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自棄になった外道のエリアボス戦5

だいぶ内容が変わっています


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


気付かぬ焦りが、綻びを作る。

 なし崩し的に戦闘へ突入した四人。

だがハルナを除けば皆戦闘経験豊富な二つ名持ちの猛者ばかりだ。

しかし先手を取ったのはフルードだった。


グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!


 フルードの雄叫びにより辺りが震えている。

そしてそれが只の雄叫びで無い事を、四人は直後に身を持って知る。


「なっ!これは、「威嚇」スキルの…スタン……!?」


「くそ…!動けねぇ……」


「油断、しました……!」


「ふえ!?皆どしたの!!?あのゴリラ達迫って来てるよ!!早く戦わなきゃ死んじゃうよ?!!」


 低レベルの相手に高確率でスタンを与える威嚇スキルにより、ハルナを除く三人は動きを封じられてしまう。

状態異常を高確率でレジストする筈のカナタでさえ動けなくなったのは致命的だ。

しかし、キーノはそんな中でも頭を働かせ、状況を打破する方法を考える。

が、ゴリラ達はその間も此方に向かっており、その距離は確実に縮まって来ている。

救いがあるとすれば、ゴリラ達が余裕を見せて、ゆっくり進んでいる事位だろう。

尤も、体格の違いでゆっくりでも人間の競歩位の速さはあるが……


(体は動かない…でも声は出せるし、万物先生は仕事をしてる……何か、何か無いか?スタンを解くには―――)


 焦りが募る中、視線を巡らせた先、カナタの背中に1つのアイコンが見えた。


          『Push!!』


「ハルナ……!背中を叩け!!」


 見た瞬間、それが何かを理解したキーノはハルナに向かって力の限り叫んでいた。


「………………っ!!?」


         パシンッ!!


 キーノの声に驚いたハルナは、訳も分からず近くに居たキリアーネの背中を思い切り叩く。

叩かれた事で前のめりになったキリアーネは慌てて脚を前に出した所で、スタンによる硬直が解けた事に気付いた。


「きゃっ…!?あ、体が…動きます!これなら……!」


―――セイントフィールド!!


 体が自由になったと理解した瞬間、キリアーネはフィールドを張り、戦闘態勢に入る。

その時には既にキーノとカナタもハルナにより自由の身になっていた。


「サンキューハルナちゃん!今のは流石にヤバかったぜ!」


「相手はボスなんだから、スタン位注意しておくべきだったよ……」


「まあまあ、今は兎に角勝つ事を考えましょう?」


「ハルナちゃんの言う通りです……!「守護の燐光」!「信徒の祝詞」!…「天の守護」!…「使徒の翼」!…「アトラスアーム」!生命の雫の対象はハルナちゃん以外に……!」


 フルード達がゆっくりと近付いて来る中、キリアーネはパーティーの回復を天使魔法の「守護の燐光」と「信徒の祝詞」、それに生命の雫のコンボによりオートで賄う。

信徒の祝詞は通常半径10m内の味方のHPを秒間5Ptずつ10秒間だけ回復するアーツだが、守護の燐光によりパーティー全員に効果が行き渡るだけでなく、セイントフィールド内であれば効果が永続する為、四人は常に回復していく。

更に生命の雫の効果でフルード達相手なら30秒の間だけ1秒で全快だ。

そこに天の守護、使徒の翼、アトラスアームで自身を強化する事でキリアーネは現在のトッププレイヤー等目では無いステータスになっている。

因みに、セイントフィールドは球形・・である為、地中の中にも展開される。

しかもこの世界、地中生の小型のモンスターも存在する上、モンスターや虫、動物で有れば何でもカウントするので、生命の雫の回復量は実の所とんでも無い。

正にチートオブチートスキルである。

それと、天使魔法のMP-10の効果で信徒の祝詞、天の守護、守護の燐光は消費MPが0になっているのも大きいだろう。

………いくら何でも0以下になって使えば使う程回復とか言うのは無いのである。

無いのである!!

あ、ハルナに生命の雫を掛けなかったのはハルナがあまりMPを消費しないと言う理由なだけで、決して虐めでは無い。

無いのである!!

大事な事なので二回言いました。


「「クイック」!「バーストアタック」!「プロテクト」!「マギアシスト」!「五感低下」×3!……解除!!」


 キリアーネに一拍遅れる形で、キーノは速度上昇のクイック、攻撃力強化のバーストアタック、防御力強化のプロテクトをカナタに掛け、自身に魔法威力強化のマギアシストを使い、自分以外へ五感低下を掛けて数秒で切る事により、強制的に五感を引き上げる。

普通これだけすれば、体の感覚の違いに戸惑い上手く動けなくなるものだが、既に全員体験して乗り越え…いや、乗りこなし済みである。

故に前衛三人(一人は本来後衛だが)は素早く行動を開始する。


「皆!先ずは取り巻きの賢武猿マジックソルジャーコングから倒して!ネームドのフルードはそれからでお願い!!フルードは僕が暫く動きを止めます!!」


「「「了解(です)!!」」」


賢武猿マジックソルジャーコング Lv23

 ノーマルエネミー パーティー級 推奨Lv33

 ノーマルモンスター レア度C

 現パーティー勝率89%

 取得可能経験値1550(12200)

 ドロップ???

 HP:1750(3500)

 MP:840(1680)

 STR:173(355)

 VIT:123(256)

 AGI:160(320)

 DEX:123(245)

 INT:162(333)                 』


 その数値は確かにフルードには劣っている、それにセイントフィールドの効果で半減もしているが、決して油断して良い数値では無い。

そんなのが三体も居ては、いくらホルダーが三人居ても、流石にきつ過ぎるだろう。

そしてそれは全員が理解していた。


「ハアアアアアアア!「一文字切」!!」


 先ず仕掛けたのはカナタだった。

高速で一番前に来ていた賢武猿――仮にAとする――に近付いてからアーツの横凪ぎを行い先制攻撃を行う。

しかし―――


ギャリィィィィン!!!


「ちっ!流石に反応するか!!」


 流石に賢武と名乗るだけ有り、賢武猿Aは無駄の無い洗練された動きで右手のロングソードを操り、カナタの初撃を受け流す。

その際カナタの体が僅かに流れて体勢を崩し掛けるも、何とか踏み止まり素早くバックステップで距離を取る。


ウホホウ!


 そしてお返しとばかりにバックステップで下がったカナタへ、賢武猿Aは不可視の風弾を放って来た。

そう、風魔法を使って来たのである。

名前の通り、奴等は魔法剣士的なモンスターなのだ。


「くっ!」


ドガアアン!!!


 一時的に五感が上がっているお陰で、その風弾を感知出来たカナタはサイドステップでそれを躱す。

その直後、それまでカナタが立っていた場所がはぜて地面が捲れ上がる。


「「隙有りです……!!」」


 賢武猿Aがカナタに気を取られているその瞬間、背後から迫った2つの人影が、左右に別れて賢武猿Aに襲い掛かる。


「やあ~~!!」


ザンッ!


「アハハハハ!!!」


ズドドンッ!!


ウボアッ!!!?


 最初に右から左斜め上に抜ける様に繰り出されたのはハルナの放った斬撃だった。

逆手持ちにされた短剣が、賢武猿Aの右脇を左斜め上に向かって切り裂き少しだが確実にダメージを与える。

その次に繰り出されたのはキリアーネの拳撃と蹴撃だ。

賢武猿Aが痛みに呻いたその瞬間、両手に嵌めた武骨な姿の赤いガントレットで左脇腹に向かって左のフックを叩き込み、空かさず左足を軸に半回転し右の膝蹴りを叩き込んだのだ。


 二人が繰り出した連携に堪え切れず、賢武猿Aはロングソードを杖に膝を着く。

その顔は苦悶に歪み、息も絶え絶えとなっていた。

しかし、忘れてはいけない、この場にはまだ一人残っている。


「「幹竹割り」!!」


ズブシャッ!!


 最後の一撃を脳天に繰り出された所で、クリティカルだったのか賢武猿Aは光の粒子となって消えた。

此処まで、セイントフィールドを張ってから約15秒の出来事である。


「サンキュー!キリアーネちゃん、ハルナちゃん。助かったぜ!」


「気にしないで下さい……それより他のを―――」


「気にする必要はあんまり無いかもねぇ……」


 余り時間は掛かっていないとは言え、それでもキーノ一人に他三体を任せてしまう形になったしまった今、早く次の獲物を仕止めようと後ろを振り返った所でキリアーネは止まり、ハルナは呆れた様な声を出す。


「ちょっと皆!そっち片付いたんなら手伝って下さい!このままだとそんな持たないから!!」


 そこでは、先の宣言通りキーノがフルードの(他二体の賢武猿も)動きを止めていたのだが、その様は流石としか言い様の無いものだった。


グオオオオオオオオオ!!!

ウホウ!!

ウホアッ!!


三体は体を動かす度に、何かに引っ掛かった様に動きが止まったり、逆に速過ぎて制御が出来ずに転んだりしていた。

そして時折動きを止めては風や水魔法をキーノに放つのだが、キーノはそれを避けたり、風魔法を使って相殺して凌いでいたのである。


「「スロウエリア」×5!!」


スロウエリア:指定した空間内の時間の流れを二分の一に落とす 消費MP40 対象指定した空間


 それはキーノが創った2つ目のオリジナルアーツ。

そしてこれこそが先程からフルード達の動きを抑えていた正体である。

キーノはこのアーツが効果的に働く場所を見極め、小分けにして配置、更にはフルード達の動きに合わせ、配置したものの効果を解除する事で加速空間を作り、体の制御が上手くいかない様にしていた。

普通に考えればとてつも無い情報処理能力である。

恐らくトッププレイヤーでも、キーノと同じ事が出来る者は五人と居ない。


「一体通すから手早くお願い!!」


 その言葉と共に、一番近付いて来ていた賢武猿――賢武猿Bとする――が一瞬で消え―――


ズドォン!!!


 気付いた時にはカナタ達の手前で派手に転び顔面から地面に突っ込んでいた。

見れば賢武猿Bの足元が不自然に四角く凹んでいる。

どうやらキーノがスキルで予め罠を張っていたらしい。

一瞬で消えたのはスロウエリアの解除による反動で、加速空間が生まれた為だろう。


「グッジョブだ!!いくぜ!「剛断」!!」


 直ぐ様反応したのは相方として付き合いの長いカナタだった。

カナタは直ぐに首元へ回り込むと、大上段から力の限り真っ直ぐ振り下ろす溜めの大きなアーツを使い斬り付ける。

「剛断」は溜めこそ長いが、繰り出されれば通常の二倍以上のダメージを叩き出すアーツで、割りと初期に覚える割には長く使われるアーツである。

そしてそんなものを無防備な首に向けて繰り出されては、さしもの賢武猿と言えど堪え切れるものでは無い。

当然、賢武猿Bはその一撃で光となって消えた。

呻き声すら出せない程アッサリとした退場だった。


「次、お願いします……!」


「私達だってやってやりますよーー!」


 それを観てやる気を刺激されたのか、先程とは目付きが違うキリアーネとハルナを見て、キーノは無言で頷き賢武猿Cの近くに展開したスロウエリアの効果を解除する。


ウッホア!!


 アーツを解除した事に気付いたのか、賢武猿Cは体を丸めて弾丸の様に飛び出す。

どうやら先程の賢武猿Bのやられる姿を見て学習したようだ。

やはり他のゲームと比べて、AIの性能はかなり高いと言わざるを得ないだろう。


 賢武猿Cは当然加速空間に入った瞬間、目で追い切れない程加速しながらキリアーネ達に迫って行く。

キーノはてっきり避けてたから戦うかと思った。

だが賢武猿Cが消えた瞬間、キーノは有り得ない光景を目撃する。


「「アトラスアーム」……はぁあっ……!!!」


ズドガアアアアアアンッッッ!!!!!!!


「「はあっっ!!!!!?」」


「おお!さっすがアーネちゃん!!かぁっくいい!!」


 賢武猿Cが加速したと同時に、キリアーネはSTR強化のアトラスアームを重ね掛けし、突然裂帛の気合いと共に右のストレートを繰り出した。

その瞬間大質量の凶器と化した賢武猿Cが、突き出されたキリアーネの細腕とぶつかり合い、信じられない大音量を響かせながら拮抗し、停止したのである。


ヴォエア……


ズンッ……!!


 賢武猿Cは奇っ怪な呻き声を出し地面に仰向けで倒れ込む。

まだ生きてはいるが、最早戦え無いだろう事は明白だ。


「えい!!」


ズブシュッ!!


ウゴァ…ア……


 可愛らしい掛け声と共に、ハルナは瀕死の賢武猿Cの右目へ右手の短剣を突き入れ、脳を破壊し止めを刺す。

当然、賢武猿Cは他の二体同様、光となって空へと消えた。


「さてと……」


「これで……!」


「残ってるのは!」


「お前だけだ!フルード!!」


 そう言って、四人はフルードを睨み付ける。

そんな敵意の籠った視線を受けて彼は―――


―――笑っていた。


     ドドドドンッッッ!!!!!


 突然響き渡る和太鼓の様な爆音。

その瞬間、キーノの視界は白く塗り潰されていた。


「え……?」


 その声を最後に、キーノの意識はそこで途絶えた。

戦闘自体は思ったよりあっさりしたものになってしまった……

キリアーネがゴリラよりゴリラでしたね(;・ω・)

まあ、いっか!( ´∀`)


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