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なんとか無難?にやれてます!

いつもより長めです


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


時に開き直りは大切である。

 エリアボス戦を終えた次の日、菊之はいつも通り刀弥と一緒に昼食を食べていた。

メニューは飽きずにナポリタンドックである。

因みに春と桜華はまだ来ていない。


「なあ菊之、知ってるか?あの話。」


「あの話って?」


「今日AWOが緊急メンテするって話だよ。7時くらいには終わるらしいけど、何があったんだろうな?」


「僕のアーツ関連じゃ無いと良いけど……」


「いやぁ…もしかするかもだぜ?」


 難しい顔をしながら、刀弥は話を続ける。


「緩急自在ははっきり言ってぶっ壊れ過ぎるからな。相性の問題があったとしても、あの能力は異常だ。それに派生スキルの外道魔法はバレただけで不味いからなぁ……そう言うとこの調整してる可能性は有るんじゃねえか?」


 その運営は実の所そんな作業等していられない程の大事件が起きててんてこ舞いなのだか、それはまた今度話そう。


「それで能力が大っぴらに使える様になれば良いけどさ…流石に無理でしょう?」


ハァーー……


 と溜め息を吐いて項垂れる菊之。

どうやら未だに今後の動きを決めかねているらしい。


「まあなぁ…でも、今回みたいに強い奴なら、やっぱあの能力は魅力的なんだよなぁ……」


「でしたら、私達が助けて欲しいときだけ、あの能力を使って貰えば良いのではないでしょうか……?」


 二人がうんうん悩んでいた所に、そう声が掛かる。

見ればいつの間にか桜華が目の前に立っていた。

学校指定の紺のブレザーと膝下まで伸びた同色のスカートが、相変わらず良く似合っている。


「桜華ちゃん、いつの間に来てたの?」


「つい今しがたです……」


「私も居ますよーー!」


「春は今日も騒がしいね。」


「師匠ひどーい!」


 そう言ってむくれて見せる春を観ながら、桜華はくすりと笑い、菊之の前に座ると、急に真剣な表情になる。


「菊之さん……」


「な、何ですか?桜華さん……」


 桜華の気迫に気圧され、一瞬身構える菊之。

しかし次の瞬間、桜華の予想だにしない行動に面食らう。


「この間は、失礼な事を言ってすみませんでした!!私…私菊之さんの事何も知らずに、酷い事を……!!」


 桜華の取った行動、それは土下座だった。

桜華は、昨日の戦いを観て、キーノが噂の様な人物では無い事を知り、初対面の時の言葉を謝りたいと思っていたのだ。

しかし、謝るなら直接リアルで謝りたくて、それで今日、思い切って謝罪したのである。


「えっと…その、全く気にして無いって、訳じゃないですけど、別にそこまでして貰う程気にしてませんよ?だから、頭を上げて下さい。」


 菊之は優しく微笑みながら、桜華に頭を上げる様に促す。


「でも、それじゃあ私の気持ちが……」


 それでは自分が納得出来ないと、僅かに頭を上げて横に首を振る。


「なら、今度の日曜日にデートをして下さい。それでこの間の事はチャラって事で。」


「私みたいな女で良いんですか……?」


「僕は、桜華さんだから良いんです。」


「ふふ、変わってますね……」


 桜華は小さく笑うと体を起こし、菊之と向かい合う。

どうやら、自分の中で折り合いが付いたらしく、その顔は晴れ晴れとしていた。


「日曜日、楽しみにしてますね……?」


「僕も楽しみにしてます。」


 互いに見詰め合い微笑み合う二人。

刀弥と春を忘れて青春空間構築中である。


「良い雰囲気ですねーー……」


「だなーー」


「私達もデートしませんか?どうせならWデートしましょうよWデート!!」


「それもいいかなぁーー……」


「えっ……!!?」


「え?どしたの?俺何か変な事言った?」


「い、今デートしてくれるって……!!」


 餌を待つ犬の様な、期待に満ちたキラキラした瞳を向ける春を見て、刀弥はしまったと思った。


(いやまあ、春ちゃんは可愛いから、嫌いじゃ無いんだけどさ……)


 しかし恋愛対象としてはまだ見れない。

全くとは言えないが、それでももう少し時間は掛かる。


(でもまあ……)


「デート位なら良いよ。彼女認定はしないけどね。」


「それで良いです!!」


ヨッシャ!


 とガッツポーズを取る春を見て、やっぱり早まったかと思いつつも、まあ良いかと思い直す刀弥であった。


「あ、そういや皆今日はどうすんの?俺は入るのは止めとこうと思ってるけど。」


「私も今日は入りませんよーー」


「私も、今日は入らないつもりです……」


「そっか、ならやっぱ菊之も入らないのか?」


「ああ……いや、入らないって言うか……」


「何だよ?また用事でも有るのか?」


「いやさ、実は入れない(・・・・)んだよね……」


「「「は……?」」」


 此処でキーノが使った禁呪“それは終わり告げる音ジ・サウンド・オブ・エンド”の代償について説明しよう。

この禁呪、レベル50差までなら確殺出来るぶっ壊れアーツなのだが、その代償はかなり重い。

先ず―――


・全MP消費

・HP九割減

・全ステータス九割減


―――が付き、更に―――


・ユニークスキル封印

・死亡でキャラクターロスト

・現実時間で24時間のログイン禁止


―――が付く上、全てが回復するのは禁呪を使ってから現実時間で96時間後。

つまりまる4日掛かるのである。

まあ、それで格上が倒せるなら安いものかも知れないが、NPCの、それも教会関係者の前で使えば一発アウトなのでバランスに関しては首を傾げざるをえないが……

因みにクールタイムはAWO時間の二ヶ月である。


「―――って訳で、僕は少なくとも今日の8時半までは入れないし、回復するまでギルドに顔は出したく無いから、来週の月曜まで入る気は無いよ。」


 菊之の説明が終わると同時に、三人は特大の溜め息を吐いた。


「お前はホント……なんて言うかホントになぁ……」


「本当に何と言うか……」


「師匠~~ホント度々私達の語彙を削りに来るの勘弁してくれませんか?」


 刀弥と桜華は菊之がさらりとぶっ込んで来たとんでもカミングアウトに頭を抱え、春は鋭い視線で批難を飛ばす。

しかし菊之は苦笑いを浮かべてばかりで、あまり効果は期待出来そうに無かった。


 結局その日は皆で話題を変え、デートで何処に行くかを話し合って終わったのである。


〇〇〇〇


―――数日後―――


「………疲れた……」


 キーノは今、大通りのベンチに腰掛けて項垂れていた。

その瞳からは生気が抜け落ち、今にも口から魂が抜け出てしまいそうな顔をしている。


 事の発端はデートを終えた翌日、つまり月曜のログイン時まで遡る。

その日、キーノ達四人は二つ目の街へ行くためのクエストを探しにギルドへ来ていた。

結局、これと言った打開策を思い付いた訳では無かったが、このままログインしない訳にもいかない上、ギルマスが見破れるとも限らないので、思い切って堂々とする事にしたのである。

はいそこ、開き直ったとか言わない!

確かにそうだけども……


 んんっ!

取り敢えずそうしてギルドで依頼を探し始める事数分、キーノ達は次の街「ネスト」への護衛依頼を発見する。


「やったね!」


「ああ!遂に次の街開放クエを見付けたぜ!!」


「次の街はどんなところか、楽しみですね……!!」


「あ、でもこれ、ギルドランクCの依頼ですね。師匠達はギルドランクいくつなんですか?私はDなんで、ギリ受けれますけど……」


 ギルドに登録した時、職員ホルダーはギルマス)に教えられるのだが、この世界のギルドも他のゲーム同様、S、A、B、C、D、E、Fの7段階(ゲームによってはもっと有るし、アルファベット以外の場合も)有り、登録時はホルダーでもFからのスタートとなる。

そして受けられる依頼は、Fなら同じFランクか1つ上のEランクまでであり、それ以上上は受けられない。

更にパーティーで受ける場合も、パーティーリーダーより2つ下のランク迄なら同行可能だが、それ以下では同行すら許されないのである。

もっと言うと、実は次の街への移動に必要なレベルが最低でも30は必要だと言われる位、この世界のモンスターは強いのである。

そしてその基準となるのがCランクと言う訳だ。

因みに現在のプレイヤー最高ランクがCである。

また、輸送等を行う商人もその位強いので、正に実力が全ての世界である。


「俺もDだな……」


「私はまだEです……」


「僕、まだFなんだけど……」


「「「F!?」」」


「う、うん…F……」


 此処でキーノのフォローをするなら、初ログインから今日まで散々狩りばかりしていて、ランクアップの為のクエストをろくに出来なかったからと言う理由が上げられる。

これについては、カナタやハルナにも責任が有る為、キーノだけを責める事は出来ない。

オマケに、キーノはギルマスの説明のほとんどを、放心していた為に聞き逃していて、この世界のギルドの仕組みをキチンと理解していなかったのである。

これも、当時のキーノの気持ちを考えれば責める事は出来ないだろう。

まあ、一番の理由は言わずもがなと言う奴だが……


「しっかし、Fか……一応俺かハルナちゃんがパーティーリーダーになれば同行出来ると思うけど、実際どうかねえ?」


「確かに…この世界、造りがやけにリアルですから……混乱防止の為にその辺りのルールとか厳密に決まってそうですよね……」


 実はギルドのルールは有れど、ゲーム世界としての規制なんぞ、性的な事柄や街中での戦闘以外には元から存在しておらず、割と…と言うか現実並みに自由に行動出来る。

つまり、ギルドの規約に違反して、ランクの離れたパーティーに同行する事も出来るのである。

まあ、キーノ達プレイヤーには、知るよしも無いのだけど……


「どうせだから受付で聞いてみようよ。」


「それもそうだな。」


「ですねーー」


「そうしましょうか……」


 此処であーだこーだ言っていても始まらないと、四人は受付へと向かう。

未だに新規の参入が終わらないのか、新人異邦人の姿がちらほらあったが、流石にキーノ達が始めた頃程の人数は居らず、いくつかのカウンターが空いていた。

キーノ達はその1つに入り、受付の人に声を掛ける。


「すみません。「ネストへの護衛」依頼について聞きたいんですが。」


「はい、いらっしゃいませ。ネストへの護衛についてですね?その依頼につきましては―――あら?もしやキーノ様ですか?お久しぶりです。ユリナです。」


「あ、ユリナさん、お久しぶりです。ここ、ユリナさんが担当してたんですね。」


「折角連絡先をお渡ししましたのに全然お尋ね下さらないし、ギルドにも来て下さらないので心配していたのですよ?その様子ですとパーティーを組まれたの…です……ね……」


 そこで受付をしていたのは、あの日キーノの手を取り何かを握り渡してきた女性、ユリナ・ファークルだった。

ユリナはキーノの後ろを見て、その様子からパーティーを組んだのだろうと思いそう話し掛けたのだが、キリアーネとハルナを見た瞬間、ビシリと固まってしまった。


「キーノ様、そちらの女性達は?」


「二人ともパーティーの仲間ですが?」


「もしかしてお付き合いされていたり?」


「言え、まだただの友人ですよ?」


「そうですか♪突然変な事を聞いてすみませんでした。それでは依頼についての説明をさせて頂きますね?」


「は、はあ…よろしくお願いします。」


 キーノの答えに満足そうに微笑むユリナ。

その瞳は背後の女性陣に向けられ、何か強い意思が込められていた。

それが何か気付いたキーノだったが、薮蛇を恐れて流す事にしたのだった。


「ん、ん!ネストへの護衛についてですが、これは特別依頼と呼ばれる分類になります。」


「特別依頼、ですか?」


「はい。この手の特別依頼と呼ばれる依頼、依頼用紙の縁に模様が描かれていますので、直ぐに分かる様になっています。そして特別依頼は、通常の依頼とは違い指定されたランクでしか受けられないのです。」


「え、つまりネストへの護衛を受けるには……」


「Cランクになるしかねえって事か……」


「そんなーー」


「やっと次の街に行けると思ったのに…残念です……」


 今のままでは街を出る事が出来ないと知り落胆する四人。


「街から街への移動はCランク相当の実力が無ければ認めない、それが国の方針だからね!諦めな!!」


クハハハハハハハ!!


 と、後ろから大きな声で話し掛けられ、四人は慌てて振り返る。

そこに居たのは二十代から三十代位のグラマーなダークエルフの美女だった。


「あ、あんたは―――」

「「貴女は―――」」


「誰ですか?」


ズコッ!


 カナタ、キーノ、キリアーネが誰かを言おうとした所で、ハルナが空気を読まずに発した誰何の声にずっこける三人。

まあ、ハルナは知らないのだから仕方無い仕方無い。


「はっはっはっはっはっ!そうか、そう言えばお嬢ちゃんとだけは会って無かったね。私は此処、「ミステス王国」ファステム支部のギルドマスター、ウルナ・バスタ・ミリアールだ。よろしくね、お嬢ちゃん。」


「え、ええーー!!!?」


 それを聞いて驚くハルナ。

ウルナはその様子を見て楽しそうに笑う。


「ここ、ミステス王国って国だったんですか!?」


 が、流石ハルナは次元が違った。

どれくらい違うかと言うと、ボーリングの球を片手では無く両手で投げているのに隣のレーンに入れた挙げ句ストライクを取る位違う。

その証拠に、ウルナ以外のその場の全員が同じ事を思っていた。


(((((((((((そっちかよ!!)))))))))))


と。


「~~~~~~~~~!!だ、だめ、だ……!は、腹が、腹が痛い……!ふ、ぷふ、ふ……!お、お嬢ちゃん、あんた…ぷふ、は…!さ、最高だよ……!!ぷふはははははははははは!ひーひ、ひひはははははははは!!」


 どうやらハルナの発言がツボに入ったらしく、ウルナは暫くの間そうして笑い転げるのだった。


〇〇〇〇


「ふ~…全く、まさかこんなに凄腕の芸人と仲間になっているなんてね。ホントに予想外だったよ。」


 あれから暫くして、漸く笑い終わったウルナの案内で、四人は二階のギルドマスター室に来ていた。

因みにキーノは緊張の余り借りてきた猫の様になっている。

まあ、相手は鑑定持ちなのだから緊張するなと言う方が無理な話か……


「いやー、それほどでも~~って!私は芸人じゃ無くて双剣士です!!全くも~~!!」


「ハルナちゃん、話が進まないからちょっと黙ってようね……?」


「ぶーー!」


「ははは!随分賑やかじゃないか!それに二人とも随分別嬪だね。こんな綺麗所とどうやって知り合ったんだい、坊や?」


 キリアーネとハルナのやり取りを見てニヤニヤと笑いながら問い掛けるウルナ。


「そ、それはこっちの相棒が良く知ってますです、はい……」


「キーノ!?」


「ふうん…全く、初めて会った時から思ってたが、そっちの坊やはやっぱりプレイボーイだったみたいだね?好みからはちっと外れるけどどうだい?一晩私と寝てみるかい?」


「いやいやいや!丁寧に辞退させて貰います!!」


 ウルナの言葉に、カナタは残像を残す勢いで首を横に振り拒否を示す。


「ふ、単なる冗談だよ。からかって悪かったね?」


 とは言うが、その顔は心底残念そうであった。


「で、本題だが、あんたらは次の街に行きたいんだろう?だけどランクが足りない。間違い無いね?」


「「「「はい。」」」」


 そこでウルナは笑みを深め、言った。


「なら話は簡単だ。しっかり仕事してランクを上げな!ただ、あんたらはあのフルードを倒した実力者だからね。条件さえ満たせばCランクの昇格試験は免除してやるよ。」


「っ!!?な、なんでそれを……!?」


「おや?知らなかったのかい?ギルドカードの機能でね。エリアボスなんかの大物が倒されると、その情報がギルドに入る様になってんのさ。勿論倒した人物の情報もね。」


 その話を聞いて何かを納得した表情になる四人。

しかしその後に続くウルナの爆弾発言に、その表情は驚愕に変わる。


「そうそう、坊やの称号も世界中の全ギルドに伝わってるよ?それもカードの機能でね。流石にアレは酷い気がするけど、異邦人が時々呼んでる通り名みたいだし、あんたが気にしなけりゃ大した問題じゃ無いだろう?」


はっはっはっはっはっ!


 ウルナのその発言を聞いて、暫くの間四人は驚きで固まっていた。

そして落ち着いてからも、そこから考えられる可能性の多さに頭を悩ませるのだった。

そしてその日は、それ以上の話は聞けず、四人は宿に戻って話し合い、翌日からそれぞれのランク上げを開始する事にしたのである。


 そして現在、キーノはEランクに上がる為のクエストを10個程終えた所であった。

ただ、内容がお使いや手伝い等ばかりな為、キーノは精神的に疲れてしまっていた。


「まさか、F、Eが人柄を見る為の期間だったなんて……どうりで依頼が常設ですら討伐系を置かない訳だよ……」


 F、Eランクで受けられる依頼に討伐は一切無い。

常設に付き物のゴブリン討伐ですらDランクからとなっているため、キーノはランク上げの為にひたすらお使いや手伝い、またはたまに有る採取をこなし続けなければいけないのだった。


「とは言え、こうして普通に冒険者やれてるんだから贅沢は言えないか……」


 そう、結局キーノ達が危惧した最悪の可能性は起こらなかった。

それ所か、転職の為に訪れた創成神教の教会ですら何も起こらなかったのである。

お陰でキーノは無事に魔術師見習いにジョブチェンジを果たした。


「よし!頑張るぞ!!」


 再び気合いを入れて立ち上がったキーノは、依頼を受けにギルドへ急ぐ。

彼はなんとか無難?にやれているようだった。

キーノは無事にジョブチェンしました

本当はユニークジョブで「外道」とかも考えてたんですけどね

此処は普通にしておきました


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