3話 春宮木葉の事情?
超久々の更新です。
話になっているのか…という内容ですが、まぁ暖かい目で見て頂けると……
お願いします。
今回は弟の春宮木葉に視点を当ててみようか。
春宮木葉という人物は、一言でいえば”シスコン”である。しかし彼にその自覚はなく、幼馴染の深咲陸は、本人には言わないがそれを知っていた。いや、彼のシスコンは、彼の所属する野球部の者なら知らない者はいないと言ってもいい。
それは、彼が入部時に放った言葉が原因である。
「まず、姉を高校に通わせるのが目標です。あと甲子園」
甲子園はついでか、と野球部一同がツッこんだのは言うまでもない。
この時点では、姉思いの弟、と済ませることもできたが、木葉はそれで終わらなかった。
「すみません。俺今日は姉にお使い頼まれているので、お先に失礼します」
部活の練習が終了し、後片付けに入るところで彼が言ったセリフである。
もちろん、これには先輩方は激怒した。一年生の木葉が、後片付けをやらずに帰ると言うのだから、当然良くは思われないだろう。
「申し訳ありません。明日は、誰より早く来て一人で準備をするので、帰ります。その旨、監督にも許可は得ています。部室の鍵は、深咲先輩に渡して頂ければ、家が隣なので受け取れます。よろしくお願いします」
そう言うと彼は本当に帰っていった。監督から許可が出ている、とあっては、いくら先輩だろうと咎める事はできないのだ。
「なぁ陸。あいつ今日は何を買いに行くんだ?」
一人の三年生が興味本意で陸に問う。他の者も気になってはいたのだろう、怒りを一旦抑えて陸に向く。
「えぇ〜、と、、」
陸は答えにくそうに、目を泳がせ、一歩後退した。冷や汗も浮かんでいる。それに先輩方は胡乱げな顔をしつつ、答えを促す。仕方なし、といった体で一つ小さく息を吐くと、陸は口を開いた。
「R15指定の、ギャルゲー、です」
彼の口から出た言葉に、聞いていた者達はポカン、と口を開ける。
「、、R指定の、ギャルゲー…?」
いち早く立ち直った先輩が、ポツリと漏らす。それに無言で頷き、補足で説明を始める。
「今日が発売なんですけど、入荷が遅れているらしくて、18時に発売だそうで……」
現在の時刻は16時30分。いつもより少し早く部活が終わった日ではあるが、それでも1時間半ある。このキツい部活の後に並ぶというのだ、
「人気な作品らしくて、入荷数は多いのですが、人も多いみたいで、今から並んだとしても販売時間から、最低2時間は並ぶそうです」
つまり、木葉は3時間半並ぶというのだ。時間をロスしない為か、彼は制服に着替えずに帰った。その足で帰宅せずに並ぶのだろう。重い部活道具の入った鞄を持ちながら。
「頼んだのは、”姉”だよな…?」
確認するかのように、質問してきた先輩が、陸に聞く。それに無言で頷く。
「自分で並ぶ、っていう選択肢は…?」
「彼女は引きこもりです。その選択肢は最初からありません」
別の先輩が、目を細め腕を組む。
「そんな頼み断ればいいだろ」
「そんな事をすれば、木葉な夕飯はなくなり、姉は部屋からも出てこなくなります。そうなると、木葉の目標が永遠に達成できなくなり、部活後に姉の世話に加え、自分で夕飯を作らなくてはいけなくなります」
納得のできない理由ではあるが、人それぞれ価値観が違う。木葉にとっては、”姉が部屋から出てこなくなる”というのは一大事なのだろう。
それを聞き、怒っていた先輩方は、多少怒りを鎮めたが、納得できない、という先輩もいる。
「それが部活を粗末にしていい理由にはならないだろ。後片付けは一年の仕事だ。いくらあいつがレギュラーでも、例外はない」
その言葉は最もである。それに陸は苦笑しながら、一言、こう答えた。
「木葉は自覚はないですが、”シスコン”なんです」
沈黙が走った。
「シスコン、なんです」
陸は確認するかのように、再びその単語を発した。
「……あ、そう……」
先輩はなんとも言えない表情で、何も言えない、という様に一言、そう答えるのがやっとだった。
かくして、春宮木葉のシスコンは、本人の知らぬところで野球部に知れ渡る事のなった。
「姉ちゃん、買ってきた」
「おぉ弟よ。良くやった。褒美をつかわす」
「何様だよ」
「ちゃんと初回限定生産の特別版の方買ってきた?店舗特典付きの」
「……えっ、通常版じゃなかったの?」
「…………………」
パタン、と静かに扉が閉められた。
それから1週間彼女は木葉の前に姿を見せなかった。
「だ、だって、通常版分の金額だったぞ!」
彼の言い訳は、扉の奥の彼女には届かなかった。
紅葉が引きこもった1週間、木葉は落ち込んでいた。
それを見た野球部の先輩は、陸に事情を聞き、木葉を憐れみ、優しくなった。
さすがに2ヶ月以上も放置はヤバい、と急いで書きました。
木葉くんはこんな子です。
次回更新はまだ未定ですが、気長に待って頂けると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いします。