クランの立ち上げ2
おおらかと、大雑把とは似て非なるものだ。
―――ギルド・ネスト支部―――
その一階では、今まさに新たなクランが立ち上げられようとしていた。
「いらっしゃいませ。本日はどの様なご用件でしょうか?」
「新しくクランを立ち上げたいんで、その登録手続きをお願いします。」
「クランの立ち上げですね?失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「メンバー全員ですか?」
「代表者様で結構です。」
「カナタと言います。」
「カナタ様ですね?少々お待ち下さい。――――――――お待たせいたしました。申し訳ありませんが、現在カナタ様達は正式なクラン設立が出来ない状態となっております。仮設立となってしまいますが、よろしいでしょうか?」
「はい、そちらは承知済みですので問題無いですよ。」
「畏まりました。有り難うございます。それでは、こちらが記入用紙と諸注意を記載した書類になります。記入は横の記入スペースでお願いいたします。ご質問等がございましたら、こちらの者にお聞き下さい。それと、申し遅れましたが、私、受付嬢の「リナリア・ウェルズ」と申します。彼女は「ミリアナ・ランド」でございます。以後、お見知り置きを。」
「ミリアナです。よろしくね♪」
「ご丁寧に有り難うございます。先程も言いましたが、カナタと言います。改めてよろしくお願いします。リナリアさん、ミリアナさん。」
「「こちらこそ。」」
一通りやり取りを終えたカナタは、必要書類に目を通し、記入事項へと淀み無く記入していく。
此処等辺は既に一通りネットで調べ、メンバー達と相談して予め決めていたので、問題は無い。
「―――――っし!書けたな。それじゃ、此れでお願いします。」
書けた書類を先程紹介された青髪のユルフワお姉さんな受付嬢のミリアナに渡す。
「はい、はい、記入は問題ありません。リナリアさん、受領処理お願い。」
ミリアナはそれを最初に対応してくれた緑髪のキャリアウーマンな受付嬢のリナリアへと渡した。
リナリアは素早く書類を確認すると、内容を読み上げカナタへと最終確認を行う。
「はい、確かに問題ありませんね。それでは、四人組のパーティー「竜の瞳」と同じく四人組のパーティー「宵闇」を合わせて、クラン「竜の黄昏」を立ち上げる、と言う事でよろしいでしょうか?」
「はい、間違いありません。」
「では、この内容で問題ありませんので、これでクラン立ち上げの登録手続きを終えたいと思います。お疲れ様でした。それでは後程、クラン運営等に関する講習を行いますので、代表者様のカナタ様と、幹部の方々はギルド奥にあります講習室へとお越し下さい。時間は1時間程後になりますので、所用がございましたら、先に片付けて頂いて結構です。また、講習の時間は2時間を予定していますので、お手洗い等は済ませておいて頂けると助かります。」
「分かりました。では後程窺います。」
「はい、ギルド職員一同お待ちしております。」
そう言葉を残し、ギルドを後にする八人と一匹。
これが、後に最強クランの一角とされる「竜の黄昏」が設立された瞬間だった。
〇〇〇〇
「さてと、これで仮とは言え、クランは創れたな。」
「パーティーも、これで正式登録されたしね。」
「まさかパーティー名を入れないと、仮登録にしか成らないなんて、思いもしませんでした……」
「システムでのパーティー登録とは違うんですね~~」
「キュ~~」
この世界、ゲーム的なパーティー登録システムで、パーティーを組めば、経験値の分配やら報酬の分配やらは全く問題無いが、ギルドに正式なパーティー登録をする為には、パーティー名の記入が必須となる。
これは、パーティーを組まず、ソロでやる人や、お試しで組んで直ぐに解散してしまう人達が居る為、個人は登録しても、パーティーは申請が無ければ登録しなくなったのが原因である。
一応、ギルドはギルドカードの効果で、誰と誰がパーティーを組んで居るか把握する事が出来ているが、何十万人も居る冒険者達の確認等、死亡しているか生きて居るかしか(カードの機能で)観られていないのが現状だ。
なので、今回の登録で、やっと世間的に正式に認められた事になる。
因みに、カナタ、キーノ、ハルナ、キリアーネの四人が、パーティー「竜の瞳」で、由来はリーダーのカナタのメインウェポンに成るだろう伝説級武器、「夕闇ノ龍牙刀」と、サブリーダーのキーノの万物鑑定、万物認識から来ている。
「宵闇」はキョム、マート、ファネル、ピスタチオの四人で、リーダーは一応ファネルだが、名前はサブリーダーになったキョムが、虚無から連想する言葉として決めた結果である。
「まあ、仕方無いですよ。登録して直ぐ解散とかやられたく無いでしょうし。」
「それが、死亡で解散、なら仕方無いですが、方向性が合わなくて解散、なら、何でパーティーを組んだのかってなりますしね。」
「あー、ウチそう言う人達見た事あるな~~」
「まあ、割と珍しい事では無いしな。」
「「「「「「「傍迷惑だなぁ(ですね)(だねぇ)……」」」」」」」
「キュッキュ……」
「ところで、これ、何処に向かってるんですか?」
話が一段落したところで、マートはふと、疑問に思った事を口にする。
ギルドを出てから、カナタが先導する形で大通りを歩いて居たのだが、何処に向かっているのかは何も聞いていなかったのだ。
「ん?あぁ~~~」
「今朝言った野暮用ですよ。」
「何か皆さんがやたらと秘密にしたがってたアレですか?」
「そうそう、ソレ。」
「わふっ、キョムちゃんは何か察してたから驚いてくれないかもだけど、マート君とピスタチオちゃんは驚いてくれるって、私、信じてるからね!!」
「ハルちゃん、大きな期待は往々にして、裏切られるんだよ……?だから、程々に、ね……?」
「いや、しかし実際アレは相当に驚くと思うが?何せ規模が規模だからな。」
「え?何ですか?そんな大きいんですか?」
少し不安な表情になりながら、マートは問い返す。
しかし、案の定帰って来たのは生暖かな視線と苦笑いだけだった。
〇〇〇〇
「なっっんじゃこりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!??!!!!!!!!!????」
マートの驚きに満ちた叫びがネストの街に木霊する。
その目は、飛び出さんばかりに見開かれ、口は顎が外れんばかりに開かれている。
どう見ても百点満点中二百点は貰えそうな迄の見事な驚きぶりだった。
キーノ、カナタ、キリアーネ、ハルナ、ファネルの五人と、後何故かムクまでそれを見てご満悦である。
「キュッキュキュ~~♪」
「わふ、ムクちゃんが「ナイスリアクション♪」って誉めてます!実際良いリアクションでした♪」
「あ、有り難うございます―――じゃなくて!何ですかこの屋敷わ!!?」
めっちゃデカいんですけどっ!!!?
驚きながらマートが指を指す先には、この間の三馬鹿が攻め込んだ闇金のアジトの2.5倍はあるだろう巨大な4階建ての屋敷が聳え立っていた。
石造りな上、形は全体的に四角形で角張った感じがするので、シルエットだけなら学校に見えるだろうが、建物の要所要所に細かな彫刻や金属での装飾が施されており、一見して貴族か豪族等の権力者の屋敷だと判る造りをしている。
場所事態、ネストの貴族街にある一等地に建っているので、間違え用も無いが。
広い庭迄有る見事な屋敷だ。
しかし―――
「なんか、ボロく無いですか?」
「ボロいな。」
「ボロいね。」
「ボロいよ~~」
「キュ~~」
「ボロボロです……」
「ボロいですね。」
「ボッロいね。」
「ボロボロだ。」
―――屋敷は廃墟である事が判る位に外観がボロボロだった。
外壁は所々細かいヒビが入り、彫刻は欠け、金属は錆びて幾つか剥がれ落ちている。
僅かに見える木製の窓枠や正面の扉等は、腐り、砕けてしまっていた。
更には蔦が屋敷全体を覆う様に生い茂っており、今にも幽霊が出てきそうである。
「って言うか、実際居ましたしね。」
「えっ!?な、何がです……?」
「決まってんだろ?」
「わふぅ!悪霊です!!」
「今朝は、ソレの退治をしていました……」
「まあ、ほぼキリアーネ殿が退治してしまったがな。」
サラッと告げられた事実に嫌な予感を感じつつ、聞かない訳にもいかないマートは、一番聞きたい事を質問する。
「あの、その…あんまり聞きたく無いんですが……何で此処に来たんですか?」
「「「「「クランハウスにするから(です……)(だよ)(だ)!」」」」」
「キュキュッ!」
「「あ~~…やっぱり……」」
「……………」
話を聞いた時から予想していたキョムと、屋敷を見てそうだろうなと思っていたピスタチオの反応は薄かったが、マートは顔を両手で覆って膝から崩れ落ちていた。
最早言葉も無いらしい。
「いや~~、なんでも昔、領地を持たない法衣貴族?だかでこの辺の領主を監視する監察官的な役割を持った人が住んでた屋敷なんですけど。その人徴税官も兼任してたそうです。ただやり方が悪辣で、敵が多かったせいで家族全員、使用人諸とも、激怒した被害者達に皆殺しにされたんだとか。それでその時の無念で悪霊化したので、その浄化クエストが出てたんですよ。報酬が屋敷の売値を相場の四分の一にするか、金貨40枚のどちらかでして。」
「それで金はたんまり有るから買っちまう事にしたって訳さ。」
「これから掃除とか、リフォームで、大変になりますね……」
「家具も揃えなきゃですねーー!ね?ムクちゃん♪」
「キュキューー!」
「ま、少々縁起は悪いが、拠点が有るのは良いことだからな。」
「「「「「良い買い物だった(でした……)(ね)(だな)!!」」」」」
「まぁ、危険が無いなら、私は何でも良いんですが。」
「ちょっとは気にしようよキョムちゃん……」
「もう!ホント何なのこの人達ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいい!!!!!?」
1日でツッコミ所満載の出来事が連発してしまったせいで、色々限界に来てしまったマートの悲痛な叫びが、ネストに響き渡るのだった。
結局、その日はマートを宥めるのに時間を使ってしまい、予定していた内部探索も出来ないまま、キーノ、カナタ、キリアーネ、ハルナとムクの四人と一匹は、ギルドの講習へと向かったのだった。
やっとクラン設立出来ました!
次いでにクランハウスも手に入れました
ボロい事故物件ですけど
因みにパーティー名ですが、少し詳しく言うと、竜の瞳の瞳の部分はキーノの万物先生が眼を使うスキルだからです
宵闇は、虚無じゃちょっと何かなー、から始まって暗いイメージだし、同じ暗いでも宵闇の方が格好いいよね!って感じで決まりました
で、クラン名は竜が宵闇の迫る空を見詰めるってイメージで竜の黄昏になりました
今後どうなるか分かりませんが、皆活躍させられたらと思います
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