島流し
魔力に眼醒めた。
そしたら前世の記憶が蘇った。
ついでに国から追放になった。
*
魔力を暴発させてから早1週間。今日も元気に船に揺られています。
大型の船でもなく、船員がいるわけでもなく、丸太で作った筏と同等の小さな船で我ながらよく生き残ってると思う。
使い勝手の良い魔力のお陰で、食料も水もない頼りない船でだだ広い海原を漂流できているのだから。
そもそもの原因はその魔力の所為なのだが。
「お、あれは陸地かな」
拾った腕ほどの太さの棒にナイフで魔法陣を刻んだだけの簡易動力付きオールでぐんぐんと遠くに見える陸地を目指す。
島流しという実質死刑になる前はネーライラ皇国で本屋の雇われ店長をしていた。
ネーライラ皇国は神の代弁者という教皇を頂点とする完全な宗教国家であり、唯一神以外の神を崇めることは異端とされている。
そして魔法というものは認識されておらず、代わりに教会の神官達のみが使える聖神力だけが癒しの力や攻撃手段として知られる。
つまり、魔力に眼醒めて暴発させ、意図せず本屋丸ごと氷漬けにしてしまったことで、前世の記憶に混乱しているうちに異端審問にかけられ追放処分となったわけである。
「こうして生きていられるのも前世の記憶様様だなあ」
よっ、と小舟から飛び降りて未知なる世界に上陸した。