進化出来ないですし、レベルだってもうすぐ頭打ちですよ?でも、戦えない訳じゃ無いんですよぅ!だいたい、ムクちゃんが可愛いからテイムしちゃっただけで、強いからテイムする訳じゃ無いんです!!全く!!これだから―――」
薄れゆく意識の中、ヴェルマが聞いたのはそんなハルナの愚痴だった。
それを聞きながら、彼は―――
「もう威張り散らすのは止めよう……」
―――と思ったのだった。
こうして、第一回戦Aブロックの最終試合はキーノ達竜の黄昏が圧倒的勝利を納めたのだった。
ハルナは有言実行するタイプです
なので最後の二人も綺麗に細切れにされました…(;・ω・)
ハルナ、恐ろしい子っ……!!( ;∀;)
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