悪意神の祝福
また遅くなりましたが更新です!
後半に少しグロい表現がありますので注意して下さい。
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出来る事、出来ない事、その境界が分かるからこその後悔も有る。
―――空間圧縮!!
ギュオン!!
成す術も無く空間事圧縮されたダンジョンマスター――ロイエルとサブダンジョンマスター――レオルの二体。
キーノ達と共に降りて来ていたベルニス、リーリエ、ミルアは自分の役割を終えた報告に来た時、その様子を視る事になった。
「だ、ダンマスを一瞬で……?」
「す、凄過ぎですよっ……!!」
「ヤッバイ人だったんすね……」
余りの衝撃に茫然とする三人。
だからだろうか、彼女達はキーノ達が戦闘態勢を崩していない事に気付いていなかった。
それはつまり、まだ戦闘が終わっていないと言う事だ。
ピキッ……
と、何かがひび割れる様な音が廊下に響く。
そして、その音は次第に大きくなり、連続で響き始める。
それに伴い、圧縮空間にヒビが入り、どんどんと割れ始める。
数秒後、遂にそれは起こった。
パキーーーーンッ!!
涼やかで甲高い、されど不快な感じはしない不思議な音が、辺りに響き渡る。
直後、先程の音とは打って変わって全身を刺す様な強烈な殺意とこの世の穢れ全てを集め、凝縮した様な嫌悪感と不快感が辺りに充満する。
それはまるで濡れた真綿の様にベルニス達に纏わり付き、三人は身動きはおろか、呼吸さえも儘ならなくなり、油断した瞬間意識を持っていかれかねない状態に陥ってしまう。
「かっあぁっ……?!はぁ、あ……ふっ、くぅ……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「うっ!!げぇほっ!えほ!!うぁ、あ、ふっ、うぁ……」
「ぐぅ、う、あっ……!ふぅっ!ふっ、ふぅ、ふぅ、あっ……」
浅い呼吸を繰り返しながらも、何とか意識を保つ三人は、先程ロイエル達が居た場所に視線を向ける。
そこには、全身の甲殻がヒビ割れ、体液を流し続けるロイエルと、ロイエルと同じ様な姿に変異し、同じ様に傷付いて死にかけているレオルの姿があった。
二体とも一目見ただけで命に関わる重症を負っているが、ロイエルからはそんな傷を負っているとは思えない程のプレッシャーが放たれている。
「ギザマラア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!ゴロジデ―――」
「言ったよね?手早く行くって、さ。」
―――セイントフィールド!!
―――ブレイドダンス!!
―――乱切り!!
「ヤ―――」
ズブシャッ!!
ボタボタボタッ!!
煌めく剣閃、目にも止まらぬ――と言うべき速度で繰り出された斬撃は、アビリティの切り替えすら赦さない。
結局、最後まで言葉を言い切る前に、カナタとハルナの刃で細切れにされ、光となって消えて行くロイエルとレオルの二体。
どうやらキーノもカナタも解体スキルを外していたようだ。
結果、二体が消えた場所にはドロップアイテムだけが残っていた。
「「「…………………………に、人間じゃない(っす)……」」」
その凄まじい迄の一方的な戦闘を見て、ベルニス、リーリエ、ミルアの三人はそんな感想を漏らす。
その瞳には、憧憬と尊敬、畏怖と畏敬の念が籠められている。
「さてさて、あのゴミは何を落としたのかな?」
そんな視線を向けられているとも知らずに、キーノはナチュラルにそう言い放つと、二体が落としたドロップを確認する。
ドロップアイテムは、まるで琥珀の様な色合いで、磨かれたクリスタル並の透明度を持つ宝石の欠片だった。
元は楕円形だったと思われるが、今は細かく砕けてしまっている。
まだ残っている曲面は、僅かに光を放っているかの様に見える程磨き抜かれ、完全な状態であれば、美しい輝きを放っただろう事は容易に想像出来る。
しかし、キーノはその中に怪しい陰りを見付ける。
そこで、念の為ドロップには触れずに鑑定だけで確認したのだが―――
『進化する宝玉 大地の種の欠片
状態 “悪意神の祝福”“破損”
等級 “神話級” レア度 “A”
属性 “地”
性格 “現在は不明”
欠片を集める事で修復可能 』
―――と出た。
更に“悪意神の祝福”に関して鑑定していく。
すると―――
『“悪意神の祝福” 神話の時代、善意神ゼグラスと対を成した悪意神エビカルスにより掛けられた祝福。その効果は非常に強く、触れたモノ全てを悪意で染める精神汚染の効果が有る。』
―――と言う様な結果が出たのだった。
次いでに悪意神エビカルスについても鑑定しようとしたが、そちらは対象外となり情報を得ることは出来なかった。
「ま、これが触ったらヤバいもんだって分かっただけ良いか……んーーでもどうしよう?一応駄目元で試してみるしか無いか?ん、よし!キリアーネさん!」
「はい、どうかしましたか……?」
暫く何やら考え込んだ後、キーノはキリアーネを呼ぶ。
キリアーネは直ぐ近くに居たらしく、キーノの呼び声に反応し近付いて行く。
「このドロップ、呪われてるみたいなんです。浄化出来ませんか?」
「成る程……やってみますね……「浄化の後光」!!」
マルクを助けた時の様に、眩い光がキリアーネの後方から前方に向かって照射される。
そしてその光を受けたアイテムは、まるで世界から切り取られた闇の様に黒く染まり、光を拒絶するかの様に闇を靄状にして周囲へ拡散する。
その様子を見るに、効果が無い訳では無いようだが、いかんせん祝福が強過ぎて浄化仕切れ無いようだ。
「キリアーネさんはそのままお願いします。緩急自在―――」
『場所「祝福」、効果「弱く」、効力「最大」、タイミング「瞬時」、反動「無し」』
「―――発動!!」
その瞬間、闇が薄くなったかと思うと瞬く間に光に呑まれ、綺麗さっぱり消え失せてしまったのだった。
後に残ったのは綺麗な欠片だけ。
『進化する宝玉 大地の種の欠片
状態 “破損”
等級 “神話級” レア度 “A”
属性 “地”
性格 “現在は不明”
欠片を集める事で修復可能 』
「これで良し!さて、そろそろ下に行きましょうか?」
欠片を拾い、ズボンのポケットに仕舞うと、キーノは後ろを振り返り、そこで待機していた仲間達に声を掛ける。
「ああ、準備は出来てる。」
「覚悟完了ですよ~~!!」
「早く、終わらせてあげましょう……」
そう返答する三人に、キーノは静かに頷く。
四人のその顔は真剣そのもので、今から向かう場所が何れ程危険なのかを如実に物語っている。
しかし、其処に有るのは危険だけでは無い。
「あの、本当に、もう、助ける手段は無いんですか?」
下に降りようと、階段を目指して歩き始めた四人に、リーリエが声を掛ける。
しかし、誰も振り返らず、キーノが声だけで応じる。
「さっきの彼らが答えです。僕らでは、もう終わらせる事しか出来ません。」
ギリリッ!
血が出る程強く手を握り混み、砕けんばかりに歯噛みするキーノ。
その視界の端には、先程とは違う情報が表示されていた。
『救出人数112/112 モンスター化討伐数02/42』
砦内部に居た人数は全部で154人。
そして、この表示された数値の合計は154。
更に、討伐数の2とキーノの先程の台詞。
つまり、そういう事である。
「せめて、一思いに楽にしてやってくれ……!」
「あんたらに任せるしか無い自分が情け無いっす……!!」
ベルニスの願いとミルアの嘆きを背に受けながら、四人は無言で歩んで行く。
その先に、目を反らしたく成る程の地獄が有ると知りながら。
〇〇〇〇
―――AWO内深夜2時―――
月すら沈み、星明り以外の光源が存在しない深夜の谷。
何処か不気味な静けさに包まれたそんな場所のとある一角。
只でさえ音の無い谷の中で、更に音の無いその場所は、不思議な荘厳さを持った石造りの祠。
土石神クエイストンを祀る祠だ。
その祠の前には、戦闘があったとは思えない程身綺麗なままのキーノ、カナタ、キリアーネ、ハルナの四人が居た。
「お仕事ごくろーさま!いやーお陰で助かったよ。これならもう心配要らないね♪」
四人の前、祠の中には昼に出会った時と同じ姿のクエイストンがいて、肩の荷が降りたと言わんばかりに朗らかに笑っている。
だが、対象に四人は僅かに俯き、暗い表情を浮かべていた。
どんよりとした空気が立ち込めている。
「……………辛い役目をさせてごめんね?この世界が嫌いになっちゃったかな?」
不安そうなクエイストンの言葉に、四人は無言で首を横に振る。
「そっか…なら良かった。君らは神々のお気に入りだからね。これからもこの世界に来て、冒険して欲しかったんだ。だから、今回の事を頼むのは少し気が引けたんだけどね。俺っちに出来るのは封印までだし、今は力が無くてそれすら出来ないしで、君らに受けて貰えて本当に助かったよ!」
「…………まあ、そりゃ受けるしか有りませんでしたからね……後悔は有りません。でも―――」
思い出すのは一階で見た惨劇と呼ぶべき場景。
四肢に喰い付いた蟻が徐々に融合する痛みに悶えながら、蟻の幼虫が胎内から腹を喰い破って出てくる激痛に言葉すら無くしただただ涙を流す事しか出来ない女性。
頭だけが蟻と融合し、自分の体が蟻の幼虫に喰われる様を見せ続けられた男性。
融合し、キマイラかぬ~◯~に出て来た両面宿儺の様な二頭四椀の怪物になった男女。
毛虫の毛の様に蟻の脚を顔以外の全身から生やして蠢く男性もいた。
そんな悲惨な異形へと変わり果てた彼ら彼女らは、その全てが正気を保ち、自分がどうなっているかを理解していた。
「地獄って、あの世以外もあったんですね~~あれじゃ、死ぬ方がマシですよ……」
力無いハルナの言葉に応える者は誰も居ない。
しかしその表情は、その意見に同意している事を感じさせた。
「けど、君らが終わらせなきゃあんな人達がもっと増えてた。だから、君らは誇って良いんだよ?」
「そうかもしんねえけどさ、やっぱ、ちょっと辛いんだよ……」
「もっと良い方法が有ったんじゃ無いかと、考えてしまって……」
ハッキリ言って、現時点で出来る事等終わらせる事以外は無い!!と断言出来る。
これは、そういう類いの出来事だったのだ。
だから、本当にキーノ達は気に病む必要など無いのである。
だが、全てを終わらせ地上に出た時、其処に居た人々から掛けられた感謝が、尊敬の眼差しが、彼等には痛かった。
偉いと言われたく無かった。
助けられなかっただけなのに―――
「救ってくれて有り難う……!」
―――何て言われても、罪悪感が募るだけだった。
割り切れば良いだけなのだろ。
しかし、まだ十代の彼等にそれを望むのは酷である。
クエイストンはチャラい兄ちゃんみたいな神―――と言うか実際チャラい神なのだが、そこら辺は分かっていた。
だから此処で強引に話題を変える為に話の舵を切る。
「――――そーだ!クエストをクリアした本報酬をまだ渡してなかったね!俺っちじゃあ伝説級までしか渡せ無いけど、受け取ってくれるかい?」
そう告げられたクエイストンの言葉に、四人は初めて、俯いていた顔を上げたのだった。
今回後半の戦闘シーンは丸々カットさせて頂きました
そこは何時か幕間等でやらせてもらおうかと思います
次回は報酬とドロップ品等のリザルト回の予定です
良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします




