「柵の楔」ダンジョン1
遅くなりましたが更新です!
まだまだ調子が出ませんが地道に頑張りたいと思います。
※細かい部分を変えたり加筆した部分も有りますが、内容はあまり変わりません。
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それは、何時も自分を縛る鎖となる。
そこは、大きな洞窟型のダンジョンだった。
自然岩で形成された壁、床、天井……
それらに張り付き、黄緑色に淡く光のはこの世界特有の光苔で、「マナライト・モス」と呼ばれるモノだ。
その特性は余分に吸収した魔素を光に変えて放出すると言うもので、とある研究者によりその放出される光が魔法薬作成に良い影響を与えると言われ錬金術師に人気の植物である。
そのせいか、入り口付近には苔の採取をするネスト出身の駆け出し冒険者の姿がちらほら見える。
「――――って言うか、モンスターと戦ってるのが誰も居ないんですけど……」
ダンジョンの入り口に来た六人は初めて入るまともなダンジョンの中を眺めていた。
その中で出たのが先程のマートの台詞である。
その言葉通り、マナライト・モスの採取をしている者は多いが、モンスターと戦っている者は居ない。
そもそも―――
「モンスターが見当たりません。どう言う事でしょう?」
そう、通常であれば入り口だろうと少量のモンスターが居る筈なのに、此処には一体もモンスターが居ない。
しかし当然それには訳がある。
「此処は、“神造ダンジョン”なんですよ。」
「神造ダンジョン、ですか?」
「ええ、そうです。」
「ですが、神造ダンジョンならもっとパルテノン神殿調な見た目だったと記憶しています。私、それを見てスクショを撮ってみたいと思ったんですよ。」
「僕も同じです。でも、此処って自然岩で出来てますよね?」
マートとキョムからの当たり前の質問に、キーノは微苦笑すると、前方を指差し、その答え合わせをする。
「あれが答えですよ。」
「えっ!?あれって……!!」
「まさか……!!」
「おーー!スッゴいですね!!」
「自然の脅威を目の当たりにしている気分です……」
「これは、凄まじい……!!」
キーノが指差す方向、其処に広がっていたのは大地に呑み込まれ、半ば岩盤と融合している様な形で入口を開いたパルテノン神殿に似た造りの建物だった。
その壁や床は蒼基調として、翠や銀等で鮮やかに、されど荘厳に塗りあげられている。
装飾も見事で、幾何学的な模様が彫られ、サファイアに似た宝石が所々にアクセントとして嵌められている。
しかしそれが嫌味にならない見事な配分で設置されている。
バシャッ!
キョムはその神秘的な光景に、思わずスクリーンショットを撮っていた。
先程言っていたのは本音だったらしい。
「はぁーー…ってあれ?もしかして僕らが歩いて来た道って……」
そこで何かに気付いたマートはそう呟きながら来た道と建物とに視線を走らせる。
「そうです。僕らが歩いて来たのはダンジョンに繋がってるだけの只の洞窟で、本番はこれからって事ですよ。」
「通りでモンスターが居ないと思った~~でも、ウチら以外の人が居ないのは何でかな?」
キョロキョロと辺りを見回すも、ピスタチオの言う通り、六人の回りには人っ子一人居ない。
と、その時―――
「ああああああああぁぁぁぁぁあああああ!!やってられっかちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「もういやあああああああああああああああ!!!」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!!」
「来るな、来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな……!!来るな来るな来るな来るな来るな来るなあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
―――半狂乱になった四人組の冒険者がキーノ達の脇を脇目も振らずに走り抜けて行った。
その顔は一様に絶望に染まっており、中で心を折られる様な体験をしたのは想像に難くない。
「えっ、と…キーノさん?質問、良いですかね?」
「良いですよ。何ですか?マート君。」
「このダンジョンがどう言うダンジョンか知ってますか?知ってたら教えてくれません?」
ひきつる頬を何とか抑え、笑顔で問い掛けるマート。
目尻には微妙に光物が見える。
そんなマートを見たキーノは―――
「知ってますが、先ずは体感してからです。」
―――と、無情な言葉を突き付ける。
ガクッ……
「うん、大丈夫…知ってた……」
涙目になりながら膝を着き項垂れるマート。
それを見てキーノは言葉を続ける。
「内容はまだ内緒ですが、このダンジョンのコンセプトは教えてあげましょう。」
「へ?」
「「「「コンセプト……?」」」」
「そう、コンセプトです。これは一般には知られて無いんですが、神造ダンジョンには全部で3つのコンセプトがあります。それは「心」、「技」、「体」です。」
「つまり、内容もそれにそった物になるって事ですか?」
「ですね。そして此処のダンジョンのコンセプトは「心」。要は心の強さを試す内容となっている訳ですね。」
「ああ、だから先程の方達は目立った外傷が無かったんですね?」
キョムの言う通り、先程の四人には目立った傷は一切無かった。
寧ろ無傷と言っても良いだろう。
しかし、体に傷は無くとも、心には重症を負っているようだったが……
「えげつないとこですねぇ……って言うかそれでちゃんとウチらのレベル上げられるんですか?」
「あ、確かにそれは気になりますね。」
「と言うか、それが目的な訳ですから、上がらないと困ります。」
「アタシは基礎レベルがそこそこ高い。生半可な敵では数をこなさなければレベルアップが出来ない。そこは大丈夫か?」
「問題無いですよ。寧ろ、その為に此処を選んだんですから。ま、その辺も先ずは体感してからです。さ、中に入りましょうか。」
優しく微笑み先行してダンジョンに入って行くキーノの背中に、言い知れない不安を感じながら着いて行く新入りの四人。
その不安が杞憂では無かった事を理解するのは、それからたった数分後の事だった。
〇〇〇〇
「此処は?」
ダンジョンに入ったかと思えば、突然景色が変わり、マートは学校の教室程ある室内に一人で立って居た。
どうやら個別に転移させられたらしい。
「出入口は―――無いか……って事はモンスターを倒さないと駄目何でしょうけど…肝心のモンスターは―――」
何も無い灰色をした石造りの殺風景な部屋の中を見回しそれらしき存在を探していた時だった。
マートの前に、突然ソレは現れた。
ズルゥ……
ズルズル……
不定形な虹色のアメーバの様な不可解な物体。
ソレは不快な音を立てながら前方の部屋の角から滲み出す様に這い出て来る。
人一人分、自然とそう思う量だけ出てきたソレは、ズルズルとマートの前にやって来る。
「スライム……?いや、でも何か可笑しい様な……まさかこれは―――」
マートの目の前まで来てウネウネと蠢く謎のモンスター。
ソレはやがて人の形を取り始め、次第に輪郭がしっかりとし始める。
最終的に其処に居たのは―――
「―――僕?」
ソレは、マートと瓜二つの存在だった。
身長から特徴、装備に至るまで全てが同じ。
「―――此処は心を鍛える場所。自身と向き合う修練場。さあ、覚悟は良いですか?今から第一の試練の始まりです!!」
「………っ!!!?」
自身と同じ声でそう告げる偽マート。
マートは戦闘になるのかと瞬時に身構える。
しかし、その予想に反して偽マートは一向に動こうとしない。
「フラれるのがそんなに怖い?」
突然掛けられたのはそんな言葉。
それを聞いたマートは目を見開き、細かく震える。
「なのに諦められなくて未練たらしくパーティー組んで、みっともないって思わないんですか?」
「や……ろ……」
「まさかこんな平凡な顔と能力しか無い自分に脈が有るなんて勘違いして無いですよね?やめて下さいよ?普通に考えて釣り合うわけ無いんだから!そこらのパッとしない地味子ちゃんで満足して下さいよ。そうすれば無駄に傷付かなくて済みますからね♪」
マートの様子に気を良くした様に、どんどん饒舌になる偽マート。
その顔は下卑た笑顔を浮かべ、マートを見下していた。
「もし僕を黙らせたいなら何か反論してみて下さいよ!それすら出来ない奴が高望みしないで下さい!見苦しいんですよ!!」
「知った様な事を言うなあああああああああ!!」
ズバッ!!
「いっ!?―――つぅ……!!」
偽マートの言葉に堪らず斬り掛かったマート。
繰り出された袈裟斬りは動揺の為か浅く偽マートの左腕を斬り裂いただけだった。
しかし、そこで思わぬ変化がマートを襲う。
「くっ!!まさか「反射」持ちだなんて……!!」
マートの付けた筈の傷が一瞬で消えたかと思うと、その傷がマート自身に返っていたのだ。
これは所謂「ダメージ反射」系のスキルやアビリティによるもので、倒す為には何かしらの条件を満たしたり反射無効を行う能力やアイテムが必要になる。
「バッカですねぇ!!此処は心を鍛える場所だって言ったでしょう?そんな怒り任せの攻撃なんて効きません!ま、図星刺された人間なんてそんなもんですよねぇっ!!?だってホントの事ですもんね!!だからそんなにむきになるんでしょう?ホントは怖くて仕方無くて、なのに諦める勇気も無くてずっと側に居たいからパーティーなんて組んで柵を作ったんでしょう!?そうしないと直ぐに捨てられる気がしたから!!認めて下さいよ!!「僕は卑怯な真似しか出来ないチキンです。」って!!そんなんだったらスッパリ諦めて身を引く方がずっと男らしいのにウジウジみっとも無いにも程があるでしょう!!君にあるのは告白して玉砕するか、身を引くかな二択だけなんですよ!!分からないですか!!?これ以上無様を晒さないで下さいよ!?あっちだってきっと迷惑してますよ!?「何時まで付きまとってるんだろうこのキモオタ……」って!!彼女も女ですからね、澄ました顔してきっと腹ん中は真っ黒に決まってますよ!笑顔振り撒きながら実際は「キッモ!」とか思ってるんですよ!!だからこれを機に―――」
ズバッ!!!
「―――っ?」
ドサッ……
「きっと、これは僕の勝手な願望だと思う……多分、異性としての好意は、君の言う通り持たれて無いのかも知れない……でも―――」
チンッ!
「―――彼女が見せてくれた笑顔はきっと本物だと思うから。だから、今の君の言葉だけは許さない。彼女を侮辱する言葉だけは許さない!」
偽マートの煽りがピークに達した時だった。
マートは鋭い踏み込みで距離を詰め、一瞬で逆袈裟斬りを放ち、偽マートの体を両断した。
その剣先に迷いは無く、躊躇は無く、曇りも無い。
しかし、相手は反射系の能力を持っている。
が、その能力は発揮される様子が無かった。
何故か?
それは―――
「はっ…やれば、出来るじゃないですか、凡人でも……第一の試練、クリアです……」
「―――悪趣味な試練ですね…わざとコンプレックスを少しでもはね除ける様に誘導する辺りとか特に。」
そう、反射を無効化する条件、それはマート自身のコンプレックスに少しでも打ち勝つ事だったのだ。
マートの抱える劣等感、それに対する恐怖や怒りを抱えたままでは、この試練は突破出来なかった。
しかし、その感情をキョムを侮辱された怒りへと上書きされた事により、突破したのである。
キラキラキラ……
とそんなマートを見て満足そうに笑いながら光へと変わる偽マート。
マートはそんな偽マートを酷く後味の悪そうな表情で見詰めていた。
そして、偽マートが完全に光になって消えた所で、マートはドロップを広い部屋の出口を探し始める。
「はあ、キーノさん、人が悪いにも程があるよ……確かにこれなら体感した方が早いけど、スッゴいキツい……主に心が……」
勝ったのにも関わらず、マートは肩を落としとぼとぼと暗い表情のまま見付けた部屋の出口から外へと出る。
其処には、他の部屋を先にクリアしたメンバー達が待っていた。
その表情は一様に暗く、空気が重い。
キーノとキリアーネを除いては。
「第一の部屋クリアおめでとうございます。」
パチパチパチ
―――と笑顔で拍手するキーノを怨みがましい眼で睨む四人。
それでも殺気を出さない辺り、本気で怨んではいないようだ。
もしくは四人掛かりでも勝てないと思っているのかもしれない。
「いくらなんでも、もう少し説明が欲しかったです。私達が殺られていたら、どうする気だったんですか?」
何時もは穏やかな目元をやや吊り上げて厳しい表情を作り、そう問い掛けるキョムに対し、キーノは実にあっけらかんとした態度で答える。
「大丈夫ですよ。実の所、此処の第一の部屋はLv10もあれば必ずクリア出来る仕様ですから。」
はっはっはっ!
「「「「…………………………へ?」」」」
からからと笑うキーノの言葉にポカンとする四人。
思考が追い付いていないのが見て分かる。
「えっとーー…ちょっと待って下さいね?必ずクリア出来る?ってどう言う事です?」
ピスタチオのその疑問にキーノ以外が同意する様に頷く。
その姿に、キーノは佇まいを直し、真剣な表情になって話始めた。
「―――此処は、かつて「心の修練場」と呼ばれた神造ダンジョン。“鏡心迷宮柵の楔”ダンジョンです。そのコンセプトは「心」。もっと詳しく言うなら、「コンプレックス」に訴え掛ける事、です。コンプレックス、つまり、“心の柵”ですね。それに対してどう“決意の楔”を打ち込むかが重要になります。第一の部屋は、それを体験させる為のチュートリアル何ですよ。だから一定のレベルがあれば余程の人で無い限りクリア可能です。それもあって、皆違う部屋に飛ばされた訳ですね。で、皆さんなら大丈夫と判断したので連れて来ました。あ、因みに経験値はモンスターが自分と同じ姿になった事から分かる通り、自分が保有する経験値量と同じだけ貰えます。そして敵は自分と同じな上に録に攻撃して来ないので、コンプレックスさえ何とかすればおいしいとこなんですよ。」
「「「「……………………………………………………………」」」」
「あの、皆さん?」
キーノの説明を聞いて死んだ魚の様な目になり静かになる六人を見て、不安になったキーノが声を掛けるも、六人に反応は無い。
それから数秒間、沈黙が続いたが直ぐに再起動した六人が眼を見開いてキーノを見詰める。
その異様な姿に流石のキーノもちょっとだけびびっていた。
「「「「………………んで……」」」」
「はい?」
「「「「何でそんな詳しく知ってるの(んですか)(のだ)!!!?」」」」
内容よりも、発見されたばかりのダンジョンに対して詳し過ぎる事の方が気になったらしく、そう激しくツッコミを入れる四人。
それに対してキーノはと言うと―――
「まだ秘密です♪」
―――実に楽しそうに笑いながらそう答えるのだった。
新入り達の苦労は、まだ始まったばかりである。
最近暑い日が増えて来ましたね
一回ぶっ倒れ掛けましたが何とか回復出来ました!
なるだけ体調には気を付けようと思います
まとも言いながらあんまりまともじゃ無いような…
うーん…
気のせいかな!
良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします




