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バルナムの初縁日

初縁日なんてもう終わってますが、ネタとして思い付いたので……


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


想いは届く、誰かには……

 人で賑わう大通り。

今日は年の始め、1月1日の元旦である。

人々は年始の御祈りをするべく創成神教の教会へと歩いて行く。

大通りの両脇ではそんな人達相手に食べ物やアクセサリー等を売る屋台が軒を連ね、初縁日が開かれていた。


「賑やかだなぁ。」


「ここいらはあっちと変わんねーな。」


「御祈りしたら、少し覗いて行きたいです……!」


「さーんせ~~い!!」


 初縁日を楽しむ人々を掻き分け御祈りをしに教会へ向かう人々の流れに乗って進む二組の男女。

ご存知キーノ一行は、何時もと違う雰囲気の辺りを見回しながら雑談を交わしていた。


「にしても、思ったより色々売ってんだな。」


「そうだな。僕、ほとんど食べ物屋なんじゃないかと思ってたんだけど……結構宝飾品とか武器も並んでるね。」


「その辺りが異世界って感じですね……」


「わっ!?ね、ね、師匠!アレ見てアレ!!アーネちゃんとカナタさんも!!」


 教会まで後70m程の所で、ハルナが右側に並ぶ露店を見て驚き、店に一番近いキーノへと話し掛け、違う場所を見ていた二人にも呼び掛ける。


「えっ!?うっそ何アレ!」


「は、ははは……とんでもねえな異世界……」


「凄いです……!」


「ね?後で絶対寄ろうよ!」


「まあ、お金は沢山有るしね。見てみるくらいなら別に問題も無いかな?」


「俺はいいぜ?」


「私も、行ってみたいです……!!」


「やったーー♪」


 四人の視線の先、其処には一軒の変わった露店が並んでいた。

この異世界においてさえ、変わった店。

現実ではまず有り得ないだろう光景。

そして、異邦人(プレイヤー)はこぞってその店に視線を向ける。


 その露店の店先には1つの大きな看板が立て掛けられ、その隣には多数の商品が陳列されているのだが、その商品が普通では無かった。

看板には次の様に書かれている。


『宝石類、何でも詰め放題!一回1000(ゴルド)お一人様三回まで!!』


と。

そう、その露店では、数十種類の宝石を詰め放題で売っていたのだ。

しかも異邦人にとっては決して高く無い値段で!

故に皆こぞってその店に視線を向けるのである。


「と、やっと僕らの番か。」


「結構長かったですね……」


「ま、元旦ならしゃーねーよな?」


「わふ、そうですね~~」


 先程の露店を見付けてから約5分後、キーノ達はやっと教会内部の祭壇前に来ていた。

祭壇には、この世界の神々とされる像が21体奉られている。

祭壇は大きく、少なくとも縦全長7m、横半径3mは有るだろう。

形としては、三段になった半円状の台が有り、一番上に乗った世界神を囲む様に、二段目を4体の像が、三段目を9体の像が、床に残り7体の像が半円状に配置されている。

因みに奉られている神々は―――


最上位神

“世界神バルナム”


上位神

“時空神クロミリア”


“惑星神ナルバナム”


“生命神ミーティアイア”


“技能神ランダルティ”


中位神

“太陽神アプルテア”


“月陰神ルナルテア”


“天空神スカルデァナ”


“大地神グラド”


“海洋神マリーアステ”


“冥界神スピアド”


“誕生神リポア”


“戦闘神バートリー”


“魔法神マギレムナ”


下位神

“季節神スサーオウラ”


“火焔神アグニカル”


“水流神アクテア”


“大気神ウィディス”


“治癒神ヒートリナ”


“製造神ファクティ”


“商売神バイナル”


―――の21柱になる。

他にもマイナーな神が居るのだが、それらの神はマイナーなだけあって知る者は少なく、奉られる事も無い。

それと、創成神の像が無いのは誰も創成神の姿を知らないからだ。

それ故、創成神教の教会その物が創成神の像の代わりとなる。

なので世界神バルナムや他の神々の像は天井を見上げる形で祈りを捧げている。


 人々は神々の像の前まで来ると、賽銭箱に投げるように、銅貨や銀貨を像へ向かって放り込む。

因みに像は柵で囲まれて居るので近付けない。

賽銭を投げた人達は片膝を着き、両手を組んで祈りを捧げていた。


「御祈りの内容は何でも良いんでしたよね?」


「そうですよ~~」

「そうです……」


 賽銭を投げる前のキーノの確認にキリアーネとハルナが同時に答える。


「んじゃ、冒険の安全でも願うか。」


 それを聞いて最初に賽銭を投げたのはカナタだった。

それに続く形で、キーノ達も賽銭を投げ込み、片膝を着いて祈り始める。


(冒険から無事に帰還出来ますよーに……それからレアアイテムも欲しいな。)


(カナタさんとーむふふふ~~♪)


(神様に期待はして居ませんが、もう少し勇気を貰えたら、今度はちゃんと……!!)


(皆と、もっと沢山楽しい思い出が作れます様に。それから―――)




―――――――楽しませてくれるこの世界に感謝を……




……………………………………………ピコンッ


「っ!!!!?」

ばっ!!



 突然顔を上げるキーノ。

その行動に驚き吊られて顔を上げるカナタ、キリアーネ、ハルナの三人。


「どうしたんですか……?」


 虚空を見詰めて頻りに瞳を動かすキーノへとキリアーネが不安そうに問い掛ける。

それは何かが起こった時にキーノが見せる行為で、万物先生を知っているメンバーにとっては、馴染み深いものだ。

しかし、それはつまり自分達が知覚できない何かが起こったと言う事でも有る。

不安になるのは仕方ないだろう。


「いえ、気のせいだったみたいです……」


「そうですか……」


 ホッと胸を撫で下ろすキリアーネ。

そして一頻り万物先生の鑑定ログを確認したキーノは、先程聞こえた気がした何時もの電子音は気のせいだった事を確認すると徐に立ち上がる。


「そろそろ行こっか。」


「だな。」


「そうですね……」


「行きましょーー!」


 そして四人は教会を出る。

目指すは先程の宝石詰め放題の露店だ。


〇〇〇〇


――――????――――


 何も無い真っ白な空間。

上下左右すら存在しないただただ白いだけの場所。

プレイヤーが最初に訪れるメイキングエリアよりも尚白いその場所に、一人の少女――いや、幼女が簡素な黒い丸椅子に座って目を瞑っていた。


 グリーンゴールドのウェーブが掛かった長い髪に、陶磁器の様な白くキメの細かい肌で、貫頭衣らしき白くゆったりとした服に身を包んだ幼女は、その大きな眼を見開き、一筋の涙を流す。

その瞳はまるで星空の様な煌めきを持ち、小さな銀河が閉じ込められているようだ。

そんな幼女は特に何処を見るわけでも無く、瞳を虚空にさ迷わせ、懺悔の様に一人呟く。


「ああ…何と情けないのでしょうか……お父様に命令されたからとは言え、貴方に過酷な運命を背負わせなければいけないとは……許して欲しいとは言いません。ですが、決して負けないで下さい。きっと、その加護(・・)が何時か貴方の助けとなる筈です。だからどうか、この世界を、嫌いにならないで……」


 幼女は再び眼を瞑る。

すると、そのまま溶ける様にその姿は薄くなり、瞬きの間に消えてしまった。

後には、何も無い白い空間だけが残されていた。


〇〇〇〇


 四人は今、先程見掛けた宝石詰め放題の露店に来ていた。

因みにこの店、制限時間付きで、1人6分までとなっている。

一気に3回分払って18分にする事も出来るので、四人はそちらの方で現在挑戦中である。


 此処で少し説明しておくと、この世界での宝石の立ち位置は武器や防具、アクセサリー等への魔法付与(マジックエンチャント)を行う為の触媒が主な役割となる。

それ以外では単なる宝飾品だ。

そして、恐ろしく人気が低い。

と言うのも、この世界には「魔宝石」、「魔石」、「魔晶石」、「精霊石」、「聖神石」と呼ばれる宝石以上の価値と能力を持つ鉱石が存在する上に、産出量が滅茶苦茶多いからである。

それに加えて“進化する宝玉エボリューションジュエル”まで有るのだから、沢山有って能力の低い宝石等大した価値は無いのだ。

まあ、魔道具作りの練習には丁度良いので需要はそこそこあるのだが……


 そんな宝石でも、何も知らない異邦人は大金を払ってくれるのだから、露店商としてはウハウハだろう。

実際心の中では―――


(うっしっしっしっしっし!!!馬鹿な異邦人様方のお陰で大儲けで御座いますですよ!一粒銅貨1枚程度の価値しか無い宝石を詰めるのに、銀貨10枚も出して下さるんですからね!五十倍以上の儲けで御座いますです!!うっしっしっしっしっし!!!)


―――と笑いが止まらないようだ。

因みにこの世界の単価は、銅貨1枚で1(ゴルド)、銀貨1枚で100(ゴルド)、金貨1枚で1万(ゴルド)、白金貨1枚で100万(ゴルド)、聖神貨1枚で1億(ゴルド)となっている。


 つまり今のキーノ達は、この世界の住人――オルン達からして見たら、子供の小遣いで買える石ころに大金を出す馬鹿にしか見えない訳である。


 だが、我等が外道魔導師は格が違う。

何故なら、やる前からそこら辺の事情は万物先生で把握済みだからである。

万物認識に万物鑑定が有れば、物の価値も商人の思考も丸裸なのだから。

なら何故やっているのか?

そんなもん決まっている。


(店主もまさかこん中に魔宝石や魔晶石が混じってるなんて思わなかったんだろうなーー……)


 そう、キーノは一目見て、この中に品質は低いけれど元を取るのに十分なレベルのレアアイテムが混ざっている事を知ったのである。

これも万物先生様々と言う事だ。


(ん?はっ!?)


 と、そうやって宝石に混じったレアアイテムを物色中、キーノは虹色に輝く雫型の宝石を手に取った所で固まる。

それはピンポン玉位の大粒の宝石で、虹宝玉(レインボージュエル)と言うこの世界特有の宝石に良く似ている。

しかし、キーノの万物先生はそれ(・・)が虹宝玉では無い事を見抜いていた。


(いや、こんなとこで見つけるとか……まあ、うん…ラッキーだったと思おう。うん……)


 キーノは震えそうになる手を無理矢理抑えて袋詰めの作業を続けて行く。

しかし宝石が思いの外大粒だった為、終了5分前には3つの袋は全てパンパンに膨れ上がり、それ以上詰められ無くなるのだった。


「ま、こんなもんかな?」


「結構デカいからあんま詰めらんなかったな。」


「もっと袋が大きかったらな~~」


「でも、良い記念になりましたね……」


「それはようございました!またのご利用お待ちしていますね?うっしっしっしっしっし!!!」


(あ、声に出すときもその笑いかたなんだ。)


 胡麻を擂りながらニタニタと嫌らしい笑顔を浮かべる露店商を見ながら、キーノはそんな感想を抱く。


(まあどうでも良いか……それより―――)


「これからどうする?取り敢えず宿に戻る?それともこのままギルドに行く?もしくはもう少し屋台とか見て回る?」


 思考を切り替えたキーノはメンバーにこれからの行動を尋ねる。


「俺はもうちょい屋台見てえかな。」


「私も屋台みた~~い!!」


「私も、屋台見たいです……」


 どうやら満場一致で屋台を見て回る事になったらしい。

まあ、まだ宝石詰め放題しかやっていないのだから当然と言えば当然か。


「じゃあ、もう少し見て回ったら、ギルドに行きますよ。」


「「「はーーい。」」」


 その後一時間程の間、キーノ達四人は初縁日の屋台や露店を存分に楽しむのだった。

色々伏線が張り巡らされた回になってしまった……

やりたかったのは最後の方のネタだった筈なんだが……

まあ良いか

次回は掲示板回の予定です


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