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ログインしたら、新年でした

遅れましたが正月ネタを挟んでみました


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


それは1つの区切り……

「っは~~…とんでも無い内容だったなぁ……でも―――」


ぐっ!


 スマートフォンを3Dホログラムモードにして発表記者会見を観ていた菊之は徐にガッツポーズを取る。

それはレベル制限が無くなった事に対して、内から溢れ出てくる喜びを何とか抑えた末の慎ましい表現だった。

本当は思い切り声を上げて喜びたいが、今家には家族が全員居るため、驚かせない様に気を使ったのである。


「さて、じゃあ早速―――ん?」


 と、早速ログインする為に、スマフォの画面を消そうとした所で、先程記者会見を終え退場した筈の義文が再び壇上に上がって居る姿が映って見えた。


『申し訳有りません!大事な要素を伝え忘れていました!!』


 突然謝罪する義文。

それに合わせて再び移り変わった画面には、赤、青、黄、緑、紫等の色とりどりの宝玉が映し出される。

その形も様々で、真球型から涙滴型、楕円形等だ。


「何だろう、アレ……多分アレが大事な要素なんだよな?」


 菊之が首を傾げながら画面を覗いていると、直ぐにそれらについての説明が始まる。


『これはこの世界が生まれた時から存在するアイテムであり、未だにプレイヤーが見付けた事の無い物です。その名も―――



         “進化する宝玉エボリューションジュエル



―――と言います。簡単に言うなら、進化を促す(・・・・・)アイテムです。』


「進化を促す……?」


 何と無く呟いた菊之の言葉に答えるように、義文の説明は続いて行く。


『そうです。そしてその説明の前に知って貰わなければならない概念が有ります。それは等級、もしくは位階と呼ばれるものです。貴族で例えるなら公爵や子爵と言った所でしょうか……それがアイテムやモンスター、人種にも存在しています。そして“進化する宝玉”は、その等級を上げる事が出来るアイテムです。まあ、条件を満たす必要は有りますがね?さて、では等級と使用法だけ簡単に説明いたします。それ以上の事はご自分でお確かめ下さい。では、此方をどうぞ。』


 それは等級の一覧表だった。

更に等級毎のレア度まで載っている。

因みに内容は以下の通りで、上から順に階級が上がっていく。


等級           レア度

ノーマル         F~A

レア           F~S

(ハイパー)レア          F~S

伝説(レジェンド)            F~S

神話(ミソロジー)            F~S

(ゴッド)             F~Unknown

起源(オリジン)           Unknown


『勿論“進化する宝玉”にも等級とレア度は存在しますし、“進化する宝玉”自体を進化させる事も可能です。因みに使用法は簡単。ただ対象に“進化する宝玉”を接触させ、使用と念じるだけです。そうする事で対象と“進化する宝玉”が同化し、条件を満たす毎に進化して行くのです。ただし、“進化する宝玉”は基本一人1つしか所持出来ないので気を付けて下さい。理由は入手すれば分かるでしょう。では、今度こそ失礼致します。良い冒険を!』


 義文のその言葉で放送は完全に終了し、ホログラムの画面にはCMが映り出す。

それを観ていた菊之は瞳を爛々と輝かせ、辛抱たまらんと言わんばかりに素早くログイン準備を済ませてベッドに横になる。

そして―――


         「スタート!!」


―――これ迄で一番ワクワクが籠った声で、菊之はAWOの世界へと旅立つのだった。


〇〇〇〇


―――元管理運営室・現観測運営室―――


「「「「はぁ~~~~~~………」」」」


 菊之がログインの準備を済ませている頃、何時ものメンバーが揃う室内で、全てのスタッフが無気力な瞳で重い、非常に重い溜め息を吐いて、椅子や机、酷い者は床に突っ伏していた。

どうやら今回の発表に対し、色々思うところが有るようだ。


「無いわぁ~~ホントに無いわぁ~~……何よあれ~~!つまり私達が色々悩んであれやこれやしてたのは全部無駄だったって事!?ふざけんじゃ無いわよ!!しかも、何であんな重要な事を現場に居る私達に話さないのよ!!?」


ダンッ!!


 と突っ伏していた机を両手で強く叩いたのはチーフの菫である。

般若のごとき怒りの形相で、知的美女の面影がまるで無い。

しかし元が良いだけにその迫力は凄まじく、スタッフ達も恐れをなして遠ざかる。


「始めっっからこうなると知っててあんな事言ってたって解って余計腹立って仕方ないのよ!!って言うか観測運営室って何よ!!!あっちで起こる出来事を録画編集して物語にしろとかふざけんじゃ無いわよ!!普通に犯罪でしょ!!?あの陰険眼鏡!!ああ~!あのにやけ面を叩き潰したい!!!」


ダンダンッ!

タダンッッ!!


 と机を叩きまくる菫。

かなりキテいるようだ。

スタッフ達も怖がりながら、その意見には基本賛成らしくただただ深い溜め息を吐く事しか出来ないのだった。


「ムキーーーーー!!!!!!」


〇〇〇〇


―――月夜の灯り亭―――


「ん…入れたのか……」


 キーノはログインした事を感じ、ゆっっくりと目を開ける。

何しろ今回は初のリアル視点なのだ。

どんな影響が有るか分からないのだから慎重にもなると言うものだ。

そうして恐る恐る開いていたキーノだが、半分程開いた所で一気に目を見開く。

その顔には驚愕が浮かんでいた。


「凄い……」


 思わず口から漏れた言葉。

それも無理は無いだろう。


 今、キーノの目には見慣れた筈の天井が映っていた。

しかし、その天井は何時もと違う。

正確に言うなら、何時もより鮮明で、CG感の無い、完全に現実と変わらない天井が、其処には有った。

それに視覚だげでは無い。

耳には今迄で聞こえていなかった鳥の囀りや、階下から僅かに聞こえる人々の生活音、更には無音音と呼ばれる耳の内部で起こる生理現象的な音まで再現されている。

鼻は外や厨房から漂う料理の匂いに部屋の臭いまで感じ取り、肌は装備や横たわるベッドにシーツの質感までをこれ迄で以上に伝えてくれる。

恐らくは、現実で無意識に感じとっていた様な事柄も、この世界は再現しているのだろう。


「とんでもないな……でも―――」


 キーノは起き上がり、ベッドを出ると窓を開け放つ。

そして外の景色に目を向けた。


 静な、朝だった。

陽が昇り始め、街壁に建てられた見張り塔を茜色に染めている。

街道では人々が活動を始め、彼方此方で屋台を出しているのが見える。

季節が冬だからか、朝の空気は少し冷たかったが、日本の初秋程だ。


「―――こんなに、綺麗だったんだなぁ……」


 今迄で、こんな風にこの世界を眺めた事は無かった。

それだけ世話しなく動き続けて来たと言う事だろう。

スキルに振り回されて、余裕が持てなかったのかも知れない。

と、キーノがそんな事を考えている時だった。


トントン


 部屋にノックの音が響く。


「キーノさん…キリアーネです……入っても良いですか……?」


「えっ!?あ、は、はい!大丈夫です!今鍵開けるんで待ってて下さい!!」


 突然のキリアーネの来訪に驚きながらも、キーノは鍵を開け、扉を開く。

そこには―――


「あの、ちょっと変な感じですけど、新年明けましておめでとうございます……!」


―――上が白の下が朱と言うグラデーションの、晴れ着とローブに巫女服を合わせた様な不思議な服を着たキリアーネが立っていた。

腰は帯では無く紅色のシルクの様な幅広のリボンを巻いている。

着物ともローブとも言える奇妙なデザインの衣服だが、全体的に可愛らしく纏まっていて、普段は可愛いと言うより綺麗な印象を与えるキリアーネも、可愛らしい印象を受ける。

と言うか、普段とのギャップにヤられて、キーノはまたフリーズしてしまっていた。


「え?あれ……?キーノさん!!?」


ペチペチ!!


「ぶべらっ!!!?」


「あ、ごめんなさい……!!」


 キーノがフリーズしているのに気付き、正気に戻そうと軽く頬を叩いたつもりのキリアーネ。

しかしキリアーネは既に素のSTRが300を超えている。

ハーフとは言え本来非力な筈のエルフで有るにも関わらずだ。

その為、力加減を間違えてしまい紙装甲のキーノに幾らかダメージが入ってしまったのである。


「い、いえ…だ、大丈夫ですよ……」


「本当ですか……?」


「本当です……!!」


 少しふらつきながらも、力強く断言するキーノ。

惚れた相手に心配はさせたく無いらしい。


「良かった…でも念のため……「ヒール」!!」


 大した事は無さそうだと安堵の表情を浮かべるキリアーネ。

しかしそれでも心配だったらしく、未だにLv12と余り上がって居ない回復魔法を使い治療する。


「あ、痛くない……有難うございます。」


「いえ、私のせいでしから……」


「それでも、です。」


「あ…と、その………はい……」


 瞬く間に形成される桃色空間。

部屋先で二人の世界が展開されていた。

と、そんな二人を見つめる人影が2つ。


「「じ~~~~……」」


「うわっ!?」

「きゃっ!!」


 キリアーネの直ぐ斜め後ろから、能面のごとき無表情で、二人の空間を眺めて居たのはパーティーメンバーのカナタとハルナだった。


「「じ~~~~……」」


 二人が驚いて飛び退き、距離を空けてもカナタ達の批難めいた視線は続いている。


「「いや、何か言って(よ)……!?」」


「「明けましておめでとうございます。末永く爆発しろコンチクショウ!!」」


「「何で……!!!?」」


「「何と無く!!!」」


「って言うか、さっきから何で新年の挨拶してるの?まだ現実(リアル)は春の筈でしょ?」


 何時ものコントを終えて、キーノは先程から思っていた疑問を三人にぶつける。


「あれ?師匠知らないんですか?」


「何を?」


「今日はAWO内時間で販売から丁度一年だ。」


「うん、そうだな。」


「つまり、今日はAWOにおける新年なんです……要は元旦――1月1日のお正月なんですよ……?」


「あっ!それでですか。」


「「「そうそう。」」」


 そこまで聞いてやっとキリアーネの服装や新年の挨拶の意味に思い至るキーノ。

どうやらゲームに感動し過ぎて頭が回っていなかったようだ。


「んん!新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」


「「「よろしくお願いいたします。」」」


 遅れて発したキーノの挨拶に、三人が一斉に返答する。


「って、何か変な感じですね。」


「けど、郷に入っては郷に従えって言うだろ?」


「慣れるしか無いですね~~」


「ふふふ、そうね……」


 現実との時間差で、本来なら使う筈の無かった挨拶を使うと言う奇妙な感覚は、そう簡単に拭えるものでは無いだろう。

しかし、此処に居る間は此処の住人なのだと義文も言っていた。

なら、慣れる他は無い。


「そう言えば、ハルナも晴れ着?なんだな。何かあるの?」


 ハルナの今の格好は、キリアーネの色違いで、上が黄の下が緑と言う季節を先取りした様な色合いである。


「わふっふっふっ!この世界の元旦は、この「元服(がんぷく)」で創成神教の教会に御祈りに行くのが慣わしなんですよ!女性限定ですけど!!」


「あ、男性は服装に決まりが無いってだけで、御祈りに行けない訳では無いですよ……?」


「それで四人で御祈りに行こうって話になったんだよ。」


「わふ~~♪因みにこの服は女性プレイヤー限定のログインボーナスです!」


 誇らしげに元服を見せつけて来るハルナ。

余程嬉しかったらしい。


「男は1万Gがログインボーナスで配られるから、キーノも後でプレゼントボックス覗いとけよ?」


「うん、分かった。それで、これから御祈りに行くの?」


「はい、そのつもりです……」


「じゃ、行こうか。多分混むだろうしね。」


「そうだな。」

「は~~い♪」

「はい……!」


 こうして、四人は新しくなった世界へ歩み出す。

これからどんな冒険が待っているのか、その思いに胸を踊らせながら。

前話に載せる筈だった設定を無理矢理くっ付けるしか無かった我が身が憎い……

まあ、良いか

これを糧に精進します!


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