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ハウス探検

トラブルの種は、何時でも何処にでも転がっている。

 キーノ達主要メンバーがギルドの講習へと向かった後、マート達はクランハウスとなったオンボロ幽霊屋敷へと入って居た。

これはキーノ達からの指示で、マート達の部屋決めの為に、自分達の部屋にしたい場所を決めてくれと言われたのである。

つまりは屋敷探検だ。


「とは言ったものの……ちょっと大き過ぎません?下手な大学の敷地より広い気がするんですけど……」


「何でも、最大で300人程の使用人と、200人程の私兵と共に住んでいたらしい。その為、裏手の庭には鶏舎と畑が有って、食糧の二割程をそこで賄っていたとか。」


「そんな場所を攻め滅ぼすとは……一体どれ程の悪党なら、其処までの怒りを、買うのでしょうね?」


「もう街全体を敵に回したようなもんだったんじゃない?多分それ、領主も絶対加担してるでしょ?」


「まあ、何にせよ。この広さだと部屋が多過ぎて困りそうですね。」


「贅沢な悩みですね。」


「言えてる~~」


「ああ、言い忘れていたが、私やキーノ殿達の部屋はもう決めて有る。一応目印として色付きのリボンを部屋の出入口に貼ってあるから、それが貼って無い所から選んでくれ。」


「了解です。ですが、それならファネルさんは残らなくて良かったのでは?それとも、用事が他に何も無かったと言う事ですか?」


「いや、今日のアタシは貴殿方の護衛なんだ。」


「護衛、ですか?」


「護衛?なんで?」


 そこでファネルは少し言い辛そうにしながら言葉に詰まるが、何かを諦めた様な顔をしてから、話し始める。


「一応一通り確認は済ませたが、それでも我々のチェックを潜り抜けて消滅を免れた悪霊の残党が居るかもしれないからな。その場合はアタシが貴殿方を守る様に言われてるのさ。」


「げっ!?居るんですか?!掃除残し?」


 露骨に嫌な顔をするマート。

それを見て何か思い至ったらしいピスタチオが気配を消してマートの背後へと歩み寄る。

しかし、ナチュラルに掃除と言っている辺りマートも中々酷い。


「いや――ただの念押しなのでな、そんなに警戒しなくても大丈夫だ。」


「ホントですか?信用しま―――」


「わあっっっっ!!!!!!!!!」


「…………っ!!!!!!!!!????」


ビョンッ!!!!


 背後から突然大声で驚かされたマートはかなりビックリしてしまいその場から右に向かって思いっ切り飛び退く。

その表情は驚愕に見開かれている。


「っ!?っっっ!!!!!?」


 何が起きたか分かっていないのか、辺りを見回している。

何とも小動物的な動きだ。

で、少ししてピスタチオの悪戯だと気付き、ムッとした顔になるマート。

ピスタチオは悪戯の成功に酷くご満悦で、ファネルは苦笑いを浮かべ、キョムは一心不乱にその姿をゲーム機能で録画を行っていた。

一人だけ行動が怖い……


「やっぱりマート君ビビり易いんだ?普通あそこまでビックリしないでしょ?」


「確かに、見ていて気持ちが良い程の驚きぶりだったな。アレ程のリアクションは、様々な国の王都で観てきた漫才師や芸人達にも、中々居ない。」


「ふふふふ!そうでしょう!そうでしょう!マー君のリアクション芸は、最早超一流の域にあるのです!見ているだけ、で笑みが零れてしまいます。」


 ピスタチオとファネルの会話に、何故かしたり顔で混ざって来るキョム。


『マー君は私が育てました!!』


と言わんばかりの笑顔である。

若干ウザい。


「いや、突然驚かされたと思ったらなんでリアクション評価されてるんですかっ!?まず謝罪をもらえませんかね!!?」


「さーせんしたっ!!」


「雑ぅっ!!!?」


「うむ、やはり良いリアクションだな。」


「ええ、満点です。」


「そっちはそっちで何の評論家なんですかっ!?」


 そんな感じでじゃれ合いながら、四人は部屋部屋を回って内部を確認して行く。


「やっぱり、個人部屋よりも相部屋の方が多い感じですね。」


「ですが、一部屋一部屋、かなりの広さですから、窮屈さは無いです。」


「っにしても、どの部屋も陽の光が入って来るのは凄いよね。明らかに陽当たり悪そうな位置の部屋でも、窓から陽の光が射してたじゃん?でも窓の外には太陽無いんだよ!?凄い不思議!」


「ああ、アレは「サンライトグラス」と言う魔道具の一種だな。二枚で一対のガラスでな?どちらかが太陽光を受けると、もう一方から受けた分の半分が放射されるのだ。ま、空間魔法系のエンチャントがされているんだろうな。」


「成る程…原理としては、ゲート系の応用、でしょうか?」


「恐らくはそうだろう。とは言え、アタシは専門家じゃ無いからな。あまり詳しくは無いんだ。すまないな。」


「いえ、色々と、参考になる話でした。有り難うございます。」


フォォン……


「ん?」


「マー君、どうかしましたか?」


 18部屋目を見終わり、次の部屋に行こうとした所で、マートが突然立ち止まり、辺りを見渡す。


「今、何か音が聞こえた気がして……」


「え~~?何その突然なホラームーブ。いくら何でもベタ過ぎない?」


「いや、マート殿は“白翼族”だろう?翼人系の者達は獣人系の者達並みに耳が良いのだ。まあ、能力的には視力の方が高いが、我々の中では、一番聴力が高いのは間違いない。次点は“黒水族”のキョム殿だろうな。」


まあ、つまり―――


「我々に聞こえない音が聞こえたとしても、不思議は無い。」


「っ!では、此処から先は慎重に行くとしましょう。マー君は、音が聞こえたであろう場所への案内をお願いします。」


「了解です。」


「オッケーー」


「では、アタシは魔法で援護しよう。」


「格闘家なのに、魔法も使えるんですね?」


「ああ、苦労したがな。お陰で、今は魔法の使える格闘家、「魔闘士」になれた。」


「複合型中級職ですか?凄いですね!」


「はは、この程度は至って普通さ。それより、空気が変わった。」


 ファネルのその言葉に、一行の緊張感が一気に高まる。

そしてマート達もまた、そこから先の空気が何処かヒンヤリとした、背筋に来る様な嫌な冷気が満ちている様な感覚を覚える。

それと同時に、マートとキョムの耳には、何かが動いている――しかし生き物とは思えない――不思議な音が届いていた。


フォォン……

フォォォォォン……


「この音は、ゴーストだな……」


 音に導かれるままに進んでいると、音が聞こえたらしいファネルがポツリとそう呟く。


「ゴーストって、意外と煩いんですね……」


「と、言うか、ホントに残党が残っていましたね。」


「フラグ回収早いなぁ~~」


「いや、この音……此処までと成ると、かなりの数が居る筈だ。残党等と言える規模では無いぞ!?」


「「「え?」」」


〇〇〇〇


『クックックックックックッ!!まさかあやつらも、本隊が隠し通路の先の秘密の部屋に隠れて居たとは思うまい!!!これで今度こそミッションをやり遂げ、この館をダンジョン化しなくては!!そうして私達家族を殺したこの街の住民共を!私の手で!!――幽霊だから透けるけど―――兎に角私の手で!!くびり殺してやる!!!!一人残らずだっ!!!!!!』


『格好いいわ!貴方!!』


『パパスゴーーイ!!!!』


『パパ最強ーー!!』


『有り難う!有り難う!我が妻、我が子達よ!!全く!税金として売上の8割を徴収したり、ちょっと顔の良い娘を味見したり、無礼な平民を寂しく無いよう知り合い事皆殺しにしただけで、私ごと家族まで全員殺すとわ!ふざけおって!!』


『え?貴方、浮気してたの……?』


『―――さあ!各自屋敷に散らばれ!!後一時間!後一時間屋敷を我らで満たせば、この屋敷はダンジョン化する!!』


『ごうらっ!!!?無視すんなやこのハゲっ!!!!浮気してたのかっ!?って聞いてんでしょうが!!!!!?』


『パパサイテーー』


『パパカッコ悪い……』


『ああ忙しいなぁーー忙し忙し。』


 屋敷の中心地辺り、貴族御用達の謎にだだっ広い食堂、其処では頭の禿げ上がった腹が突き出し掛けている中年男性のゴーストが、周りを飛び交う数百匹のゴーストへと指示を出して居る。

どうやら、この屋敷はダンジョンに成り掛けていたらしい。

其処に丁度良く、キーノ達がやって来て、僅かにダンジョンに成るまでの時間が伸びたと言う訳だ。


 そんな話を、食堂から少し離れた位置から、マートとキョムは聞いて居た。


「………どうします?」


「どうするも何も、殲滅しか無いんじゃ無いですか?存在を許しておける相手では無いでしょう?」


「いや、戦力的な問題って事ですよ。」


「何だ?厄介な状況なのか?」


「ウチら聞こえないから詳しく話して欲しいんだけど~~?」


「あ、すみません。えーと…その、実はですね―――」


 と、マートは今聞こえて来た話を他の二人にも話して聞かせた。

正直直ぐに殲滅を行いたかったが、戦力的に戦えるかどうかの判断は、マートだけでは出来ない。


「それは、非常に不味いな……正直、今すぐ行動しなくては、手遅れになるかも知れん……」


「ギルドに援軍頼みたいとこだよね。でも、直ぐに動ける人集めても、残り時間考えるとダンジョン化の方が早いかも。」


「けど、僕らだけでは心許ないですし、ギルドに報告しない訳にはいきませんよ?」


「―――――、そもそも、この状況になる事を、キーノさんは気付いて居なかったのでしょうか?」


「「「…………っ!!」」」


 何気無く放たれたキョムの疑問に、三人はハッとした様な顔になる。

と言うのも、既に四人はキーノ、カナタ、キリアーネら三人のユニークスキルについて聞いており、キーノが鑑定系、感知系最上位とも呼ぶべきスキルを保持しているのを知っているのだ。

なので、其処から考えるに、キーノが屋敷の現状を知らない等考えられないのでは無いか?

と、そう思い至ったのである。


「ファネルさん。」


「いや、アタシは貴殿らの護衛しか―――待てよ?まさか、だが……それなら…あるいは―――」


「成る程。どうやらキーノさんは知っててファネルさんを残したようですね。」


「結論早くない!?」


「まだファネルさん考え中なのに……」


「――――ん?何か言ったか?」


「キーノさんは、私達四人にゴーストの殲滅をさせるつもりだろう。と、言ったんですよ。」


「結論が早くないか!?」


「「それ、もう言いました……」」


「ところで、話は跳びますが、ダンジョンに成る前からダンジョンコアは有るもの何でしょうか?」


「普通変わりますが、じゃない!!?確かに跳んでるけども!!」


「マー君、今は真面目な話をしてるんですよ?」


「普段率先してふざけてるのに!?でもまぁ、確かにそうですね。」


 嗜められ、若干の理不尽さを感じながらも渋々引き下がるマートを横目に、軽く咳払いをしてからキョムは話を続ける。


「んんっ!話を続けますが、今、この屋敷の地下にはダンジョンコア、もしくはコアに変化する何かが有るのでしょうか?」


「それは――“有る”だろうな。昔聞いた事がある。ダンジョンに成り掛けてる建物や洞窟の奥には、変異仕掛けている“進化する宝玉エボリューションジュエル”が有ると。」


「ならっ!!」


「その“進化する宝玉”を奪えば良い、と言う訳ですね。」


「だったらやりようはあるんじゃ無い?」


「そうだな。恐らくダンジョン化を阻止するにはそれしか無いだろう。」


「では、私達「宵闇」初の作戦会議といきましょう?クエストはクランハウスのダンジョン化阻止及びゴーストの殲滅です。」


「役割分担が重要ですね。」


「何かワクワクして来たーー!」


「ああ!キーノ殿達を驚かせてやろう!!」


「それでは時間も有りませんし、サクサク決めて、さっさと終わらせてしまいましょう。」


「「「了解!!」」」


 こうして、キョムを参謀に突然始まったクランハウス奪還作戦は、ゴーストに気付かれないよう静かに、けれど素早く始動したのだった。

本当はハロウィンに間に合わせたかったんですが、1日遅れてしまいました…

しかも、当初はこの話で簡潔するつもりだったのに、何故か持ち越しに…

何故だ…

取り敢えず気を取り直して更新して行こうと思います


面白いと思えましたら、感想、評価の方よろしくお願いいたします

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