2話 春宮宅の一週間
メモみたいに書いてただけなので、ちゃんと文章になってるといいのですが……
翌日もそのまた翌日も、紅葉は学校へと行くことはなかった。
毎日弟と幼馴染が起こしに来る。その度にのらりくらりと躱し続けているのだ。
とある一週間の春宮宅の様子を見てみよう。
月曜日
日課である部屋の戸を叩いて(殴って)起こす、弟の目覚ましの後、今日は部屋の戸が開かない。
「姉ちゃん。学校」
「………」
「紅葉、学校行こう?俺達もついてるから。陸は同じクラスだし、きっと楽しいよ」
「…………」
「…紅葉?」
起きてドアの前までは来たはずの紅葉から、返事がないことを不思議に思い、再度声をかける陸。しかしそれでも返事はない。それに木葉がガックリと肩を落とす。
「姉ちゃん、ドアの前で寝てる……」
俯き顔を抑える木葉。その肩に無言で手を置き、
「時間だ……」
悔しそうに顔を歪ませながら、呟く。
春宮紅葉、起床せず。
火曜日
「姉ちゃん。学校行くぞ」
今日は扉が開いており、木葉を見上げる小さな影がある。紅葉は首を傾げながらと木葉の後ろに目線をやる。
「…陸は?」
「今日は部室の鍵開けだから、もう学校行った。姉ちゃんも着替えて学校」
閉められないよう部屋の戸から手を離さず、着替えを促す。
「……分かった」
そう言うと、その場で服を脱ぎ始めた。
「え、ちょ、ちょっと、何してんの⁈」
「え?着替えてって言ったの木葉だよ」
Tシャツを脱ぎ捨て下着姿の紅葉は、焦る木葉に構わず下も脱ごうと、短パンに手をかける。
「待って待って!ドア閉めるから脱がないで!」
顔を赤くし、慌てて戸を閉める木葉。
「双子なんだから気にすることないのに」
「姉ちゃん女だろ!俺男!双子でもダメだろ」
「…陸ならいいの?」
「もっとダメ‼︎いいから早く着替えて…」
ガチャリ。
話している途中で、鍵の閉まる音と共に訪れる沈黙。
「…………………………姉ちゃん?」
「行ってらっしゃい」
木葉は戸のノブに手をかける。しかし戸が開くことはなかった。
木葉、巧妙な罠(?)に引っかかり、時間切れ。
水曜日
「紅葉、学校行こ?」
「おはよう陸。木葉はそんな不機嫌そうな顔をしてどうした?」
優しく微笑んでいる陸とは対照に、不機嫌そうに顔を顰めて腕を組んでいる木葉が、壁に寄りかかっていた。
「どうしたって、昨日姉ちゃんが卑怯な手を使ったから怒ってるんだろ!」
怒って紅葉を睨みつける木葉。それに対し紅葉は、眠そうな表情のまま胸を張る。
「卑怯とは心外な。別に見られて困るものでもないし、戸を閉めたのは木葉だ」
それに言い返せず、紅葉から顔を背ける木葉。
「……紅葉、何したの?」
「何って、着替え」
「もしかして制服に着替えたの?木葉何でドア閉めたの?」
「……」
バツが悪そうに黙ったままの木葉。それを見て、紅葉が口を開いた。
「陸はいいのか?私が着替えても」
「もちろんだよ!一緒に学校行こう‼︎」
紅葉の言葉に喜び、笑顔で手を握った。手を離してもらうと紅葉は、昨日と同様その場で服を脱ぎ始める。
「え……」
それに驚愕し固まる陸。
パサリ、と紅葉がTシャツを床に落とした音で我に返ったと同時に、一気に顔を真っ赤に染める。昨日の木葉とは比較にならない程、耳まで真っ赤だ。
「ちょちょちょ、も、紅葉さん⁈待ってお願いだからここで脱がないで!」
落ちたTシャツを素早く拾い、紅葉の胸元に押しつけると、左手で顔を押さえながら紅葉から目を逸らした。木葉は壁の方を向いていて、聞こえてくる会話にため息をつく。
「…陸もダメなのか。小さい頃は一緒にお風呂も入ったというのに…」
「「子供の頃の話だ‼︎」」
2人同時に抗議され、服を着ないままの紅葉は、静かに戸を閉め、そのまま鍵も閉めた。
「…あ、」
純情さを利用され、本日も部屋から連れ出す事に失敗。
登校しながら、木葉は姉の行動について、訂正を入れる。
「姉ちゃん、露出狂とかじゃないから」
その言葉に安心した陸だったが、続く言葉に固まった。
「恥じらいが欠片ほどもないだけだから。安心して」
それのどこに安心できる要素が、と突っ込みを入れようとした陸だったが、小さい頃からの紅葉の性格などを思い返し、なるほど、と納得してしまった。
そして2人揃ってため息を吐いた。
木曜日
戸は開かなかった。しかし、鍵がかかっていなかった。
「姉ちゃん、入るよ」
中からの返事も待たず、遠慮なく戸を開けた。陸と共に部屋に足を踏み入れると、テレビの前にうつ伏せに倒れている紅葉を見つけた。
「紅葉!大丈夫?具合悪いの?」
駆け寄り抱き起こすと、軽く頬を叩きながら声をかける。
「うっ、陸…?」
緩々(ゆるゆる)と目を開ける紅葉に安心する陸。そして、それを冷めた目で見下ろしている双子の弟の木葉。
「大丈夫?どこか痛いところとかない?」
「うっ、陸。仙豆を、私に仙豆をくれ」
「………仙豆?」
紅葉を抱き起こした体勢のまま首を傾げ、木葉に助けを求める。
「……姉ちゃん、寝ないでゲームやってただろ」
「だって、イベントがあったから。おかげさまで、1位をキープしたまま終えました」
弱々しく木葉にピースサインを向けると、次の瞬間パタリと手が落ち、ガクリと体から力が抜けた。陸は慌てて落ちそうになった紅葉の首を支えると、紅葉の顔を覗き込む。
「……寝ちゃっ、た?」
「ハァー、ごめん陸、姉ちゃんベットに運んでくれる?」
大きくため息をつくと、陸に紅葉をベットに運んでもらい、自分はゲームとテレビの電源を落とす。
「今日は無理だ。夕方まで起きない」
そう言うと陸を連れて部屋を出る。
部屋に入った直後、ゲームによる徹夜で寝落ち。
補足だが、木葉曰く、この場合の”仙豆”とは、栄養ドリンクを指しているそうだ。
金曜日
この日、紅葉は部屋に居なかった。
部屋の戸を開け、入口に突っ立っている木葉と陸。
「紅葉どこに行ったのかな?」
「多分、風呂かな」
場所は移動して風呂場の戸の前。脱衣所を挟んでいるが、戸の中からは水の音が聞こえてくる。
「……ねぇ木葉、ここに紅葉は居るけど、僕達がここに居るのはちょっとマズい気がするんだけど」
「……言うな」
端からみたら、風呂を覗こうとしている男2人の図に見えるのである。
「……今日は諦めない?」
「………そうだな……」
陸の言葉に頷き、玄関へと足を向けた時、扉が開いた。
「おお〜木葉に陸。ちょっと頼みがあるんだが、」
水を滴らせながら、体にタオルを巻き開いた中から出てこようとする紅葉。
2人は引き返し、紅葉の肩を押し中に押し込めると、勢いよく戸を閉めた。
「姉ちゃん……頼むから、ヤメテ」
扉を閉めた瞬間膝をついた陸と、戸に額を押しつけ懇願する木葉。両者共に差はあれど顔が赤い。
タオルを巻いているとはいえ、そのタオルは水で体に張り付き、細い体と豊満な胸のシルエットが2人の目にしっかりと映った。
「小さい頃は一緒に「「だから子供の頃の話だろ‼︎」」
2人は紅葉がまた出てくる前に、急いで家を出た。
「ごめん陸。姉ちゃん、恥じらいがないんじゃなくて、常識がないんだ」
「…そうだね」
学校への道を歩きながら、2人はため息をついた。
その頃紅葉は、体にタオルを巻いただけの状態のまま、リビングで牛乳を飲んでいた。
「…着替え、部屋に忘れたから、持ってきてもらおうとしただけなのに……」
その呟きは、虚しく消えた。
土曜日、日曜日
木葉、陸は部活の為、いつもと同じ時間に家をでるが、学校は休みのため、紅葉を起こしに来ることはない。
まだ薄暗い、早朝5時の出来事である。
佐藤君のほうを書く前にこっちが、書き終わってしまった……
しかし、1ヶ月以上振りの更新。読んでくれる方はいるのだろうか…?
更新遅めですが、楽しんで頂けたら嬉しいです。