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崩落と救出と“激怒”

此処のところ執筆が遅くなりがちですみません

だいぶ遅くなりましたが更新です


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


因果は巡り自身へ帰る。

―――崩落5分前―――


 ベルニス達がキーノ達により救助されている頃、砦の司令室で一人の男が苛立たしげに足を揺すっていた。

男は顔だけ見れば四十代前半だが、その頭は天辺が完全に禿げており、髪は頭の側面にしか残っていない。

体は大柄でガッシリとした筋肉に覆われているが、その様子は何かに怯える子供の様に情けないものだ。

身に纏う群青色の厳つい軍服も煤けて見える。

そんな彼こそこの砦の責任者、ロイエル・ベル・フィルド子爵である。

彼は今滞在している中隊の中隊長でもあり、爵位も一番高いので砦の責任者となったのだが―――


「ええい!!まだモンスターは討伐出来ておらんのか!?何時まで掛かっておる!!」


 10分程前から始まった謎のモンスターの襲撃がまだ治まっていない事に、彼は苛立ち、両手で残り少ない青髪を激しく掻き毟。


「くそっ!くそくそくそくそっっっ!!何故私が任務で滞在している時にそんなモンスターが出るのだ!!?誰かの陰謀か!?おい!レオル!外の状況はどうなっている!!」


 彼は一頻り悪態を吐くと、自分の近くで待機していた初老の執事に外の状況を訪ねる。

司令室は窓が無い為室内から外の様子は探れないが、執事のレオルは千里眼スキルを持っている為此処からでも外の様子を見る事が出来るのだ。

レオルは情けない己の主に内心溜息を吐きながら、千里眼で見た情報をロイエルに伝える。


「謎のモンスターは健在です。只今砦内に残った騎士達が戦っていますが状況は芳しく御座いません。」


「それでは奴等にこの砦を落とされてしまうではないか!!騎士共は一体何をしとるのだ!!?」


 謎のモンスター―――技能喰らい(スキルイーター)はそのアビリティによりレア以下のスキルが関係するダメージを殆ど受ける事が無い。

ステータス的にはCランク相当、全ステータスの平均が400~500位であり、決して強くは無い。

寧ろ弱い部類なので、ステータスでゴリ押しすれば簡単に倒せてしまう。

しかし、この世界の住人は初見のモンスターにはスキルを使って対応すると言う固定観念に囚われている上、この情報を知らない為、スキルによるバフやアーツでダメージを与えられない事で、激しい動揺や恐怖心が生まれてしまい余計に対処出来なくなっていたのだ。

因みに、ヒューマンの基礎レベルがLv50に成った際の基本的な種族値は以下の様になる。


Lv50

種族:ヒューマン

HP 962/962

MP 962/962


STR 334

VIT 334

AGI 334

DEX 334

INT 334


これに1レベル毎に手に入るステータスポイントや装備、職業によるステータスの底上げ、微々たるものだが「努力値」と言う行動によるステータスアップも存在する。

尤も努力値は基礎レベルが20になってからの解放な上、普通はLv50迄で全体で40上がれば凄い方な為ホントに微々たるものだ。

とは言え少しでも上がれば上昇幅が上がるので馬鹿には出来ない。


 取り敢えず何が言いたいかと言えば、ステータス補助系のスキルを外して普通にぶっ叩けば騎士達なら分体の働き蟻程度一殺(いちころ)と言いたいのである。


「どうも攻撃の効きが悪いようです。そのせいで思うように戦えておりません。恐らく特殊なスキルかアビリティが有るのでしょう。」


「それでは奴等は無敵ではないか!!」


「いえ、恐らく何かしらの弱点が有る筈です。ですが、現場は混乱の為にその事を思い付けない様子…何とかしないと持って後10分と言ったところですか……」


 レオルのその報告にロイエルは頭を抱え、声にならない呻きを上げる。

数秒後、ロイエルは徐に体を起こし、搾り出した様な声でレオルに問い掛ける。

その声は、絶望に支配されていた。


「救援の方は、どうなっている……?」


「まだ救援要請を出したばかりですので、そちらは――うん?何やら四人程見慣れぬ者達が一階に…ギルドからの救援?ですがそれにしては早過ぎる……しかも装備はせいぜいCランク程度……なっ!!?」


「どうした!?救援が来たのか!??」


 レオルの表情と発言から一縷の希望を見出だしたロイエルは先程とは打って変わって明るい声で問い掛ける。

その言葉に、レオルは一拍置いてから、希望に満ちた表情で答える。


「最高の救援です旦那様。あの蟻共を歯牙にも掛けぬ冒険者が四人も駆け付けてくれました。ベルニス隊長を含め三人囚われていた様ですが、5分も掛けずに救助と蟻共の殲滅の両方を成し遂げています。」


「本当か!!?それならこのままそいつらに任せれば!」


「ええ、砦は守る事が出来ると思われます。」


「おお……!!!」


(それに恐らくは異邦人…冒険者の異邦人ともなれば適当に金とアイテムで借りを返せば十分でしょう。そうすれば無駄に他貴族へ借りを作らず済みますし、旦那様の名と顔に傷を付けずに済むと言うもの。正に最高の救援ですね。)


「ならばもう焦る必要は無いな。いやぁ良かった良かった。一時はどうなる事かと思ったぞ?だがまあ、こんな時に助けが来るとは、これも一重に普段の行いと言うわけだな。」


 ロイエルのその言葉に―――


「それなら助け等来なかったでしょう……」


―――と言いたくなるのをグッと堪えたレオルがお茶の準備をしようとした時だった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


「なっ!なんだっ!?この揺れは!?」


 突如として砦を襲う振動。

そのあまりの揺れに、ロイエルもレオルも上手くバランスを取れず、机や壁に身を寄せる。

そして―――


「「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!???」」


 砦の崩落により、内部に残った多くの騎士達と一緒に、二人は地の底へと落ちて行くのだった。


〇〇〇〇


「そんな……砦が……!我々のズィロー砦が!!」


「中には、まだ同僚達が居るのに……!!」


「ロイエル中隊長はどうでも良いっすけど……!ホントどうでも良いっすけど……!砦が無くなるのは困るっす!!」


「「気持ちは分かるけど不謹慎な事は言わないで(くれ)!!」」


 ズィロー砦が地面に沈んだ後、助け出した五人は暫く呆然としていたが、正気を取り戻すと直ぐに地面に空いた穴の淵へ駆け寄り、穴の中を覗き込んでいた。

穴は思ったよりも浅く、最上階である三階の天井がキーノ達が立つ地面と同じ位の高さに来ている。

砦は幾つか崩れた箇所が有ったが、原型を留めている為中の騎士達は無事な可能性が高かった。

今はまだ(・・・・)……


「皆、準備は良いですか?乗り込みますよ!!」


「何時でも良いぜ?」


「わふぅ!私も活躍しちゃいますよ~~!!」


「ハルナちゃんは救護者の避難誘導ね……?」


「え~~……」


「き、貴殿達は何をしているのだ?」


 まるで何でも無い事の様に、崩落した砦へ向かおうとしているキーノ達に、驚きで丸くなった目を向けながら問い掛けるベルニス。

そんな彼女に対して、キーノはこれまた何でも無い事の様にこう告げる。


「何をって…中に残っている人を助けに行きます。どうやら奴等、分体なだけあってテレパシー的なもので繋がってたみたいです。そのせいでみすみす砦を崩落させてしまった……これは僕のミスです。だからなるべく多くの人を助ける為に迅速に行動しないといけません。」


「し、しかし奴等は未知のモンスターで、危険は計り知れないんだぞ!?それでも行くのか!!?」


「ああそれなら心配要らないですよ、綺麗なお姉さん。俺らは奴等の詳細な情報を持ってるんで。だから対処は簡単に出来る。」


「……………っっっ!!!??」


 カナタの発言に、ますます目を丸くするベルニスは、余りの驚きに声も出ないようだ。

いや、顔が紅いから単に照れた可能性も有る……


「わふぅ…あげませんからね?」


 目敏く見付けたハルナが牽制とばかりにカナタの腕に見せ付ける様に抱き着き、頬擦りをする。


「えっ!?な、べ、別にそんな……!!と言うか!この非常事態に何をしているのだ!!そんなうらや…ゴホンッ!そんな事をしている場合では無いだろう!?」


 等と言っておきながら、ベルニスの表情は羨ましいと言う感情を隠し切れていなかった。

次いでにカナタは苦笑していた。


「はいはい、じゃれ合うのは其処までにして下さいね?僕らはそろそろ下に降りますよ。それで、騎士の皆さんはどうしますか?一緒に降りるなら此方の指示に従って頂きますが?」


「その指示に従ったら、あいつら倒せますか?それなら従いますよ~~?そうじゃないなら、此処で留守番してます。」


「私も副長に同意っす。」


「わ、私は、残ります……とても、戦えません……」


「俺も、残ります……情けない話だげど、奴等が、怖いんだ……あの痛みと恐怖が、また振り返して来る気がして……」


 リーリエとミルアが参戦の意を告げ、サーナとマルクは恐怖から離脱する事を選択する。

そして皆の視線はベルニスへと向けられる。


「私は、行く……!この屈辱、奴等を少しでも屠る事で晴らしてくれる!!」


 強い意思の籠められた瞳をキーノ達に向け、ベルニスは力強く参戦の意を告げる。

そこには、迷いや怯え等は全く見受けられ無かった。


「良いでしょう。なら奴等への対処法を教えます。奴等は5つのアビリティを持って居ます。1つ目は「技能喰い(スキルイート)」噛み付いた獲物からスキルを吸い盗るアビリティ。2つ目は「永劫死(エンドレスデッド)」噛み付いた獲物に、どんな傷を負っても死なず正気で居続ける上、回復を阻害する呪いを与えるアビリティ。3つ目は、「変異胎児(ミュータントベビー)」捕らえた女性が妊娠していた場合、その胎児を胎児の特徴を残したまま自分達と同じ存在に変異させるアビリティ。」


 そこまで説明した所で、その場の空気が凍り付いた様に冷たく、それでいて火山の様な異様な熱を持った物へと変化した。

見ればキーノ達は手を硬く握り締め、怒りを抑えていた。

その表情は、感情が抜け落ちた様な無表情である。


 キーノは、表情を変えないまま話を続ける。


「4つ目、「単一生殖(異体)」他生物の体に受精卵を植え付けるアビリティ。そして問題の5つ目、「等級不足(ランクラック)」レア以下のスキルが関与するダメージを全て99%減少させるアビリティです。対処法はレア以下の補助系スキルをメインから外してステータスだけでぶん殴る事。僕の魔法はレア以上なので効きますが、皆さんはステータスでゴリ押しして下さい。」


「わ、分かった。」

「了解です!」

「直ぐに準備するっす!!」


 キーノ達の迫力に圧され、ベルニス達は急いでメインスキルをいじりだす。

その間に、キーノは緩急自在でメンバーの重力を軽減し、安全に降りれる様にするのだった。


〇〇〇〇


―――ズィロー砦二階―――


 そこは、地獄絵図と言う言葉がピッタリな様相を呈していた。

騎士達の悲鳴や怒声、生きているのが不思議な怪我をしながら死ねず、呻き声を上げる者達と、巨大なペンチ状の顎をギチギチと鳴らしながら迫る巨大蟻。

その姿を照らすのは砦内に設置された魔石灯と言う魔道具による僅かな明かりだけ。


 それでも、騎士達は何とか堪えて戦前を維持しながら、一階から二階まで避難して来ていた。

しかし、敵が余りにも多い。

おまけに騎士達の攻撃ではダメージらしいダメージを与えられない。

それに先程の崩落により、砦内に残っていた騎士は少なくないダメージを負っている。

それでも何とか戦前を維持出来るのは、数人だが奴等にダメージを与えられる者が居るからだ。

その内の一人、ギルド調査員のキャンベル・マックはこの状況を打破する方法を考えていた。


(正直、このままじゃジリ貧ね…何で私がダメージを与えられるのかさえ分かれば、対処の仕方が分かるのに……!)


 歯噛みするキャンベル。

しかし、現実は無情にも彼女を追い詰める。


ザシュッ!!


 彼女が右手の短剣で技能喰らい(スキルイーター)の一体を斬り捨てた時、それは起こった。


「誰か!誰か助けてくれえええええええええええええ!!」


 後少しで三階への階段に辿り着くと言う所で、突然前方からそんな声と共に、此方へ駆けて来る足音が聴こえて来たのだ。


「この声、まさかフィルド子爵?何処に居るかと思ったら、まさかずっと司令室に居たって事?」


 責任者の臆病者(チキン)ぶりに呆れていると、前方に必死で蟻共から逃げるロイエルとレオルの姿が見えて来た。

そして―――


「おお!キャンベル調査員!!ちょうど良かった!助けてくれ!!」


―――走る脚は止めずに、安堵の表情を浮かべながらそう言って来るロイエル。

キャンベルは渋々ながらも頷き二人を後ろに通す。

が、次の瞬間!


ドッ!!


「がっ、は……?!」


 背中から衝撃と痛みが全身に駆け巡り、キャンベルは動けなくなってしまう。

そして、そのまま衝撃により前方へと飛ばされ、床に倒れ伏す。

何とか動く顔をロイエルへと向ければ、彼はイヤらしい笑みを浮かべて、掌をキャンベルへと向けていた。

そしてまた、階段へと駆けて行く。


 目の前に技能喰らい(スキルイーター)が迫る中、キャンベルの心に浮かんだのは怒りでも恐怖でも悲しみでも無く、諦めだった。


(やっぱり、あんなクズ貴族が上司の現場になんて、来るんじゃ無かった……)


 何時かはこうなる日が来る気がしていた。

それでも、何とか上手く躱して来たつもりだった。


(結局、つもりでしか無かったけど……)


 そして、技能喰らい(スキルイーター)がキャンベルに噛み付こうとした時だった。

唐突に、空気が、変わった。


カチャンカチャン


と、音を立てて、誰かが三階から降りて来る。


「お、おお!お前達がレオルの言っていた救援だな?」


「左様です、旦那様。ベルニス隊長らを助けていたのはこの者達で間違い御座いません。」


 現れた人物を見て喜ぶロイエルとレオルの二人。

しかしその喜びは直ぐに恐怖へと変わる。


「うむ!ならばこの場はお前達に任せよう!見事に奴等を―――ん?どうしたのだ?何故私に剣を向ける!?レオル!!」


「貴方達!いくら救援でも旦那様への無礼―――はっ!?な、う、動けない!!」


 突然向けられた刀と敵意に怯え、自分の執事であるレオルへと指示を飛ばすロイエル。

だが、レオルは何らかの力により動けなくなっていた。


「――――――――だよ……」


 そんな二人に敵意の籠った視線を送りながら、現れた人物――カナタは何かを呟く。

その間も、カナタにはひっきりなしにメッセージが届いていた。


『スキル「怒り」を入手しました。「怒り」がレベルアップしました。「怒り」がレベルアップしました。「怒り」がレベルアップしました。「怒り」がレベルアップしました。「怒り」が……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………「怒り」がレベルアップしました。「怒り」のレベルがMAXになり「憤慨」へと進化しました。「憤慨」がレベルアップしました。「憤慨」がレベルアップしました。「憤慨」がレベルアップしました。「憤慨」がレベルアップしました。「憤慨」が………………………………………………………………………………「憤慨」がレベルアップしました。「憤慨」のレベルがMAXになり「激怒」へと進化しました。』


 それはカナタの抑えきれない怒りを顕にしていた。

そして、その怒りは“激怒”となって爆発する。


「上等だよ!!この糞貴族がっ!!!蟻共と一緒にぶち殺してやんよ!!」


 それは、カナタがこの世界で、初めてオルンに抱いた明確な殺意だった。

取得経験値二分の一なのに二段階進化するとかどんな怒りなのやら……

やべぇ事になりそうです


良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします

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