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鈴の下駄  作者: 水瀬透
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プロローグ


プロローグ



 とある町には、大きな松の樹のある小さな御宮さんがあります。


 八幡宮、とお社にしめ縄と一緒に額が飾られて、狛犬も、祠もありますが、神主さんや巫女さんも、お守りも売っていない、ちいさな神社です。

 そんな、土地に深く根付いた八幡宮を、地域の人々は、親しみを込めて「御宮≪おみや≫さん」と呼びます。



 さて、大きな松の樹のあるこの御宮さんには、時々、変わった子供が現れます。


 カランコロンと鳴る下駄に、鼻緒と同じ、朱色の羽織り。ぴょこぴょこ跳ねた飴色の髪、まあるいどんぐり眼もおんなじ色。

 人を小馬鹿にしたような、小生意気なその子供は、けれど不思議なことに、誰かが寂しいとき、心が痛いとき、傷ついたとき、泣きそうなとき、辛いとき。いつの間にか現れて、何をするわけでも、してくれるわけでもないけれど、ただ、そこに居てくれます。

 カラン、コロンと不思議によく鳴る下駄を鳴らして、――ずっと、あなたの傍らに。


「ばかだなあ。きみが知らないから、ぼくが知ってるんだよ」


「ばかだなあ。きみが知らないから、ぼくが教えに来たんだろ」


 こんな口ぶりで。ね、とっても生意気でしょう?

 それでも、呆れたり、黙ったり、時には怒ったり――この子供はたまにしか怒りませんが、怒るとすごく怖いのです――そうやって、御宮さんで立ち止まった人が、それぞれの場所へ帰るまで、この子はただ、ずっとそばに居るのです。


「ばかだなあ。きみが空だって飛べること、きみが生まれる前から、ぼくは知ってるんだよ」


 大きな松の樹のある御宮さんには、人好きだけれど、怒らせると怖い神様が住んでいると云われています。

 人が大好きだから、ときどき人の姿を真似て、御宮さんに現れる、とも。



 きっとそれは、カランコロンと下駄を鳴らす、飴色の髪の子供の姿をしているのでしょう。



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