幕間 激昂と称号と悪鬼羅刹
数話前の「悪意神の祝福」で起きていた出来事です。
と言っても内容はあっさりめですが……
残酷な表現があるので閲覧はご注意ください。
カナタ――桂木刀弥は、怒りやすい性格だった。
兎に角理不尽が許せない、そんな性格だった。
虐められて泣いてる子が居れば、歳上にも喧嘩を売った。
途中から無理矢理行列に割り込む者には、大人だろうと注意した。
額を多目に間違えたおつりでさえ、猫ババする事を赦さなかった。
そんな激しい性格が軟化したのは、おさ馴染みであるキーノ――神雫菊之とVRゲームを始めた事で、自分も理不尽を行使する側に立ってしまったからだ。
自分達に突っ掛かって来るプレイヤーを何人も潰してきた。
時にはパーティーやギルド、クラン単位でプレイヤーを潰した時も有る。
無論、全部碌でもない奴らだったし、無駄に刀弥達に絡んで来たので、自業自得だ。
ただ、そんな事を続けて来た為に―――
「俺も理不尽なら、理不尽を潰す理不尽になろう!」
―――刀弥がそんな結論に至るのは酷く当然な事で、自然な事だった。
そして、理不尽の多さに嫌気が差し、どうしても見逃せないもの以外には目を瞑る様になるのも、当然で、自然な事だった。
まあ、つまり、刀弥はゲームを通して一つ大人になったと言う事だ。
だが―――
「なあ、キーノ…今、俺どんな顔してる……?」
「……VR始める前の顔。」
―――それにも―――
「ははは…やっぱり、そうだよな……」
ギリィ……
―――限度はある。
カナタの顔は、激しい怒りに燃えていた。
殺意が辺りに満ちて行くのが、まだまだ経験の浅いハルナにさえ感じ取れる。
それほどの、激しい怒り……
原因は、目の前の光景にある。
「あ、あ…うぶ…あ、も、う…ころ……し、ぶぇ……」
「何で、気が狂わない……正気でなんて、いたくないのに……」
「何で、気が狂わないの……正気でなんて、いたくない……!」
「ぶげ、あ"…おぶっ!?ぐがあ"あ"あ"あ"あ"あ"……!!」
「ギィアアアアア!!モウ!モウイヤダ!!ダレカ!ダレカ!タスケテ!!」
「(パクパクパクパク)」
其処は、等活地獄や黒縄地獄の方がもしかしたらマシかもしれないと思ってしまう地獄絵図が繰り広げられていた。
四肢に喰い付いた蟻が徐々に融合する痛みに悶えながら、蟻の幼虫が胎内から腹を喰い破って出てくる激痛に言葉すら無くしただただ涙を流す事しか出来ない女性。
融合し、キマイラかぬ~◯~に出て来た両面宿儺の様な二頭四椀の怪物になった男女。
十数匹の蟻に集られ、腹を食い破られながら、アビリティにより死ねず苦しみ、そのまま食い付いている蟻達と融合していく男性。
毛虫の毛の様に蟻の脚を顔以外の全身から生やして蠢く男性もいた。
頭だけが蟻と融合し、自分の体が蟻の幼虫に喰われる様を見せ続けられた男性。
そんな悲惨な異形へと変わり果てた彼ら彼女らは、その全てが正気を保ち、自分がどうなっているかを理解していた。
それ故に、“死”による終わりを求めていた。
「こんなの、酷過ぎますよぅ……」
ガクリ……
と、ハルナは涙を浮かべ膝を着く。
キリアーネもその目尻に涙を浮かべていた。
「キーノさん…本当に、助ける事は、出来ないんですか……?」
―――ギリィッ!
「………無理です……!!」
歯噛みをしてから、悔やんだ顔をしながら、キーノは救いの無い事実を告げる。
『技能喰らい Lv65
デミダンジョンマスター ハーフレイド級 推奨基礎Lv70
ダンジョンモンスター 伝説級 レア度B
現パーティー勝率95%
取得可能経験値13250(106000)
ドロップ???
HP:75000
MP:50000
STR:980
VIT:1130
AGI:545
DEX:750
INT:420
アビリティ
技能喰い
永劫死
単一生殖(異体)
混成融合
等級不足 』
『ダンジョンマスター、サブダンジョンマスターの成り損ない。アビリティによる不死性が残っている為、少しずつ幼虫等に喰われては高速再生する、を繰り返し、その度に噛み付いている成虫と遺伝子レベルで融合している。アビリティ「永劫死」の効果で死ぬ事も狂うことも赦されない。人間に戻せるのは上位神以上であり、人間には不可能。出来る事は浄化によるアビリティの解除と止めを刺す事だけである。』
「―――ご丁寧に説明文付きでしたよ……!今までそこまでの説明無かっただろ!?って言いたくなる位きちんと胸糞悪い情報が鑑定結果として出てました……!!」
「つまり―――」
「―――俺達は、あの人達を終わらせてやるしか無いって事だ……」
「わふぅ……そんなのって…そんなのってないですよぉ……!!」
「だけど、やるしか無いんだ……!!だから、キリアーネさん、お願いします……」
苦虫を噛み潰した様な渋い表情で、キーノはキリアーネに頼み込む。
戦場を、整えてくれと……
「……………分かりました……」
―――セイントフィールド!!
瞬時に淡く銀色に輝く光が、ドーム状(実際は球状)に広がって行く。
そして体育館程あった広間は、全て光に包まれてしまった。
その直ぐ後、キリアーネは更に―――
「「浄化の後光」!!」
―――で部屋一帯を隈無く照らし、デミダンジョンマスターと化した者達に掛けられた呪いを解除していく。
その作業は、ほんの20秒程で終わった。
「ちょっとお願いなんだけどさ?キリアーネちゃんとハルナちゃんは、今回何もしないでくれ……それとキーノ―――」
「分かってるよ……危なくなる迄、手は出さない。だから―――終わらせてやれ、カナタ。」
「ありがとな……」
短いやり取りだった。
だが、二人の間では、それで十分だった。
そして、救済と言う名の一方的な虐殺が始まる。
「たす、け…て……たす―――」
ブシュッ……!
ボトッ……
カナタが最初に殺したのは、アラクネの蟻版みたいな、下半身が蟻になった女性だった。
その女性の首を、カナタは躊躇無く斬り捨てる。
ハルナの眼でさえ追い切れない速度の居合い。
彼女は、痛みすら感じる事は無かっただろう。
「タノム…オレモ、コロシ―――」
ズブシャッ!!
ボタボタボタッ……
次は蟻の腕が二対生え、六腕の怪物になった男性だった。
カナタは瞬時に蟻の腕を斬り飛ばし、首を斬り捨てた。
その最後の姿は、ほとんど人と変わらない。
「ワタシモ―――」
「俺を―――」
「こっちも―――」
「オネガイ―――」
ズバッ!!
バシュッ!
スバババッ!!
ズブシャッ!!
ゾンビの様に助けを求めながら近付いて来る者達を、歯を噛み締めながら次々と斬り殺していくカナタ。
その度に、その顔はやるせなさと怒りに歪んでいく。
そして、その度に、彼の剣は猛り続ける。
「あああ……!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」
耳を塞ぎたく成る程の大声で上げられたのは悲痛なる怒号……
慈悲によって振るわれるは必殺の剣……
彼を突き動かすのは、悲しみを焼き付くす激昂だった。
その姿、正に修羅――いや、羅刹の如く。
ピコンッ!
『ユニーククエスト「激昂する鬼」をクリアしました。報酬としてレベルアップと称号が贈られます。』
不意に気聞こえて来た聞き慣れた電子音。
その後に開かれたのはこんなメッセージだった。
―――羅刹―――
自他共に「羅刹」と認められ、その称号に相応しき行動をした者に贈られる称号。近接戦闘で与えるダメージを五割上昇させる。また戦闘時、近接戦闘系、バフ系のスキル効果を三割上昇させ、デメリットを無くす。
カナタが手に入れた称号は、キーノ同様、自身の二つ名となっているものだった。
その効果は凄まじい。
だからなのか、カナタの猛攻は勢いを増していた。
そして―――
ピコンッ!
『「激怒」のレベルがMAXになり「憤怒」へと進化―――出来ませんでした。代わりに「剣鬼」「剣術」「双剣術」「激怒」「錬金術」「鍛冶」が統合され、ユニークスキル「悪鬼羅刹」へと進化しました。』
悪鬼羅刹Lv1/100
統合された全てのスキルの能力が使用可能。
敵を倒す程にダメージ量が5%ずつ上昇(戦闘終了後30分まで継続)。
―――ユニークスキルが統合進化を起こし、更に強力なものへと変わったのだった。
結局、ダンジョンコア以外のモンスターは全てカナタがそのまま斬り倒し、戦闘は山場も何も無く終わりを迎える。
「お疲れ様……」
「ああ……」
「お疲れ様でした……」
「うん……」
「カナタさん……」
「ん?なに……?」
ギュッ!
「えっ!?ちょ、ハルナちゃん?」
突然抱き着いて来たハルナに驚くカナタ。
しかしハルナは離れたりせず、寧ろ背中に手を回し更に強く抱き締める。
「無理しちゃ、ダメですよ?」
「いや、無理なんて―――」
「ダメですよ?」
「―――はい……」
「わふぅ、よろしい!」
それで満足したのか、カナタから離れるハルナ。
そして四人は、ダンジョンコアの前に立つ。
ダンジョンコアは、どす黒い血の色をした直径1m程の大きさの真球状の結晶体だった。
時折心臓の様に脈動している。
「こいつだけは、斬れ無かったんだ……」
「成る程ね……まあ、仕方無いよ。」
「わふぅ?」
「どう言う、事ですか……?」
「こう言う事です。」
『技能喰らい
ダンジョンコア
神話級 レア度Unknown
現パーティー勝率???%
取得可能経験値 55555556(444444444)
ドロップ???
HP:1
MP:1
STR:1
VIT:1
AGI:1
DEX:1
INT:1
アビリティ
技能喰い
分体創造
攻撃無効 』
『分体創造:分体となるモンスターを生み出す。』
『攻撃無効:あらゆる攻撃を無効化する。』
「って効果のせいだね。」
「何ですかそのチート!?破壊なんて無理ですよ~~……」
「確かに、それじゃ破壊なんて出来ねえだろ……」
ダンジョンコアのチートアビリティに悲観するハルナとカナタ。
だが、キーノは慌てた様子が無い。
それを見て、キリアーネはハッと思い付く。
「攻撃じゃ、無ければ良い……?」
ニッ
と微笑むと同時に、キーノは魔法を行使する。
―――空間圧縮!!
それは、今日創った魔法系アーツであり、既に何度もお世話になった強力な魔法だ。
だが、実はこれ攻撃魔法では無い。
故に―――
「ダンジョンコアが、潰れていきますよ!?」
「マジかっ!!」
「凄いです……!」
―――ダンジョンコアは、呆気なく破壊されるのだった。
そして、ダンジョンコアも先に倒された者達も光となって消え、後に残ったのは進化する宝玉の欠片だけなのだった。
こうして、今回の戦いは幕を閉じる。
その後、地上に戻った四人は救助した人々から手厚い歓待を受け、深夜まで宴に付き合う事になるのだった。
カナタのユニークスキルが進化してチート加減に拍車が掛かりました
今後も更にチートになっていく事でしょう!
次回から次の街に行きます
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