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谷の調査をしよう1

少し遅くなりましたが更新です。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


自然の雄大さは語彙力を奪う。

 谷へと向かう為には、南西の第四門から出て、真っ直ぐ西へ向かう必要がある。

そこまでも、そこからも、危険ではあれど一応他の街へと繋がる街道が有るため、しっかりとした石畳で舗装されとても歩き易くなっていた。

幅も乗用車3台分は有るだろう。

両脇は見晴らしの良い平原で、時折背の低い木々が木陰を作り出している。

時折谷の方から吹く風が、肌を優しく撫でて過ぎ去ると、気持ちの良い快晴と合わさりどこかピクニックに行くような気分にさせられる。

そんな中を四人は並んで歩いて居た。


「それにしても、街道の割には人が居ないね。」


 今のところキーノ達四人以外の人間は歩いて居ない。

しっかり整備された道で、別の街に繋がっていると言うのにこれは可笑しい。


「この先は「ズィロー砦」ってとこに繋がってるらしい。その砦の先は隣国まで町や村は無いって話だ。そんで、その隣国とは国交断絶中なんだと。だから今は殆んど使われないらしいぞ?」


「隣の国ですか~仲悪いんですね。因みに何て国なんです?」


「「堺帝国」だよ、ハルナちゃん……」


「確か商売と仙術の国ですね……何で国交断絶なんてしたんだろう?商業関係のダメージがかなり大きい気がするんだけどなぁ……」


 キーノの推測は正しい。

実際ミステス王国の輸出額は大きく下がり、必需品の輸入が出来なくなった為に値上がりした物は多岐にわたる。

そのせいで一時期は市場に殆んど品物が並ばない程だったのだ。

しかし、それも仕方無い。

何せ―――


「ユリナさんに聞いた話じゃ、堺帝国側からしか入れない巨大なダンジョンが発生したらしい。そのせいで唯一の交易ルートが潰れちまったんだと……」


「わふぅ、それなら海路とか空路使えば―――」


「ハルナちゃん、どっちもモンスターのせいで難しいんだよ……そもそも空路は乗り物が無いし……」


「そっかぁ……」


 実は知られていないだけで、テムステア共和国産の魔導飛行船と言うのが有るが、モンスターを振り切る速度が必要な関係で積載量が少なく、維持整備に莫大な金が掛かるため数も少ないのでキリアーネが知らないのは当然だ。

また海路は安全な航路が少なく、堺帝国とミステス王国を繋ぐ航路は存在しない。

因みに魔導飛行船以外の事はAWOの公式サイトで、重要な情報として掲載されている。

その為この世界の海路と空路を開拓する事を目標にしている生産系廃人プレイヤーも結構存在する。


「ならマルテニ王国を経由すれば―――」


「堺帝国とマルテニ王国は犬猿で、ミステス王国が仲立をしないと直ぐに戦争なんだと。だからマルテニ王国経由で行こうとすれば関税やらなんやらで大赤字って聞いた。」


「何だよそれぇ……それじゃ国交復活なんて何時になるか分かったもんじゃ無いじゃん……」


 そこでキーノはふと、とある事を思い付く。


「もしかしてこの調査って……」


 嫌な予感に思わず渋い顔を浮かべるキーノ。

しかしその予想は直ぐにカナタによって否定される。


「安心しろ。流石に一介の冒険者に新ルートの開拓なんざ頼まねえよ。そもそもこの街道、結構な頻度でモンスターが出るから街道としては危ない方なんだよ。なのにダンジョンが出来てから三年くらい砦勤めの騎士団とかしか使わないから、何か異常が無いか見て欲しいんだと。次いでにモンスターも間引いて欲しいって話だ。」


「「「なんだ、単なる雑用か(ですか)(でしたか)……」」」


 何と無くホッとした様な、そこはかとなくイラッと来た様な微妙な気分を味わいながらも、四人は谷へと向かって街道を歩いて行く。


「しっかし三年かぁ…結構長い間断絶状態なんだね。」


「まあ、向こうも異邦人が来てるでしょうし…今年は無理でも二、三年の間に攻略されるんじゃないでしょうか……?」


「だと良いがなぁ……」


「わふぅ……」


 少々アンニュイな気分になりながらも歩き続ける四人。

流石にステータスが高くなっている事も有り、話しながらでも目的地の谷まで後少しの所に来ていた。


〇〇〇〇


――一時間後―――


ヒュォォォ……



 谷から吹く風の音を聴きながら―――



四人は一歩―――



また一歩―――



――――とその終端へと近付いて行く。

そこには―――





――――世界が、開けていた。





「うわぁ、何だこれ……」


「凄い…こんな景色初めてです……」


「わふぅ!たっかーーい!」


「ははは!こいつはスゲエ眺めだぜ!!」


 道の終わり、其処には金属製の柵が設けられ、まるで絶景を観る為の観光スポットの様な印象を受ける。

しかしそれもあながち間違いだとは言えないだろう。

なんせその向こうには、何処までも抜ける様な青空と、茶色と緑のマーブル模様の地平線が広がっているのだから。


 突然低くなった地面を見れば、そこには巨大な亀裂が縦横無尽に走り、まるで迷路の様になっている。

底を見れば、茶色の地面に、時折青々とした草木が繁り、美しく澄んだ川が流れている事が分かるだろう。

地平線に目を向ければ、それは非常に緩やかなカーブを描き、この世界が地球と同じ球形の惑星である事を物語っている。

それらが眼前に広がる風景は正に、絶景と言う他無い圧巻の景色だった。


 キーノ達が居る場所は、谷の底からだいたい150m程の高さになり、此処以降の地面は50m程低い位置に有るので、かなり先まで見通せる見晴らしの良い場所だ。

お陰で仕事に来た事さえ忘れそうになってしまう。

実際四人はその景色の素晴らしさに眼を奪われていた。

その景色を例えるなら、そう、アメリカのグランドキャニオンが一番近いだろう。

違う所があるとすれば、こちらの空には体長2m程の鳥が、地面には人の頭程ある巨大なダンゴムシが時折姿を表す事位だろうか。

後は緑がかなり多いと思われる。

まあ、今は見えていないだけで、違いは他にも沢山あるのだろう。


 余りの感動に景色から目を離せない四人。

しかし何時までもこうしては居られないとキーノが最初に動き出す。


「そろそろ動きましょう。とは言え、良い時間ですし先ずは昼食にしましょうか。景色も良いですしね!」


 現在の時刻は昼の12時。

丁度ご飯時である。

そして景色も最高となれば―――


「「「さんせーーい!!」」」


―――反対する者等居なかった。

そして始まるピクニックのごとき昼食会。

地面にはブルーシート代わりの毛皮の絨毯。

これはホーンラビットの毛皮で出来ていて、白くフワフワとした柔らかく滑かな手触りが特徴だ。

その上に広げられたのはキーノとカナタの生産系スキルで作った練習作の食器だ。

金属製から木製や磁器製まで様々な食器類が並べられて行く。

そしてその食器に置かれるのは屋台で買った料理の数々である。


「やっぱウィンターダックはうめえ!!」


「わふぅ~「ファステム焼きそば」も美味しいです!」


「「沼マスの塩焼き」も塩や焼き加減が絶妙で美味しいです……」


「この「グリーフシュリンプのスープ」も出汁が効いて美味しいですよ。」


 ハルナの食べている「ファステム焼きそば」はファステムの周囲で取れる食材を使ったファステムの郷土料理だ。

今回はファステムの南に広がる沼、「グリーフ・スワンプ」で捕れる「グリーフシュリンプ」や賢武猿の森で採れる舞茸に似た緑色の茸「ダンシングマッシュルーム」に住民街の一角で育てられた「冬菜キャベツ」をふんだんに使っており、シャキシャキ感の残ったキャベツの甘味にプリプリの海老の旨味、そこにくにゅりとしていながらも歯切れの良い茸の薫りと旨味が加わり、麺に絡み付いた塩ダレとそれらが絶妙にマッチしていてとても美味しい。


 キリアーネが食べている「沼マス」はグリーフ・スワンプで生け捕りにしたものを商業街の生け簀で泥抜きしたものだ。

因みにグリーフシュリンプもそこで泥抜きしている。

それを北西にある「白狼連峰」で採れた「マナロックソルト」と言う黄緑色の甘味の有る岩塩を使い、炭火で丁寧に焼き上げている。

その身は白く淡白だが、腹は脂がのり、マナロックソルトの塩味と甘味が脂の甘味と旨味を引き出してくれる上、丁寧に焼かれた皮がパリッ!と心地好い音と食感をもたらしてくれる一品だ。


 キーノの「グリーフシュリンプのスープ」は単純で、ウィンターダックの骨と食うのに適さない肉を煮込んで作ったスープ、それにグリーフシュリンプの殻を大量に使って作ったスープを1:2の割合で混ぜて作ったWスープに、グリーフシュリンプの身と草原で採れる野草の「アスノビル」の刻みを入れ、マナロックソルトで味を調えた物だ。

スープはウィンターダックの脂の甘味とグリーフシュリンプの旨味が混ざり合い、それをマナロックソルトが上手く纏めてくれている。

そこにプリプリの海老の身とシャキシャキのノビルが入れば文句無しの旨さを口一杯に広げてくれる。


 そんな絶品料理の数々に舌鼓を打ちながら、キーノ達はこの世界を旅行気分で満喫するのだった。


―――20分後―――


「はぁ…満腹だよぉ……」


「ちっと食い過ぎたな……」


「わぷぅ…この世界、食べ物が美味し過ぎですよ~~……」


「本当に美味し過ぎて困ります……」


 思い思いの楽な姿勢でお腹を擦る四人。

屋台料理の美味しさに、ついつい食べ過ぎてしまったようだ。


「少し休んだら出発しましょう。」


「それは良いですけど~~何処に行くんですか?下、下りるんですよね?」


 ハルナのその疑問に答えたのはカナタだった。

食べ過ぎて苦しいのか声には出さず、ただ進行方向を指でスッと指し示す。

そこには街道と同じ造りの下りのスロープがあった。


「わふぅ、下へのルートって階段じゃなく坂なんですね。」


「これ、谷の壁面を使った訳じゃ無いみたいですね……?」


「魔法かな?土系の術で地面を抉ったみたいですね。」


 動ける位になったキーノが立ち上がってスロープの観察を始める。

スロープは両脇が岩壁となる様に造られており、谷側の壁の厚さは20mを超えている。

そしてスロープは下に行く程谷へ向かってカーブしているらしく、緩やかに弧を描いている事が分かる。


「……………………………………………」


「何か視える(・・・)か?」


 黙って道の先を視ていたキーノにカナタが声を掛ける。

それに対し、キーノは軽く首を横に振ると端的に答えた。


「いや、今は何も視えないよ。」


「なら安心だな!んじゃ、そろそろ行くか!」


「そうだな。」


「出発しんこーです!!」


「楽しみですね……!」


 こうして四人は谷底を目指しスロープを下り始める。

未知なる領域に対する不安と、それ以上の高揚感と期待を胸に、キーノ達は歩みを進める。

しかし、彼らはまだ知らない。

この谷、「バグズ・キャニオン」で何が待ち受けているのかを……

彼らは、まだ、知らない……

屋台は一体いくらで料理を提供しているのか…

書いてて自分で気になった(´・ω・` )


良いなと思えたら評価、感想の方よろしくお願いいたします

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