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谷の調査をしよう3

思ったより長くなりました


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


平等とは、時に残酷である。

「カナタ!1時の方向にパラライズ・ビーの群れがいる。数は15、レベルは平均10。小隊長のキャプテン・ビーが居るから気を付けて!!距離は200!この速度なら接敵まで10秒!」


「了解!しっかし相変わらず凄いな、キーノの索敵能力は。さっすが万物先生様々だぜ!」


「わふぅっ!ホントですよね!それに最近益々精度に磨きが掛かってる気がします!」


「それは多分、「魔力感知」スキルを手に入れたからだと思うよ……?」


「そうですね。後「気配察知」も情報サイトの情報を元に手に入れましたから、これでかなり万物先生や緩急自在を活かせそうです。っと!皆、戦闘準備を!!」


「「「了解!!」」」


 今現在、キーノ達四人は駆け足で或場所を目指しながら谷の調査を行っていた。

谷は上から見た通り複雑に入り組んでいて天然の迷路を作っている。

これでは可笑しな場所を探そうとしても人手や時間が馬鹿みたいに掛かるだけで、大した成果は見込め無いだろう。

だからこそこの調査依頼は、調査依頼と言うていで出されたモンスターの討伐依頼として、ギルドでは有名なのである。

普通なら異変の発見は見つかれば良いな、程度なのだ。

普通なら……


「良し!片付いたな。」


「カナタさんと師匠、「解体」スキル取ってたんですね。」


「やっぱり素材は多い方が良いからね。」


「これ、解体しちゃいますか……?」


「いや、ストレージに仕舞おう。解体は街に戻ってからだな。」


 戦闘後、カナタはパラライズ・ビーとキャプテン・ビーの死骸(・・)をストレージに仕舞う。

そう、死骸、である。

通常AWO内で異邦人(プレイヤー)が倒したモンスターはドロップを残して消滅する。

しかし、解体スキルを持った異邦人(プレイヤー)が倒すと、その死骸は消滅せずに残るのだ。

その場合、自分で、もしくは誰かに頼んで解体すれば、ドロップよりも多くの素材が手に入る。

だがその反面、品質が確定のドロップと違って、倒し方や剥ぎ取り方で品質がバラつく解体スキルは扱い辛いスキルとされている。

その為、「解体用ナイフ」を街で購入して戦うだけで習得出来る割りにあまり人気は無い。

更にごく稀に現れる宝箱のドロップも解体では期待出来ないのが人気の無さに拍車を掛けている。

因みに宝箱からはレアやHレア等級のアクセサリーや武器防具が出て来る。


「それでも普通はドロップしない素材が手に入るのは有り難いよね。」


「だな。しかも解体レベルが上がれば、品質がドロップより良い事も良く有るしな!」


 実は解体スキルの使用はどんなゲームもだいたい同じで、生産系スキル持ちの上級者や廃人ゲーマー等は八割がこのスキルを習得している。

なのでキーノとカナタが習得するのは当然の流れなのだった。


「それより、道はこのままで合ってるか?」


「うん、間違いないよ。急ごう!時間が無い(・・・・・)!!」


「分かった!」


「わふぅ!飛ばしますよ~~!」


「行きましょう……!」


 そして、四人は再び駆け足で目的地に向かって谷を踏破して行く。

その足取りは正確で、キーノを先頭に四人は迷い無くとある場所を目指して進んで行く。


 本当なら、もっと速度を上げて走りたい所なのだが地形の悪さに道案内出来るキーノのAGIの関係で、余り速く走れないのだ。

しかし最短で走る為にはキーノのナビゲートが必要なので仕方無い。

まさかカナタやSTRの高いキリアーネに背負わせるわけにもいかないだろう。

そんな事をすれば身動きが取り難くなるし、速度も少しマシな程度でそこまで変わらない。

何処かの防御力極振り少女とその親友の回避盾少女の様にはいかないのである。


 ところで、薄々勘づいている方もいるだろうが、何故この様な事になっているのか、その説明をしなくてはならないと思う。

キーノに“ナニ”が視えているのか……

そして何を急いでいるのかを……


〇〇〇〇


 話は二時間程前に遡る。

四人は軽い気持ちで観光名所の様な谷の景観を楽しみながら進んでいた。


「想像してたよりモンスター居ないですね~~」


「そうだね…静かで綺麗な小川もあるし、観光地みたいだよね……」


 ほわほわとした雰囲気を振り撒きながらゆっくり歩くハルナとキリアーネ。

しかし、それとは対称的にキーノとカナタの顔は少し前から真剣そのものだった。


「どうしたんですか?二人してそんな怖い顔して。わふぅ、もしかして人が居ないからっていけない事考えてたりぃ?」


「………………っ!!」


 わざとらしく体を抱いてしなを作るハルナとその言葉に顔を紅くしてチラチラと視線を送って来るキリアーネ。

その顔は満更でも無さそうなのだが、キーノとカナタの二人は未だに真剣な表情で辺りを警戒している。


「もぉ~~!本当にどうしたんですかっ!!こんな可愛い女の子達ほっぽって!!アーネちゃんなんか落ち込んじゃってますよ!?」


「は、ハルナちゃん…!!!?」


 業を煮やしたハルナの言葉に、はしたない女だと思われたくないキリアーネは若干焦るが、キーノとカナタはそんな事すら気にする余裕が無い様だ。


「………モンスターが、居なすぎるんです……」


「経験上、こう言う時はヤバイ事が起きてるってのがほとんどなんだよ……」


「「えっ……?」」


 やっと話したと思った二人から出た言葉は、予想以上にこの場が危険だと報せるものだった。

その返答に二人はキョトンとしてしまう。


「もしかしたら、何か厄介事(イベント)が起きてるかも……」


「だな。それも結構な難易度の奴が……」


「わふぅ…それ、私達でどうにかなります?」


「流石に、ちょっと不安何ですが……」


 キーノ達の話しに不安を隠せないハルナとキリアーネだが、その手は愛用の武器の状態を確めていた。

不安と言いながら戦うつもり満々の様である……


「正直何とも…情報が無さすぎます。杞憂なら良いんですが……っ!!アレ、は、何だろ?」


 突然キーノは立ち止まると、浅い小川の向こう側、その崖の岩壁のある一点を凝視する。

そこは、大きな、直径5m位の岩や長さ10m位の岩がいくつか積み重なった場所で、崖崩れがあった様な見た目をしていた。


「遺跡?いや、何かの祭壇かな?え?マジで!?けどどうやって、いや出来るかも……うん、良し!」


 だが、キーノには別の物が見えていた。


「師匠~あの岩雪崩の事故現場の奥に何か有るんですか?」


「うん、あの奥に、神話の時代に立てられた祠が在るんだ。」


「それも、万物先生が……?」


「透過鑑定と透過認識だな?」


「透過鑑定」は万物鑑定が、「透過認識」は万物認識がLv6になった際解放された能力で、人の裸や私生活を覗く事は出来ないが、こう言ったフィールドであれば障害物を無視してその向こう側を透かして観る事が可能になる上、その中に気になる物が有れば鑑定して詳細な情報を得られると言う大変便利な能力である。

つまり探索や調査等に置いて非常に都合の良い能力と言う訳だ。


「うん、そう。それで万物先生が言うには、この先の祠は「忘れられし神」の内の一柱らしいんだ。名前は「土石神クエイストン」。下位神らしい。」


「わふぅ!何で下位神に土の神様居ないんだろうって思ってたら、忘れられちゃってたからなんですね!」


「だけど、その土石神?様がどうかしたんですか……?」


「それが、土石神の力で、神話のモンスターをこの地に封印してるらしいんです。ただ、信仰されなくなったせいで力が弱まり、そう遠く無い内に神として死ぬことになるって鑑定結果が……それを防ぐには土石神の信仰を復活させないといけないんです。つまり―――」


「―――祠への道を開かなきゃいけないんだな?」


 言葉を引き継いだカナタに、キーノは同意の頷きを返す。


「だけどどうするんです?私達であの岩の山何とか出来る気がしないんですけど。」


 ハルナの疑問も当然だ。

何せ岩は目算で高さ約15m程まで積み上がっている。

普通に考えればたった四人ではどうしようも無い。

しかしキーノが居るなら話は別である。

何せ―――


「大丈夫。緩急自在を使えば何とか出来るから。それは万物先生で確認済みだよ。」


―――と、改めて岩山に向かった時だった。



          ピコンッ!



 何時もの電子音が鳴り響き、キーノの目の前にメッセージが開かれる。


『クエスト「信仰の復活(下位1)」が発生しました。このクエストを承けますか?Yes/No』


 それは今までに無かったパターンだった。

これ迄は突然クリアを告げられるだけだったので、こうして普通のゲームの様にクエストの発生と受諾の可否を告げられるのは初めてだった為、キーノは少し戸惑ってしまう。

しかしそれも数瞬の事で、キーノは迷わずYesを押した。

そして―――


「皆は下がってて。新しいアーツを使うから。」


 そして三人が後ろに下がり、カナタが他二人を守る様に前へ出た所を見てキーノは小さく頷き右手を前に突き出し、呪文となる魔法名を唱える。


―――空間圧縮スペースコンプレッサー!!



        ギュオンッッッッ!!!



 と形容し難い音を立てながら、岩山の中心辺りの空間が真球状に削り取られ――いや、圧縮(・・)された。

その際、空間が無くなった部分が漆黒に染まり穴が空いた様になる。

もしかしたらそれは本当に世界に空いた穴なのかもしれないが、それを確める術は無い。

何せその場の全員が理解したからだ。

あの穴に入れば―――


―――(キャラロス)だと。


空間圧縮スペースコンプレッサー:指定した空間を圧縮し空間内に存在する全てを1つに纏める 消費MP範囲等により変動 対象指定した空間


『空間圧縮により空いた穴は世界の深淵へと続く奈落の様に思えるが真偽は誰にも分からない。もしその穴に落ちたなら2度とこの世界には戻れないが、アーツ効果で内外部から穴に落ちる事は無い。』


「これは、思った以上にヤバイアーツかも……」


 冷や汗を流しながらキーノがそう呟いた瞬間だった。


ドスンッッッ!!!!!


ガラガラガラッドガガンッ!!!


 アーツによる空間の圧縮が終わり、圧縮された真球の岩塊と周りに残っていた岩の残骸が地面に落下しけたたましい音を立てて地面に激突したのだ。

そのせいで再び出入口が塞がれたがそれは再びキーノのアーツにより直径3m程の真球へと変えられた。

これにより、祠の入口付近には見事な真球の、それも大きさからは考えられない程の重量を宿した岩が、三分の一程地面に埋まった状態で鎮座する事になる。


「まるで狛犬みたいだな。」


「形はただの丸ですけどねーー」


 小川を挟んだ対岸から見た光景は、確かにカナタが言う様に狛犬に護られた神社に見えなくも無いが、それよりはファンタジー物に付き物の守護者(ガーディアン)に護られた神殿だろう。

そう思わせる程に、出入口が開いたその祠の様子は、神秘的な魅力が有る。


 岩の壁、そこに空けられた礼拝用の通路は、20m程で貫通しており、その先には太陽光を浴びて白く輝く、パルテノン神殿と神社の社を合わせた様な造りの祠が存在していた。

壁の向こうは人工的に掘られたのか、真四角のスペースが有り、その中央に祠が建てられている様だ。

高さ50mは有るだろう岩壁を、天辺までくり貫いているのだから凄まじい技術だと言わざるおえない。


「綺麗……」


「けど、こんなに凄い建物でも、忘れられてしまうんですね……」


 時とは無情なものだ。

そして、誰にでも何にでも平等に訪れるものなのである。


「取り敢えず、お参りして行こうぜ?まだクエストは達成してねえんだろ?」


「そうだな。行きましょう、二人共。」


「はーーい!」


「はい……」


 こうして、四人は祠の在る壁の中へと入って行くのだった。


〇〇〇〇


 その空間を一言で現すなら―――


            “静謐”


―――しか無いだろう。


 そこは近くに流れる小川の音も、時折吹き荒ぶ風の音も、その風に揺れる草木の音やモンスター達の立てる音すらも聴こえない、静かで、厳かで、神秘的な場所だった。

祠は石なのか何なのか良く分からない不思議な材質で、陽の光を受けて美しく白い輝きを放っている。

大きさは予想以上に大きく、神社の社位は有る。


 四人は恐る恐る祠に近付き、御神体である男性の像、土石神クエイストンの像へと手を合わせる。

クエイストンの像は等身大なのか、カナタと同じ位の背丈で、おかっぱ頭の柔和そうな青年の姿だった。

服装は貫頭衣と袈裟を合わせた様なデザインで、僧侶の様なイメージを与えてくる。

そんな象に向かって祈る事十数秒。

突然、それは起こった。


オ……オオ…………


「ん?何か聞こえたか?」


「わふぅ?」


「微かに……」


「空耳じゃ無さそうですね。」


 何処からともなく聴こえて来た男性の呻き声。

心霊現象の様なその出来事に、しかし四人は驚くでも無くこれが正しい事なのだと確信を深めて祈り続ける。

そしてそこから更に5分後。


オオオオオオオ!

オッシャーー!!!


ゴパンッ!!!


 と突然像が弾け、そこから像そっくりの青年が姿を現した。


「「「「ッッッ!!!!?」」」」


 これは流石に予想外だったのか、さしもの四人も驚きで固まっている。

あ、キーノは何時もの事だった。


 青年は暫く体を解す様に動かすと、四人に向かって爽やかな笑顔で話し掛けて来た。


「有り難う!お陰で俺っちの力が少しだけ戻ったよ!何かお礼しないとね!って訳で取り敢えずこれをプレゼント!!」


『クエスト「信仰の復活(下位1)」をクリアしました。報酬として称号と加護が贈られます。』


―――土石神の信徒―――

土石神へ熱心な祈りを捧げた者へ贈られる称号。この称号を持つ者は土属性のアーツによる攻撃ダメージが1.5倍になる。また、土に関するスキル(レアまで限定)の習得速度が1.5倍になる。


“土石神の加護”

土石神からの感謝の証。この加護を持つ者は、土に関するスキルの効果が1.5倍になる。更に土に関するスキル(レアまで限定)の習得に必要な経験値が二分の一になる。


「「「「軽っ!強っ!?」」」」


 渡された報酬は、何気に便利で強く、こんな軽いノリで渡されて良いようなものでは無かった。

まあ、四人は誰も活かせそうなスキルが無いので、宝の持ち腐れと言えるだろうが……


「で、こっから本題うぃーかい?君らに依頼が有るんだっ!」


 変わらず軽い調子のクエイストン。

しかしその内容は、決して軽いものでは無かった。

そしてそれが、四人が谷を走らなければいけない理由となる。

本当は走り出すとこまで書きたかったんですが長くなりそうなので次回に持ち越しで


良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします

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