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「柵の楔」ダンジョン7

最近遅くてすみません……

取り敢えず月2更新を心掛けて執筆中です!


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


トラウマの原因は、時に下らないモノだったりするものだ。

―――キリアーネ視点―――


 一体、あれから何分経ったでしょうか……?

歌は、もう30回は歌われてしまいました……

距離が、大分と近くなっています……


 どうも、此方の攻撃は効くのか、試しに打った攻撃魔法は反射されませんでした……

しかし、何故か近付く事は出来ません……

そして、数も減った様子がありません……


「このままでは……でも……」


 私は、恐らくはこの試練の鍵となるであろう人物、キーノさんへと視線を向けました……

そこには、未だ震え続ける彼の姿が見えます……


             情けない……


 普通なら、そう思うのでしょう……

ですが、私はキーノさんが体験した悪夢の終わりを聞いています……

そして、恐らくこの試練も、失敗すれば、その悪夢の終わりと同じになるでしょう……


「流石に、あんな終わり方はいやですね……」


 その終わり方を思うと、体験した事の無い私でも、恐怖で体が震えてしまうのが、分かりました……

話を聞くだけなら、大して怖く等ありませんでしたが、事此処に至れば、それは確実な恐怖として、私の前に立ちはだかります……


「あの、キリアーネさん。」


「何ですか……?マート君……」


 遠距離攻撃が出来ず、手隙になっていたマート君が、焦った表情を浮かべながら、私に話し掛けて来ます……


「これ、最終的にどんな終わり方をするか、知ってますか?」


「知っています……」


「本当ですか!?」


「ええ……だからこそ、私も焦っているんです……」


 そう、私も焦っています……

しかしキーノさんが立ち上がってくれなくてはどうしようもありません……


「あの、一体、どう言う終わり方をするんですか?」


「………聞きたい、ですか……?」


「……っ!聞きたい、です!」


 私の確認に一瞬戸惑ったものの、マート君はそうハッキリと言いました……

私は小さく息を吐いて、キーノさんに聞いた悪夢の終わりを伝えます……


「これは、キーノさんが体験した悪夢が元になっている、と思われます……キーノさんは約1ヶ月の間、この悪夢を視ていたとか……その悪夢の終わりは、決まって一つ……」


 そこで、私は一旦言葉を止めて溜めてから、続きを話します……


アレ(・・)を、お腹かが破裂する程、食べさせられるそうです……」



           ゾッ!!



 その瞬間、その場の全員の背筋が、凍り付いたのが分かりました……

マート君も、「冗談でしょう!?」と言いたげな顔で固まっています……


「ま、は……はぁ、ふーーー……まさか、ホントに……!?だとしたら、不味いじゃないですか!!と、言うか、口に入って来るって、やっぱりそう言う事だったんですね……いや、そりゃそうですよね……」


 一人納得して落ち込むマート君を他所に、私は未だ震えるだけのキーノさんへと視線を送ります……

きっと、彼ならば乗り越えてくれると信じて……


〇〇〇〇


―――ファネル視点―――


 アタシは迫り来る〝死〟を前に後悔していた。

アタシがこのパーティーに入ったのは、確実に強く成れると踏んだからだ。

つい数ヶ月前にこの世界へと現れた異邦人のパーティー。

しかしその実力は折り紙付きだ。


 何故分かるのかと思っただろう?

アタシはファステムのギルドマスターと古い付き合いで、ちょくちょく色々な相談をしていたんだ。

それでアタシを強く出来そうな腕利きのパーティーが居ないか聞いたんだ。

そうしたらこのパーティーを紹介された。

今はまだ弱いが、将来有望だとな。

そうしたら折よくこのパーティーの人員募集が出されたので、飛び込んだと言う訳だ。


 アタシは、強く成らなくてはいけない……

この呪いを解く為、ひいてはアタシを拾い育ててくれた家の為に!!

だが、このままでは……!!


――――――――――――――~~~~♪


おくちのな~かのあ~じぃは~♪


な~ーあ~~に?


 もう何度目かも分からない歌が終わった。

距離は、もう4m程と大分近い。


(後、四回歌われたらアウトか……)


 そう思った時だった。


『もっちろん!タラマヨだよね♪』


ビクッ!!!


ギ、ギギギギギ……


 そんな音がしそうな動作で、アタシは突然(・・)声の聞こえた右肩に顔を向ける。

甲高い、女の子様な、男の子の様な、そんな曖昧で中性的な子供の声だった。


(まさか……!?)


 アタシの視線の先、其処には、まだ4m先に居る筈の、モザイクが掛かったピンク色のモンスターが一体、アタシの右肩に居る姿が映り込んでいた。


「そ、んな……!?何で!!」


 見ればアタシ以外のメンバーも全員、右肩にモンスターを乗せている。

リーダーであるキーノ殿に至っては半狂乱になって振り払おうとする始末だ。

しかしモンスターにとって、アタシ達の混乱等知ったことでは無いらしい。


『食べて~~?美味しいよ~~♪』


「なっ!?むぐ…ぐっ!う~~!!」


 無情にも奴はアタシの口の中に無理やり入り込んで来る。

どう言う原理かは解らないが、その体を掴む事も、舌などで押し返す事も出来ず、モンスターは確実に、アタシの口の中へその全身を捩じ込んで来るのだ。

全長は5cm其処らだが、直径が意外と太いのか、口の中が一杯一杯で苦しい。


(あまりやりたくないが、噛み潰すしか……!!)


 そもそも何故か掴め無いのに噛めるのかとも思ったが、その懸念は杞憂だったらしく、アタシの歯はあっさりとモンスターを噛み潰した。

周りの気配から、他のメンバーも同じ事をしたらしいと感じる。

そして、噛み潰した瞬間だった。



  「「「「「……………ッ!!!!!???」」」」」


 まず、モンスターを噛み潰した時に感じたのは、歯切れの良さだった。

アタシはそれなりに良い食生活を送っていた自身があったのだが、これ程の心地好さを感じた事は無いと断言出来る程に、その歯切れの良さは凄まじかった。

まず、皮の固さ。

それが絶妙なのだ。

柔らか過ぎず、固過ぎず、最も心地好く感じる固さ。

そして全体の弾力。

魚の卵巣とは思えない程、食い込ませた歯を押し返して来るが、少し噛めば簡単に弾けてしまう程好い弾力が、一瞬で思考を支配して来る。


 だが、本当の衝撃はその後だった。

噛み潰した事で口の中に広がったのは濃厚なタラコマヨネーズソースの味だ。

しかしその味は今迄食べた事が無い程洗練された印象を受ける程、暴力的な美味さをアタシに伝える。

プチプチとした食感のタラコを噛めば、その中から顕れるのはタラコその物の旨味と漬け込むのに使われた塩の味。

その塩気も尖った物では無く、タラコの味を活かすマイルドな物だ。

そしてそれらを包み込むマヨネーズも見事なもので、爽やかな酸味が濃厚でありながらクドサの無い味へと仕上げている上、全体的な香りも生臭やマヨネーズ独特の酸っぱさが無く食べやすい。


 そんな極上の美味に、アタシはつい、今〝死〟が目の前にある事を忘れてしまう。

キーノ殿以外のメンバーも同じようで、皆美味さで恍惚とした表情を浮かべていた。


      「「「「「うまああ―――――」」」」」

   「それ以上言っちゃだめだあああっ!!!!!!」


 突然の怒号。

見ればキーノ殿が必死の形相で叫んでいた。

しかし、もう遅かった。

アタシ達は、この場で一番言ってはならない言葉を口にしてしまったのだ。


『ふっ――――ふふふふふふっ!ふふふふふふっ!!だよねーー!だよねーー!美味しいよねーー♪じゃあ食べて?もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともーーーーーーーーーーーっと食べて~~?』


『『『『『食べてーー♪食べて食べてーー♪もっと食べてーー♪』』』』』


 嬉しそうな声で、モンスターの何れかがそう言った瞬間、ピンクの津波がアタシ達を襲った。

果てが見えない程居るモンスター…その全て(・・・・)が自分を食せと押し寄せて来たのだ。

アタシ達には、それに抗う手段等無い。

このままこの津波に呑まれれば、アタシ達はろくな抵抗も出来ずに、腹が破裂して死ぬだろう。


(そんなの嫌だ!!まだ、家族に恩を返せて無いのに!!両親と交わした、強くなるって約束も、果たせて無いのに!!恋だって……!!)


 そんな事を思いながらも、アタシはもう助からないと諦め掛けていた。

だが、直ぐに異変を感じ、目前に迫っていた筈のピンクの津波へと視線を移す。

其処には、ほぼ静止した状態のモンスター達が宙に浮いていた。


「――――――ない!!殺らせ無い!!もう二度と!!!僕の目の前で!!仲間を死なせたりするもんかっっっ!!!!!!」


 再びの大声。

そちらに視線を向ければ、キーノ殿が立ち上がり、憤怒の表情で両手を前方に突き出している姿があった。


〇〇〇〇


―――キーノ視点―――


   「それ以上言っちゃだめだあああっ!!!!!!」


 気が付けば、僕は必死になって叫んでいた。

だけど、もう遅い事も理解している。

この後の展開も理解している。

其処まで考えた時、僕の頭の中には、三年前の光景がフラッシュバックしていた。

僕の援護が間に合わなかったばかりに戦線が崩壊し、全滅したあの時の光景が……


(僕らは、デスペナで済む…でもファネルさんは?それに、僕は言った……言ったんだ!!カナタに、僕らはもう負けないって!!そうだ……そうだ……っ!!あんな思いをする事に比べれば!!これ位っっっ!!!!)


 そうは思っても、強固に塗り込まれた恐怖は消えない。

おかげで体は震えっぱなしだ。

このままでは要らない失敗をするかも知れない。

そう思った時には、既に無意識で呪文を3つ唱えていた。


「「高速化(ハイスピード)」、「クロックアップ」、「思考加速シンキングアクセラレーション」!」


 周りの時間がゆっくりと流れて行く中で、僕は心の中を整理していく。

恐怖の根元を探し、それが何故怖いのかを理解し、それに対する対処を考える。

そもそも、アレは夢だった。

現実では無い。

だけど何度も何度も見る内に、現実になるんじゃ無いかと怯え始めたんだ。

其処から、段々恐怖心が膨れ上がってしまった。

それから、訳も無く目に留まるだけで怖く成ったんだ。

たった、それだけだった。


 そう理解した時、僕の中であれ程巨大だった恐怖心が突然萎んでいくのが分かった。

それでも、完全には無くならなかった為に、僕はそれを振り払う様に津波となって押し寄せるモンスター達を睨み付ける。


(守るんだ……!!僕が、皆を!!)


          守るんだ!!!!


 僕は、緩急自在と空間魔法、それに地形把握を組み合わせて、新たな呪文を創り出す。


“其れは時の歯車”―――


“其れは理を狂わす者”―――


“全ては彼の秒針に逆らえず”―――


“全ては皆時に囚われる”―――


          “遅延世界(スロウワールド)”!!


遅延世界:マップ内の時間の流れを10分の1にする 消費MP1000 対象指定されたエリア


『全ての時を遅くする、時の牢獄。範囲に入ったのなら、術者であろうと効果を受けるので、取り扱いには注意が必要。任意での解除は可能。』


 今迄で最大のMP消費量を誇る大魔法。

詠唱付きである事から、普通の魔法とは格が違う事が分かる。

ただ、流石に此れで僕のMPはすっからかんになってしまった……

おまけにエリア指定は細かい調整が出来ないんだ。

つまりどう言う事かと言うと―――


「さっきと変わらないか……」


―――僕ら(・・)も効果の範囲に入ってしまっているんだ。

でも、それ位は問題無い。

僕は素早くMP回復ポーションを飲んで消費したMPを回復する。

そして、もう一つの呪文を創り出す。


“其れは時の歯車”―――


“其れは理を狂わす者”―――


“我らは彼の秒針に逆らえず”―――


“我らは時を置き去りにする”―――


       “我らが時は加速するスクワッドクロックアクセラレーション”!!


我らが時は加速する:パーティーの時間の流れを10倍にする 消費MP600 対象パーティー全体(六名)


『パーティー全体の時を加速させる。その効果は強烈な為、加速系の補助魔法を全て洗い流してしまう。重ね掛けも出来ないので、使用する際はその事を留意する必要がある。』


 呪文を唱えた瞬間、津波の速度が一気に遅く成ったのが分かった。

どうやら上手くパーティーだけを加速出来たらしい。

ただ、同時に僕が自分に使った呪文の効果が上書きされて消えたらしく、時間の流れは皆と同じになっていた。


(そんな事は、どうでも良いんだ……ただ、此れで準備は整った!!)


「殺らせ無い!!殺らせ無い!!もう二度と!!!僕の目の前で!!仲間を死なせたりするもんかっっっ!!!!!!」


 僕は最後の恐怖心を拭い去る様に大声でそう言い切ると、両手を前に突き出し、呪文を唱える。

僕の十八番であり、今現在最強の攻撃力と殲滅力を持つ呪文を!!


―――空間圧縮スペースコンプレッサー×10!!


       ギュギュギュオオンン!!!!


 一瞬だった。

本当に、一瞬で目の前の光景が一変した。

先程迄あったピンクの津波は無くなり、代わりに朱に近い、濃いピンク色の()10個(・・)、床に落ちているだけだった。

そして、その箱の向こう側には、何も無い空間が広がっていた。


「終わっ、た……?これで、終わりなのか?っっ!!?」


 そう僕が口にした瞬間、空間をまた、とてつもない光が覆い尽くし、僕は眼を瞑った。

取り敢えずこれでダンジョン探索は終了です

次はリザルト回になります

正直、新キャラ達がどうなるか、自分自身でも良く分からないですが、なるべく活躍させてやりたいと思います


面白いと思えましたら、評価、感想の方よろしくお願いいたします

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