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内容は以前と大幅に変わっています


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


それは、彼なりの敬意で……

         “さらば(グッバイ)()息子よ(マイ・サン)


          パチンッ!


          ドパンッ!!


 湿り気を帯びた破裂音が響いた後、一息の間、誰もが何も出来ずに立ち尽くしていた。

そのトマトを壁にぶつけて破裂させたような音が、何処から聞こえて来たのか分からなかったからだ。

だが、その答えは直ぐにもたらされる。


グガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!?


 魂削る様なフルードの絶叫。

見れば、彼の股間から痛々しい赤いエフェクトが物凄い勢いで吹き出していた。

しかし、それも少しの間で、段々エフェクトは見えなくなり、フルードの顔も落ち着きを取り戻し始めている。

だが、その表情は暗く陰を落としている。

ただ、その様子からカナタ達は理解した。

音の正体が何で、キーノが何をしたのかを、理解した。


「アレはイテェよなぁ…流石に同情するぜフルード……」


「流石師匠…やることがえげつないですねぇ……」


「私が言えた事では無いですが、流石に少し引きました……」


 確かにそれはキリアーネの言えた事では無いが、仕方ないだろう。

何せ何食わぬ顔で、眉ひとつ動かさずに、詠唱が必要になるような魔法を去勢の為に使ったのだから。


 そう、詠唱が必要なのである。

つまり、今迄で使って来た低級とは違う。

少なくとも中級以上の魔法と言う事だ。

そんな魔法を使って行ったのが、モンスターの去勢……

つまり男のアレを潰す行為……

キリアーネの心情は微妙に違うかも知れないが確かに引く。


         “さらば(グッバイ)()息子よ(マイ・サン)

特定部位の内部圧力を瞬間的に500%上昇、再生阻害

消費MP250

対象一人


『男性専用特効魔法。一度喰らえば上位の解呪を受けない限り、失われた部位は再生しない呪いを受ける。(傷は塞がる。)』


「まだ行くよ?」


グラウンドフォール!!


        ボゴオッ!!

        ボキギッ!!


グゲアッ!?


 アーツの行使と共に突然足下の地面が崩れ、フルードの巨体が二分の一程飲み込まれ、万歳の形で上半身だけが出ている。

その際、フルードの行動を止める為に両手へ施されたスロウエリアの影響で、動きに着いて来れなかった腕が折れ可笑しな方向へ曲がっていた。


グラウンドフォール:指定した範囲の地面の密度を五分の一に減少する 消費MP35 対象指定した範囲の地面


「さて、もう君はそこから出れないよ?だって、僕が出さないからね?さあ、今度は締め付けで苦しむと良い。「解除」」


グガッ!!?

グギ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!


 突然叫び出し、首を左右にブンブン振ってもがき苦しみ始めるフルード。

その体からは、ギチギチと何かを締め付ける様な音が聞こえる。

恐らく彼には、今何が起きているのか全く理解出来ていないだろう。


〇〇〇〇


 ギチギチと音を立てて締め付けられる体の痛みに悶えながら、フルードは後悔していた。


―――何故、こうなったのか……


―――ただ、全力の勝負がしたかった……


―――それが何故、こうなったのか……


 そして悶えながらも、フルードは眼前まで歩み寄って来た、金髪の人間に視線を向ける。



ゾッ!!!!?



と、背筋が一瞬で凍りつく感覚を覚えた。

その人間の目からは、およそ温度と言う物が感じられ無かった。

先程迄、確かに熱く燃える情熱が宿っていた筈のその瞳は、最早氷点下に迄冷えきっていたのだ。


 フルードはそこで理解する。


―――ああ、アレ(・・)は本気にさせてはいけない部類だった……


―――と。

そして―――


―――自分はもう終わっているのか……


―――と。


 フルードのAIは、既に電子生命体の域に達しており、確かな自己を確立していた。

そして彼の心は武人だった。

ただただ全力で相手とぶつかりたい、そう思っていた。

だからこそ、キーノ達が全力を出し尽くすのを待っていたのだ。

だが、それが彼の敗因だった。

彼が思った様に、キーノに全力を出させてはいけなかった。

キーノが全力を出せば、そもそも勝負など成立しないのだから。


「これで、最後だよ。」


 キーノは再び詠唱を開始する。

しかし、それは先程の詠唱とは余りにも響きが違っていた。

まるで世界そのものに拒絶されている様な、何処か不快な軋みが響きに混じって聴こえる。


“其は死神の声―――”


“其は怨嗟の声―――”


“絶望は今その身に降り注ぐ―――”


“憎悪が今その身を軋ませる―――”


“代償は此の身を持って払おう―――”


「ききき、気の性かも知れないんだけど、何か師匠の回りに黒い靄が見えないかな!?」


「いや、大丈夫だハルナちゃん。俺にも見える……」


「そ、それは大丈夫とは言えないのでは……?」


 三人が心配する中、キーノは黒い靄に包まれながら詠唱を続ける。


“その先に未来は無く―――”


“その先に希望は無く―――”


“全ては暗き闇に飲まれるのみ―――”


“其は呪い―――”


“其は絶望―――”


“全ての光は今閉ざされた―――”


“恐怖せよ死神の歌声に―――”


“その身は今大地へと還らん!!”


「外道魔法、禁呪―――」






      “それは終わり告げる音ジ・サウンド・オブ・エンド!!”





        パチィィインッ!


 再び鳴らされる指の音が、辺りに響き渡る。

それは、先程の詠唱とは打って変わって、とても澄んだ音だった。

そして異変が始まる。

先ず先程の黒い靄が、全てキーノの体に吸い込まれた。

次に―――


メキッ


グヒッ!?


グギッ


オボッ!!!?


ミシメシ!


ブゲラッ!!!?


―――不吉な軋みを上げ、フルードの体の各所が不自然に膨らみ始めたのである。

彼は何処かが膨らむ度に、奇怪な叫びを上げている。

そして、そんな光景が続く事約30秒。

その時は、訪れた。



       ボコボコドパンッ!!!!!!

         アバブッ!?



 遂に、堪え切れなくなった肉体が、北斗よろしく弾けて吹き飛んだのである。

現実ならスプラッターだったが、キーノ達の目にはモザイクが飛び散った様に見えていた。

更にそれも飛び散る端から光に変わるので色々な意味で安心である。


        “それは終わり告げる音ジ・サウンド・オブ・エンド

体内圧力を秒間10%上昇、蘇生阻害

消費MP全MP

対象一人


『レベル差50迄なら確殺可能な禁呪。それ以上のレベル差になると、50毎に二分の一、四分の一、八分の一と成功率が下がる。また、発動には多大な代償が必要。』


 それから数秒後、フルードの体が全て光になって消えた瞬間、キーノの体が突然―――


ガクンッ!


―――と倒れ掛かる。


「キーノ!!」


「師匠!?」


「大丈夫ですかキーノさん!!?」


 急いで駆け寄り、その体を支える三人。


「すみません…今の魔法の代償で、ちょっと、いやかなり弱体化してしまって……感覚になれないと立つのも無理そう……」


「さっき禁呪とか言ってたが、まさかそのアーツ!?」


「御察しの通りだよカナタ。アレは僕のステータスまで使って敵を確殺するアーツなんだ。」


「えっ!?それって大丈夫なんですか?」


「時間経過で戻るから大丈夫。逆に時間経過以外じゃ戻らないけど……」


「なら、私の浄化では役に立てそうにありませんね……」


「では、この森から抜けるまで守って下さい。お願い出来ますか?」


「っ!!はい……!!」


 キーノの求めに笑顔で応えるキリアーネ。

その顔は、とても嬉しそうだった。


「んじゃまあ、さっさと戻るか。色々聞きたいが、話は宿に戻ってからだな。」


「そうですね~~それに師匠の万物先生が有れば、あんまり戦わずに済むでしょうし?」


「奇襲も怖く有りませんからね……!」


「あ、ごめん。僕ユニークスキルも全部封印されてるから。」


ビシッ!!


………………空気が、凍った。


ギギギギギッ


と、そんな錆びたブリキ人形が首を回す様な音が聞こえるんじゃ無いかと思える動きでキーノを振り返る三人。

そんな彼らに対して、キーノは悪びれる事無くこう続けた。


「後、今の僕HPが九割持ってかれてる上に、それも時間経過でしか回復しないから。」


「「「どんだけだよ(ですか)!!!!?」」」


 三人の怒号が辺りに響き渡った。

少し短めですが今回は此処までです。

突然禁呪とか使いだしたキーノ君……

詳細は次回のお話で!


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― 新着の感想 ―
[一言] サウンド オブ ジ エンド ザ サウンド オブ エンド じゃないですかねぇ?すごい違和感。
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