新たな街とクラン設立8
だいぶ遅くなりましたが更新です!
最近なかなか思い付かなくて…
少しずつ更新頻度を上げられる様にしたいと思います。
※パーティー加入者等を変更しました。
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杞憂になるかどうかなど、結果が出るまで判らない。
キーノがちょっと人には言えない事をしている頃、草原では準々決勝が執り行われていた。
「それでは、準々決勝第一試合は、4番と5番のチームです……互いに礼―――」
「「「お願いします!!」」」
「―――始め……!!」
最初試合は格闘家の女性魔人とドワーフと猫獣人の男性コンビだった。
格闘家の彼女は両手に白銀の手甲と両足に黒金の脚甲を着け、黒いタンクトップとスパッツを履き、紅色のノースリーブの革ジャンを羽織っている。
一見すると防御力の無い軽装に見えるが、それらはモンスターの革で造られている為、実は見た目以上の防御性能を誇る。
一方の相手は、ドワーフが戦斧にカイトシールド、黒鋼の全身鎧(兜は顔出し)とガチガチの防御系で、猫獣人が緑を基調にした盗賊風の服装に双剣と速度を活かしたスタイルとなっており、これで後衛が居ればバランスの取れたパーティーが出来るだろう。
正直な話、参加者達は格闘家の彼女が不利だろうと思っていた。
ドワーフに攻撃を止められて猫獣人に斬り付けられる。
それで終わる可能性が高いと思った。
しかし―――
「そこまで……!勝者―――4番……!!」
―――勝ったのは、格闘家の女性だった。
決着までに掛かった時間、僅か5秒。
圧倒的な実力差が、そこには有った。
「今、何があった……?」
「分からねぇ…気付いたら、負けてた……」
何が起きたかも分からないまま負けた二人。
それも仕方ないだろう。
何せ、二人を襲ったのは不可視の一撃だったのだから。
事の顛末はこうである。
まずドワーフと猫獣人が先手を取りに格闘家へ駆け寄る。
そして猫獣人の双剣術のアーツ、デュアルスラッシュに合わせ、ドワーフが大盾術のシールドバッシュを繰り出した。
この時点で、二人の敗北は決定する。
二人がアーツに任せ、突っ込んだ先、其処には既に、彼女の攻撃が置かれていた。
――空気弾――
その名の通り空気の塊を弾丸の様に打ち出すアーツである。
その威力は熟練者なら1cmの鉄板を貫く程だ。
尤も、彼女のそれはアーツでは無く、彼女自身が拳を自ら突き出して作った模倣アーツと言うべきモノだったが……
さて、目で追うことすら出来ない速度の拳から作られたその不可視の弾丸だが、それは見事二人の眉間を捉え、その脳を激しく揺さぶった。
結果、二人は一瞬だが気を失ってしまったのである。
そこに超絶技巧が使われている事等、素人でも分かる。
彼女の攻撃は、それだけ計算され尽くしたものだった。
その圧倒的技術力と戦闘能力によりあっさりと彼女は勝利をもぎ取った。
これにより、彼女の採用が決定したのだった。
「これは、楽しくなりそうですね……」
ボソリとそう呟いたキリアーネは、次の試合を始める為に対戦表を読み上げる。
その口元は、微かに、しかし嬉しそうに弧を描いているのだった。
〇〇〇〇
ファステムの高級宿月夜の灯り亭、その大部屋に八人の男女が集まって居た。
勿論、キーノ達四人に新しくメンバーに加わった四人である。
結局、あの後行われた試合は格闘家の女性魔人――「ファネル・バタラ」、ピスタチオ、マート・トゥルーとキョム・ナチックードコンビの順で勝負が決まり、この三組が採用された。
「やれやれ、始めは集まり過ぎてどうしようかと思ったけど、何とかなって良かったよ。」
「「最大効率でのパワーレベリング」を約束してたとは言え、あんな集まるなんてなぁ……」
「実は師匠達が人気者だったとかですか?」
「流石に、それは無いと思うけど……」
元々は20人も集まれば良い方だと思っていただけに、今回の事には内心で驚愕していた四人。
万物認識と万物鑑定を使っての「キーノ・ブートキャンプ」による最大効率でのパワーレベリングを餌にした程度では説明がつかないと頭を悩ませる。
「あの、もしかして皆さん自分達の評判がどうなってるか知らないんですか?」
「「「「え……?」」」」
何言ってんだこいつ?
そう言いたそうな表情を向けられて一瞬たじろぐも、マートはそのまま話を続ける。
「キーノさん、カナタさん、キリアーネさんは皆さんが思ってるよりずっと人気ですよ?こっちでも色々やらかしてるかも知れませんが、僕達新規組はその手の情報ほとんど知りませんし……それよりも他のとこで助けてもらったり色々お世話になった記憶の方が強いですから。」
「え、じゃあただ声掛けするだけで……」
「結構な人数が集まったかと……」
「「「「知らなかった……」」」」
「って言うか、それなら私の事なんて知らないですよねぇ~~」
「いい辛いですが、正直私は「この人誰なんだろう?」と思いながら見ていました。」
「ちょっ!キョムさん!!」
「わふぅ……」
ガクリ……
キョムの容赦無い言葉に膝が折れるハルナ。
精神的ショックが大きかったようだ。
「ハルナちゃんはAWOからだもんね……知られて無くても仕方無いよ……第一こっちでの知名度って、主に悪評だよ……?知られて無い方が良いと思うの……」
キリアーネがフォローに成っているようで成っていない様な微妙な言葉を掛ける。
「わふぅう…アーネちゃん……それフォローに成って無いよぉ……!」
どうやらハルナ的には成って無かったらしい。
そして再びガックリと項垂れるハルナ。
見事なorzである。
「ま、まあ、ハルナの事は置いておきましょう。それより、これからの予定を話し合わないと。色々、キナ臭い事になってますしね。」
「わふぅ、キナ臭い事ですか?」
「うん、そうなんだよ。実は密偵って言うか隠密って言うか…兎に角その手の人を見付けてさ、ちょっとアレして色々話を聞いてきたんだ。」
「キーノ、ちょっと来い。」
「なに?カナタ。」
「良いから。来い。」
不穏な言葉を聞いて表情を無くしたカナタはキーノの首に腕を回し無理矢理部屋の隅に連れて行く。
(お前、途中で居なくなったと思ったら何してんだよ!?まさか行方不明者出したりしてねえだろうな!!?)
カナタは小声で怒鳴り付けると言う器用な真似をしながらキーノを問い詰める。
(別に?体を傷付ける様な真似はして無いよ?ちょっとデバフ系とバフ系のアーツを使っただけ。ちゃんと五体満足で帰したってば。)
カナタの言葉に、キーノは悪びれる事も無くそう言ってのける。
軽くおどけるような仕草と共にそう告げられたカナタは、何かを諦めた様に特大の溜め息を吐く。
それはキーノが相当怒っていて、その怒りを発散した後にする仕草だった。
つまり、キーノは密偵達、ないしはその雇い主に対しかなり立腹していたと言う事。
そしてその怒りをあの密偵達で発散したと言う訳である。
こう言う時のキーノが、自分の行いを反省しない事をカナタは良く知っていたので説教は諦めたと言う訳だ。
それに、その怒りの原因は自分達に危害が及びかねなかったからなのだろうから、尚更怒り辛い。
(取り敢えず、何したかだけでも教えろ……)
(たいした事じゃ無いよ。「五感低下」使って五感を効きにくくして、「思考加速」を四重掛けにして体感時間を625倍に引き上げて、「恐怖増加」の二重掛けて恐怖感を煽って、「記憶低下」でその間の記憶を曖昧にしただけで、僕はそれ以上何も…あ、そう言えば「エリアグラビティ」と「重力投下」で彼らだけ重力8倍状態だったっけ……)
密偵達にアレした時間は約10分。
1日は60×24で1440分となる為、625倍では6250分となり4日と三分の一日位となる。
それはつまり殆ど何も感じない状態で、恐怖と8倍の重力に4日以上晒された上、その間の記憶があやふやに成っていると言う事だ。
しかも、体の痛みと恐怖だけは残っているのである。
何をされたか分からない……
分からないけど恐ろしい目に遭った事だけは解る。
それは、どれ程の恐怖だろうか……
思考加速:思考速度のみを5倍に加速させる 消費MP15 対象一人
恐怖増加:対象の恐怖感を五割増しにし恐慌状態に成り易くする 消費MP30 対象一人
記憶低下:対象の記憶力を二分の一に低下させる 消費MP25 対象一人
重力投下:対象に掛かる重力を2倍にする 消費MP50 対象一人
(お前な…いや、もう良い……良く分かった。うん。)
お前の価値観を正そうとするだけ無駄だって良く分かった……
(そう?なら戻って話の続きをしようよ。)
(うん、そだね……)
カナタはやたらとグッタリしながらキーノと共に皆の輪に戻って行く。
そして一瞬だけ上を見上げとキーノに見つかった密偵達を憐れんでから話し合いを再開するのだった。
〇〇〇〇
マートは困惑していた。
何故なら隣のNPCらしき魔人の女性―――ファネルがずっと座禅をくんで瞑想したままピクリとも動かないからだ。
模擬戦とは言え、実際に戦ってその強さを体験しているだけに、声も掛け辛く、どうしようかと悩んでいたのだ。
(仲間に、なるんだよ、ね……?)
つい、そんな疑問が頭を過ってしまう程、彼女は我関せずで、マートはますます不安になってしまう。
助けを求めて視線をさ迷わせる。
一緒に入ったピスタチオは熱心にキーノ達の話を聞いている。
当然キョムも―――
(あれ、聞いてるフリしてるだけだ……)
―――聞いてはいないようだ。
それどころか此方を向いて真顔で軽く頷いたかと思うと、右手の親指を立ててきた。
(流石にウザイです!!)
若干イラっと来たマート。
ただ少しとは言え気が紛れた事を考えれば流石コンビとも言える。
と、そんな高度なコミュニケーションを取っている時だった。
「あの~カナタ様達が待ってるんで、そろそろ良いですかね?」
「「あ、ごめんなさい。」」
先程までキーノ達の話を聞いていたピスタチオが話し掛けて来たのだ。
因みにファネルはまだ瞑想中である。
「いえいえ。謝罪はカナタ様達にお願いします。ウチは別に気にして無いんで。」
と言うか―――
「話し合いはもう終わりましたよ?それで結果ですけど―――」
ピスタチオが語った結果。
それを聞いて、マートとキョムはそれぞれ顔を見合せては天井を見上げるなどしてその言葉を飲み込んでいく。
そして数秒後―――
「「はあーーっ!!?」」
―――二人はその内容に驚くのだった。
―――5分後―――
「さあ皆さん!僕の後に着いて来て下さいね?」
「「「「はい……!!」」」
「了解した。」
キーノ、カナタ、ハルナ、キリアーネ、マート、キョム、ピスタチオ、ファネルの八人はネストの郊外にて最近発見されたダンジョン前に来ていた。
移動は勿論ゲートによる転移だ。
新入りに対する口止めもバッチリである。
「じゃあカナタ、ハルナの事は任せたよ?」
「おう!お前も新人共の引率宜しくな?」
「任せて。―――と言いたいけど、あのファネルさんは新人って言えないから、三人だけだけどね。」
「けどホントに大丈夫か?引率がお前とキリアーネちゃんで。」
「仕方無いだろ?人数が多いと分配される経験値が減るんだから。それにパーティーは六人までだし。」
「まあなぁ……」
AWOにおいて、経験値はパーティー内で等分配される事になっている。
故に、人数が多ければそれだけ分配される量が減るのだ。
そして1パーティーの最大人数は六人で、それ以上はレイド扱いとなる。
その為、今回はキーノとキリアーネが四人を引率する形でダンジョンに潜り、パワーレベリングをする事にしたのである。
しかし、引率するメンバーの中にはAWOの住人であるオルンも居る為、カナタ的には不安だった。
「何かあってもやり過ぎるなよ?それと、ファネルさんは守ってやれ。」
「分かってるよ。じゃ、また後でね?」
「ああ、また後でな。」
そう言ってダンジョンへと入って行く六人を見送るカナタ。
その顔は不安で満たされていた。
「わふぅ、師匠なら大丈夫ですよ。」
その顔を見て励ますハルナ。
だがカナタは首を横に振り違うと否定する。
「俺が心配なのはな、キリアーネちゃんの方なんだよ……」
「あーーー……」
カナタのその言葉に納得した声を出すハルナ。
「ファネルさんに触発されて、暴走しないと良いんだが……」
そんな不安を抱えながら、二人は六人が入って行ったダンジョンの入口を見詰めるのだった。
なかなかストーリーが進まなくてすみません…
次回からは暫くダンジョン探索になります
最後まで見て頂けたら嬉しいです
良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします




