「柵の楔」ダンジョン4 畏怖と称号と鮮血魔法
まだまだ速度は遅いですがこれから少しずつ早くしていければと思います
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
その決意は、光なのか?
それとも更なる闇なのか?
―――キリアーネ&ファネルペア―――
ガンッ!!!
ガンガンッ!!!!!
ガガガガガガガガガガ…ッキィィィィィィイイイイイインンンン!!!!!!!
激しく鳴り響く金属音。
キーノとキョムが苦戦している頃、キリアーネとファネルもまた苦戦していた。
まあ、ダンジョンの仕様から考えて、苦戦しない方が可笑しいので、これは至って正常な事ではある。
キョムの精神は明らかに正常ではなかったが……
そこは今は置いておこう。
「全く…自分が相手と言うのは実に厄介ですね……」
「……と言いながら、貴殿は先程から満面の笑顔なのだが?」
「あら、そうですか……?」
「アタシの眼にはそう見える。まさか、意識して無かったのか!?」
ファネルの驚愕を他所に、キリアーネは満面の、しかし聖女らしさを失わない笑みのまま構えを取る。
「フフフ、フフ!!アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
それを見て、偽キリアーネが突然笑い出す。
が、キリアーネとファネルは冷静にその姿を見やる。
その反応から察するに、これが初めてでは無いようだ。
「ハハハハハハハハハハハ!!ハァ、ふぅーーー…やっぱり貴女は根っからの戦闘狂のようですね……どんなに淑やかな女性を演じても、一番の楽しみは、敵を拳で打ち砕く感触なのですから……しかも、強ければ強い程良い!!、なんて、とんでもなくぶっ飛んだ変態ですね……?本当に、救いようが無いっ……!!」
ドンッ!!!
と言う足音と共に一気に迫り来る偽キリアーネ。
その速度はハルナと比べれば酷く遅いが、同レベル帯で見ればかなりのものだ。
が、それでもハルナよりも遅い事に変わりは無い為、彼女の速さに慣れているキリアーネには防御で簡単に対処出来る。
速さだけなら―――
ガギギギギィィィィーーーーーーンンン……!!!!
「く、ううううう?!」
ズザザザザザザザッ!!!!!
―――一撃……
たった一撃防いだだけで、キリアーネは数m後ろに後退させられた。
偽キリアーネが繰り出したのは何の変哲も無い右ストレートだったが、その威力は同レベル帯処か一回りは上のレベル帯の攻撃職すら上回る。
「何とも末恐ろしい威力だな…アレでまだ基礎レベルが20台等信じられないぞ?とっ……!!」
ブオンッ!!!
「アタシはアタシで余所見も出来ないか……!」
「そう言う事だ。貴殿に余裕など与えんよ?とことんアタシに付き合ってもらう。」
キリアーネ達が戦う横で、ファネルもまた自身の偽物と戦い始める。
二人共徒手空拳での格闘戦が主な為、戦い方は基本ガントレットでの殴り合いだ。
しかし、そのスタイルは対照的だ。
「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ……!!!!」」
ガッ、ガガガガガガガガガガがガガガガガガガガガガがガガがガガガガガガガガガガッ……キィィィィィィイイイイイインンンン!!!!
息も付かせぬ程の連撃、そこからの強烈なフィニッシュを飾る一撃と言う豪快さがキリアーネの戦いのスタイルなら―――
「「ハアーーーーッ!!!ふっ!ハァアッ!!!!!」」
ガッ!!
ガッ!!
ガキィィィイン!!!
―――一撃一撃を重く、丁寧に繰り出し、技と技を隙間無く繋げる緻密で流麗な戦いがファネルのスタイルだ。
また、キリアーネは拳での戦闘ばかりだが、ファネルは脚技も多様するのがより対照的なイメージを与えている。
「はっ!流石に小国とは言え、王家御抱えの武術指南役だっただけは有る。自分との戦いでも焦りはしないか!」
「当然だ!『波立たぬ湖の中で炎を燃やせ』、それがアタシが両親に叩き込まれた流派の教えだ!!冷静さと情熱を常に保つ「バタラ流格闘術」の真髄…アタシのコピーなら知ってるだろ?」
ニヤリ……
ファネルの言葉に、偽ファネルが怪しい笑みを浮かべる。
ゾワリッ……!!
と、鳥肌が立つのを感じたファネルは、偽ファネルが何かを言う前に沈めようと右足を踏み出して距離を詰め、その勢いと体重を乗せた右の正拳突きを腹部目掛けて繰り出した。
しかし―――
「甘いな、それでは!!」
パアァーーッン!!
攻撃がヒットしたと同時に響き渡ったのは、そんな人体から出たとは思えないような乾いた大きな音だった。
まるで木板が弾けた様な音と共にファネルの腕が後方へと弾かれ、体勢を崩した腹部へ偽ファネルの右の蹴りが炸裂する。
ゴッ!!!
「ぐぶっ!??あ、かっ……!!」
ズザアアアアァァァ!!
蹴り跳ばされ、ろくに受身も取れずに地面へ倒れるファネル。
彼女は咳き込みながら、何とか体をお越し、偽ファネルを睨み付ける。
「はっ!流石に使えない筈のスキルを使われれば、隙も出来るか。」
「な、ぜ……?貴殿、は…アタシ…の、コピー……はず……っ!?」
驚愕に目を見開くファネルの前で、偽ファネルは愉快だとばかりに顔を歪ませ、自慢する様に語り始める。
「アタシ達がコピーするのは姿、性別、ステータス、スキル、装備、記憶、性格、思考、その他細かい諸々が少しだ。そして、その中に貴殿が掛かっている「呪い」は含まれない。ああ、それと性格と思考は少し邪悪になってるか!」
「なっ…!?それ、では……!!」
「おうとも。貴殿の様なハンデ持ちはクリアが他より難しい。それでも立ち上がるかい?えぇ?お姫様ぁ?」
皮肉をパンケーキに掛ける蜂蜜の如くたっぷりと込めた声音で、偽ファネルはファネルへとそう言い放つ。
その瞬間、ファネルの顔から表情が抜け、濃密な殺気が溢れ出す。
そして、酷くゆっくりとではあるが、ファネルはその場で立ち上がって見せた。
「ほう?随分お怒りだな。そんなにそう呼ばれるのが嫌いだったか?紛れもない事実だと言うのに。なあ?呪いの捨てられ姫様?」
「アタシは姫じゃない。」
静かに構えを取り直すファネル。
それを見て、偽ファネルも構え直す。
その瞬間、ファネルは偽ファネルの懐に入り込んでいた。
一瞬―――
一瞬、だった。
偽ファネルが構え終わる直前に踏み出し、構え終わった直後には入り込んでいた。
その速度に偽ファネルは目を見開いて驚き、数瞬の間、その体は硬直する。
当然、ファネルがそんな隙を見逃す筈も無く、無慈悲な連撃が繰り出される。
ガッ、ガッ!
ドッ、ガゴンッ!!
ドガアアァァッ!!!
右と左の順番に繰り出されたフックから、右のハイキック、左のミドルキック、最後の右ストレートで、偽ファネルは後ろに吹き飛ばされる。
「かはっ!?あ、く……っ!!」
吹き飛ばされ、壁に叩き付けられて崩れ落ちる偽ファネル。
その顔は驚愕で彩られ、状況を呑み込めずにいた。
「な…ぜ……っ!!?さっ、きの…ダメー、ジはっ……!?」
「アタシは、スキルが使えない。だが、スキルが使えなくても、手足は振るえる。なら、魔力だって扱えるのは通りだろう?当然、魔法もな。」
「まさか、自力で無詠唱の回復魔法をっ……!!いや、そうか…そう、だった……貴殿は、どん、な、魔法も…スキル、無しで、使える様に…したんだっ、たな……
――――だが、
試練は、どう、乗り越えた……?この事実は、確かに貴殿のトラウマだった、筈だ!!」
例え動けたとしても、トラウマや心の闇を乗り越えるか受け入れるかしなければ、自身のコピーにダメージは入らない。
それがこのダンジョンのギミックであり試練だ。
それを突破したなら、ファネルはそれらを成した事になる。
しかし―――
『アタシは姫じゃない。』
―――先程のファネルの言葉は明かな否定だった。
乗り越えたのでも、受け入れたのでも無い拒絶だった。
それでダメージが入るのはおかしい。
「ああ、簡単な話だ。単にアタシはもう姫じゃないって事さ。」
「それは、どう言う―――」
「アタシは、自分が姫として生まれた事を受け入れた。でも、今のアタシは、王家御抱え武術指南役、バタラ流格闘術師範代、「ファネル・バタラ」だ。それも、アタシの変えられない真実で事実だって、このダンジョンで気付いただけだ。」
―――ま、どっちも「元」だけどな……
そう言い切ったファネルの顔は、寂しそうで、しかしとても晴れ晴れとしていて、ダンジョンに入る前と比べれば、随分と柔らかい表情になっていた。
「ふっ、ふふふふふははははははっ!!そうか、そうかぁ……なら、貴殿はもう大丈夫だろう。最早、貴殿が乗り越えねばならぬトラウマも心の闇も、貴殿は既に乗り越えてしまった。此処から先は、自身の研鑽に励むと良い。まあ―――
――――あの化け物達も出て来るがな?
精々気を付けてくれ……」
そう言い残し、光となって消えて行く偽ファネル。
ファネルはその視線の先を追って、キリアーネが戦っていた方を振り向き、そして絶句した。
〇〇〇〇
キリアーネは、嗤っていた。
自分と同等の相手、それも自分と全く同じステータスに同じスキルを使い、記憶、人格、思考までほぼ同じ自分のコピーと言う強敵との戦い。
自分の全てを出し切れるだろう相手との戦いに、心を踊らせていた。
故に、キリアーネは―――
――――嗤っていた
何時も通りの聖女然とした美しい微笑み、しかしそこから聴こえるのは狂気と狂喜に染まった声音。
更には戦いによって出来た傷から溢れた鮮血が飛び散り、キリアーネの白を基調とした装備を赤く、紅く、朱く染め上げる。
その様は、恐ろしくも、どこか現実離れしていて、幻想的な美しさすら感じさせた。
だからだろう。
ファネルは知らず知らずの内にその言葉を口にする。
「『鮮血聖女』……」
AWOを始める以前からキリアーネに与えられたその二つ名を、オルンであるファネルは知らない。
しかし、キリアーネの在り方は、そんなファネルにすらその名を口にさせたのだ。
その瞳には、畏怖と崇拝とすら言える感情が宿っていた。
ピコンッ!
『ユニーククエスト「畏怖されし聖女」をクリアしました。報酬としてレベルアップと称号が贈られます。』
ファネルが呟いた瞬間、キリアーネに聞こえたいつもの電子音。
その後に開かれたメッセージは以下のものだった。
―――鮮血聖女―――
自他共に「鮮血聖女」と認められ、その称号に相応しき行動をした者に贈られる称号。近接戦闘で与えるダメージを三割上昇させ、回復や浄化等の効果を四割上昇させる。また血に関するスキルの効率を四割上昇させ、戦闘系アーツのクールタイムを二割減少し、敵全体に威圧状態を付与する。
キーノやカナタと同じ二つ名の称号、ただしその効果は明らかに破格と言わざる得ない凄まじいものだった。
しかも吸血鬼でも無いのに血に関するスキルに対する効果まで得ている。
ピコンッ!
『一定の条件を満たしました。これにより、吸血鬼限定魔法である「鮮血魔法」を習得しました。』
鮮血魔法Lv1/50
自身の血、または自身の血が混じった液体をLv×1Lまで自在に操れる。
但し、血は出血してからLv×一時間以内の物で無くてはならない。
また、血に関係した補助魔法が使える。
何故か、ハーフエルフで有りながら吸血鬼限定魔法を覚えたキリアーネ……
称号を得た事で、何かの条件をクリアしたらしいが、それがどんな条件かまでは分からない。
ただ、キリアーネは激しく戦いながら、自分の手札が増えた事を認識した。
そして、そこからの行動は早かった。
「「強化血液」……!」
強化血液:身体能力を三割上昇させる 消費MP80 対象一人
「なっ……!!此処で、新しいスキル……!?」
突然動きが素早くなったキリアーネに、偽キリアーネは翻弄される。
どうやら、新しく得たスキルまでコピーする事は出来ないらしい。
それを確信したキリアーネは、一気に勝負を決める為、偽キリアーネの懐に入り込み、その腹部へと右の拳を当てる。
―――鮮血剣刃
ズシュッ!!
「かっ……!!?かはっ、はっ…あぐ……!??」
鮮血剣刃:Lv×一本分の刃をLv×1L分の血液で形成する 消費MP60 対象使用者の血液か血液が混じった液体
唐突にキリアーネの拳から伸びた朱い刃物に、腹部を貫かれた偽キリアーネ。
彼女はその場に膝を突き、訊ねる様な表情でキリアーネを見る。
「………?何を訊ねたいかは知りませんが、このダンジョンの試練は、私には意味が無いですよ……?だって、私は出会ってしまいましたから……こんな戦闘中毒者の私を受け入れてくれる人達に……だから、私に、怖いものは、無いんです……だから、私は、自分の道を進んで行きます……!」
ニコリ
と、思わずファネルまで見蕩れてしまう微笑みを浮かべるキリアーネ。
だがファネルは直ぐにそこで、とある事に思い至る。
(あれ?もしかしてそれって、歯止めを掛ける気が無いって事じゃないのか?)
タラリ……
と、ファネルの額を冷や汗が落ちて行く中、偽キリアーネは苦笑しながら光へと変わって行く。
「まさか、あの臆病な貴女が、そこまで、信頼するなんて……だけど、気を付けて下さいね……?何時だって、絶対は、無いんですから……」
そう言い残し、完全に光となって消える偽キリアーネ。
キリアーネはそれを見送るとファネルへと振り返り、声を掛ける。
「さあ、行きましょうか……?」
「は、はい!!」
こうして、キリアーネとファネルは戦闘を終え、次の階層へと進むのだった。
なんと言うか……(;・ω・)
新人より明らかにキリアーネの方がヤバイと言う事実!!!Σ( ̄□ ̄;)
何でこんな事に?( ・◇・)?
でも、まあ、いっか!
取り敢えず気にせず続けていこうと思います
面白いとおもえましたら、感想、評価の方よろしくお願いいたします。




