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クランの立ち上げ1

かなり加筆訂正したので、修正前と展開も変わっています。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


善良な者にも、悪意は宿る。

―――ダンジョンをクリアしてから数日後―――


「やっっっっと!Cランクになれました!!」


「マー君、普通に考えて、このランクアップ速度は異常ですよ?」


 ファステムの街のギルドを出て直ぐの広場で、マートは万感の思いを乗せて叫んでいた。

キョムが呆れた様に言う程では無いと嗜める。


 そう、新メンバー四人の内、三人はまだ始めたばかりであった為、レベルもランクも低く、単独での街の移動許可が降りていなかったのである。

なので、キーノ達はファステムに戻り、三人のランクアップを開始したのだ。


 結果、此方の時間で僅か5日間程で三人はCランクまで上がったのである。

キーノ達もかなり早めのランクアップだったとは言え、マート達のそれは更に早い。

理由としては、キーノ、カナタ、キリアーネ、ハルナ、ファネルの五人、特に実はBランクだったファネルの推薦があったのが効いたらしく、一番面倒なE、Dランクへのランクアップが数件の依頼達成で終わったのが、大きいだろう。


「に、しても、ホントにリアルだよね~~まさか推薦が有効だなんて……なんか、コネでランクアップしたような気がして来たよ……」


 ピスタチオがボソリとそう呟く。

実際そう言われても仕方ない所は有るが、F、Eは人を見る期間なので、高ランク冒険者のお墨付きが有れば短くなるのは当たり前である。

後はダンジョンクリアでかなりレベルも上がり、状態異常等に耐性を得る称号やアイテムを得ているのだから、雑魚モンスター位簡単に倒せてしまう。

そうなれば、討伐依頼も直ぐに片付いてしまうのでランクアップも早いのである。

………コネやチートと言われても否定出来ない気がするのは気のせいだろうか?


「まあ、経緯は兎も角、これで僕らもネストに行けますね!」


「そうですね。ネストの大会はもう此方の時間で3日後ですから、早く移動しないと行けません。」


「大会の日が向こうの休日の朝からで助かったよね~~」


 因みに、実はネスト行きの護衛付き馬車に乗って移動すると言う手段が有るので、無理に早くランクアップする必要は無かったりするのだが、それを言うのは野暮と言うものだろう。

―――例え三人の目の前で新人がネスト行きの馬車に乗り込んで居たとしても。


「ところで、キーノさん達は来て無いんですか?」


 ランクが上がる迄、キーノ達五人はマート達と別行動中であり、ランクアップするだろう今日に合流する予定だったのだが、まだその姿は見えない。


「そろそろ来るんじゃないですか?と、話していたら来たようですね。」


「あ、ホントだ。お~~~い!!」


 大通りからギルドへと向かって来るキーノ達を見つけ、手を振るピスタチオ。

キーノ達もそれに気付いたらしく、足早に近付いて来る。


「お待たせしました。ちょっと野暮用を済ませていたら少し時間が掛かってしまいまして。」


「野暮用、ですか?」


 キョムが首を傾げて尋ねる。

が、キーノも、他の四人も微笑むだけで何も答えない。


「さっ、早く移動してしまいましょう。今日中にクランの立ち上げまでいきますよ。」


「………成る程、そう言う事ですか。では行きましょうか?マー君。」


「「いやいやいや!?結局どう言う事だってばよ!!!?」」


 一人で納得して何も説明せずに歩きだそうとするキョムにツッコミを入れるマートとピスタチオの二人。

しかしキョムはそれでも説明する気が無いらしい。


「まあ、こういう場合の野暮用なんてだいたい決まってますよ。」


「ええ……」


「せめてヒント位欲しいんだけど~~……」


「「「「「秘密です(だ)♪」」」」」


「だ、そうですよ?」


「「はぁ~~~……」」


 こうなると自分達の話術では聞き出せ無いだろうと諦め、深い溜め息を吐く二人を他所に、六人と一匹は街道へ向けて歩き出す。

結局、マートとピスタチオもそれに付いて歩き出すのだった。


〇〇〇〇


「いやぁ、速かったですねーー……」


「想像以上でした……」


「これはちょっと所じゃ無くヤバいだろ……」


「わふぅ……師匠のチート化が留まる事を知りません。」


「キュ~~」


「一回体験してたとは言え、まだ信じられないですね……」


「便利で、良いじゃないですか。」


「その言葉で片付けるのはどうかと思うけど……」


「確かにな…だがもうそれで納得するしか無いのでは無いか?」


 ネストの入口から少し進んだ大通りで、キーノ達は雑談しながら歩いていた。

ファステムから出てまだ約2時間しか経っていない。

なのに何故、彼らはネストに居るのか?


 今回はマップを覚えさせるのもあって、キーノ達は街道を走ってネストを目指した。

通常、レベルが50のヒューマンが街道を突っ走った場合、休み無し戦闘無しならだいたい一日でネストへと辿り着く。

だが、キーノ達はたった2時間で辿り着いていた。

それはキーノの新魔法、“我らが時は加速するスクワッドクロックアクセラレーション”を使用したからである。


 この魔法は、使用すると選択したパーティー(六人)の時間の流れ、時流を10倍に高める効果がある。

つまり、単純に考えて普段の10倍のスピードで走れるのだ。

そりゃとんでもなく早く着きもする。

因みに、同じ時に作った“遅延世界(スロウワールド)”は開けたフィールドでは使えない。

アレは建物内の様な限られたスペースでないと発動すら出来ないのである。

後、実は“遅延世界”を発動中の空間内で“我らが時は加速する”を発動すると、パーティーに掛かっていたスロウ系のデバフが取れた上で時流が加速すると言う副次効果が有るので、相対的な時流は100倍になっていたりする。


 そんな説明をカナタとハルナにもしていたのだが、今回効果を実感した事で、そのヤバさをきちんと認識したらしい。


「―――つうか、キーノ。お前、最近率先して目立つ事してないか?」


びくっ……


「わふぅ。私も最近ちょっと気になってました!スキルがヤバい!!隠すしか無い!!って最初言ってたのに、全然隠す気無い様に見えるんですよね~~?」


びくびくっ……


「で、でも、この位はまだ出来る人、結構居ると思う、よ……?キーノさんは、元から目立つし、この位なら、まだ、大丈夫じゃないかな……?」


ほっ……


「いや、無いでしょう……」

「無いですね……」

「無いよね~~」

「数人なら知っている。」


「だよなーーって―――」


「「「「「「「居るの(んですか)っ……!!!?」」」」」」」


 キリアーネのフォローにキーノがほっとしたのも束の間、続けて発せられたマート、キョム、ピスタチオの否定にシュンとなったかと思ったら、ファネルからとんでも爆弾発言を聞き驚く七人。

因みにムクはハルナの肩に乗って我関せずとばかりに寝ている。


「少なくとも、Aランク中位であれぱ、そこまで珍しくは無いだろうな。でなければ、広いこの世界を旅するのは難しい。」


 良く考えて見れば、それは当たり前の話しだった。

高ランク冒険者は1つの国にあまり留まらず、色々な場所に赴く。

この世界では、乗り物は基本馬車で、後は古代遺跡やテムステア共和国等で再現開発された「魔動車(マギ・ビークル)」か、テイムした従魔位しか無いのだ。

海なら船が有るが、それもほとんどは帆船で、動力船は珍しい。

高く付く上、安全性も今一で良いなら、ファンタジー世界御用達の飛空船やら飛行船やらが存在しているが、乗れる国は限られる。

つまり―――


「基本は徒歩って事か?」


「そうなるな。故に、高ランク冒険者は移動速度を上げる魔法や魔道具、転移魔法等で素早く移動する。後はスキルの身体強化とかだな。」


「へーーそうなんですね。でも、それだけであの速度が出るんですか?」


「単体の魔法では確かに無理だろう。」


「なら―――」


「しかし、高ランクならそれだけ基礎能力が高く、速く走れる。その上複数の魔法やスキルを重ねれば、その分速度は上がる。それに、“時魔法”の使い手は何人か確認されているからな。その内の何人かは使える可能性がある。寧ろ、何故あんな高等魔法が使えるのに、時魔法を覚えていないのか不思議なのだが?」


さっ


 キーノは、顔を反らした。

その顔は、冷や汗が吹き出ている。

言えない……

キーノは言えない……

努力家のファネルには言えない……


『スキルでズルしました!』


なんて……!!

とてもでは無いが言う事は出来ない。


 キーノは、外道である。

性格は悪く無いし、道理や道徳、常識や良心も持ち合わせた優等生だが、それ故に戦闘では仲間の為に手段を選ばない外道と化す。

だが、普段は心優しい少年なのだ。

血反吐を吐く思いで特訓に特訓を重ね、スキルが使えなかったハンデを乗り越えて魔法を覚えたファネルに、チート級スキルを使って覚えたなんて言えるはず―――


「わふぅ。師匠の事だからスキ―――」


「あーー!話してたらもうギルドに着いちゃいましたね!!さ、早く入って登録しちゃいましょう!!」


 ハルナが何か言い掛けたのを遮り、強引に話題を変えに来たキーノ。

無理に作ったともろばれの笑顔を皆に向けて、直ぐそこに見えるギルドを指差し皆を促す。


「話題から逃げたな?」


「逃げましたね……」


「師匠ってば気にしいですね~~」


「そこ!うるさいですよ!ほっといて下さい!!」


 それ以上その話題を続けるな、と目線で訴えて来るキーノに、何時もの三人は肩をすくめるのだった。

それを見て、ファネルは 何かに気付いたらしく、優しく微笑み、残りの三人は訳が分からず頭に疑問符を浮かべるのだった。


 そんなこんななやり取りを繰り広げながらも、キーノ達八人と一匹は、ギルドのネスト支部へと入って行く。

今度こそ、自分達のクランを立ち上げる為に。


〇〇〇〇


「あら、御機嫌よう。お久しぶりですわね?」


 キーノ達はギルドマスターに遭遇した!


 キーノ達がギルドの出入口であるスイングドアを開けた瞬間、その直ぐ目の前にギルドマスターの「ターラマヨ・ベル・フレア」の姿が有った。


「お、お久しぶりです…ギルドマスター。」


 キーノは顔がひきつっている。

完全な不意打ちでの遭遇に、何時もの四人は苦笑いが自然と浮き出る。


「あら?初見の方も居りますわね?まさか、新しいメンバーの方達ですか?予想よりも早かったですわね。」


「予想より……?」


「……貴殿方は、良い意味でも悪い意味でも注目の的ですもの。色々邪魔が入ったり、人が集まらなかったりして居るのでは無いかと思っておりましたの。」


 若干の間の後、ターラマヨはそんな台詞を言ってのける。

あの隠密らしき三人組から色々聞いている身としては、良くそんな白々しい台詞が言えるものだと内心呆れているキーノだが、その事は顔に出さないよう笑顔で返す。


「そうなんですね。ご心配頂き有り難うございます。ですがこの通りメンバーは集まりましたので、これからクランの結成手続きをさせて頂きますね。まあ、まだ仮登録になりますけど。」


「それは大会を頑張って頂くしかありませんわね。無事に優勝出来る様に祈っていますわ。」


「有り難うございます。」


「うふふふ。」


「はははは。」


「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ!」

「ははははははははははははははははははははははははははははは!」


「わ、わふぅ…師匠達怖い……」


「しっ!見ちゃいけません!!」


 短いが、十分過ぎる程腹黒いやり取りにドン引きなメンバー達。

そして暫く感情の籠らない愛想笑いを交わしてから、二人は唐突に真顔に戻る。


「今日はやたら派手な服装ですがこれからお出掛けですか?」


 今日のターラマヨの服装は、赤を基調に朱色や紅色の布でや金糸の刺繍で装飾されたワンピースドレスに、燃える様な色合いの赤いハイヒール。

それに銀色の腕輪やネックレス等のアクセサリー数点だ。

まるで夜会や舞踏会に行く様だ。


「ふふふ。実はこれから下位の竜種狩りなのですわ。下位とは言え、竜種となれば下手なAランクには任せられません。そして現在この街に居る高ランクはSランクのワタクシしか居りませんから、指名依頼が来たのですわ。なので、これはれっきとした戦闘用の防具です。」


美しいでしょう?


 ターラマヨはそう言ってクルッと回り、自慢気に全体を魅せる。

見事なドヤ顔に若干イラッと来るが、その言葉通り、彼女のその姿は確かに美しい。


「そうですね。とてもお似合いですよ。何も知らなければ何処かの王族だと思ってしまうでしょう。」


「ふふふ。当然ですわね。ワタクシの美しさは王族にも勝るのですから!」


「そうですね。実に見事だと思います。ところで、時間は大丈夫ですか?」


「あら、そうでしたわね。ワタクシとした事がつい話し込んでしまいました。」


 キーノとターラマヨが話し始めてから既に5分近い時間が経っていた。


「それでは皆様、御機嫌よう。」


「ええ、ギルドマスターもお気を付けて。3日後の大会に、貴女が居ないなんて事にならない様、無事を祈っています。」


「あら、有り難うございますわ。それでは。」


 そんな言葉を残し、ターラマヨはギルドを後にしたのだった。

その様子を、静かに見守るキーノ達。

そして、ターラマヨがギルドを去って一拍して、キーノが皆の方へと振り返る。

カナタはその表情を見て、ギョッとした。


「お、お前、ナニ(・・)かしたな?」


「んー?何の事?」


 そう応えたキーノの顔は、見事な迄のアルカイックスマイルだった。

だが、神々しさすら感じそうなその顔は、キーノがとある事を終えた証である。


           “報復”


 今、この場でそれを知るのはカナタだけだ。

だからこそカナタは問い掛けたのだが、キーノははぐらかした。

しかし、次の言葉でカナタの背筋は凍り付く。


「大丈夫。ギルマスはきっとちゃんと帰って来るよ。ただ、僕はハルナと()()()()()()()()()()()を思い出しただけだから。皆の前に出てスピーチするであろうギルマスが、()()()()()()()()()()()()()ってね?」


「お、おま、お前はな、ななななななんて事を……!!!?流石、流石外道魔導師……容赦ねぇ……」


「わふ?どゆ事です?」


「………?」


「俺の口からはちょっと……ハルナちゃんがキーノに初めて会った日やられた事よりエグい事をギルマスが受けたとしか言えねぇな……」


「わっ、わふぅっ!?」


サッ!


 と、お尻を抑え、顔を赤くするハルナに、他のメンバーは疑問符を頭に浮かべるばかりで、何が起こっているのかは、結局分からないままだ。


「それより、早く登録を済ませますよ?いい加減出入口に屯してたら邪魔ですからね。」


「いや、誰のせいだと……」


「わふぅーーー……」


「結局、どう言う事なんでしょう……?」


「「「「さあ……?」」」」


 そうして、色々はぐらかされて、納得出来ないままのメンバーを引き連れて、キーノ達はギルドの受付へと向かうのだった。

最近おとなしめだったキーノが、久しぶりに外道感増増です

なんか、外道な事させてる時が一番生き生きしてる気がする……

気のせいだといいな……


面白いと思えましたら、感想、評価の方よろしくお願いいたします

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