「柵の楔」ダンジョン5
今回は短めです
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変化しない事柄など無い。
もし変化を感じないとすれば、それはそれだけ緩やかだと言う事だ。
―――マート&ピスタチオペア―――
結論から言うと、これと言って語る事は何も無かった。
こちらも前衛に前・中衛と言う組み合わせで、バチバチにぶつかり合っていたのだが、マートもピスタチオも試練はクリアしてしまったので、普通にチームとして戦って普通に勝利しただけだった。
山場も何も無い無難な戦いだったと言えるだろう。
「思いの外、あっさり終わりましたね。」
「まあ、連携出来ればこんなもんなんじゃない?あっちは個別に戦おうとしてたし。」
「そう言えば、向こうは連携とかして来ませんでしたね。何でかな?」
「さあ?此処って自分と向き合うのがコンセプトみたいだし、だから自分自身を乗り越えさせる為に個別に戦おうとしたとかじゃない?まあ、だからウチらはあんな楽に倒せた訳だし気にしてもしょうがないんじゃ無いかなぁ?」
「だけどそれだと何で複数人で戦わせたのかが分かりませんね。」
「んー?確かにそうかも……五階までと同じ様に個人戦にしなかった理由が分かんないね?けど、多分キーノさんに聞いたら分かると思うし、取り敢えずは先に進もっか!」
「まっ、それもそうですね。話してたって何も分からないんだから仕方ないか……」
一頻り会話した後、そう言って下への階段を歩き始める二人。
その姿は、このダンジョンに来た時よりも頼り概が有るように見える。
伊達にトラウマや心の闇等のコンプレックスを克服した訳では無いと言う事だろう。
こうして、二人は特に何事も無くダンジョン六階をクリアしたのだった。
因みに、二人は気付かなかったが、大抵の場合コンプレックス、特に心の闇なんてモノは他人に知られたく無いものである。
それらを人に知られる恐怖、羞恥、怒り、絶望、憎悪、焦燥、そう言った負の感情を呑み込み受け入れる事が、この複数人戦の醍醐味だったのだ。
が、この二人、そう言った事に兎に角疎かった。
根が善良なので、基本後ろ暗い感情等と縁遠い子達なのである。
まあ、マートはそこら辺を乗り越えたと言うのもあるが……
それを差し引いたとしても、二人は鈍すぎると言えるだろう。
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ソレは困惑していた。
――――早すぎる……
今までに無い速度で自身を乗り越えて行く挑戦者達。
既に今までのやり方で乗り越えさせるべき試練は尽きてしまった。
後は更に深い根源的恐怖に繋がるモノしか存在しない。
――――しかしそれは余りに酷……
――――何か無いか?
ソレは考える。
今までこれ程考えた事は無いと言う程考える。
このダンジョンでは、コンプレックスを重症度によって5段階に分けている。
そして、試練で乗り越えるのは、3段階目迄としているのだ。
しかし、先程も言ったがキーノ達は、その3段階目迄をクリアしてしまい、新に乗り越えなくてはいけない試練が無い。
用意出来るのは4段階目からしか無い。
が、それは最早根源的恐怖とすら言えるものだ。
彼らのSAN値がガリガリと削られて、廃人になりかねない。
――――だが、それ位しか―――
――――いや、であればそれを―――……
と、ソレが考えの末、結論を出し始めていた頃、キーノ達六人は既に、最後の階層への階段前に集まって居た。
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「やっと、最後の階層ですか……」
「六階以降は、組み合わせのお陰で、結構楽になりましたね。」
「って言っても、かなり大変だったけどねぇ~~……」
「正直な話、アタシはもう御免被りたいな……自分と戦うのはやはりキツイ。色々な意味でな。」
「それは分かります。今迄の自分を乗り越えるのは大変ですもんね。」
「その割に、私達は意外とサクサク進めてる気がしますね。」
「多分マート君とも話したけど、敵側が連携して来なかったのが大きいんじゃないかな?連携さえ出来れば意外と簡単にたおせるからね。」
「ああ、それはアタシも思った。何よりサポートしてくれる人員が優秀だから、と言うのも大きいだろうな。」
マート、キョム、ピスタチオ、ファネルが口を揃えて感想を言い合う。
その顔は疲労の色が濃く見えた。
どうやら、精神的にも、肉体的にも、かなり堪えたらしい。
が、その表情は試練を乗り越えたからか、随分と明るく見える。
一方で、キーノとキリアーネは四人よりも堪えた様子は見られない。
相当苦戦もした筈だが、いつもと変わらない様に見える。
それどころか、キーノに至っては何とも機嫌が良さそうに見える。
「どうしました、キーノさん……?なんだか、機嫌がいいですね……?」
「ん?え?そうですか?えー、あー…あれですかね?その、最初に懸念してた事が起こらなかったからですかね?」
機嫌が良い事を自覚していなかったのか、キーノは暫く疑問符を浮かべていたが、直ぐに理由に思い至ったらしく、少し恥ずかしそうな顔で、そう返す。
「ああ……!そう言えば、自分自身との戦いですしね……アレがそのまま出て来る事は無いですよね……」
「ええ!いやぁ、お陰でだいぶ気が楽になりましたよ!ちょっとビビり過ぎてましたね!」
機嫌が良いからか、何時もより心なし饒舌に語るキーノ。
それを見て、キョムが一言―――
「今、何かのフラグが立った気配がしました。」
「止めて!キョムさんがそう言うと大抵ロクなことに成らないんですから!!あんまり余計な事言わないで下さい!!」
「ふっ…もう遅いですよ?マー君。私はもう言ってしまった後なんですから!」
キラーンッ!!
そんな効果音が聴こえて来そうなキメ顔をするキョムを見て、マートは頭を抱えるて蹲る。
ピスタチオとファネルはそんな二人を見て呆れていたが、次の階層で、その表情が盛大に引き吊る事になるのを、この時はまだ誰も知らないのだった。
「さて、十分休憩もしましたし、そろそろ最後の階層へ行きましょうか!!」
「「「「はい!!」」」」
「………はい。」
一人テンションが駄々下がりして居たが、キーノ一行は遂に最後の階層へと降りて行く。
イレギュラーとも言える事態に対処する為に、ダンジョン事態が変貌しているとも知らずに……
本当は戦闘まで入れようかと思ったんですが、キリが良いので今回は此処までにしました
取り敢えずダンジョン攻略は次回か、長くても次次回で終わりの予定です
その後は閑話を挟んでクラン設立の流れですね
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