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谷の調査をしよう2

更新です


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


悪意はいつの間にか忍び寄る。

「ほぉ~でっけえ門だなぁ……」


「わふぅ~!凄い立派です!!」


「大きな門ですね……」


「モンスターが居るんだから、流石にこの位はしますよね……」


 スロープを下り切り、谷の底へと着いた四人を出迎えたのは、スロープと谷を別つ巨大な門だった。

その高さ約50m。

流石にその全てが開閉部分になっている訳では無いが、それでも観音開きの扉だけで高さ約10m、幅8m程とかなりデカい。

そして扉の両脇は見張り塔なのだろう、人の出入口や窓らしき穴が見受けられる。

恐らく、扉の上は廊下になっている筈だ。

いや、その高さから考えるに、ある程度の居住スペースも造られていると思われる。


「ん?君らはもしかして調査に来た冒険者かい?」


 四人が門を見て呆けていると、そんな風に声を掛けながら近付いて来る人物が居た。

鈍色の全身鎧で、兜は被っておらず、蒼色の柄に所属を示す「鷲と剣」のエンブレムが刻まれた片手剣を左側に履いている。

髪は赤茶色の角刈りで、二十代半ば程の若い男性だ。

少々つり目気味な所が熱血漢なイメージを与える。


「あ、はい。ギルドの依頼を受けて来た冒険者で、このパーティーのパーティーリーダーでカナタと言います。」


「キーノです。」


「わふぅ!ハルナです!!」


「キリアーネです……」


「ははは、元気な挨拶有り難う。ようこそバグズ・キャニオン封鎖門へ!俺は此処の門番で、此所アルテリア辺境伯領を治めるファルミス・ブィル・アルテリア辺境伯領主の私兵騎士団、「蒼凰(そうおう)騎士団」平騎士、マルコス・スミルノフだ!よろしくね!」


 そう言ってマルコスは爽やかに笑って右手を差し出す。

そんな彼の第一印象は気さくだけど真面目な兄ちゃんである。


「此方こそよろしくお願いします。」


 カナタはマルコスにそう返してその手を握り握手を交わした。


「さて、それじゃあこっちに来てくれ。その門は商隊とか馬車で移動する人達用なんでね。君達は俺らの使う道を通ってもらう。一応手続きも有るしね?」


「「「「はい。」」」」


 四人の返答に微笑ましそうに笑うとマルコスは手を離し出て来る際に潜った出入口へと向かう。

四人はその後に着いて行き、門の中へと入っていった。


〇〇〇〇


「「「「お~~~~!!!」」」」


 門の中に入った四人の第一声がこれである。

それは素直に驚愕と感嘆から飛び出したものだ。

と言うのも、門の内部は単に壁と上階への階段や部屋への扉位しか無いと思っていたのだが…いや、それはその通りでは有ったのだ。

此所には先述した様なモノしか見受けられない。

しかし、問題はその壁や天井、床に魔方陣が描かれて(・・・・・・・・)いた事だ。

しかも1つや2つでは無く、数十から数百もの魔方陣が、まるで歯車の様に合わさりながら淡く発光している光景が約20mに渡って続く様は圧巻の一言だ。

マルコスはその光景に驚く四人の姿に満足そうに頷くと、直ぐ近くの扉を開け、四人へと声を掛ける。


「此所で手続きをするから来てくれるかい?」


「あ、はい。三人とも、行くぞ?」


「分かった。」


「はーーい!」


「はい……」


 部屋に入ると、そこは都会の駅に有る駅員さんが改札をしてくれる場所の様な造りで、部屋は門の向こう側に向かって長さ3m、幅2m程の広さで、幅50㎝、長さが2mの長テーブルが部屋を縦に割る様に置かれている。

テーブルの高さはカナタの腹位で物が置きやすい。


「さて、それじゃあ依頼書を出してもらえるかな?」


「はい、これです。」


 言われてカナタはストレージから今回の依頼書を取り出しマルコスへと渡す。

マルコスはそれを机の引き出しから取り出したモノクルで数秒見通すと、モノクルを仕舞い徐に顔を上げる。


「間違いなくギルドからの依頼書だね。問題ないからこのまま通っていいよ。」


「分かりました。有り難うございます。」


 無意識の内に緊張していたのか、四人はマルコスのその言葉で肩の力を抜く。


「それじゃあ調査の方、宜しく頼むね。ただ異邦人(君達)は不死身かもしれないが、それでも無敵じゃ無いんだ。無理はしないように!」


「ご忠告有り難うございます。帰る時は、きっと此所から帰りますよ。」


「ああ、そうしてくれ!気を付けてね!!」


「「「「はい!!」」」」


 こうして四人は、親切な騎士に見送られて谷へと入って行くのだった。


〇〇〇〇


―――ズィロー砦―――


 今日も今日とてズィロー砦の中は国の騎士団や領主の私兵、ギルド調査員達で賑わっていた。

此処には一般人が住むことは出来ない為、食事の支度や掃除洗濯等の家事全般から鍛冶や備品のチェック等も、全て役割を決めて常駐者達でローテーションを組んでいる。

そして本日の洗濯班は「薔薇の小隊」と呼ばれる女性騎士団のみの隊だった。


「はぁ~~…ホントやになりますよね~~!「君らは下級貴族の出なんだろう?ならばこの手の水仕事も経験が有るのだろう?となれば、だ。この仕事は君達にこそ相応しい!」って!!ふざけんなですよ!なんすか!?あのどや顔!マジ張った押したいんですが!!?」


「リーリエ、そんな興奮するな。仕方なかろう?実際我々は下級貴族で、家でもしもの為に炊事洗濯家事全般は学んだ身だ。ならば、彼等より戦力で劣る我々がこの仕事を割り振られるのが当然だろうに。」


「ベルニス隊長~そんな態度だから他の連中に舐められるんすよ~~!」


 そんな会話をする二人の女性。

一人は緑髪をセミロングにした165㎝位のスレンダーな女性で、翠眼で大きな目が特徴的なヒュームである。

ヒュームとはヒューマンベースの他種族とのクォーターや三種族以上の血が混ざった人種を指す。

これも種族選択でヒューマンを選べば選択可能だった。

因みに彼女は母親がハーフエルフだった為、エルフ的な特徴が現れている。

何処がとは言わないが……

歳は二十歳位だろう。

何処か邪気ない感じの可愛らしい女性だ。

彼女の名前はリーリエ・へルート。

薔薇の小隊のNo.2である。


「余計ないざこざが起こるよりマシさ。」


 リーリエの言葉にそう返すのは薔薇の小隊小隊長のベルニス・グリッド。

リーリエと同じ位の身長で、肩まで伸びる紫銀の髪を太い三つ編みにして纏めており、スカイブルーの瞳がとても印象的な半魔人の女性だ。

歳も同じ位だが、リーリエとは対称的で、とても肉感的なダイナマイトボディーをしている。

因みに二人とも今は騎士団指定の軽鎧を着ているのだが、ベルニスのブレストアーマーだけ新幹線が2台並んでいる。

時折その新幹線へ向けられるリーリエの視線がとても怖い……


「リーリエ、そっちは終わったか?」


「終わりましたよ~なんで早く部屋で休みましょうよ~~!」


「分かった分かった…全く、お前はホントにしょうの無い奴だな。」


 咎める様に言いながらも、ベルニスの口は僅かに緩んでおり、こんなやり取りを何処か楽しんでいるようだった。

そうして二人は割り当てられた分の仕事を終え、割り当てられた自室へと戻る。


「隊長、副長、お疲れっす!」


 部屋に戻ると、そこには二人よりも先に一人の少女が来て寛いでいた。


「なんだミルア、先に終えていたのか?」


「終わったんたなら手伝ってくれても良いのに~~!!」


「嫌っす!アタシは自分の分を終わらしたんですから!!手伝い無しで!だから絶対手伝わないっす!!」


 そう力強く拒否を示す下っぱ口調の彼女はドワーフのミルア・ルミア。

ドワーフらしく二人よりも頭1つ半近く低い身長だが、リーリエよりも明らかにメリハリのある体つきをしている。

歳は分かり辛いが恐らく十代だと思われる。

青紫色の髪をミディアムにしており、天然なのか軽くパーマが掛かったユルフワな見た目が優しい印象を与えていた。

ダークブラウンの瞳は大きく、僅かに下がった目尻がその印象を強くしている。

しかし先程のやり取りから分かる様に、別に彼女は見た目通り優しい訳では無い。

寧ろ―――


「それより早く調査班に加わりたいっす。そしたら倒したモンスターの魔石やら素材やら自分のに出来るんすけどね~~はぁ、こんなタダ働きみたいな仕事はもう嫌っすよ~~!暴れて一稼ぎ…いや出来れば大儲けがしたいっす~~!!」


―――となかなか過激でがめつい性格をしている。

そのせいで男が寄り付かないらしいが、本人は特に気にしていない。


『恋愛する暇が有れば稼ぐ!!』


―――がモットーの彼女らしいと言えば彼女らしい。


「全く…ミルア、お前も乙女ならもう少し慎みを持ったらどうだ?」


「まあ、確かにそれは言えてますね~~」


 ミルアの言葉に失笑してしまう二人。

だが当のミルアはと言えば―――


「此所で慎み深い乙女になった所で、よって来るのは勘違いした貴族の三男とかだけっす!しかも将来性も特に無い凡人っす!食い詰め無いだけマシっすけど、どうせ一緒なるならせめて将来性の有る男が良いっす!!」


―――と身も蓋もない返答で二人を呆れさせるのだった。


「隊長~これはもう手遅れですよ……」


「流石に私も手の施し用が無い気がして来た……」


「ワタシの事より二人は自分の事を考えた方が良く無いっすか?人間よりは長寿でも、ドワーフよりは短命なんすから。」


「「うぐっ!?い、痛い所を!!」」


 思わぬ反撃に渋面になる二人。

実際、下級貴族とは言え令嬢である二人は既に婚約ないしは結婚していても可笑しくない年齢であり、ミルアに慎みがどうのこうのと言っていられる立場では無いのである。

勿論二人はかなりの美人なのだから、話しの1つや2つは上がって来る。

上がって来るのだが……


「豚みたいな色ボケ老人の側室になどなれるかっ!!それなら独身で良い!!」


「人形趣味の変態伯爵の後妻とか最悪な未来しか見えないじゃないですか~~っ!!それなら平民に嫁ぎますよっ!!」


「世の中、理不尽っすよね……」


「「ほんっとそれ!!」」


 因みにミルアは平民の出身で、(ドワーフ基準で)イケメンで実家の鍛冶屋の若頭になった幼馴染が居るのだが、二人には黙っているのだった。


(妬まれるのは嫌っすからね!)


 なかなか強かな少女である……


「もう私、異邦人狙っちゃおうかな~~……」


「それも良いかもな……」


「も~二人とも馬鹿言ってないで少し寝た方が良いっすよ?きっと疲れてるんす!さ、鎧なんて脱いで寝た寝た!」


 ガックリと項垂れて魂が抜けた様な表情の二人が鬱陶しかったのか、ミルアは二人の背中を押してベッドに移動させる。

二人はそれに従いベッドまで移動すると、モソモソと鎧を脱いでベッドに横になるのだった。


「さて、ワタシは武器の手入れでもするっすかね。」


 二人を寝かし付けたミルアは床に座ると近くに置いていた片手剣を取り、手入れ用の布で磨き始める。

そんな時だった。


■■■■■■


「ん?今何か聞こえたような?」


 何処からか何かを削るような、硬い物同士をぶつけたようなそんな音が聞こえた気がしたのだ。

しかし、それ以降は何も聞こえず、ミルアは気のせいだったと思う事にした。


「~~♪~~~~♪~~~♪♪」


 その後は鼻唄を歌いながら武器の手入れを再開するミルア。

それにより、彼女は脅威が近付いている事に気付く機会を逃してしまうのだった。


        カリカリカリ……

何処から聞こえて来るんですかね?


谷の調査は後5話位で終了予定です

その後は幕間を挟んで本編の予定です


良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします

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