技能喰らい 《スキルイーター》
すみません、遅くなりました!
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それは生き物のふりをした悪意の塊……
「で、こっから本題うぃーかい?君らに依頼が有るんだっ!」
「依頼?ですか?」
「そそっ!依頼♪」
先程から変わらないクエイストンの軽さに不信感を拭えない事を顔に出しながら、貰った称号と加護は本物の為、カナタは取り敢えずクエイストンが(この世界における)本物の神である事は間違いないと確信し、話を続ける。
「取り敢えず、聞くだけは聞きます。それを受けるかどうかは俺らの判断に任せて貰うんで、良いですね?」
「い~よ~♪寧ろここで速攻頷く馬鹿にゃ依頼しないさ。ま、どうせこの話を聞いたら―――」
――――受けざるをえないけどね?
ゾッ!!!
と背筋に悪寒が走った。
それは紛れもなくこのチャラい神、チャラ神から出ている威圧感が原因だ。
先程までの軽さは無く、その表情は真剣で鋭さを感じる程だ。
重い、非常に重い空気が、辺りを支配し、四人は無意識の内に固唾を飲み込む。
「そこの君、セットホルダーだろ?そして万物鑑定と万物認識を持ってる。だからある程度は俺っちが此処に居る理由を知ってる筈だ。だろ?」
急に話を振られた上に自分のユニークスキルを言い当てられたキーノは、予想外の事に固まり、反応が遅れる。
そしてそれは他の三人も同じだった。
クエイストンはそんの四人の反応に満足したのか、笑みを浮かべて話を続ける。
「ははは、若いね~~そんな簡単に動揺してたら直ぐにバレるぞ?まっ、今は話が進み易くなるからいいけどね♪さて、そんじゃ前置きは飛ばして単刀直入に言うぜ?
封印が解けた―――
―――正直言ってかなりまじぃ……今の俺っちじゃ奴らを再封印する事は出来ねぇ……唯一の救いが封印が解けてまだ1日しか経ってねえって事だな。」
「なっ……!?」
「そんな……!!」
それは、想像だにしていなかった言葉だった。
当然だろう。
キーノ達は元々封印が解けない様にする為にこの場に来ているのだから。
それが既に解けていたなどと言われては驚かない訳が無い。
「ちょっちょちょちょちょっと待って下さい!奴らって!?封印したのは一体じゃ無いんですか!!!?」
予想外の事にテンパるハルナ。
しかしその質問は的確だった。
そう、クエイストンは確かに言った。
奴ら、と。
それは敵が複数体いる事を示している。
「まさか、依頼って……!」
キリアーネのその言葉に、クエイストンは小さく頷き説明を始める。
「奴らの名前は「技能喰らい」。自身はスキルを持たない替わりに、アビリティを使い他者のスキルを喰らう怪物だよ。実はこの技能喰らいな、物凄くややこしい上に面倒臭いモンスターなんだよね……」
「それは、どんな風にですか?」
説明すら面倒だと言わんばかりの渋面をするクエイストンに、キーノは純粋な疑問を投げ掛ける。
クエイストンは少し逡巡したものの、直ぐに考えが纏まったのか説明を続ける。
「先ず、俺っちは奴らと言ったが正確には一体のモンスターだ。けど何体もの分体を操るから奴らと言ったんだよ。そして、奴が面倒臭い一番の理由は、奴がダンジョンだって点なんだよね~~」
「「「「ダンジョン!!!!?」」」」
正直、それは今日一番の驚きだった。
封印が解けていた事よりも驚きだった。
だって意味が分からない。
神話の怪物がダンジョンってなんだよそれ!?って感じである。
確かにダンジョンがモンスターと言う場合は昨今の異世界物小説なら珍しくない設定だ。
寧ろ常識だ。
しかし、何故ダンジョンを封印までしなければいけなかったのかが分からない。
それも下位とは言え神を使ってまでだ。
一体、どれだけ規格外だと言うのか……
「君らは知ってんだろうけど一応説明しとくよ?この世界には三種のダンジョンが有る。神造ダンジョン、自然発生型、人造型の三種だ。この内自然発生型は、実はダンジョン型のモンスターなんだよね~~そんで、普通モンスターは大別すりゃ次の2つに別れる。すなわち、アクティブか、パッシブか、だ。」
「おいおいまさかっ!!!」
絶叫に近いカナタの言葉、クエイストンは本当に参ったとばかりに溜息を吐いて肯定する。
「そだよ。普通のダンジョンはパッシブモンスターで、技能喰らいはアクティブモンスターなんだよ。つまり、常時魔物氾濫が起きてるみたいに大量のモンスターがダンジョン外に出て来るって訳だ。」
「え~~っ!?そんなの、一体どうすれば良いって言うんですかっ!?」
「正直、私達にどうこう出来る問題では無いかと思うのですが……」
キリアーネの言葉は正しい。
普通に考えて国すら滅ぼす自然現象をたった四人で止めろと言われたのに等しい。
しかしクエイストンは何でも無い事の様に話を続ける。
どうも四人が勝てる事を疑っていないようだ。
「技能喰らいは1日最高200体の分体を産み出す。そんで今は午後1時位か?つまり奴の分体はまだ300ちょいってこったな。だけど急がねえと直ぐに500、700と増えちまうからさ、後2、3日で近くの街は壊滅すんだろうね。」
「―――――――っ!!!!?」
それは、ファステムがもうすぐ滅亡すると言われたのと同じだった。
つまり、今この時を逃せば本当に手がつけられないと言う事だ。
「奴の分体は蟻型のモンスターだ。名前は同じ技能喰らい。そして、奴は他のモンスターと違って悪意の固まりみたいな存在さ。」
胸糞悪い奴なんだよ……
苦虫を噛み潰した様な顔でボソリと呟かれたその言葉に、四人は嫌な予感しかしない。
「奴はね、悪魔みたいに悪辣で残酷で残虐で非道で外道で下劣な下衆の極みみたいなモンスターなんだ。良心なんざ塵ほども無い!奴の分体は一体ずつならC級冒険者程度の能力しか無いんだよ?だけどアビリティのせいでレア等級のスキルじゃほとんど効きゃしねーんだよね。それに数で攻めて来るから普通の冒険者じゃ太刀打ち出来ずにスキルを喰われちゃうんだよ。そんで、だ。奴の胸糞悪いーとこはその後さ……奴の分体は雌雄同体でね、一体いりゃいくらでも増える。ただ、その時他生物の体を苗床にすんのさ。」
「そ、それって―――」
「わふぅ!十八禁ですよう!!」
キーノの言葉を遮りハルナが真っ赤な顔を両手で隠しイヤンイヤンと頭を振りながらそう叫ぶ。
他のメンバーも同じ事を考えたのか顔が赤い。
しかしクエイストンは真剣な表情のままだった。
そんな生易しいものじゃない、とその表情が雄弁に語っている。
「いいかい?奴は―――」
その先を聞いた時、四人はこれ迄に無い程心が冷たくなるのを感じた。
“殲滅以外有り得ない”
それが四人の感想だ。
技能喰らいは、それほど邪悪で赦し難い存在だった。
「さて、それじゃあ返事を聞かせてもらえるかい?まっ、もう決まってんだろうけどね!」
ピコンッ!
『緊急クエスト「技能喰らいの討伐」が発生しました。このクエストを承けますか?Yes/No』
はっきり言えば、不安しか無い。
そんな神話の怪物に自分達だけで立ち向かえる自信は無い。
それでも、やるしか無かった。
クエイストンのしたり顔が殴りたくなる位うざかったが、それでも、やるしか無い。
だから、四人は迷わずYesを押した。
「有り難う。さ、これは前金代わりだ、受け取って!」
クエイストンの言葉と共に、四人の前に1つずつスキルオーブが現れ、四人はそれを受け取る。
「これは、「錬金術」スキル?」
「僕のは「地形把握」スキルだ!まさか地図系が手に入るなんて!」
「わふぅ!私のは「縮地」スキルです!」
「私のは「岩の身体」スキルです……!」
それは名前と効果は分かるのに入手方法が分からなかった欲しいスキル達だった。
しかも、全て属性は土である為、先程の称号や加護との相性も抜群だ!
自然と四人の顔も綻ぶ。
が、それも次のクエイストンの言葉を聞くまでだった。
「それは俺っちが君らにあげられるスキルの中で、最も君らに必要なものだ。存分に使ってくれ!それと、急いでくれ。地脈や竜脈の関係で俺っちの祠は此処に有るが、奴の封印地はこっから馬で半日、君らなら二時間位の場所に有る。土から伝わる情報で知ったんだが、近くに有る砦が狙われてるっぽいんだよね。だから―――って!早っ!!!!?」
そこまで聞いた所で、四人は一斉に駆け出していた。
その砦が何処に有るかも聴くこと無く。
「まあ、頑張って。きっと君なら余裕だからさ、キーノ君。何せ、奴と君の「邪神」の相性は最悪だからね!」
ざまあみろ!!
清々しい程の笑顔でそう言い放ったクエイストンは、その場から溶ける様に消え去るのだった。
〇〇〇〇
ザザザザザッ!!
クエイストンの祠を後にしてから約一時間、四人はキーノを先頭にして砦目指し駆け足で走っていた。
その速度は馬の倍以上だ。
駆け足でそれなら全力であれば更に速いだろう。
しかし此処は街道から逸れた場所で足場も悪く、全力では走り難い上、目的地まではまだ距離が有りあまりバテる様な真似は出来ない。
だがそれでも急がねば砦が危ないのだ。
なら、何故キーノが先頭なのか?
言っては何だがキーノはパーティー中一番の鈍足だ。
しかしキーノには万物先生が有る。
更には先程手に入れた地形把握スキルにより、キーノから直径200m程の範囲は地図が表示されるのだ。
そして今現在、キーノは万物先生のLv8で開放された「前兆鑑定」と「前兆認識」で砦の方角に次の様な表示が視える為、方向を見失う事は無い。
『砦の崩落まで残り時間1時間30分28秒』
刻一刻と過ぎ去る時間を眺めながら、逸る気持ちを抑え、キーノは最短と思われる道を選ぶ。
勿論、街道に出た方が迷わないし確実に着ける事は分かっている。
だがその街道に出るまでの道を砦に向かって最短で突っ切る方が良いと判断しての行進だ。
幸いモンスターの数も少なく、先程のパラライズ・ビーの群れを最後にモンスターとの遭遇は無い。
と、そんな事を考えていた時だった。
「街道だ!しかも道はこのまま真っ直ぐみたいだ!行こう!!」
「「「了解!!」」」
こうして、四人は砦への街道を更にスピードを上げて走って行くのだった。
これから起こらんとする惨劇を阻止する為に……
次回は少し閲覧に注意が必要になるかもです
まあ予定なので途中で変更するかもですが……
良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします




