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ゲバリー伯爵家、その転落

無差別は、時に差別よりも差別的だ……

 その昔―――と言うか50年程前の事だ。

このネストはとある伯爵家により暗黒の時代を迎えていた。

その原因の伯爵の名は―――



            ゲバリー伯爵



 ネストは此処等一帯を納めるアルテリア辺境伯領の領主、ファルミス・ブィル・アルテリア辺境伯の第二の領都と言われる位発展した土地だ。

それ故に、税収も多く、中央政府から街の監視と管理の為に派遣された監察官がゲバリー伯爵だった。


 だが、ゲバリー伯爵が初めて派遣されたのは今から120年前になる。

そしてゲバリー伯爵は純粋なヒューマンである為、寿命は100年そこら迄しか無い。

つまり、ネストに暗い影を落としているのは初代の子孫である。

関係としては三代目。

初代の孫にあたる「ゼニーニ・ブル・ゲバリー」である。

因みにファルミス辺境伯はハイエルフなので普通にその程度は生きれる。


 さて、通常この世界でも地球でも、爵位は土地に有るモノであり、個人が持つモノでは無い。

つまり、貴族=領地持ちとなる。

だが、ぞんな貴族達の中にも、領地を持たない者達が居る。

それが法衣貴族、地球で言うところの法服貴族の様な存在で、彼らは役職に爵位が有るので、普通の貴族よりも身軽に動く事が出来る。

その為、こうした仕事を国から依頼されるのだ。


 で、この法衣貴族、子が親の仕事を継ぐ事で爵位を継承出来る仕組みになっているのだが、その場合かなり厳しい審査を受け、人格、教養、思想、礼儀作法に道徳心等々、様々な要素を診られ、その上で合否を言い渡される事になる。

なので、かなりの狭き門であり、合格者は基本的にはかなりの人格者ばかりとなる筈なのだ。


 では、何故三代目ゲバリー伯爵であるゼニーニがネストを苦しめているのか、だが……

端的に言おう。

賄賂と脅迫による不正である。


 ゼニーニの父、「ゼンナー・ブル・ゲバリー」は、ゼニーニの祖父であり、ゼンナーの父たる「ゼンノー・ブル・ゲバリー」と共に、貴族とは思えない程の人格者であった。

誰に対しても優しく、例え犯罪者であっても、先ずは話を聞き、その上で沙汰を出す。

更には子供の悪戯には怒らず、優しく諭し、何が悪いのかを教える様な出来た人だった。

がっ!!

そんなゼンナーにも、弱点は有った。

ゼンノーに唯一劣っていた点でもある。

それは―――



            子育て



―――だった。


 ゼンナーは、子煩悩が行き過ぎた、所謂親馬鹿のモンスターペアレントだったのだ。

しかし、其処は人格者のゼンナー。

自分の行いが行き過ぎている事はちゃんと自覚していたので、何とか直そうとはしたのである。

だがそんなゼンナーを不運が襲う。


―――――病だ。


 ゼンナーが罹患したのは「慢性(まんせい)魔力(まりょく)漏洩病(ろうえいびょう)」と言う病で、常時体から魔力が漏れ続けると言うものだった。

この世界において、魔力を使い切ったとしても直ぐに死ぬ事は無い。

だが、プレイヤーならまだしも、オルンが魔力を使い切ると慣れていなければ気絶してしまう。

また、アバターとは違い、オルンは一人一人種族値にバラつきがあり、アバターの種族値はそのだいたいの平均から来ている。

そして、ゼンナーは魔力――MPが平均よりもかなり低く、回復速度も遅かった。


 その為、病を発症してからは常に魔力枯渇症と呼ばれる症状に苦しみ、録に政務を行え無い状態であった。

毎日何本ものMP回復ポーションを飲み、症状を緩和しながら、仕事に打ち込む毎日で、息子であるゼニーニの矯正など、とても出来なかったのである。


 またこの時、ゼンナーは中央政府たる王都議会に代わりの監察官を派遣するよう要請していたのだが、タイミング悪く直ぐに動ける貴族が居なかった為にゼンナーが騙し騙し政務を行う羽目になったのだった。

そして、その時は訪れる―――


「父上!父上!お気を確かに!!」


「ゼニーニ…私は、もう…駄目だ……」


「そんな……っ!父上!!」


「我が、息子よ…私は、残念で、ならない……」


「父上…大丈夫です。家は、私が守ってみせます!」


「無理だ…お前、では……私は、残念で、無念で…ならないっ……!結局、結局お前を―――」


「………はぁ…もう喋らなくても結構ですよ、父上。後は、貴方の拇印さえ有れば結構ですから。本当なら、私に財産を相続すると、しっかりと言質を取れるのが一番だったのですが……まあ、良いでしょう。書類の偽造、捏造等、容易いものです。」


「―――お前を、更正させられ無かった……」


 これが、ゼンナーとゼニーニが交わした最後の言葉だった。

無念の内に死んだゼンナーの横で、ゼニーニは欲望で醜く歪んだ笑顔のまま高らかに笑っていた。

ゼンナー、享年67歳、ゼニーニ、当時15歳の夏の日の出来事であった。


 そこからのゼニーニの動きは早かった。

電光石火と言っても良い。

先ず家臣の多くを入れ替えた。

父親の様な出来た人間を弾き、自分に追従し、且つ能力の高いヒューマンばかりを選んで手元に置いた。

これで、ゼニーニは家の中での地位を確固たるものにしたのだ。

その後、王都の審査員達を調査し、弱みを握って脅迫。

弱みを握れ無かった者達は多額の賄賂で買収した。

こうして、ゼニーニは屑のまま、引き継ぎの審査を通過する事に成功したのだった。


 そして、ゼニーニは悪逆の限りを尽くし始める。


「そんなっ!?そんなに税金として持っていかれては、マトモに生活が出来ません!!!」


「なら、マトモに生活しなければ良いだろう?お前達はただ黙って働いて得た収入を私に渡せば良いのだっ!!その為にお前達平民は居るのだからな!おっと、領主に言い付けようなんて思うなよ?不審な動きをした者がどうなったかは知っているだろう?くっくっくっはーーーはっはっはっはっはっ!!!!」




「いやっっ!!やめて!やめて下さい!!私、婚約者が居るんです!!」


「ああ、知っているよ。あの無礼な男だろう?君を一晩貸せと言ったら殴り掛かって来た。」


「え……?か、彼は、どう―――」


「どうなったか教えてあげよう。今頃()()()仲良く広場に()()()()いるだろうね。だから、君は婚約者の事等気にしなくて良い。」


「ああ、あああああ……!いやぁ…いやぁぁ……そんな、そんなの……そんなのやらああああああああああああ……!!!!」


「ふふふふふふははははははははっ!!!!あーーーーははははははははははははははははははは!!!!!!」




「おや、こんな所で君は何をしているのかな?」


「ご、ゴミ拾い、です……」


「ほほう!それは感心だ。だが、それでは大したお金は稼げ無いだろう?」


「―――はい……」


「ふむ、なら私の屋敷に来ると良い。君なら良いメイドに成るだろう。」


にちゃあ……


「い、いえ…僕は学も無い平民ですし……そ、その…お、男なの、で…メイドは、無理かと……」


「なぁに、それはそれで乙なものだよ♪」



―――等の行いを10年以上も続けていた。

だが、その生活は唐突に終わりを迎える。

たった一人の冒険者の登場によって。


「お願いします!どうか!どうか!我々に力を御貸しください!!Sランク冒険者、「ターラマヨ・ベル・フレア」様!!」


「良くってよ。ただし、それに見合った対価は頂きますわ。」


「は、はいっ!!我々に出来る事なら、なんなりと!!」


「なら、今日からこの街を、ワタクシの支配下に置きます。」


「えっ……!?そ、それは―――」


「大丈夫ですわ。ワタクシ、配下には優しいんですのよ?」


 こうして、ターラマヨ主導によるネスト奪還作戦が開始された。

しかし、それは酷く一方的で、最早ただの蹂躙でしか無かった。


「ほーーーーほほほほほ!弱過ぎますわね?いえ、ワタクシが強過ぎるのかしら?平均Bランククラスの私兵を集めたのは見事ですが……特殊スキルへの対処が出来ないなら、ワタクシには雑魚同然ですわ。さて、では皆さん。復讐の時間ですわよ?」


『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』』』』』


 その後、私兵全てをターラマヨにより始末された屋敷は、ゼニーニやその家族、屋敷勤めの使用人達の断末魔が響く阿鼻叫喚の地獄絵図が広がる事となる。

これにより、ゲバリー伯爵家は滅亡し、ターラマヨが半ば強引に後釜の様な形で入り込んで来たのだ。

当然、国はそれを良しとしなかったが、ターラマヨは一応子爵令嬢であり、伯爵等級の扱いを受けるSランク冒険者でもある。

その為、国としても強く出れず、手をこ招いている状態が数ヶ月続いた。

するとどうだろうか。

ネストはターラマヨの手腕により瞬く間に持ち直してしまったではないか。


 こうなってしまうともう、国としてもターラマヨを監察官として認めるしか無く、ターラマヨを独立した子爵として叙爵した。

そしてそれを受けて冒険者ギルドは、ターラマヨをネスト支部のギルドマスターに指名。

これは国とギルドによる連携で、ターラマヨの動きを封じようと言う企みだったのだが、当の本人は何処吹く風とばかりに自由気ままに過ごしていた。


 そんなこんなを経て現在。

最近まで隠れて力を蓄えていたゼニーニ達は、街とターラマヨへの復讐心に燃えていた。

そして屋敷の地下、隠し通路の先の秘密の部屋では―――


『ふふふ!復讐してやる!復讐してやるぞおおおおおおおおおおお!!!!ただの被害者だった僕まで殺したこの街の連中全員!!僕の手で殺してやるうううううううぅぅぅぅ!!!!』


―――あの日、無理矢理ゼニーニに持ち帰られ、男の娘メイドにさせられた上に、生きる為に必死で働いていたら街の人達に殺された憐れな少年の霊が、ダンジョンマスターに成り掛けていたのだった。


『皆皆みんなミンナアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

あの屋敷で一番強い怨念を抱いて居たのは彼だった為、変異仕掛けている進化する宝玉に選ばれたのです

きっと、街の人達は溜まっていた鬱憤+初めての殺人でブレーキが効かなかったんですね……


面白いと思えましたら、感想、評価の方よろしくお願いいたします

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