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閑話 外道と聖女と羅刹

前回の裏側の話です。

 それはある日の放課後だった。

その日、珍しく春は居らず、菊之、刀弥、桜華の三人で談笑しながら下校していた。


「春が最近おかしい?」


「そうなんです…春ちゃんなんだかAWOで夜になる度に、林の奥に行ってるみたいで……」


「あ、それ俺も見た!しかも俺に気付いたとたんぴゃ~~!って感じで逃げてったんだよ。」


「嘘でしょ!?あの刀弥好き好き能天気女子が!!!?」


「やっぱり、何か隠してるんでしょうか……?」


 ここ最近、四人はAWO内で一緒に行動する事が少ない。

と言うのもギルドランクがカナタとハルナ以外バラバラで、個々にクエストを受けた方が効率が良いのだ。

その為一人になる事が多いのだが、春―――つまりハルナの様子がどうもおかしいのだと桜華が言うのである。


「ん~~…それって春が一人の時なんだよね?」


「そうだな。」


「そうですね。」


「で、林の奥が関係してる、と。」


「なんだ?何か分かったのか?」


「まあ、何と無く…ところで、春って何の動物が好きか知ってます?」


「え?えっと、何だったかな……」


「なんだよー勿体振んなよなーー」


「二人ともそんなんだがら春に警戒されるんだよ……」


「えっ!?」


「ええっ……!!?」


 菊之は思い出していた。

あの日初めて林の奥に踏み込んだ日の事を……

そして、其処で起こった出来事と、その事に関して彼女が見せた表情を……

何よりその出来事を起こした張本人達のテンションと表情が、未だに脳裏から離れてくれない。


「取り敢えず、今日は夜になるまでクエストして、その後林に集合で良いよね?僕の予想通りなら、あの丘(・・・)にハルナが来る筈だから、待ち伏せしよう。」


「!成る程、あの丘か!分かった!!」


「ああ!なんだ、春ちゃんも言ってくれれば良いのに……♪」


「言っとくけど二人とも身動き禁止だからね?」


「「そんな……!!」」


 一悶着あったものの、三人はそれぞれの帰路に別れて帰宅する。

そして予定を消化しながら待つこと数時間、約束のAWO内時間、午後7時。

まだ太陽の光が木々の彼方にうすぼんやりと見える頃、三人は林の中を走り、奥にある丘を目指して進んでいた。


「良い?キリアーネさんもカナタも何もしたら駄目だからね?」


「分かったって……!そう何度も言うなよ……」


「そうですよ…私達ってそんなに信用無いですか……?」


「これに関しては皆無ですね。二人とも経験値ゾンビだから、アレを見付けたら問答無用で虐殺するでしょ?」


「「そ、そんな事無いぜ(ですよ)?」」


「おいこら目を見て言いなさい。」


 理由(推測だが)を知ってから妙にソワソワしている二人を諌めながら、キーノは目的の場所が見え、かつ身を隠すのに適した場所を探し当てると、其処に身を伏せ、ハルナが来るのを待つ。


「来ますかね……?」


「どうだろうなぁ……」


「しっ…!二人とも静かに……!!」


 そうして待つこと数十分。


「………………………来た……!!」


「ホントだ……!!何か探してるみてーだな……」


「じゃあやっぱり……」


「間違い無いですね。ハルナはムンクリを探してる……!!」


「あ、あれ…!あそこにムンクリが……!!」


「本当です……!せ、セイントむぐっ!?むー!むーー!」


「キリアーネさん、約束を忘れましたか……?」


 間髪入れずにセイントフィールドでムンクリを閉じ込めようとしたキリアーネの口を後ろから抱き着いて塞ぎ、抜け出ようともがくその耳元で、キーノは満面の笑みを浮かべてそう問い質す。

その目は全く笑っていなかった。

キリアーネはそれを見て、少しカタカタと震えながら大人しくなるのだった。

カナタも逆らったら不味いと思ったらしく、静かである。


「全く……だからハルナに除け者にされるんですよ……」


 キーノは自分の行動に少し赤くなりながら、掴んでいた手を放しそう呟く。


「はい……おっしゃる通りです……」


「ぐうの音も出ねぇ……」


「はぁ…ん?お、ハルナが何か罠を仕掛けてる……って、いくらなんでもそれは無理が有るでしょ……」


 キーノはハルナが仕掛けた漫画みたいな罠を見て、苦笑いを浮かべる。

流石に無理が有ると言わざるおえない単純な作りなので、この表情も仕方無いだろう。

それでも―――


「今日は様子見だし、このまま何もしないようにね?」


「「はーーい……」」


「不安になるなぁ……」


 それから約一時間後、何も起こる事無くただただ時間だけが過ぎていた。


「何にも起きないね……」


「あ、ハルナちゃんが何か葛藤してるぞ。」


「どうするんでしょう……?」


「さあー…って、なんだアレ!?」


 その時キーノが見たのは大きくて美しい狼だった。

ムンクリの様な真っ白な毛皮に、耳元から背中に向かって生える薄紫の透明な二本の鋭い角。

その瞳は金色で、真っ直ぐムンクリに向けられている。


月角狼(ムーンホーンウルフ) Lv25

 レアエネミー パーティー級 推奨Lv30

 EXPボーナスモンスター レア度S

 現パーティー勝率100%

 取得可能経験値35250(282000)

 ドロップ???

 HP:3800

 MP:2000

 STR:230

 VIT:135

 AGI:340

 DEX:100

 INT:125                  』


月角狼(ムーンホーンウルフ) 月晶兎を長年食べ続けたウルフ系のモンスターが進化した姿。その毛皮は希少で、貴族に人気。魔術師系の防具の素材としても優秀で、かなり高額で取引される。また、角も装飾品や魔術師系の杖の素材として人気。基本棄てる所が無い。更にテイム出来れば、サポートに戦闘にと広く活躍する優秀なモンスターである。』


「マジか…こんなん居るんだ……」


「え?何か凄い奴なのか?」


「もしかしてEXPボーナスモンスターなんですか……?」


 万物先生の鑑定結果を呆然と見つめていたところ、二人から矢継ぎ早に質問が飛んで来る。


「えっと…アレ、パーティー級のレアエネミーだって…そんで、ムンクリ以上の経験値を持ったEXPボーナス…も、ん……」


 キーノは、それ以上言葉を続ける事が出来なかった。

何故なら二人から発せられる殺気が凄まじく、思わず腰を抜かしてしまったからだ。

そして、そんな二人の殺気を諸に浴びた月角狼は、一目散に逃げ出した。


「ああ!待て!!」

「待ちなさい!!」


「「今すぐ狩り捕ってやるよ(あげます)!!」」


 こうして、キーノを置いて二人は月角狼の後を追い、林へと消えて行ったのだった。

そしてキーノが一人になった時だった。


      ピコンッ!


 と何時もの電子音とメッセージが届き、キーノはその内容を確認する。


『クエスト「月晶兎の危機を救え」をクリアしました。報酬として称号が贈られます。』


―――月角狼の天敵―――

月晶兎を狙う月角狼を威圧だけで撃退した者へ贈られる称号。この称号を持つ者は月角狼へのダメージが1.5倍になる。また、テイムを持っていれば、高確率でテイムが可能になる。


「ええ~これ、何で僕に来たの?もしかしてパーティー全員に贈られるとか?」


 キーノは微妙な気持ちになりながら、それでも貰えるモノは貰っておこうと思い直し、暫くの間林の奥に消えた二人が戻って来るのを静かに待っていたのだった。


 翌日、結局狩れなかったと散々二人に泣き付かれた菊之は、暇さえ有れば月角狼狩りを手伝う約束をさせられ、後日ほぼ毎日の様に夜の狩りに連れ出される事になる。


「なんでこうなった……!!」


 二人が経験値ゾンビだからである。

正直称号の効果はダメージ面以外使われない気がする…

特にあの二人は…


次回幕間で、その次は新しい展開になります


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